本中毒、映画中毒、仕事中毒、そして...恋愛中毒 -8ページ目

■大木毅 『「太平洋の巨鷲」山本五十六 用兵思想から見た真価」角川新書 2021/7/10

 

 

たぶん軍事に興味がある人で山本五十六を知らない人はいないだろう。

真珠湾攻撃を構想・計画し、そして実施した連合艦隊司令長官だ。

 

著者は大木毅

『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(岩波新書)で2020年の新書大賞を受賞した人。

 

既に、彼に関してはいろいろな本が書かれている。

今更。著者が本書を執筆したのは、評伝ではなく、戦略・作戦・戦術の「戦争の諸階層」に則して、軍人として山本五十六をきちんと評価するのが目的。

大木は『独ソ戦』同様に、残された戦前から戦中の山本に関する膨大な資料を整理・取捨選択し、彼が何をどう考えていたのか、そしてどう行動したのかを丁寧に解読していく。

 

読んでいて哀しいのは、1940年以降、山本自身が外交政治に口を出せない連合艦隊司令長官の立場で、自らは必死に回避しようとしていた戦争の指揮を、勝てない知りながら、取らないければならなかったのが、あらためてよくわかるところ…

そして外交政治を担っていた者たちの、どうしようもない見識の無さ…

 

当時の事情を良く知らない若輩者ながら思う…

やはり日本の組織は、全体の雰囲気や空気にドライブされて、上が決定した事には、惰性でただ諾諾と従ってしまい、破滅するとわかっていてもそれを覆す事が出来ない不健全な風土を持つ。

そして山本もそういう風土からは自由ではない。

 

そうした風土は80年経った今でも、全く変わっていない。

 

企業の意思決定は、欧米や中国のそれに比べると圧倒的に遅い。

一度動き始めた各事業は、それが合理性を失っても方針転換出来ない…

昨今の世界経済における日本の地位の低下は、そうした日本の文化的な風土によっている。

人を殺す夢

昨日、パトリシア・ハイスミスの小説はハラハラして心臓に悪いと書いた。

実は何年かに一度、そういう夢を見る…

状況はいつも大体一緒。

 

学生時代に住んでいたアパートが老朽化し、取り壊されることとなった。

そのアパートの床下には…

実は僕が殺した死体が隠してある。

事が発覚すると不味いので、その死体を回収するために無人となったアパートに、僕は出かけていく。

 

隠してあるのが誰の死体なのかはわからないし、どういう経緯で僕が殺人をしたのかもわからない。

更に、僕がアパートを出て既に10年以上経っているのに、どうして床下の死体が発覚していないのかも不思議だ。

そもそも床下に死体を隠したまま、どうして引っ越しをする気になったのかも理解できない。

 
アパートの場所はいつも、東京のどこか。

四谷だったり、大泉だったり…

昭和の時代の台所トイレ付風呂無しの六畳一間とか八畳一間のアパートだ。

僕が通ったのが東京の大学だったので、アパートが東京のどこかなのは良いのだが、およそ実際に住んでいた事のない場所ばかりが舞台になる。

そのくせ、駅からアパートまで商店街の入り口の弁当屋で弁当を買って、商店街を抜けて、路地を曲がって…という変にリアルな道順が出てくるのが不思議だ。

いや、あの時代、学生が住んでいるアパートの近所なんて、どこでも同じ様なモノだったのかも知れない。

 

で、季節は夏だ。

もう取り壊される直前の誰もいないアパートに到着し部屋に入った時に、強烈な西日が射している。

弁当を食べながら暗くなるのを待つ。

陽が落ちても都会だから周りは騒がしい。が、そんな事に構っていられない。

今晩中に死体を片付けないと、明日にはアパートの取り壊し工事が始まり、死体が露見する。

 

さっさと部屋の畳をめくり、床板をはがす。

が、そこには妙に湿った固い粘土質の土があるばかりで、死体はない。

 

あっ!と思う。

 

夢で良かった…

と、心臓をドキドキさせながら、僕は布団の中で現実を再確認する。

 

もしかしたら、殺されて死体になっているのは若き日の僕自身の希望や野心なのかも知れない…

■書評 パトリシア・ハイスミス『水の墓碑銘』 河出文庫2022/3/20

 

 

『太陽がいっぱい』で有名なパトリシア・ハイスミスの小説。

僕はミステリやサスペンスに対する嗜好は無いのだが、パトリシア・ハイスミスの端的な文章は好きで、時々読む。

 

彼女の小説は犯罪者視点で描かれているものばかりで、いつ犯罪が暴かれてしまうのかとヒヤヒヤする。
非常に心臓に悪い。

この作品も、主人公が一種のサイコパスで、刹那的に無計画に殺人事件を起こしてしまい、ものすごくヒヤヒヤさせられる…

もう少し計画すりゃ良いのにと思うのだが、たぶんそういうのは面白くないだろうとも思う。

 

とにかく心臓に悪い。

しばらくハイスミスを読むのは止めておこう。と思う。
 
が、何かの拍子に、僕はまた彼女の小説を買ってしまうのだろう。