『ハナ 奇跡の46日間』 | やりすぎ限界映画入門

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■『ハナ 奇跡の46日間』
やりすぎ限界映画:☆☆☆☆★★★[95]

2012年/韓国映画/127分
監督:ムン・ヒョンソン
出演:ペ・ドゥナ/ハ・ジウォン/チェ・ユニョン/ハン・イェリ/パク・チョンハク/キム・ウンス/イ・ジョンソク/イ・ハンウィ

2013年 第29回 やりすぎ限界映画祭
2013年 ベスト10 第1位:『ハナ 奇跡の46日間』
やりすぎ限界パルムドール/やりすぎ限界女優賞/やりすぎ限界男優賞/やりすぎ限界監督賞/やりすぎ限界脚本賞:『ハナ 奇跡の46日間』

D.B.G.生涯の映画ベスト10
第10位:『ハナ 奇跡の46日間』


[ネタバレ注意!]※見終わった人が読んで下さい。



やりすぎ限界女優賞:ペ・ドゥナ


やりすぎ限界女優賞:ハ・ジウォン


やりすぎ限界女優賞:チェ・ユニョン


やりすぎ限界女優賞:ハン・イェリ


やりすぎ限界男優賞:パク・チョンハク


やりすぎ限界男優賞:キム・ウンス


■第2稿 2019年 8月10日 版

[「38度線」]






朝鮮は一つの国だった。第二次世界大戦の日本の敗戦は、「大日本帝国朝鮮半島」など、他人の土地を勝手に略奪してきた「罰」だろう。終戦後日本が朝鮮から撤退すると、「ソ連」と「アメリカ」が「38度線」で朝鮮を分割、「北」と「南」で統治した。






「38度線」で「分断」された「北朝鮮」と「韓国」が他人事に見えない。近代日本史を知ると、日本にも分断の危機があった。終戦近く、「ソ連対日宣戦布告」を警戒したアメリカは、早期戦争終結を画策。「広島」「長崎」に「原爆」を投下した。アメリカが原爆を投下しなければ、日本も「ソ連」と「アメリカ」に、「東」と「西」で分割統治されたかもしれない。「原爆」か「分断」か? 「分断」されなかった代償は、「世界唯一の被爆国」だった。こんなバカなことがもう二度と起きてはいけない。この真実を人間は、「生涯忘れてはいけない」。

[「日本人同士が殺し合う」「現実」]






終戦後の分割統治から、1948年に韓国が「大韓民国」建国を宣言すると、北朝鮮も「朝鮮民主主義人民共和国」建国を宣言。「ソ連」と「アメリカ」の統治で、北朝鮮は「社会主義体制」へ、韓国は「民主主義体制」へ別れてく。さらに1950年の朝鮮戦争と1953年の休戦で「分断」は決定的となった。だが北朝鮮と韓国の平和条約は今も結ばれてない。北朝鮮と韓国の戦争は、「今」もまだ続いてる。






かつて一つの国だった朝鮮が「戦争」によって分断され、「社会主義体制」と「民主主義体制」に別れ、さらに「朝鮮戦争」を始めた。「朝鮮人同士が殺し合う」「現実」を、日本人には関係ない「他人事」と言い切れるか? この先「他国の戦争へ参加」したら、日本も分断される可能性がないとは「絶対言い切れない」。「日本人同士が殺し合う」「現実」は、「絶対」「他人事」ではない。






「朝鮮人同士が殺し合う」など、これ以上バカな現実はない。その現実の関係性が、わずか「46日間」でここまで変わってしまった。「北朝鮮」と「韓国」がどれほど「統一」を願うかの想いに「涙が出なくなるまで泣いた」。

[『クロッシング』の国「北朝鮮」]






2008年の『クロッシング』は、「北朝鮮」の「現実」を描く韓国初の映画だった。「キム・テギュン監督」が、4年間に渡って100人近い脱北者へのインタビューを行い、事実に基づいた100人のエピソードを、1組の家族のフィクションとしてまとめた映画だった。






「社会主義体制」へ別れた朝鮮人の現実を、『クロッシング』は一目瞭然で見せた。日本人と同じ人間とは思えないほどの逆境、「真実」「現実」の「全て」に、もう「震撼」「驚愕」「絶句」するしかない。「ガス」がない生活に始まり、「医療技術」の貧窮に一番「震撼」「驚愕」「絶句」した。病院は「身分の高い人間」しか行けない。北朝鮮で「結核」は治せない。薬を手に入れるためには「脱北」するしかない。「社会主義体制」で国民が「完全平等」になるなど、「絶対不可能」な現実に「涙が出なくなるまで泣いた」。

[「衝撃」殆ど「実話」]






1991年、日本の千葉で開催された第41回世界卓球選手権大会において、「休戦中」の北朝鮮と韓国が、「史上初」「統一チーム」の「コリア」で参加。『ハナ 奇跡の46日間』は、「統一チーム」「コリア」が、結成わずか「46日間」で「狂気」の優勝を成し遂げた、「衝撃」殆ど「実話」だった。




■「最後の警告だ
  今すぐ戻れ」







■「偉大なる首領様と党に対する
  忠誠心なら骨身にまで-
  染みついている」







国際大会に「南北合同チーム」が出場するようになったのは1991年から。2018年平昌オリンピックにも「女子アイスホッケー」に「南北合同チーム」が出場した。だが『ハナ 奇跡の46日間』のような奇跡は起きなかった。






「集団行動」「チームワーク」の世界では、人間の理論で説明できない不思議な能力で、奇跡が起きたりする。僕が経験した撮影現場では、「スタッフの人間が誰か一人でも違う人間だったら、映画は違う映画に変化する」と言われた。用意する小道具一つも、人によって感性が違う。「この小道具はその人でなければ思いつけない小道具」だからだ。『ハナ 奇跡の46日間』が「狂気」の優勝を成し遂げたのも、「統一チームにいた人間全員のチームワーク」だと思う。「統一チームの誰か一人でも違う人間だったら、優勝できなかったかもしれない」と僕は思う。






さらに『ハナ 奇跡の46日間』が優勝を成し遂げたのは、「統一チームの人間全員」が、ものすごい崇高な「信念」「価値観」「倫理観」を持ってたからだと思う。何回でもできるような、「簡単なこと」では絶対なかったのだ。

[「怖い人間」は一部の人間だけかもしれない「真実」]






『クロッシング』を見て「震撼」「驚愕」「圧倒」「尊敬」「絶句」するのは、北朝鮮の国民に「心やさしい人間」が「たくさんいること」。どの国も「人間」は同じだろう。「怖い国」の印象が強いが、「怖い人間」は一部の人間だけかもしれない「真実」に絶句する。「湾岸戦争」のような空爆なんか、絶対してはいけないと思い知る。






本当に「怖い人間」が一部の人間だけでしかないことを、韓国のヒョン・ジョンファ選手(ハ・ジウォン)は、「統一チーム」で北朝鮮のリ・プニ選手(ペ・ドゥナ)と出逢い思い知った。

[誰よりも「他人のことを考える人間」]






■「南で暮らしたいとは-
  思わない?
  南のほうが生活水準が高いし
  治療だって…」
 「南よりアメリカのほうが
  生活水準は上よ
  渡米したらどう?
  私は どんなに
  豊かな国よりも-
  祖国で暮らしたい」





北朝鮮の「怖い人間」が、本当に一部の人間だけでしかないことを思い知ったのは、ヒョン・ジョンファ選手や、「統一チーム」の人間だけではない。僕自身が、「震撼」「驚愕」「圧倒」「尊敬」「絶句」にまで思い知らされた。






「核武装」が国際問題となってる「怖い国」。だが「怖い国」の人間リ・プニ選手の「真実」は、治せない「肝炎」の死ぬかもしれない命で、祖国に「金メダル」を捧げるために立ち上がる、誰よりも「他人のことを考える人間」。この世の何人の人間が、祖国のために命を捧げられるだろうか? これは「衝撃」殆ど「実話」、「作り話」ではない。ここまで崇高な「信念」「価値観」「倫理観」を持って生きれる人間は殆どいない。立ち上がるリ・プニ選手の雄姿に、「今」でも、僕は何回見ても涙が出る。

[これ以上気高い「極限の美」を見たことがない]




■「やめよう
  もう十分よ」





■「ヒョン・ジョンファらしく
  戦いなさい」







ここまで「これでも泣かないか」までの「泣かし」を見せる「やりすぎ映画」は滅多に見れない。「スポーツ映画」の偉大さは、「人間はここまで努力できる」という命の「限界」を見せること。もはや映画の「全台詞」が「極限台詞」。『ハナ 奇跡の46日間』が、僕は「スポーツ映画」の「極限領域」に見える。『ハナ 奇跡の46日間』は「もうこれ以上美しくペ・ドゥナを撮れない限界点に到達してる映画」。僕は「ペ・ドゥナ」の、これ以上気高い「極限の美」を見たことがない。





画像 2022年 1月