Hくんの事
三島由紀夫の『金閣寺』を読んでいる。
昨年、NHKの100分de名著に取り上げられた時に新潮文庫のそれが増刷され、本屋に平積みになっていたから購入し、そのまま放置してあった。
で、最近、ナイトキャップとして読み始めた。
その9章で、主人公が金閣を焼く前に、遊郭に出かけるシーンがある。
その文章を読みながら、大学時代の友人Hくんの事を思い出した。
Hくんは、28年ほど前に白血病になり闘病の後、20年ほど前に亡くなった。
背が高く体格も良く性格も明るく、そうした死の影とはおおよそ縁遠い男だった。
ルックスも良かったので、黙っていれば、女性にもモテた。
黙っていれば、と言うのがミソで、彼は非常にミーハー的にアニメが好きだった。
飯島真理や、おニャン子クラブや、南野陽子とかが、大好きだった。
まだアニメ文化が社会的認知を得ていない当時、Hくんは困った事にその嗜好を隠さなかった。
彼なりのサービス精神で、会話の中でアニメキャラのセリフの真似を妙に上手にしたり、カラオケでアニメの歌を朗々と歌った。
オタクだった僕ら男友達はそれで良かったのだが…
女性とつきあったり、恋人になったりするのはそれではダメだ。
そのルックスに似合わず、Hくんは魔法使いになれる年齢になっても彼女いない歴=年齢で童貞だった。
彼が童貞を捨てようとしたのは、白血病の診断を受けた日の事だ。
出張中に鼻血が止まらなくなった彼は、そのまま出張を切り上げ診察を受けた。
彼なりにやはり衝撃だった。
午前中に診断を知らされ、それから誰にも言えずに町中を彷徨った。
死の不安に取りつかれた彼は思った。
「このまま童貞では死にきれない…」
ロシアの戦争
2/24、ロシアがウクライナ全土に対し大規模なミサイル攻撃を行い、3方向から侵攻した。
昨年末よりキナ臭い感じは漂ってきていた。
2/21にはロシアのプーチン大統領が東ウクライナの親ロシア派の人々を守るための軍事行動にサインした。と報道されていたので、東ウクライナに対して侵攻するだろうとは思っていたが、まさかウクライナ全土に侵攻するとは思っていなかった。
軍隊の規模としては圧倒的にロシアが優勢だ。
あっという間、5日程度でロシア軍がウクライナ全土を占領してしまい、戦闘は終わるだろうと、最初は思っていた。
プーチンの判断の早さと行動力に、全世界が一杯食わされたと感じた。
北京オリンピック開会式出席のためにプーチンが訪中した時に、習近平と話がついていたのだろう。
困った事になったなぁ…
これをお手本にして、同じような事を中国が台湾に対して実施したら世界は泥沼化するなぁ…
などと考えていた。
しかし、その予測は外れた。
今現在、ロシア軍はウクライナを攻めあぐね、掌握できずにいる。
世間が考えているよりもロシア軍は士気が低く、ポンコツだった。
国内世論を考慮して、ウクライナ市民を巻き込む可能性がある戦闘は避ける様に、ロシア軍内で通達が出ていたのかも知れない。
それにしても、あまりの軍の不甲斐なさにプーチン自身歯噛みしているだろう。
時間が経つうちに、西側諸国に次々と経済制裁を科せられ、ウクライナへは武器が供与され、自国では反戦デモが行われ…
電撃的にウクライナの政治体制を崩壊させ自国の影響下に引き込むという、当初に目論んでいたであろう目標の達成は、現時点で既に不可能となった。
ロシアに残ったのは、今後10年以上続くであろう自国の衰退と戦略的撤退戦を如何に痛みの少ないモノにするか?という課題。
これも今回の侵攻の失敗による、国際的な信用の失墜と、唯一誇れる国力として残っていた軍事力のめっきが剥がれてしまった事で、殆ど無理ゲーになってしまった…
で逆に、西側諸国は困惑している。
変に拗れた承認欲求と、残った大量の核兵器を抱え、そして無能をさらけ出したロシアの権威主義政権をどうしたら良いのだろう…と。
誰にとっても、今回のこの状況は予測も準備もできていなかった。
それくらい、今回の軍事行動は大失敗だった。
今回の戦争を契機として、国連や各軍事同盟、経済協力圏とかの国際的な政治・経済のシステムや、パワーバランスは大きく組み換えられるだろう。
綺麗事では終わるまい。
難しいのは中国。
■マンガ 坂口尚『石の花』 KADOKAWA (2022/1/20)
用時があって家の近くのターミナル駅に出かけた時に、家人に『ちはやふる』の新刊を買ってくるよう頼まれた。
家の近くのターミナル駅にある本屋といっても、大した本屋ではないのだが、新刊のマンガはそれなりに売れるのだろう、きちんとおいてある。
で、その『ちはやふる』の横に置いてあったのが、この坂口尚の『石の花』。
僕が学生時代に描かれたマンガで、ほぼ40年ぶりくらいの復刊。