本中毒、映画中毒、仕事中毒、そして...恋愛中毒 -13ページ目

■書評 加藤典洋『9条入門』創元社 2019/4/20

 

 

この10年くらい中国の軍事力増強と、それを後ろ盾とした、海洋進出、南シナ海や東シナ海での勝手な領土/領海の主張、国内他民族への民族浄化・虐殺などの暴力行為、国内自治への暴力的な弾圧、そして台湾をはじめとする周辺国家への恫喝的外交を観ていると、我々は国際紛争の解決手段として軍事力を放棄した日本国憲法を不磨の大典として頂いていて大丈夫なのだろうか…?と感じる。

 

問題になるのは、戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認を謳う第9条。

第9条【戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認】
    ①、日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
    ②.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

しかし実際には、僕らの国は自衛隊という名前で、軍事力のランキングで世界第5位の実質的な軍隊を保有している。

ちなみにランキングは Global Firepower2021年ランキングによると

  1. 米国
  2. ロシア
  3. 中国
  4. インド
  5. 日本
  6. 韓国
  7. フランス
  8. 英国
  9. ブラジル
  10. パキスタン

となっていて、いつの間にかイスラエルやドイツのランキングが下がって、極東アジアは軍事的には非常にキナ臭い状態になっている。

僕らジジィは、今まで生きてきた記憶を基に、ヤバいのは冷戦期の欧州とか20世紀末期の中東で、それは遠くの国の事だと認識している。

だが、実際は自分たちの庭先が、非常に荒み、危ない状態になりつつある事を認識しないといけない。

 

さて、憲法 第9条の条文を文面通りに受け取ると自衛隊は違憲なのだが、我々の社会は解釈合憲という非常に曲芸的な技術を使って、自衛隊を存続させてきた。

放棄した戦争は、侵略戦争だけで、自衛の為の交戦権は放棄していない。のだと。

 
苦しい詭弁だ。
第2項の「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」という条文に照らし合わせる時、侵略戦争と自衛戦争の為の戦力はどこで線引きをするのだろう…
 
そんな事を考えながら、加藤典洋の本書を読む。
著者の意図は非常にシンプルだ。
 
憲法第9条の議論をする時、知らぬ間に僕らは原理主義的になって、感情的になる。
「お前は戦争をしたいのか?平和を愛さないのか?」
「いつまで占領軍の押し付け憲法を頂くのか?」
 
これらの問題のそもそもの発端は、僕らが憲法第9条に、きちんと向き合って来なかったからではないか?
加藤はそう主張し、敗戦後の日本国憲法の成立過程を丁寧に解きほぐして行く。

顕れてくるのは、国際連合の理想、米国大統領になりたかったマッカーサーと米国本国の暗闘、天皇を守りたい日本政府の面々、そして新たに始まった東西冷戦…

 
いやはや何とも。
日本国憲法はその成立から、こんな曲芸的な駆け引きや葛藤があり、それ故に微妙な均衡の基に動けなくなって、今日まで来てしまったのかと、気づかされる。
 
この本は著者の生前に発行された最後の著作になってしまったが、実はこの本にはこの春に出版された続きがある。
実はそちらを先に購入したのだが、その本の冒頭でこちらの本への言及があり、読むのを中断。
この本を読んでいた次第。
近日中にこちらも読む予定。

■マンガ 萩尾望都『一度きりの大泉の話』 河出書房新社2021/4/21

 

 

少女漫画が希求するモノと僕が求めるモノとが違っていたから、僕は少女漫画はあまり読んで来なかった。

それでも萩尾望都と竹宮恵子は知っている。

萩尾望都は『百億の昼と千億の夜』 『スターレッド』

竹宮恵子は『地球へ』

それぞれの業績について詳しくはないのだが、少女漫画や女性向マンガという枠を超え、マンガ史に残る多くの作品を描いた作家達だ。

 

その昔、1970~1972年にまだ売り出し中の彼女たちが大泉で同居していた。と言う事は、知らなかった。

その後揉め事があって、袂を分けたと言うのも初めて知った。

あまり、少女漫画に思い入れがないので、
「あぁ、そうなんだ。」
くらいの印象なのだが…
 
それでもわかる。
少女達と言うのは、そのマンガに出てくる少年たちを地で行く様に、繊細なくせに、互いを傷つけあうのだ。
 

■書評 石井淳蔵『ビジネス・インサイト』 岩波新書 2009/4/21

 

ある本に触発され、石井淳蔵『ビジネス・インサイト』を読みたくなった。

ネット書店を調べてみると、いつの間にか絶版状態になっていて、古書か電子書籍しか手に入らない。

電子書籍は好きじゃないので古書を手配する。

 

本書は、表面的な実証主義に基づく経営では、事業が行き詰まる。という事実に着目。

では経営者は何を拠り所に事業を進めたら良いのか?

という問いを立て、新しいビジネスモデルが生まれてくる時の知の働きを「ビジネス・インサイト」と名付け、ポランニーの「知の暗黙の次元」と結び付け、それを掘り下げていく…

 

実は、日本の殆どの企業体は「実証主義的な経営/人事」さえ行えていない。

企業の中に身を置いている僕自身がそれを感じている。

そうして必要な見識も判断力もなく経営者の立場に身を置いた社員達は、現在上手く行っている事業をこね回す事で資産と時間を空費し自らの無策を埋めている。

5~10年後に確実に訪れる事業の熱的死を認識しながら、もう自分の残り会社人生がそれよりも短く勝ち逃げできる事も彼らは確信している。

顧客の事、顧客の事を考え、そこに棲みつく事で発動する「ビジネス・インサイト」から、どれだけ遠い場所に多くの日本企業は立っているのだろう…

 

もっと困ったなと思うことがある。

この本はかなり良い本だ。

なのに、発行から12年くらいで、増刷もされず絶版になっている。

日本は大丈夫なのだろうか?

(もしかしたら、今は電子書籍化されている事の方が大事なのかも知れないのだが…)