『歌声にのった少年』 | やりすぎ限界映画入門

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ダイナマイト・ボンバー・ギャル @ パスタ功次郎

■「やりすぎ限界映画工房」
■「自称 “本物” のエド・ウッド」


■『歌声にのった少年』
やりすぎ限界映画:☆☆☆☆★★★[95]

2015年/パレスチナ映画/98分
監督:ハニ・アブ・アサド
出演:カイス・アタッラー/ヒバ・アタッラー/アハマド・カセィーム/アブダルカリーム・アブバラカ/タウフィーク・バルホーム/ディーマ・アワウダ/Teya Hussein/アハマド・ロッホ/サーベル・シリーム/ナディーン・ラバキー/アメル・レヘル/ハニ・アブ・アサド/ムハンマド・アッサーフ

2016年 第32回 やりすぎ限界映画祭
2016年 ベスト10 第1位:『歌声にのった少年』
やりすぎ限界パルムドール/やりすぎ限界男優賞/やりすぎ限界女優賞/やりすぎ限界監督賞/やりすぎ限界脚本賞:『歌声にのった少年』


[ネタバレ注意!]※見終わった人が読んで下さい。



やりすぎ限界男優賞:タウフィーク・バルホーム


やりすぎ限界男優賞:カイス・アタッラー


やりすぎ限界男優賞:ムハンマド・アッサーフ


やりすぎ限界男優賞:アメル・レヘル


やりすぎ限界女優賞:ヒバ・アタッラー


やりすぎ限界女優賞:Teya Hussein


やりすぎ限界女優賞:ディーマ・アワウダ


[「イスラエルの攻撃」に見える「真実」]



■「火事だよ!」
 「逃げろ!」
 「イスラエルの攻撃に-
  ガザの人々が
  強く立ち向かえますように
  彼らの無事を祈ります」


1948年の「イスラエル」建国から数多くの紛争を繰り返し、パレスチナとイスラエルは今現在も「戦争」が続いてる。「パレスチナ」の「ガザ地区」から「ヨルダン川西岸地区」ラマラへは検問があり、簡単に行くことはできないらしい。


■『報道ステーション』2019年 5月6日より

「イスラエルの攻撃に- ガザの人々が 強く立ち向かえますように 彼らの無事を祈ります」を、パレスチナの現状を全世界に見せるための、「ハニ・アブ・アサド監督」のユーモアと思って見ていいのだろうか?




「衝撃」殆ど「実話」の2012年、ムハンマド・アッサーフ(タウフィーク・バルホーム)が発電機を使わねばならなかったのは、2006年からのイスラエルの空爆で、発電所さえも破壊されたからだと調べた。日本とは大違いで、電気を普通に使用することさえ難しい逆境に、「震撼」「驚愕」「圧倒」「尊敬」「絶句」するしかなかった。




「イスラエルの攻撃に- ガザの人々が 強く立ち向かえますように 彼らの無事を祈ります」に、背筋が凍りついた。発電機の故障が「イスラエルの攻撃」に見える「真実」に、瞬間で大きい方がパンツについた。「パレスチナ国民」ではない、「日本人の僕には笑えなかった」。日本人である「幸せ」を思い知らされるしかなかった。

[「衝撃」殆ど「実話」]



■「夢物語だよ 本物の楽器で
  バンドを組むの?
  今のガザで? バカみたい」
 「バカじゃない
  強く望めば夢は叶うのよ」
 「テレビで言ってた?」
 「カイロのオペラハウスに
  出よう」


現在「国連パレスチナ難民救済事業機関青年大使」であるアラブ圏のスーパースター歌手、「ムハンマド・アッサーフ」が、ガザ地区を抜け出すこと、歌手になることを夢見たのは、死んだ姉ヌール(ヒバ・アタッラー)の影響だった。



■「スターになって
  世界を変える」


日本でも臓器移植は難しい。腎臓が手に入らない時点でヌールは絶対助からなかった。姉を救えなかったムハンマドは、姉への償いか、「スターになって 世界を変える」と言い続け無念のまま亡くなった姉に代わり、自分が姉の「夢」を叶えようとする。だがガザ地区の人間が「スターになる」のは、日本人が「スターになる」のと「あまりに違いすぎる」。




ガザ地区から「カイロのオペラハウスに 出よう」という感覚が、日本人の僕にはピンとこなかったが、今は日本人が「アメリカでスターになる」とか「韓国でスターになる」と「でかいこと」を言う感覚に近いことと想像できる。エジプトの人気オーディション番組『アラブ・アイドル』に出場した壮絶さを、おしっこを漏らして思い知る。




だがガザ地区からエジプトへの入国は、日本からアメリカへの入国とは訳が違う。「国境」を超えるには検問所を突破しなければならない。「38度線」とはまた違うものの、それでも「もしかしたら二度と帰れない状況」に「震撼」「驚愕」「圧倒」「尊敬」「絶句」だった。



また「ハニ・アブ・アサド監督」は、『歌声にのった少年』でのムハンマドの国境越えのシーンを「実際の方法」ではなく、「あえてフィクション」にしなければ、ムハンマド・アッサーフ本人に問題が起きるかもしれないと話してたのを読んだ。大きい方を漏らす以外、もはやなす術はなかった。

[「スターになって 世界を変える」]




今まで「パレスチナ問題」を自分の問題とは考えられなかったが、『歌声にのった少年』を見てそうはいかなくなった。ガザ地区の逆境から「スターになる」ことを成し遂げた人間を見て、僕自身が今いる状況と比較してしまった。




2011年「東日本大震災」の大不況で僕自身「極貧」の格差生活の日々を生きてきたが、「ガザ地区」の現状を見て何が「極貧」かを考え直した。イスラエル軍に破壊された街は「セット」でも「CG」でもない現実。日本にも軍隊ができれば「他人事ではない」光景を見て背筋が凍りついた。僕達よりもっと苦しい状況で生きてる人間がいる。




「スターになって 世界を変える」の台詞の「重さ」が「半端」じゃなかった。僕が「スターになる」と「妄想」「戯言」をほざくレベルではない。『アンタッチャブル』でウォレスが、「所得申告」「帳簿」を見て「カポネの事なら これで奴をふん縛れるぞ!」と言った言葉を成し遂げるために、マローンが死んだレベルに見えた。




パレスチナ「ガザ地区」で成功したムハンマド・アッサーフの「実話」は、ベトナム戦争に敗戦した時代のアメリカで、シルベスター・スタローンが『ロッキー』でアカデミー作品賞を受賞した「光」を、超えるほどの衝撃だったように見える。壮絶極まりない「これでも泣かないか」に、「ガザ地区」と「日本」を比較した。「やりたいこと」「生きること」、考え直さずにいられないほど衝撃を受けた。




画像 2019年 6月