本日4月20日は、ブラジルの「外交官の日(Dia do Diplomata)」となっております。


この日は、特に国民の休日というわけではありませんが、ブラジルの外務省新入職員が1年半学ぶ大学院「Institudo Rio Branco」では、2009年入省の職員の卒業式が行われました。


私の友人も何名か在籍しており、ジルマ大統領やパトリオッタ外相の出席の下、今後の外交官生活に想いを馳せていたことでしょう。


この「外交官の日」とは、上研修所の名前にもなっている、ブラジル外交史における代表的な人物「Rio Branco卿」が生まれた日から来ました(1850年)。


Rio Brancoは、現在南米大国の48%を占める広大なブラジルの土地の範囲を、他国と交渉して画定したした人物です。

条約で画定した土地の範囲を大きく越えて隣国との国境を画定したので、さぞやり手の外交官・ネゴシエーターだったのでしょう。

ペルー・ボリビアと国境を接しているAcre州の州都の名前も「Rio Branco」の名前を用いています。



この本日行われた卒業式でのジルマ大統領の祝辞に関する報道で気になったのが、ブラジル外交の「人権」に関する部分。


”A defesa dos direitos humanos, desde sempre, e mais ainda agora, está no centro das preocupações de nossa política externa - afirmou a presidente, sem levar em consideração que durante o governo do ex-presidente Luiz Inácio Lula da Silva a tônica do Itamaraty estava no comércio e não na defesa dos direitos humanos. ”

(意訳)
人権の擁護でなく、貿易に主要な話題を置いてきた前ルーラ大統領と外務省には触れず、「人権の擁護は、常に、そして現在もまた我々の対外政策の関心の中心にあった。」とジルマ大統領は述べた。

a presidente Dilma Rousseff voltou a dizer que a questão dos direitos humanos está no centro das preocupações da política externa brasileira. Dilma não citou nem um caso específico, mas o ministro das Relações Exteriores, Antonio Patriota, fez questão de observar que o Brasil apoiou as manifestações populares em favor da liberdade de expressão nos países árabes.

(意訳)
ジルマ大統領は、具体的なケースには触れなかったものの、人権問題がブラジル対外政策の関心の中心である旨、述べた。アントニオ・パトリオッタ外相は、アラブ諸国の表現の自由に対する支持を表明している。


ルーラ政権時代は、人権に関しては先進諸国と異なる立場であったことが多々ありましたが、世界第8位の経済規模を有し、G20の一員としても影響力を有するブラジル・ジルマ政権は、責任のある大国の一員として、人権問題に関して先進諸国を足並みをそろえていくことでしょう。






先週12,13日に、ジルマ伯大統領が中国を訪問し、就任後初の首脳会談が開催されました。


ブラジルにとって、最大の貿易相手及び投資元である中国との首脳会談はやはり注目度が高く、国内のテレビ放送でも大きく取り上げられていました。



今回の首脳会談の成果を、ブラジル側の視点から個人的にコメントしたいと思います。


経済については、ある程度の成果を上げられたとブラジル国内で評価されています。


今回は、計250人以上の企業家を伴って訪中しており、経済的な目的が占める割合が高かったと思われます。

それもそのはず、中国はブラジルにとって、2009年以降は最大の貿易パートナーとなっており、またブラジルへの最大投資国の一つとなっています。


今回の主な成果は、以下の通りでしょうか。


◎ブラジル産豚肉に中国市場が解放されること(輸入がたくさんされるかは現時点ではわかりませんが、何より人口が多いため、ブラジルからの輸出が増加する可能性はあります)。


◎中国がエンブラエル製の航空機を購入(かつ、2002年に開き、閉鎖の危機にあったエンブラエル工場の操業への許可を得た)。



ジルマ大統領も、「満足はしている。我々の関係は質的に向上したと思う。ただ、我々はもっと欲しい。」と語っており、そこそこの成果を得てはいるものの、まだまだ目的に達していない部分があることがある旨、示されています。muito satisfeita. Acho que foi um salto de qualidade em nossas relações, mas queremos mais


ただ、ブラジルの懸案事項であった、貿易の多様化については、「共に努力する」といった表現となっており、豚肉の貿易を抜いては具体的な前進は見られないように思います。


また、共同声明には「中国側は、自国企業がブラジルの高付加価値商品の輸入を増加するよう促していく意向を示した」と宣言されていますが、何ら具体的な進展が見られるかは不明です。

A parte chinesa manifestou disposição de incentivar suas empresas a ampliar a importação de produtos de maior valor agregado do Brasil.



政治事項については、国連安保理の常任理事国の改革がブラジル側の大きな焦点でした。

これに対し、中国は、「中伯両国は、優先事項として安保理に途上国を増やすなど国連の包括的な改革を支持し」、「中国は、ブラジルの途上国内で最も大きい影響力と役割に高い重要性を与え」、「国連におけるより傑出した役割を果たしたいというブラジルの大志を支持する」といった声明を出している。

a China e o Brasil apoiam uma reforma abrangente da ONU, incluindo o aumento da representação dos países em desenvolvimento no Conselho de Segurança como uma prioridade. A China atribui alta importância à influência e ao papel que o Brasil, como maior país em desenvolvimento do hemisfério ocidental, tem desempenhado nos assuntos regionais e internacionais, e compreende e apóia a aspiração brasileira de vir a desempenhar papel mais proeminente nas Nações Unidas.

すなわち、安保理改革に関して大きな反対はしていないものの、その候補者は「途上国」であり、日本やドイツなどの参加に対しては依然として肯定的でなく、ブラジルに対してもまた直接支持してはいない曖昧な表現にすぎない。

人権問題についても、「両国が人権に関する2国間の会談を強化し、経験と良い実践との交換を促進する」という表現となっており、ブラジルは貿易関係の強化を重視するあまり中国の人権状況について何ら懸念を示さなかった模様だ。

ブラジルが昨年指摘した「通貨戦争」については、言及さえしていない。

(日本以上にブラジルは中国の元安にダメージを受けており、事態は深刻なはずなのですが。)

まぁ、二国間の友好的な会談であえて重要な他国を非難する利点はありませんし、上の問題については多国間の場で控え気味に批判し、とりあえずは今回の首脳会談を活用して貿易関係・構造の改善に徹しようという現実的な戦略かと思われます。


以上、個人的に2011年4月の中伯首脳会談を分析してみました。


日本との会談はいつ頃になるのでしょうかねぇ。。とりあえず災害・放射能問題が落ち着かない限り会談は実現しないでしょう。


今12,13日、ブラジルのジルマ・ホウセフ大統領は就任後、初めて中国を訪問する。


今や中国はブラジルにとって、最大の貿易相手国及び重要なパートナーである。


中国では、胡錦濤国家主席と会談を行い、2国間貿易や投資、科学技術協力など中伯戦略パートナーシップの深化について話し合われる模様。


中国は、2009年の金融危機でアメリカのブラジル産品の輸出が減少して以来、ブラジル産品の最大輸出国となっており、ジルマ政権でも最重要パートナーの一つである。

(2010年の両国間の貿易総額は、前年比52.7%増の560億ドルとなっており、ブラジル側の貿易黒字となっている。)


またブラジルへの直接投資においても、中国は最大の投資国となっている(うち85%がエネルギー、鉄鉱資源、鉄鉱石の開発事業に向けられている)。


前ルーラ大統領が就任した2000年代初頭頃までは、日本がアジアにおけるブラジルの最大パートナーであったが、現在では韓国にさえも抜かれそうな勢いであり、日本のプレゼンスは大きく低下している。

今回、中国をアジア初の訪問相手国と選択している(日本への訪問は未定)。


今回の訪問では、エネルギー・インフラ・食品・テクノロジーの分野など約300人の企業家を引き連れていくこととなっており、中伯企業セミナーが開催される予定。


ジルマ大統領は、今回の訪中では、「相互性」を求めるとのこと。


逆にいえば、現状の貿易構造をブラジル側は「非相互的」であると考えている。


すなわち、ブラジル側の輸出品の約95%が鉄鉱石や大豆などの一次産品(そのため、中国からブラジルへの投資の大部分が資源開発部門に向けられている)。

とりわけ、鉄鉱石・大豆・石油の3品が輸出の80%を占めている。


他方、中国からブラジルへの輸出品の大部分が工業製品。


これらの製品は、人民元の安値の維持に加え、レアル高によって、ブラジルの国内産業を破壊しており、この「オランダ病」はブラジル対外貿易の懸念事項となっている。


ジルマ大統領は今回、中国に豚肉・果物の輸入を働きかけるなど、対中輸出品目の拡大を図っていく予定である。



-----


中伯貿易関係では、明らかにブラジルの分が悪い。


一次産品は値段の上下の変化が大きく不安定。

ブラジルの工業力よりも中国のそれのほうがずっと高いし、近くに日韓もあるから、わざわざブラジルから工業品を輸入する必要もないし。

また果物や肉なんて近隣の東南アジア諸国から安価でも購入できるし。


ブラジルがこれからどうしようと考えているのかは知りませんが、対中国への工業品輸出は諦めて、一次産品のみを輸出し(幸いブラジルは広大な領土と地下の天然資源に恵まれているので)、工業品はより技術の劣っている南米やアフリカ諸国に輸出していくのが、オランダ病から逃れるための一番方法なのではないでしょうか。


-----

【参考】

BBC

http://www.bbc.co.uk/portuguese/noticias/2011/04/110410_dilma_china_domingo_ss.shtml


MRE

http://www.itamaraty.gov.br/sala-de-imprensa/notas-a-imprensa/visita-de-estado-da-presidenta-da-republica-dilma-rousseff-a-republica-popular-da-china-2013-pequim-12-e-13-de-abril-de-2011



(了)