本中毒、映画中毒、仕事中毒、そして...恋愛中毒 -50ページ目

■書評 オルハン・パムク『僕の違和感』早川書房 2016/3/24

 

トルコのノーベル賞作家オルハン・パムクの新刊。

上下2巻。

農村部から都会のイスタンブールに出てきた主人公メヴルトの半生を追うことで、トルコのこの40年の変化・近代化を描く。

トルコ版『三丁目の夕焼け』とまとめてしまうと失礼なのだろうか…

 

読み終わったときに、ちょっとした寂寥感と幸福感。

そして本好きならでは満腹感を得られる傑作。

 

 

いやいや、そんな満腹感で満足せずに、そのままパムクの『黒い本』を読むとなお良しかも…

 

 

黒い本黒い本
3,888円
Amazon

 

<追記>

7月に発生した軍のクーデター失敗は、トルコをどう変えていくのだろう…

■書評 ジェイムズ・ディッキー『救い出される』 新潮文庫2016/9/1

 

新潮文庫のシリーズ村上柴田翻訳堂で復刊されていた1冊。
淡々とした簡潔な文体が心地よい。
いかにも米国のハードボイルドの流れを組む一冊。

作者は詩人としての活動の方が有名な人らしく、小説は寡作でこの一作以外はあまり有名では無いらしい。
この小説の文体は、詩人と言われたら、なるほどと思わせる。
一方で、もったいないなとも思う。
もっと読んでみたい。
いや、もしかしたらその詩がもっと素晴らしいのかも知れないけれど…

欅坂46の制服問題

アイドルグループ欅坂46のコスチュームデザインがナチスの軍服デザインに似ているとして、大問題になっている。

ユダヤ人の人権団体やイスラエル大使館からクレームが入り、総合プロデューサーの秋元康氏やソニーミュージックが謝罪を行ったらしい。

 

僕はアイドルグループには興味はないし、詳しくもない。

アイドルグループの制服の意匠がナチスの軍服に似ているぐらいで問題になるというのはどういうことなのか?

そう、「似ているくらい」で何が問題なのか?

ちょっと調べてみた。

 

 

そもそも、第二次大戦までの正装軍服は、どこの国のものでもかっこ良い。

そうなるように国家が威信をかけてデザインしているのだから当たり前だ。

軍隊の制服が、かっこ良くなかったら、国民の従軍に対するモチベーションがダダ下がりだろう。

だから正装軍服は必然的にかっこよくなる。

 

その中でもドイツの軍服は、特にかっこいい。

ドイツ第三帝国は、メディアを通じて流れる情報を意識的にコントロールする事によって、国民の支持を集め世論を操作する事に非常に意識的に取り組んだ政治体だ。

軍服デザインにもとても気を使った。

だからナチスドイツの制服はかっこ良い。

良くも悪くも、それが僕の認識だ。

 

 

一方、欅坂46は制服を着ることを特色にしているアイドルグループの様だ。

コスチュームではない、制服。(違っていたらごめんなさい)

売り出す楽曲毎に制服のデザインを変えている。

セーラー服風、軍服風、ボーイスカウト風…

 

その中で、今回、問題になったのは、「PERFECT HALLOWEEN 2016」用の制服

確かにナチスドイツのそれによく似ている。

というより、それを参考にしたのは間違いない。

でもデザインとしては成功している。

 

これは難しい問題だなと思った。

制服のデザインを追求した時、ナチスドイツのそれを避けて通る事はできない。

今回はパクリに近い形でそれを導入したから、クレームがついた。

 

丸パクリでデザインを導入した側もショービジネスとしては無神経な様な気がするし、

クレームをつけた側も過剰反応しすぎの様な気がする。

ネット上での「被害者ビジネス」という反論もわからないではない…

 

僕にはどちらが正しいのかが良くわからない。

たぶん、正解はない。

 

デザインを求める場合、どのレベルまでのパクリだったら許されるのだろう…

これは芸術における表現の自由と、その社会における倫理観の問題だ。


宗教・歴史etcの文化的背景が異なる社会は、互いにタブーが異なる。

それが相手に対して不快感や不信感を与える事を認識しておかないといけない。

だからと言って怯む事もない。

相手が不愉快に感じたら、「ごめんなさい」というだけだ。

 

日本人からしたら、多かれ少なかれ世界の殆どの国の宗教的な戒律は噴飯ものである事が多い。

例えば…イスラム教の戒律は、今日の日本の社会規範とは相入れない。

無茶苦茶なセクハラだろう。

しかし、イスラムの人たちは、それにはきちんと意味がある事だと考えている。

 

 

そうした中で僕が望むのは、

多様性を失わないこと、他者に対する尊敬と思いやりを忘れないこと。

そして、日本の社会が、件の制服をデザインしたデザイナーをマイナス評価しないこと。

わざわざ、ナチスドイツの亡霊のせいで、新たな不幸を生み出す必要はないと思うのだ。