■映画 『少女は自転車に乗って』2012サウジアラビア
多くの日本人にとって、中近東のイスラム教の国々の風習・文化にはあまりなじみがない。
政治や経済では、イスラエルと周辺諸国との紛争や石油輸入を通じたある程度の認識はあるけれど、基本的には良く知らない国だ。
トルコやエジプトに行ってみたことはあるが、観光で訪れた為、史跡や観光名所、そして商業施設を訪れただけであって、彼の国の日常生活を良く知らない。
観るまでは、本作は少女が自転車を手に入れる為にいろいろと奮戦する愉快な児童映画なのだろうと考えていた。
しかし、実際の所は、イスラム世界におけるジェンダーの問題を扱った極めて政治的な映画だった。
自転車を手に入れて、幼なじみの男の子と競争をしたい主人公の少女。
しかし、イスラム圏では女の子が自転車に乗るなんてとんでもない。
そう言って母親は自転車を買ってくれない。
お金を貯めようといろいろと内職に勢を出すが、先生には怒られる、お金は貯まらない。
そんな時、学校でコーランの詠唱大会が開催される。
優勝したら、その賞金で自転車が買える。
ワジダは大会に出て、賞金を得ようと宗教クラブに入って、練習を始める…
この映画の秀逸な所は、僕の様なイスラム圏における女性の立ち位置が判らない視聴者に、子供であるワジダの視点を通して、それを追体験させる事。
そのために主人公を直接ジェンダーの問題に直面している女性自身ではなく、少しオフセットされた立場にいる女の子供に設定している。
全ての人が共感し、疑似体験の中で自分を投影する対象として、子供であり、同時に女性の入り口にいる少女という設定が非常に大事なのだ。
ワジダ役の子役があまり美少女ではないのもそのためだろう。
もし、美少女だったら、憧れの対象としての他者として客観視してしまい、僕らが自分を投影する対象としての寄り代では無くなってしまう。
この映画が作られたサウジアラビアでは、映画館と言うものが禁止されているらしい。
そんな国で、なぜイスラム圏におけるジェンダーの問題を扱った映画が作られたのかを考えると、その政治臭さがもの凄く興味深い。
追記
この映画を観て、オルハン・パムク著『無垢の博物館』という小説の意味もやっと判った様な気がする。
いや、トルコはイスラム圏としては、かなり開けている方なんだけどなぁ…
■書評 佐藤信之『鉄道会社の経営 ローカル線からエキナカまで』 中公新書2012/12/20
- 鉄道会社の経営 - ローカル線からエキナカまで (中公新書)/佐藤 信之

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題名のままの本。
しかし、色々な鉄道会社経営の実態の羅列が多く、鉄道オタクでないと退屈な部分も。
いや、本来、この本はそういう鉄道オタクの為に書かれた本か…
僕の様に、『経営』の部分に反応して、鉄道ならではの、原価と売上げがどうなっているのか…などと一般の経営書みたいな内容を期待して買ってしまったのが間違いか…
いや、鉄道会社の固定資産の減価償却をどうするか、新路線開発時の周辺開発による販売増をどう考えるか…とか、理論的な面にもの凄く興味あるのだが、この本ではそこら辺は詳しくは語られない。
とはいえ、この本には社会資本としての鉄道経営、過疎地域の社会問題としての鉄道経営という視点がきちんとあって、僕が読みたかった経営の理論的な面は、既知のモノとして扱われている。
この本を読みながら、鉄道経営が持つ社会資本としての存在の大きさに、つい30年以上前に読んだ『ワイルド7 運命の七星』を思いだすのは、50過ぎのオヤジがまだまだ子供な証なのだろうか…
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■映画 『ゼロ・グラビティ』 2013米国
衛星軌道上で、デブリによる事故に遭って、宇宙空間を漂流する映画。
これは是非ともIMax3Dで観ないといけないと、わざわざ家から車で40分ほどの距離にあるIMaxシアターにお出かけ。
全国的に考えると、家から車で40分の所にIMaxシアターがあるというのは、凄く恵まれた映画環境と言うべきか…
良く出来た映像体験だったと思う。
軌道上から見た地球の俯瞰から始まって、カメラは主演のサンドラ・ブロックに寄っていって…
凄い没入感。
いつの間にか自分がサンドラ・ブロック
デブリの襲来を受けてシャトルのアームと一緒に宇宙空間をスピンする所から手に力が入りっぱなし。
国際宇宙ステーションISSに摑まろうとジタバタする辺りでは、脚を思い切り踏ん張っているのに気がつく。
(あぁ、だから現代の宇宙船の表面はあんな形状で、取っ手が沢山ついているのか…衛星のプリント基板をコネクタから抜くにはあんな風なボルトを使うんだ…などと感心する事、しきり。)
この映画の秀逸な所は、徹頭徹尾、衛星軌道上の宇宙空間だけのシーン(=サンドラ・ブロックの目線のシーン)だけで構成された所。
下手に、『アポロ13』の様に地上側のシーンや救助しよう頑張るシーンを入れたりしない。
それでいて、ただの体験ムービーにはならない。
「生存する」という事の哲学的な意味を考えさせ、地球に生きる事の有難さをひしひしと感じさせる。
今年度観た映画で、一番良かった映画。(いや、まだ今年度は3ヶ月あるけれど…)
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