本中毒、映画中毒、仕事中毒、そして...恋愛中毒 -35ページ目

■書評 塩野七生『ギリシャ人の物語Ⅲ 新しき力』 新潮社2017/12/15

 


塩野七生の歴史物。最新刊。
本巻で『ギリシャ人の物語』も完結。
塩野七生はこれで歴史物の筆を置くと言う。
彼女はナポレオン以前のヨーロッパの歴史を50年近く書き続けてきたのだから、年齢的にも、内容的にも一つの区切りがついたと考えられるだろう。

今から20年ほど前、まだ『ローマ人の物語』が完結する前に、ある人に「塩野七生さんは生きて『ローマ人の物語』を完結できないのではないか?」と言われた事がある。
そうかもしれない、とその時は僕も思った。
その後、彼女は『ローマ無き後の地中海世界』『十字軍物語』『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』そして本作『ギリシャ人の物語』を完結させた。
ご苦労様。

閑話休題。
本巻では都市国家の没落と、フィリッポスによるマケドニア王国の興隆とギリシャの統一、そしてフィリッポスの息子アレキサンダー大王の東征による空前の大帝国の形成が語られる。

読んでいると2つの事を考えさせられる。

一つは環境の変化への対応とその速度、施政者の見識と意志。
スパルタ式という強固な政治体制を作り上げ軍事強国としてアテネとの争いに勝利したのに、その強固な体制ゆえに変化出来ず衰退していくスパルタ。
強大な帝国でありながら、ダリウス3世という見識のない凡庸な王を冠していたためにアレキサンダーに滅ぼされてしまうペルシャ。
当時としては後進国でありながら、フィリッポスとアレキサンダーの見識と意志の強さ、そしてその決定と実施の早さによって、ギリシャから中央アジア、西インドまでに覇を唱えたマケドニア。

もう一つは民主制という政治の仕組みが本当に正しいのだろうか?という疑問。
民主主義の都市国家アテネの衰退と、王国マケドニアの発展。
僕らは多数決による民主主義は理想的な政治体制だと誤解しがちだが、一歩間違えると衆愚政治になってしまい、互いの足を引っ張り合い何の判断決定も実施もできなくなる。
対して、意志決定が早い独裁的な王国は、その決定が正しく、きちんと実施できればあっと言う間に発展する。
多数決による民主主義は、政策の速度を落として、専制による恐怖政治を回避する次善の策でしかない。

そう考えながら、現在の日本の政治状況を省みたりする…

■アニメ 『ダーリン・イン・ザ・フランキス』 2018日本

 

大体、僕はTVで毎週放映されるアニメーションを年間4作品くらい観る。

週に1作品くらいが限界。

それ以上は時間を取れない。

観たい作品が無いときには、特に観ない。

それ以外のドキュメンタリーとか、映画とか…

観なくてはならない映像コンテンツはアニメ以外にもいっぱいある。

 

今期は、このアニメを観ることに決めた。

面白そうだと感じる反面、思い切り空振りするのではないかと思う部分もある。

 

第一話を観た感想は、いまどきの『エヴァンゲリオン』という感じだ。

しかし、この作品の登場人物たちはエヴァほど切実ではないし、僕らの日常生活と繋がっているわけでもない。

この作品にはおそらく家庭とか、親子とかのドラマは出てこない。

一方で、1995年のエヴァンゲリオンのそうしたウェットな部分が出てこない分、この作品は2017年の青少年のリアルなのかも知れない。と、観ながら思った。

 

 

余談だが…

アニメで「ダーリン」などという単語を聞くのは『うる星やつら』のラムちゃん以来だ。

ナイスバディの角の生えた鬼娘。

作り手は、おそらくそういう部分を意識している…

 

■書評 藤原辰史『トラクターの世界史人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち』中公新書2017/9/25

 

僕が子供の頃、1960年代は、トラクターを持っている農家は少なかったと思う。

歩行式トラクターでも珍しかった。

近所の豪農だったKくんの家には馬がいた。

家から15分くらい歩いて、もう少し田舎の方に行くと集落の家々の間を縫うようにくねった舗装されていない道と用水路が並走していた。

その道を牛が糞を落としながら行き来していて、不注意にもそれを踏んだりしたら「えんがちょ」扱いされて、惨めな一日を過ごす事になった…

 

本書は19世紀末から20世紀末に至るまで、トラクターが如何に開発され、世界に拡がり、農業と世界を変えたのかを記述した本。

 

確かに20世紀の機械化がもたらした影響って大きいのだろうなぁ…と、冒頭の様な思い出を頭に描く。

 

そして、これからの100年の農業を想う。

これから農業は家内制産業から、より効率的に運営される産業になる。

IOTで、環境や土壌、作物の状態を測り、そのデータをコンピューターで解析しながら、GPSやITを使ってロボット化されたトラクターが様々なエンドエフェクタを交換しながら、耕作にいそしむ。

そんな時代がすぐにやってくるだろう。

今が大きな変わり目。