本中毒、映画中毒、仕事中毒、そして...恋愛中毒 -86ページ目

■書評 多和田葉子『献灯使』 講談社2014/10/31

献灯使/多和田 葉子
¥1,728
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2011/3/11の東日本大震災の後を描いた仮想小説。

その後2013年に東海(?)大地震が発生し、日本政府は崩壊、民営化。
鎖国政策を行い、孤立化する。


その中で老人達は不死になり、子供達の体調は異常を来す。
そうして、いつしか老人達が子供達の介護をしながら暮らすような異常な日常が始まる。
そんな中で暮らす日常を描く表題作。


3/11の震災が日本人の意識に与えた影響は、その後の文学シーンに占める割合の大きさから想像が付くのだが…
僕自身はそれ程ピンと来ていない。
勤め先の地方工場の復興支援で福島に10日ほど出かけていったのだけど、社会は大地震くらいではびくともしないのだなと思った覚えがある。
それなのにこういう小説を読むと奇妙な気持ちになる。

大切な人を失った人、未だに避難先での生活を強いられている方々もいるだろう。
個人の生活には大きな影響があったのは間違いない。

しかし、こういう生態系が破壊されてしまった様な小説には違和感を感じるのだ。

■映画 『シコふんじゃった。』1992日本

シコふんじゃった。 [DVD]/本木雅弘,清水美砂,竹中直人
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周防監督の一般映画第2作。
(その前にピンク映画を撮っていた時代があるらしい)

劇場公開以来、久しぶりに視聴。
バブル時代の雰囲気を感じさせる秀作だと思う。

マドンナ役の清水美砂がとても綺麗。

もう23年も前の映画になってしまったのだなぁ…と感じながらも、
この時代から、案外、世の中変わってないと実感。
70~80年代に作り上げられた日本の社会は、その後IT以外は停滞しているのではなかろうか…
それが良いのか悪いのかは判らないけれど…



シコふんじゃった。 4K Scanning Blu-ray/本木雅弘,清水美砂,竹中直人
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■書評 夏目漱石『三四郎』 新潮文庫1948/10/27

三四郎 (新潮文庫)/夏目 漱石
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現在、夏目漱石の『三四郎』が朝日新聞で連載中だ。
もちろん、僕は今更新聞の連載なぞ読みはしない。
夏目漱石なら、電子書籍だろう。
というわけで年末に買ったタブレットPCに青空文庫のリーダーを入れ、そこに『三四郎』をダウンロードして出張に出かける。


『三四郎』といえば、僕が中学高校の頃の愛読書だった。
愛読書だった割に、内容をよく覚えていないのが困ったものなのだが…

元々、NHKの銀河ドラマシリーズで森進一が三四郎役でドラマが放送されていたのがきっかけだった。
その第一回放送で、有名な名古屋の旅館でのエピソード、三四郎が女に「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」と言われるのを観て、これは面白そうだ。と、TVを観ずに本屋で新潮文庫を手に取った。
ものを知らない中学生のことゆえ、最初は『姿三四郎』と本作を混同していた。
いつになったら『三四郎』が柔道をするのだろうと思って読んでいた。
恥ずかしい限りだ。


この本をきっかけに、青春を東京で過ごすという憧れを持った。
僕が東京の大学を目指したのは90%くらいはこの本の影響だと言って良い。
きっと、僕の里見美彌子がどこかにいて、きっとハッピーエンドが待っているのだろうなどと勝手に思っていた。


さて、20年ぶりくらいに読み返してみると、青春小説として、この小説の持つ普遍的な構成に舌を巻く。
そして、漱石の女性の描写の巧みさにも改めて感心する。
詳しく書きすぎず、上手にこちらの想像をかき立てる様な、まるで恋愛上手な女性が男性の気を引く様な描写。
三四郎が美彌子に惹かれる様に、僕らは漱石のその文章に惹かれていく。


おそらく美彌子も三四郎に惹かれていたのだろう。
『ストレイシープ』と三四郎に告げる彼女の言動はすごく思わせぶりだし、そういう時どうするべきなのかはオヤジになった今ならよくわかる。
だけど三四郎にはわからない。
そのわからなさ、そしてその結果として美彌子を失うのが、いにも青春だと思う。


なんだか電子書籍じゃなくて、きちんと紙の本で読みなおさないと文豪・夏目漱石に申し訳なくなってしまった。