治大国若烹小鮮 おがた林太郎ブログ

治大国若烹小鮮 おがた林太郎ブログ

前衆議院議員おがた林太郎が、日々の思いを徒然なるままに書き綴ります。題は「大国を治むるは小鮮を烹るがごとし」と読みます。


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 そろそろ、「大幅な金融緩和」を始めてから6年になります。

 

 これは、どう見ても無理筋の政策なのですが、これを真正面から批判する人は少ないです。理由は簡単でして、「短期的にはそれなりに成果が出ている(ように見える)から」です。あれだけ円安誘導をすると輸出ドライブが掛かりますので、それらの産業を中心に景気が持ち直したのが大きいでしょう。

 

 ただ、気を付けなくてはならないのは、経済において「ただのランチのようなものはない(There ain't such thing as a free lunch)」という事です。例えば、ドル建ての日本のGDPの規模は劇的に下がっています。また、大幅な金融緩和によって、今後、何らかのショックで金利が上がった時にも打てる金融政策が殆ど無いでしょうし、財政再建が進んでいない事から金利が上昇した時の利払い負担への脆弱性が高まっていますし、そもそも、日本国債の信頼性が少しずつ掘り崩されています。また、低金利に我々は慣れてしまったので気付きにくいですが、ゼロ金利とは国民の預金や金融機関に課税をして、国債の償還費に充てているのとほぼ同義です。

 

 今の政策は「日本経済の耐久性に極限までチャレンジ」みたいなものでして、先人の築き上げた日本経済の財産を食い潰しながら、何とか短期的に体裁を整えているようにしか見えません。ただ、もうそのチャレンジも限界に到達しつつあります。パツンパツンに張り詰めたゴムのような状態だな、とこのコントを思い出しました。

 

 私は「大幅な金融緩和」を全面的に否定するつもりはありません。短期的に一息つくため、そういう政策を打つ可能性はあったでしょう。ただ、その間に生産性を上げ、潜在成長率を上げる事に全力を注ぐ必要がありました。結局、大幅な金融緩和のユーフォリアの中、それらの政策が進まず、今になって「生産性革命」とか言っています。さすがに「最初から『生産性革命』のための時間稼ぎをするという経済政策パッケージではなかったのか?」と言いたくなります。

 

 あまり大きくは報じられないのですが、今年に入って新発の10年国債の売買不成立が7回も起きています。これまでに無かった事態です。私の眼には、IMFのチーフエコノミストを歴任したオリヴィエ・ブランシャールが数年前に鳴らした警告ととても被ります(小黒教授の論稿と合わせて是非読んでいただきたい内容です。)。これまでは日本国債は金利が低くても買ってくれる国内の投資家が居ましたが、国債が国内で捌けなくなっていく時、スプレッドの要求が厳しい外国の投資家に買ってもらわなくてはならないという事態がひたひたと来ているような気がしてなりません。三菱東京UFJは2年前に国債入札の特別参加者資格を返上しています(なお、これは同行が国債入札をしないというわけではなく、特定の義務を負わないという事です。)。

 

 それ以外にも、色々なショックで金利が跳ねる可能性はあります(その可能性が無いという事こそ正に「安全神話」です。)。その時が正念場になるでしょう。とても脆弱性が高いです。今、毎年借換債を含めて150-170兆円くらいの国債発行になりますが、これらの金利が2%になってしまうだけで、3ー3.5兆円くらいの負担増です。数年、2%状態が続けばすぐに消費税7-8%分くらいの負担増になります。ブランシャール氏が言うように「政府から日銀に『ゼロ金利を維持してくれ』と電話が掛かってくる」事だって大いに考えられます。

 

 その最悪のシナリオの時、日本政府、そして国会は選択を迫られます。「大増税+超財政緊縮」か、「国債の日銀直接引き受け」のどちらかです。いずれも国会の議決が必要です。後者は国債の信頼性を著しく下げ、ひいては日本経済の信頼性を下げるため、最終的にはハイパーインフレになるでしょう。上記で引用したコントで言うと、正にパツンパツンに伸びたゴムが顔にパチーンと当たる感じです。

 

 色々な方が「それでも日本経済は大丈夫」と言う説明をされます。「対外純資産が多い」、「政府は資産を持っているので純債務の規模はそこまででもない」、「日本銀行がすべて国債を買い切れば財政再建は終わる」、これらが大体の説明ですが、どれもこれも説得力が殆どありません。それらが正しいのなら、「1京円(今の10倍)国債を立て、日本銀行にすべて買わせて、それでインフラ投資に全部突っ込んでも大丈夫」という理屈になります。もっと言うと、それらの説明が可能なら世界征服だってやれちゃいます。

 

 なので、今、財政再建を本当に真面目にやらなくてはならないのです。「国債が増えても、経済成長率の方が高ければ国債の対GDP比は抑え込める」、この法則は基礎的財政収支(プライマリーバランス)が均衡している時だけにしか通用しません。今は基礎的財政収支が大赤字です。是非、この法則が適用できるところまで財政を改善し、かつ、同時に安定的な成長が出来るように潜在成長率を上げましょうという事にしかなりません。今、政府がやっているように、「成長率はかなり高いんだけど、金利はかなり低い」という粉飾予想により目くらましをする事は意味の無い事です。

 

 最近、安倍総理は「3年以内に出口」という発言をしました。あえて、予言しておきます。自分の政権の間には「出口」は探さないでしょう。そして、次の政権は間違いなく悶え苦しみます。次の政権が「出口」を求めなくても、マーケットから「はい、ここが出口ですよ」と指さされ、出口の前に日本経済が立たされる事も大いにあり得ます。場合によっては上記の最悪のシナリオだって来かねません。その時、批判を受けた安倍(前)総理は「自分の時代は良かっただろ。今、悪くなったのは自分の責任じゃない。」と言うはずです。最近の発言は、何となくそういうシナリオを描こうとしているように聞こえます。

 

 そうさせてはいけないのです。今、日本経済がマーケットにまだ、信頼されているのは「財政再建の余地がある」と思われているからです(それが無くなったら、つるべ落とし状態になります。)。その信頼が残っている間に、「今の政策は短期的には意味があった。ただ、そもそもが日本経済そのものの耐久性チャレンジ競争みたいなもので、長く続けた時点でアウト。財政再建を強く推し進め、マーケットの信頼を維持すべき。もう残されている時間は殆ど無い。」という認識を安倍総理に持ってもらう必要があります。

 

 しかし、残念ながら、与野党含めてこういう議論をしないですね。一部野党は「バラまき合戦」に加わっています。「見ざる、言わざる、聞かざる」の3匹のサルが日本のあちこちを闊歩しています。


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 以前、ふるさと納税について、2回程エントリーを書きました()。その時の話の再掲でしかないのですが、改めて書いておきたいと思います。

 

 例えば、北九州市在住の私が3万円のふるさと納税を他市町村にしたとすると、北九州市⇒私に22400円(住民税)、国⇒私に5600円(所得税)の還付があり、私個人が2000円負担になります(金額は家族モデル等によって変わります。)。

 

 私がどうしても理解できないのが、「何故、地方自治体間の寄付や税の移動であるふるさと納税の制度を、国税である所得税の控除でゲタを履かせなくてはならないのか。」という事です。上記であれば、5600円分国費が使われるわけですが、このゲタは正当化できないだろうという事です。「無駄遣い」とまでは言いませんが、「目的のよく分からない税控除」とは言えると思います。

 

 本来のあるべき姿としては、28000円分すべてを北九州市⇒私で還付する制度でしょう。

 

 「今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた『ふるさと』に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか」という発想が原点だそうですので、その思いを貫けば、国費でのゲタ履かせは不要です。地方自治体間での税や寄付の移動で留めるべきものです。

 

 こうすると、ふるさと納税で寄附が流入する自治体と流出する自治体との収支がガチンコで対立関係になります。流出する自治体からすると、今以上にたまったものではありません。「国のゲタが無くなれば、ほぼうちの負担になり、その金で『お土産(返礼品)』まで送って、それで増収を狙うとはけしからん。」という声が今よりも強くなるでしょう。

 

 そこまで行くと、地方自治体間で今よりも厳しく、本音の議論が始まるはずです。全国6団体や指定都市市長会、議長会に見解を纏めるように求めればいいでしょう。まず、政令指定都市はこぞって「もう返礼品は禁止してくれ」と言ってくる事間違いありません。

 

 また、国のゲタが外れると、減収となる自治体の中でも議論が更に喚起されるでしょう。2017年、北九州市は5億の減収です。今年度、北九州市の「保育所整備推進事業」や「認定こども園整備事業」の予算額がそれぞれ大体5億円です。既に保育所整備推進事業がすべて吹っ飛ぶくらいの減収になっているわけです。横浜市に至っては50億以上の減収です。国のゲタが外れたら、多分、北九州市なら7-8億、横浜市なら70-80億円くらいの減収になって来るでしょう。

 

 なお、私は「ふるさと納税」そのものには賛成です。故郷を思い納税する、被災地のために税を使ってもらう、色々な思いがあっていいと思います。私が異議を唱えているのは、国がゲタを履かせている事です。そして、仮にゲタを外すと、今の返礼品の仕組みも劇的に変わらざるを得ないだろうと思います。


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 先日、このブログを書いたら色々なコメントを頂きました。「もうちょっと具体的に」というご指摘が結構多かったです。

 

 財政については、今、国債の金利が低いのでなかなか見えにくいのですが、金利が跳ね上がった時の事を考えるべきではないかと思います。「金利が跳ね上がっても、経済が成長すればいいんだろ?」という反論があるでしょう。たしかに、プライマリーバランスが均衡していれば、名目GDP成長率が名目利子率を上回れば財政赤字の対GDP比は下がっていきます。これを「ドーマー条件」と言います。

 

 しかし、これは「プライマリーバランス均衡」が大前提であって、今の日本のようにプライマリーバランスが大赤字では、名目GDP成長率が名目利子率を相当に上回らない限りは均衡しません。なので、今年1月の内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」で、成長率が不自然なまでに利子率を上回るような想定を出さざるを得なかったわけです。

 

 金利が跳ね上がった際のリスクは多岐に亘るので、ここには書き切れません。いずれにしたって今の政策が出口を迎えるなら金利は上がります。その時の利払いをどうするのか、という簡単な話です。せめてプライマリーバランスくらいは実現しておかないと、上記の通り、成長率だけでは到底カバーできません。「日本銀行が国債を直接引き受けて賄えばいい」、間違いなくその時に来るのは、マーケットが償還可能性に疑義を呈して国債の金利が更に跳ね上がり、かつ円の信頼性が下がりハイパーインフレでしょう。

 

 先のブログで言いたかったのは、「金利が跳ね上がり財政運営が困難になる可能性」と、原子力発電所で全電源喪失が起こる可能性、国の安全保障において存立危機事態が起きる可能性をそれぞれ危機管理という視点で見て、安全神話にならないようにしようという事でした。これらは直接比較できるわけではないのかもしれませんが、私の目には「まあ、(変な拡大解釈をしない限りは)存立危機事態が起こる可能性よりは高いだろう。」と思います。

 

 ちょっとお浚いをすると、集団的自衛権行使の要件となる存立危機事態とは「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」です。私はこういう事態が起きるのであれば、自衛権行使をする事が違憲だとは思っていません。ただし、「普通に読めば、こんな事がそうそう起きるものでもない。」とも思います。法文を忠実に読めば、少なくとも武力攻撃予測事態が起きていて、その中でも限定的に起こり得る極めて例外的なケースだと思います。

 

(なお、存立危機事態については、当初政府は「単に日米同盟が揺らぐおそれがあるということが直ちにこれに当たるとは考えられません。」と答弁していたのですが、法律成立後は「日米同盟が揺らぐおそれ」のみで存立危機事態に言及する人が増えてきたように見えます。この件は稿を改めます。)

 

 ただ、そういう「穴」を塞ごうとする事の意義はよく分かります。危機管理の中では「think the unthinkable(考えられないような事を考える)」というのが大事です。そういう意味で、法制度の中に空いたとても小さな穴を埋めようとする熱意に、私は大いなる理解を持っています。であれば、それよりも可能性の高そうな「金利が跳ね上がる事による財政危機」にも同様の関心と危機感を持つべきだろう、というのが私の趣旨です。それこそ、起きてしまえば「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される」事になりかねません。

 

 「国債の金利は上がらない」、「金利が上がっても成長すればOK」、「日本銀行が国債を直接引き受ければOK」、原子力発電所の安全管理や安保法制でこれと同じような希望的観測を語ったら、多分、すべての政治家はドヤしあげられるでしょう。


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 多分、10月初旬くらいから始まる臨時国会で補正予算が来るのではないかな、と思います(来ないかもしれませんが)。私が昔から「これって、おかしいんじゃないかな。」と問題意識を持っている事が幾つかあります。

 

 その一つは「(法定されているはずの)緊要性」が無いものが含まれていて、単に当初予算で盛り込めなかったものの復活折衝になっているだけ、というものがあります。これは民主党政権時代もやっていたので、別にどの政権が悪いとかいう事ではないのですが、当初予算の時点から、査定する側とされる側との間で「これは(当初予算では入れないけど)補正で。」みたいな握りをしたりするのです。結局、年度単位での決算を見てみると、予算(と借金)が膨れ上がる原因になっています。あと良くないのは、当初予算で盛り込まず、補正予算対応が増えていくと、例えば自衛隊や海上保安庁等の装備物の計画が立ちにくいという弊害もあります。

 

 補正予算を「リアルに緊要性のあるものだけ」とバシッと切ってしまうと、多分、日本の当初予算作成の時点から緊張感が全く異なると思います。ある大臣経験者は「補正予算を(災害等の緊急時を除いては)基本的にはやりません。」とするのが、一番の行革になると言っていました。極端な言い方ではありますが、私は慧眼だと思います。

 

 それはともかくとして、今日は「財源」の話です。この数年、国債の金利が低いせいで、毎年、当初予算で立てた(借金の返済に充てる)国債費に余りが出ています。つまり、当初予算の時点で予想する国債の金利よりも、実際の金利が低ければ返すお金が少なくて済むので余りが出る、というふうにイメージしてもらえればと思います。そして、これを「財源」として補正予算を編成するのが常態化しています。

 

 私はこの国債費の「余り」が「(補正予算の)財源」だという発想そのものがどうしても受け入れられませんでした。そもそも、経済状況がよくなったから生じたお金ではありません。むしろ、経済が思ったようにインフレ2%にならないので、必死になって金利を抑え込んで金融緩和を継続した結果として生じただけです。別に「アベノミクスの果実」ではありません。

 

 そして、ゼロ金利政策というのは、見方を変えれば、国民や金融機関に課税をして、それで国債の金利を支払っているというのとほぼ同義です。金利が上がってくれば、国民や金融機関に利子という形でお金が流れる一方、国債の利払いが増えてきます。そう考えると、ゼロ金利というのは、利子課税をした上で国債の利払いをしているのと大して変わりません。したがって、国民や金融機関に負担を付け替えた結果として生じたお金を「財源」だというのは筋違いではないかという事です。

 

 しかも、仮に国債の金利を正しく予想できる占い師が居たとして、その金利で当初予算を組んでいれば、「余り」は生じず、その分だけ国債を立てずに済んだはずです。したがって、その「余り」は「(補正予算の)財源」ではなく、一度すべて国債の償還に充てるべきものだと思います。一度、安倍総理にその指摘をしましたが、どうも通じませんでした。

 

 そうしないと、一旦、「余り」を「財源」だと言ってしまうと、全部使っちゃうのです。ここほれワンワンのように生まれてきた財源と勘違いしてしまって使ってしまうのですが、それは上記のような経緯からすると完全に筋違いだと思っています。

 

 筋論としては、そういう「余り」は一度、全額国債の償還に充てるという整理をする、そして、ゼロベースから再度、緊要性に応じて補正予算を編成する、そういうふうにすべきだと思います。ちょっとプロセスとしてはややこしいのですけども、きちんと整理せずに「あ、ここにお金があるじゃないか。」と安易に財源化する事は財政の健全性を損ないます。

 

 遠からず、補正予算の編成が何処かで来るでしょう。予算書なんて見る事は殆ど無いでしょうが、「財源」の所で国債費の余りが出てきたら要注意です。本来、そのまま「財源」にしてはいけないものです。


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 農地バンク(農地中間管理機構)という制度が、政権の肝いりで進められていますが、あまり上手く行っていません。ウェブで検索しても、利用率がどんどん下がっていっています。各都道府県に設置された管理機構が事業を行っているものの、手続きの煩雑さ等があるとされています。

 

 たしかに、全農地の2割に当たる93.4万ヘクタールもの農地が未登記または登記されているかどうか不明な状態であり、そこに「貸したい人」、「借りたい人」が居るのは事実です。そこに机上でミクロ経済学のグラフを書けばマーケットが出来ていく事になります。発想はその辺りでしょう。しかし、これはあまりに人間社会の機微を排除した理屈です。農家の方は農地に強い思い入れがあり、それぞれの地域の歴史、文化を脇に置いた議論は通用しません。

 

 当初から、「元々賃借する予定だった土地を、行政が『(利用率を上げるために)どうしても』と言うから、機構経由でやる事にした。」というケースが結構ありました。機構経由でやると色々と行政からのサポートが得られるのですが、その賃借の一部は機構があろうがなかろうが成立したわけですから、ちょっと首を傾げてしまうような状態です。

 

 あまりに活用が進まないので、先の国会で農業経営基盤強化促進法を改正しました。法改正の最大の柱は、所有者不明の農地を意欲ある農家や農業法人などの担い手が借りやすくしたことです。現在、担い手が所有者不明農地を利用する場合は、農地バンクが間に入って担い手に貸し付ける形を取っていますが、所有者が複数いる農地の場合は半数以上の所有者の同意が必要な事が障害となっていたのを、要件を大幅に緩和しています。その他、貸付期間を5年から20年に大幅延長する等の措置も講じられています。

 

 何としても、不人気な農地バンクの活用を進めようとする強い政権の意図を感じます。ただ、残念ながら、こんな形で泥縄式にやっていっても農地バンクの活用が進むようには思えません。

 

 ただ、私は所有者不明の農地を貸し付ける際の要件緩和は興味深いと思いました。今回の法改正では、例えば、固定資産税を納めているような実質的な所有者が1人でもいれば農地を貸し付けできるようにしています。つまり、法定相続を通じて所有権を有する者が多くなり過ぎたため、特定して同意を得るまでに多大な労力とコストが掛かっている点を改善しようとしています。

 

 私が注目したのは、所有者不明の農地の問題は、日本全国に広がる空き家問題、空き地問題と同じ構造であり、今回の法改正を可能とさせた理屈は、もしかしたらこれらの問題へのブレイクスルーになるかもしれないと思ったからです。法定相続が2-3回入ると、大体権利者が30-50人くらいになって、その売買、賃借の際、ハンコを集めるのが困難となり、空き家、空き地の活用が進まないという話は全国津々浦々にあります。今後、時間が経てば経つほどに権利の分散は更に進むでしょう。その手続きを簡素化できる仕組みの萌芽を今回の法改正の中に見出せるかもしれません。

 

 普通に考えると、私有財産の所有者が分散している事に対して、その一部(実質的な所有者)のゴーサインで賃借できるという仕組みは、憲法上の財産権との関係まで絡む厄介な問題のはずです。どういう理屈で、農林水産省が内閣法制局との間でこの辺りをクリアーしたのかは分からないのですが、農地でこのような仕組みが可能なのであれば、別のカテゴリーの土地、ひいては土地一般でも同じようなアプローチが導入できるのではないか、という期待感はあります。

 

 法改正そのものよりも、その法律を作る時に駆使した理屈の方にとても期待感があります。


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 今年に入ってから、ブルキナファソ、ドミニカ共和国、エルサルヴァドルが、台湾(中華民国)承認から北京(中華人民共和国)承認に切り換えました。台湾承認国は、もう17ヶ国にまで減っています。「国家承認」とは、どの政府を中国の正当政府と認めるかという事でして、台湾と北京を同時に承認する事は、双方とも受け入れていません。台湾か北京かを選択する事が求められます。
 
 多いのは南太平洋の島嶼国、カリブの島嶼国で、それに若干のラテンアメリカの国くらいです。例えば、アフリカでは、20年前くらい台湾承認国は結構多かったのです。記憶しているだけで、セネガル、ブルキナファソ、リベリア、ガンビア、ギニアビサオ、ニジェール、チャド、サントメプリンシペ・・・15くらいあったはずです。しかし、今となってはスワジランドだけになりました。
 
 私がセネガル在住時、セネガルは台湾承認でした。当時の相場は、台湾を承認すると手付金で大きな国なら100億円、小さな国なら50億円でした(なお、セネガルは「極めて大きな国」に入ります。)。裏金っぽい所がありまして、大体、大統領の私腹を肥やすのに役立っていました。その後、ほぼ3-4日に1回のペースで台湾の援助案件が新聞に出ていました。援助をエンドレスに継続する事が、承認を繋ぎ止める唯一の手法だったわけです。
 
 ヒドいケースでは、アフリカの某国大統領が台湾に「大統領選挙の費用出して」と依頼し、さすがに台湾が断ったら、スパッと台湾承認→北京承認に切り換えられたという悲しい物語があります(なお、その大統領はその後クーデターで放逐されましたが)。今回、エルサルヴァドルもどうやら港湾開発で巨額の資金を要請したものの、台湾側が断った事がきっかけの一つになっているようです。
 
 20世紀の内は、札束で頬を叩く競争で台湾が勝っていたのですが、もう北京は札束合戦に負けなくなったという事なのです。馬英九政権の時代は、北京による承認引っぺがしオペレーションは沈静化していましたが、蔡英文政権になってから、これみよがしに北京の引っぺがしオペレーションが強化されています。
 
 もう、台湾はこの承認獲得合戦は止めた方が良いと思います。まずもって、新規で台湾承認になる国はもう出て来ないと見ていいでしょう。むしろ、更にラテンアメリカやカリブの中で遠からず北京承認に切り換える動きが出てくるでしょう。
 
 その代わり、国際社会は台湾を経済的にどんどん取り込む動きをすべきです。台湾にとっても、国家承認というメンツを追うよりも、そちらの方が遥かに有益です。
 
 そういう観点から、私は昔、条約課補佐時代に「日本と『台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立の関税地域』との間で自由貿易協定を締結できないか。」という事を結構真剣に研究した事があります。
 
 今、台湾はWTOに加盟していますが、それは「中華民国」でも、「台湾」でもなく、「台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立の関税地域」という名称で加盟しています。WTOに加盟できるのは、国のみではなく、「独立の関税地域」でも加盟できるからです(例えば、香港もそれに該当します。)。
 
 マルチ(多数国間)でのお付き合いが、「独立の関税地域」である台湾とやれるのなら、バイ(二国間)でも同じ理屈でやれるんじゃないかな、と思って、論理的にかなり追求したのです。実際、シンガポールやニュージーランドは台湾とFTAを締結しているわけですし、法的に絶対超えられないという事でもないだろうと思ったわけです。ただ、日本と台湾で二国間で向き合って自由貿易協定を締結するのは、(政治的なテーマ以前に)法的論理構成としてもなかなかハードルが高かった事はよく覚えています。
 
 バイが難しいのであれば、TPPに誘い入れる事を検討してはどうかと思います。TPPは実は「独立の関税地域」が入って来る事を想定している協定です。第一章の「冒頭の規定及び一般的定義」の中で、「『締約国』とは、この協定が効力を有する国又は独立の関税地域をいう。」という規定があります。通商を長くやっている人間であれば、これを見れば「ああ、台湾が将来入って来る事も排除はしてないんだな。」という事がすぐに分かります。
 
 台湾が「国家承認」という外交上の基礎中の基礎の部分で苦しくなってきているわけですから、ここは経済面での誘い入れを積極的にやってみてはどうかと思うのです(今でもある程度の検討がなされているのは知っていますが、更にアクセルを踏んで。)。上記の通り、最低限のツールは揃えられています。

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 危機管理の要諦とは「悲観的に予測し、楽観的に行動する。」、そして、最悪なのが「楽観的に予測し、悲観的に行動する。」。大学時代に読んだ佐々淳行さんの本で学んで以来、ずっと肝に銘じています。 

 

 最近、色々な日本を取り巻く危機について思いを致しながら熟考する中で、非常に奇妙な現象に気付きました。

 

 原子力発電所には、かつて安全神話がありました。かねてから国会で全電源喪失の可能性を指摘されてきたにもかかわらず、「そうならないよう万全の態勢を整えている」というのが政府答弁でした。正に「楽観的に予測」するという安全神話に陥っていたわけです。その安全神話が東日本大震災で崩壊しました。

 

 そして、国の安全保障は(当然の事として)一つの危機管理です。原子力発電所の安全神話を厳しく批判してきた人達の中に、国の安全保障について「楽観的な予測」をする方が居られます。本来であれば、全電源喪失の時と同じようにありとあらゆる可能性を念頭に安全保障を考えるというのが筋論だと思います。

 

 更には、昨今、国の安全保障ではかなり微に入り、細に入るような危機管理に御関心の方の中に、財政危機に対する「楽観的な予測」する方がかなり増えてきています。えてして、その手の予測は経済学上の議論に堪え得ないものが多いのですが、それでもかなり世間に流布しています。日本全体で、財政危機について「悲観的に予測」する文化が下がってきているな、というのが率直な感想です。安保法制の時に政府が展開したような「ちょっと起こり得ないような想定」まで踏み込んだ議論が必要なはずです。

 

(こう書くと、「悲観論ばかりでは景気は良くならない」というお叱りが来ます。一旦、悲観的に予測したら、その後は予測に基づき楽観的に行動するべきだという事は強調しておきます。)

 

 ここまで述べてみて、「実は『危機管理』についてはポジション・トークが横行しているのではないか。自分の願う方向性に沿うのであれば『危機管理』に熱心であり、沿わないのであれば不熱心、というのは、本質的な意味において『危機管理』には関心が無いという事かもしれない。」と思うようになりました。

 

 どのような危機であろうとも、まずはポジション・トークから離れ、きちんと安全神話を排し、「悲観的に予測し、楽観的に行動する」という原則を貫く、そういう政治が求められていると思います。


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 自民党総裁選が終わったら、憲法改正の議論が盛んになって来ると思います。私は既に書いた通り、別に改正そのものに反対ではありませんし、具体的な改正事項についても指摘しています。

 

 そして、やはり大きいのが9条でしょう。私はここも「絶対にいじってはいけない」とまでは思っていません。「あえて挙げるとしたら」という事で、自分なりの考え方と案も述べています。

 

 そのような中、自由民主党が9条改憲案を提示しています。現行憲法の9条に「9条の2」を加えるというものです。

 

【自由民主党改憲案(第9条の2)】
(第1項)前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。

(略)

 

 私は公党が改憲案を出す事は、それが現行憲法の手続きに則る限りにおいて、「言論の自由」、「政治活動の自由」としてきちんと保障されるべきだと思います。「改憲の案を出すなど許されない」というのは言論圧殺であり、怖い事です。私は自由民主党が改憲案を出している事実は最大限尊重します(内容に対する賛否ではありません。)。

 

 他方、この改憲案については、その説明が変なのです。「現行憲法の解釈と何ら変更無し」と言っているのです。これは首を傾げます。

 

 現行憲法の解釈としては、「相手方から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限る」となっています。これが自民党改憲案では「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとる」となります。

 

 論点としては「保持する防衛力」についての限定が無くなっており、自衛権行使の態様については「最小限」が落ちます。なので、普通に考えれば「保持する防衛力」、「自衛権行使の態様」いずれも現行憲法解釈よりも広がる事になるはずです。一語一語に厳格に意味が込められている以上、「何も変わらない」という事にはなりません。これは現行憲法解釈における「必要」と「最小限」の意味、定義について、質問主意書で政府に聞いてみれば明らかになるでしょう(というか、何故、誰もそれをやらないんだろうとずっと思っています。)。

 

 繰り返しになりますが、私は公党が改憲案を出す事を最大限尊重します。なので、自分達の案に真正面から向き合って、自信を持って正確な所を説明をすべきです。「我々の案では、今よりも防衛力も、自衛権行使も拡大出来る事になります。」と言うべきです(そういう案なのですから)。それが嫌ならば、きちんと現行憲法解釈内に収める努力をすればいいのです。

 

 いずれにせよ、今の説明は聞く人間に混乱を引き起こし、畢竟、国民を謀(たばか)る事になると思います。「現行憲法の解釈と何も変わらない」という虚偽説明をしている限り、いつまで経っても議論のスタート・ラインにすら立てないでしょう。

 

 自由民主党の幹部の方は分かっていると思いますけどね、この程度の事は。分かっていて強弁している事も含めて認識しているはずです。


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 9日、日米経済新協議が行われます。場合によっては10日までずれ込むこともあるとの事です。

 

 普通に通商ルールに則るのであれば、「日米FTA」以外の解は無いと思います。というのも、今の世界の通商ルールは「最恵国待遇(すべての人に同じ待遇)」が原則で、その例外として、一定の厳格な要件の下に認められているのが自由貿易協定(FTA)です。今、アメリカが求めているのは、他の国に与えている待遇とは異なる有利な待遇ですから、これを実現出来るとすれば通商ルールの世界では自由貿易協定しかありません。

 

(厳密に言えば、若干の例外はありますし、通商ルールとは切り離された国内措置で米国製品を優遇する事は不可能ではありませんが、その程度で収まるとも思えません。)

 

 その一方で、今回の閣僚級協議で安倍総理にとって最大の課題は「日米FTA交渉開始」の文字が報道で踊らない事、これに尽きるでしょう。総裁選を前に、その言葉がマスコミの報道で踊ると、自身の総裁選に大打撃です。農業地域選出議員や農業関係者の党員票が確実に減ると判断しているはずです。

 

 そして、今回の閣僚級会合をやり過ごせば、次にやってくるのは総裁選後の国連総会での首脳会談です。そこまでは何とか「日米FTA交渉開始」のフレーズは使わないようにしたいでしょう。

 

 一方、アメリカ側からすれば、トランプ政権は中間選挙で国内にアピールできるネタを一日でも早く求めています。前回のブログで私は「肉が焦点になる」と書きましたが、早速、ライトハイザーUSTRは「牛肉」の「不公正な貿易障壁」に言及していました。

 

 これが何を指しているのかは分かりません。単に既発効の日豪FTAで米国ビーフが劣位に置かれている事を指すのか、それとも、WTOの一般ルールよりも発動要件が緩い「(牛肉の)特別セーフガード」の話を言っているのか、それ以外の何かを言っているのか、よく分かりません。直感的には「アメリカの牛肉が売れない」⇒「不公正な貿易障壁」という回路ではないかと思います(いずれにせよ、ヒドい理屈ですが)。

 

 それ以外にも、大産地に連邦議会選挙での「スウィング・ステート(激戦区)」がかなり含まれる豚肉についても、米国は強く言ってくるはずです。こちらも未発効ながら、TPP11(カナダ、メキシコ)、日EU(スペイン、デンマーク)が発効すれば、アメリカ産はかなりの劣位に置かれます。米国の豚肉生産者は焦っているはずです。

 

 9日の閣僚級協議は、国連総会まですべてを遅らせたい安倍総理と、すぐにでも選挙向けのネタが欲しいトランプ政権とのせめぎあいと見ておけば間違いないでしょう。その構図の中で「日米FTA交渉開始」がどのタイミングで、どう絡んでくるかが見えてきます。ただ、繰り返しになりますが、アメリカの要求に日本が幾許かでも応じようとすれば、アメリカがTPPに復帰する可能性がほぼ無いと判断する限り、日米FTAしか方法はありません。

 

 表に出て来ない取引だってあるかもしれません。あるとすれば、「国連総会時の首脳会談では『肉(の輸入)』でタマ出すから、8月の閣僚級で『日米FTA交渉開始』だけは言わないでくれ。」みたいな感じでしょう。それをトランプ政権が「選挙との関係でtoo late」と思えば受けないでしょうし、「時期的にOK」と見れば、そういう「ディール」は成り立つかもしれません。

 

 上記のような視点で、今後の日米経済新協議を見ておくと、それなりに「裏」が透けてくるように思います。


テーマ:

 日米経済新協議が今度、どう進んでいくのかという報道を見ました。

 

 どういうプロセスになるかはまだまだ分かりませんが、議題は「自動車(+鉄鋼)対畜産」が主になるでしょう。いずれにせよ、重要なのは「アメリカの選挙との絡み」で見ていく事です。アメリカの連邦議会は、そういう利益誘導については日本よりも露骨にやってきます。特に今年は選挙イヤーですので、ここから10月くらいまでは力がムチャクチャ入ります。

 

 どうしても、日本人はコメの事を思いたくなりますが、コメはアメリカにとってそこまでの主要農産物ではありません。アーカンソー州が一番の産地ですけれども、同州のコメは味覚からして日本人の口には合いません。加工用が精一杯でして、加工用で関税割当を設けても「日本側が買うかな?」と首を傾げたくなるくらいです。そして、アーカンソーは(民主党のクリントン大統領を輩出していますが)現在は不動の共和党地域で、上院(2)、下院(4)いずれも独占しています。

 

 逆に2番目の産地カリフォルニア州では、サクラメント北部にコメ栽培が集中しています。こちらはカリフォルニア・ローズのように食味が日本人に合うようになっています。一度行った事がありますが、水の調達に難儀しているようで生産拡大のキャパシティがそこまで無いように見えました。なお、サクラメントの下院選挙区は日系アメリカ人のドリス・マツイ議員(民主党)が圧倒的に強いです(市の北側にある他選挙区に行くと結構、激戦区ですが)。いずれにせよ、全体としてある程度の輸入枠拡大があれば落ち着く話であり、主たるテーマになりません。

 

 また、小麦、大麦、酪農、甘味作物もそこまでの大きなテーマにならないと思います。やはり、どう考えてもアメリカが狙ってくるのは「肉」です。選挙ともかなり絡みます。

 

 まず、日豪FTA+TPP11で牛肉の関税が下がっていきます。既に日豪FTAは発効しているのでどんどんオージービーフとの価格差がついていっています。TPP11では日豪以上に下がり方が大きいので危機感は尚更です。牛肉の産地としては、テキサス、カンサス、ネブラスカ、カリフォルニア、オクラホマが上位5州です。 テキサスは南部に行けば民主党がそこそこ強いですが、テリー・ファンクが育った肉牛の大産地アマリロなんてのは共和党の金城湯池です。カンサス、ネブラスカも超保守地域です。牛肉の産地は傾向としては共和党が強い地域が多いものの、一部は民主党と激しく競っているというイメージです。

 

 あと、豚肉ですが、こちらはTPP+日EUでの豚肉の関税構造の変化がアメリカにとって一番気になるでしょう。こちらは関税の下げというよりも、以下のように構造が変わると言った方が正確です(色のついている部分が関税に相当しますが、それがとても薄くなっているのが分かっていただけると思います。今後、アメリカには緑、メキシコ、カナダ、EUには赤の関税が適用されるとイメージしてください。)。

 

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 豚肉の主要生産地は、アイオワ、イリノイ、ミネソタ、ノース・カロライナ、インディアナあたりです。牛肉に比して、こちらの方が「(連邦議会選挙や大統領選での)スウィングステートが多いな。」という印象があります。

 

 トランプ政権は、今後、中間選挙に向けて「タマ」を欲しがるでしょう。しかも、「中間選挙前」という極めて早いタイミングでそれを求めてくると見ています。その時に対日関係で一番売れそうなのは、間違いなく「肉」です。しかも、その一部が民主党との激戦区になっていると思えば、日本に対する圧力は強まるでしょう。

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