強力!斜め撮影のドーム状変形抑制効果 | 山口大学 空中測量(UAV写真測量)研究室の技術ノート

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日本写真測量学会の平成30年度秋季学術講演会(11月8日、アオーレ長岡)で、

「UAV写真測量のSfMにおける斜め撮影の導入に関する基礎的シミュレーション」というタイトルで、発表を行いました。

 

この発表では、CGシミュレーションに基づき、

○ 従来の下向きの平行撮影ではドーム状変形などの非線形系統誤差が生じること

○ ドーム状変形は少数の「斜め撮影」の導入で解消できること

を示し、最適な角度を検討しました。

 

発表のスライドをこちらに、ノート(台詞)付きのスライドはこちらに置きました。参考にしていただければ幸いです。

 

【補足】

  • 現在のUAV写真測量で一般的な、「セルフキャリブレーション付きバンドル調整」(画像と標定点から、各画像の外部パラメータのみならずカメラの内部パラメータも推定すること)を用いる限り、数枚の斜め撮影を入れない手はないでしょう。

  • 現地実験では下向き平行撮影だけでも高精度になることがあります。今回のシミュレーションでもスライドの16枚目の左上の状況では、下向き平行撮影だけでも高精度になっています。この原因としては、ドーム状変形などの非線形系統誤差が、標定点の位置や地上測量誤差などのわずかな変化によって大きく変わる不安定な性質をもつこと(スライド16枚目)や、下向きの平行撮影を計画しても、実際には完全な平行撮影にはならず、カメラの向きに微小なばらつきが生じること、が挙げられます。しかしこれらの「制御できない偶然」に頼ることは、明らかによくありません。

  • 本ホームページでは以前、平行撮影のみの場合、標定点が4点では足りないという結果を示しました(関連記事:1, 2, 3)。一方、本発表では、斜め撮影を数枚入れれば、標定点を4隅のみとし、かつジオリファレンスのみに使っても、ある程度の高精度が得られるということを示しています。斜め撮影を入れれば、カメラパラメータは、標定点に頼らずとも高精度に推定できるわけです。

  • 本発表に対し、「セルフキャリブレーション付きバンドル調整を行う必要があるのか」より詳しくは「別途カメラキャリブレーションを行っておき、バンドル調整では内部パラメータを固定すれば、fやK1の誤推定は起こらないので、斜め撮影を入れる必要がないのではないか」という質問を頂きました。セルフキャリブレーション付きバンドル調整を用いる理由としては、Phantomシリーズなどの小型UAVに搭載されているカメラの幾何学特性の安定性(最適な内部パラメータが、経時的に、または温度などの条件に対して、どの程度一定か)が(私の知る限り)よくわかっていないことや、飛行時と同じフォーカス距離でカメラキャリブレーションを行うためには、巨大なターゲット(チェスボード模様の平板など)が必要であること、が挙げられます。現地に持って行ける程度のサイズの平板や通常の液晶ディスプレイでは、キャリブレーション用の画像がピンボケして、不安定なキャリブレーションとなります。
  • 本発表スライドは、印刷版の概要(発表論文集)と、報告している実験の条件(撮影範囲など)が異なります。概要をお読みいただいた方にはご迷惑をおかけしました。またこの旨を、発表の際に述べておらず、失礼いたしました。印刷版の概要では、標定点の効力を最大化するために、対象領域のかなり外側までUAVを飛ばして撮影する状況を扱っていましたが、それはあまり現実的でない(そのような時間があるなら、対象領域の内部のオーバーラップ率を高めた方がよい)ため、発表までの間に、より現実的な条件で実験をやり直した次第です。混乱を避けるため、本ホームページには印刷版の概要は掲載しないことにします。

書誌情報:

 

神野有生, 宮﨑真弘, 八田滉平, 福元和真, UAV写真測量のSfMにおける斜め撮影の導入に関する基礎的シミュレーション, 日本写真測量学会の平成30年度秋季学術講演会, 2018.