治大国若烹小鮮 おがた林太郎ブログ

衆議院議員おがた林太郎(福岡9区)が、日々の思いを徒然なるままに書き綴ります。題は「大国を治むるは小鮮を烹るがごとし」と読みます。


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 北朝鮮のイカ釣り漁船が、日本の排他的経済水域内にある日本海中央辺りの大和堆の所で大量に出没して海上保安庁がこれを排除したニュースがありました。これ自体は当然の事なのですが、一件とても気になった事がありました。

 

 それは「大和堆の地域は日韓漁業協定の暫定水域に入っていたはずだが、その辺りの整理はどうなっているのだろうか。」という事です。本件について調べるために、「今回取締りを行った場所は日韓漁業協定の暫定水域内ではないか。」という問い合わせを水産庁、外務省、海上保安庁にしてみました。現時点での結論を言うと「たらい回し」状態です。ヒドいよなあ、とちょっと怒っています。

 

 日韓漁業協定では、竹島の周辺の扱いで紛糾した事から、竹島を含む地域について暫定水域を設定して、その水域内では両国がそれぞれのルールに従い操業する事になっています(イメージ図)。つまり、日本は日本漁船について取締り、韓国は韓国漁船を取り締まるという形です。実はこの暫定水域内での操業実態は、韓国側のやりたい放題に近い所があり、蟹かご等が大量に設置(+放置)されて資源状況が悪くなっている海域がかなりあります。

 

 実は日韓漁業協定の交渉過程で、この暫定水域を何処までとするかについて激しい交渉がありました。絶好の漁場である大和堆を含めるよう韓国側から強い要望があったため、最後、大和堆の部分を含めることで合意しました。イメージ図でいうと、東側の上部三角形になっている部分です。結果として、韓国にかなり有利な状態で暫定水域が設定されています。日韓漁業条約の国会審議では、本件について指摘がなされ、当時の高村外相は「ぎりぎりの合意」と述べています。

 

【平成10年12月11日衆議院外務委員会】

○高村国務大臣 日本側としては、可能な限りこれ(緒方注:大和堆)を暫定水域に含めない方向で鋭意韓国側と協議を行ってきたわけで、日本側としてこれの必要性があったわけではもちろんないわけであります。暫定水域の範囲は、そういう中で日韓間の協議の結果、大和堆の一部を暫定水域に入れることも含めて交渉全体をパッケージとしてまとめる上でぎりぎりのものとして合意されたものであります。(略)

 

 上記にも書きましたが、暫定水域内では日本が韓国漁船を直接取り締まる事はありません。勿論、日韓漁業協定については日韓の協定なので、北朝鮮漁船の操業取締りについては、排他的経済水域の判断の基礎となる日朝中間線で判断すべきものです。ただ、大和堆の一部地域においては、韓国漁船については(事実上やりたい放題で)取り締まらず、北朝鮮漁船のみを取り締まるという状況になっているのが、現場に居る海保の対応に影響してはいないかなという問題意識が私の中にあります。

 

 しかも、この海域はロシアも絡んで中間線の状況がとても入り組みます。何か分かりやすい図は無いかなと探してみたら、こういうものが見つかりました(なお、この図にある「帰属」の話で私は当然竹島の帰属は日本だと思っている事を申し添えます。)。そして、日本の制度上、北朝鮮との中間線関係で「何か」を放置してある部分が存在した記憶があります(記憶が定かではないのですが、たしか線を引けてない海域があったのではなかったかと思います。)。韓国、ロシア、北朝鮮からどうやって線を引くかで、なかなか確定が難しい海域があるという事です。

 

 日韓漁業協定については、(暫定水域ではなく)互いの排他的経済水域での操業について条件が折り合わないまま、1年以上続いています。日本側の関心は済州島周辺のサバ漁、韓国側の関心は長崎沖でのタチウオ漁に関心が強いのですが、韓国漁船の立ち振る舞いの悪さがあるため、交渉にすら応じ難い状況のようです(私のブログ新聞記事をそれぞれ参照)。

 

 現在はこれらの互いの排他的経済水域での操業の所に注目が集まりますが、今日のエントリーで書いたように、日韓漁業協定の暫定水域内にある大和堆周辺での漁業実態と、それに伴う韓国、北朝鮮(+ロシア)の関係もよく注目しておく必要があるという事で一文書きました。

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 韓国の文大統領が、いわゆる徴用工問題について「個人請求権がある」事を声高に言っています。外務省時代、条約課で日韓基本条約や経済協力協定を担当した者としてとても違和感があります。

 

 まず、国家間の請求権については、「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」によって明確に放棄されています。ここは韓国も争っていません。では、この協定で言う請求権放棄とは何を意味するのかについては、結構色々な議論がありましたが、最終的には「外交的保護権の放棄」というふうに位置付けられるのが通説です。

 

 つまり、条約というのは国と国との約束事なので、究極、個人が裁判で請求権を主張する事は排除されない、ただ、裁判で何の結果も得られなかったとしても、国家として責任の追及をする事は認められない、こんな感じです。

 

 私が理解する所では、畢竟、「個人請求権の話に国が関わらない」という事だと思うのです。現在、韓国の裁判では個人請求権を認める判決が連発しています。それはそれで問題だと思いますが、あえてそれを脇に置いたとしても、国家元首がその件を殊更に取り上げて、「個人請求権は認められている。」とお墨付きを与えるかのような発言をするのは、上記の協定の精神、そして解釈を著しく没却する行為です。

 

 ちょっとだけ条約を引用すると、協定の前文には以下のような記述があります。

 
【財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(前文)】
日本国及び大韓民国は、両国及びその国民の財産並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題を解決することを希望し、両国間の経済協力を増進することを希望して、次のとおり協定した。
 
 そして、第一条で日本が行う経済協力について規定した後、第二条にて以下のように書かれています。
 
【財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(第二条)】
1 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。

 

 これを全体として読めば、韓国政府は請求権問題は解決したとの立場に立たなければおかしいのです。個人請求権の件の是非以前の問題として、そういう事に国家元首が首を突っ込むことは絶対に許してはなりません。韓国政府は、個人請求権裁判については完全に傍観者の立場を貫く事が求められます。

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【要約】

・ 北朝鮮のグアム沖へのミサイル発射に対しては、日本の上空を飛んでいる段階できちんと対処すべき。

・ ただし、その法的根拠を存立危機事態に求める事は、法の規定からしても無理がある。警察権の行使で対応する事で足りる。

 

【本文】

 北朝鮮からのミサイル発射については、それが日本の「上空」を通る場合、しっかりと迎撃等の措置を講ずるべきだと思います。今日の論点はまず、ここからスタートです。

 

 ただ、仮にそれがグアム沖30-40キロを目掛けて行うのであれば、存立危機事態を認定した上で集団的自衛権での対応とする事には明確に反対です。アメリカの領海に落ちる場合であっても、私は存立危機事態を認定する事は極めて困難だと思います。

 

 まず、領海外、排他的経済水域に落下する時のことを考えてみましょう。私はこの時の法的な整理について、通常国会で岸田外相に質問しています。

 

【衆議院外務委員会(平成29年03月10日)】
○緒方委員 (略)国連海洋法条約では、排他的経済水域そして大陸棚には主権的権利というのが認められています。主権ではないですけれども、主権的な権利という非常に微妙な言葉が使われているわけでありますが、今回日本のEEZにミサイルが落ちたことによって、私は、実は、日本の主権ではない、だけれども主権的権利というものが侵害をされたのではないですかというふうに、昨日お伺いしました。(略)岸田大臣、いかがお考えでしょうか。
 
○岸田国務大臣 (略)国連海洋法条約五十六条の一に、沿岸国はEEZにおいて天然資源の探査、開発、保存及び管理等のための主権的権利を有している、こう記されています。要は、この主権的権利とは、天然資源の探査、開発、保存及び管理、こうしたことを行うことを指していると承知をします。そして、その上で、今度は五十八条の三には、他国のEEZにおいて、沿岸国の権利及び義務に妥当な考慮を払わなければならない、こうした規定が設けられています。
 そして、委員の御質問は主権的権利が害されたかどうかということだと思いますが、要は、この条約上、軍事訓練が行われたとしても、妥当な考慮が払われていたならばそれは可能であるとされています。EEZ内で軍事的な訓練を行うということは、これは先ほど言いました天然資源の探査、開発、保存及び管理といったこの権利を害するかどうか、これは判断が大変難しいものがありますが、そうだとしても、条約上は、妥当な考慮が払われていればそれは可能であるというふうに解釈するべきであると承知をしています。
 そして、今回の北朝鮮によって発射された弾道ミサイル、我が国のEEZ内に落下したわけでありますが、これは、何らの事前通報もなかったことを鑑みれば、我が国の権利及び義務に妥当な考慮を払ったとは言いがたい、このように考えるべきであると考えます。
 
○緒方委員 いや、最後の一言がなかったんですけれども、妥当な考慮が払われていなかったことをもって主権的権利が害されたというふうに大臣はお考えですか。
 
○岸田国務大臣 主権的な権利が害されたかどうかというのは大変難しい判断であると聞いております。そして、害されたかどうかを判断するよりは、妥当な考慮が払われていたかどうか、これが重要であるというのが、この条約の解釈の仕方であると認識をいたします。これは、軍事訓練であっても事前通報があれば可能であるというのが、この条約における解釈のありようだと承知をしています。
 そのことを考えますと、妥当な考慮が払われたかどうか、これこそ最も重要なことであり、今回は払われていなかった、これはその点で問題であると認識をいたします。

 

 長い引用でしたが、過去の日本のEEZにミサイル発射した際、政府の認定は「主権的権利を害している」とまでは行っていないという事です。あくまでも「妥当な考慮が払われなかった」ということです。EEZに対するミサイル発射に対する日本の立場にかんがみれば、EEZにミサイルを落とす行為は直ちに主権的権利を害するものではないというものである以上、他国のEEZに落とす行為についても(日本として)同様の判断があると考えるのが妥当でしょう。

 

 国連海洋法条約でEEZ沿岸国に認められている主権的権利(sovereign right)というのは、主権(sovereignty)ではありません。それよりも一歩手前の概念だとされています。主権ですらない権利を害されている認定が無いのなら、そこに対する自衛権は基本的には成立しないと考えるのが筋です。日本が積極的に集団的自衛権を持ち出す根拠は薄弱です。

 

(なお、上記の質問中、日本維新の会の外務委員が「言葉遊びだ」とヤジっておられました。この件については、何処が言葉遊びなのか、今でも私には理解できません。)

 

 もう少し話を進めると、そもそも、それが存立危機事態に当たるのかという問題もあります。もう一度、存立危機事態の定義を思い直してみると、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」です。

 

 仮に米国領海内に落ちる場合であったとしても、それが「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」とまで認定するのはかなり広げ過ぎでしょう。

 

 一般論として、私は存立危機事態のような事が起きる可能性はあると思います。なので、そこで集団的自衛権を行使する事を否定しません。ただ、法文を普通に読む限りは、相当に切迫した事態です。イメージとしては、武力攻撃予測事態(武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態)であり、眼前で米軍が戦っている状況だろうと思っています。したがって、存立危機事態については、その範囲はかなり限定的であるはずです。特に時間的には数時間、せいぜい1日くらいではないかと思っています。

 

(私は存立危機事態に関しての平和安全法制審議では、当時の維新の党が提出した修正案がとてもよく出来ていると思います。存立危機事態を「武力攻撃危機事態」として、定義は「条約に基づき我が国周辺の地域において我が国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃(我が国に対する外部からの武力攻撃を除く。)が発生し、これにより我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至った事態」です。これが本来のあるべき姿だと思っています。)

 

 ここでかなりの無理をして存立危機事態認定するのは、平和安全法制の精神からしても筋が悪いです。「実績作りをしたがっている。」と見られても仕方ないでしょう。アメリカの領海内にミサイルが落ちる事は深刻な事です。ただ、それにより「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」とまで言ってしまうと、今後の存立危機事態の認定のハードルはとても下がります。

 

 しかし、冒頭で述べた通り、私はきちんとミサイル防衛はやるべきだと思います。ただ、それは「存立危機事態」を持ち出すよりも、警察権の行使でやる方が素直な所でしょう。「国防を担う自衛隊が警察権?」というのも変な話に聞こえるかもしれませんが、これまでの解釈でもそういう可能性を認めてきております。とても雑な言い方をすれば「日本の上空を危なっかしいものが飛んでいるので除去する。」という事です。これとて少し法的には整理をする必要があるのですが、ただ、存立危機事態を認定する程の大ジャンプをしないと辿り着けないわけではありません。

 

 そもそも論を言うと、集団的自衛権は個別的自衛権があってのものですから、米国の個別的自衛権発動が明確でない段階で(特にEEZへの落下の時は個別的自衛権発動にならない可能性大)、何も日本が集団的自衛権の発動を口にする必要はありません。あくまでも、警察権の行使できちんと対応する姿勢を固めていれば十分でしょう。

 

 小難しい内容でしたが、今は集団的自衛権のフェーズではないという事です。

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【要約】
・ 小中学校の先生の給与が、県から政令指定都市に移譲された。これ自体は良い事。
・ 国も努力をして、財源移譲は(少し不満はあるものの)なされた。
・ ただ、最後、「地域手当」の件で一部政令指定都市(北九州、堺)は苦しい状況にある事も分かった。それぞれの自治体では知恵を出しながら特色ある制度を構築すべく努力している。
 
【本文】
 今年度から、小中学校教員の給与権限が県から政令指定都市に移譲されました。これは平成26年に成立した「第4次地方分権一括法」の中で成立したものです。小中学校の先生については任命権限は市町村にあるのに、給与は県から支払われるという状況について、政令指定都市についてはその権限を政令指定都市に移譲したという事です。
 
 素直にこの移譲については評価したいと思います(その旨は国会審議で何度も石破大臣に述べました。)。他方、権限が移譲されるという事は、給与を支払うための財源がきちんと移譲されなくてはなりません。本件については、地方住民税(所得割)の2%を県から政令指定都市に移譲しました。これについても高く評価したいと思います。地方分権をするけど、リアルに税財源が移譲されるというのは稀で、いつも地方交付税の枠内でのケーキの切り分けでお茶を濁す事が多かったからです。
 
 実はリッチな政令指定都市になると、この地方住民税の移譲だけで給与の支払い分くらいは賄える所があります。具体的には神奈川県川崎市です。「やっぱり、リッチな街は違うぜ。」と思ったものです。しかし、我が北九州市を始めとする多くの政令指定都市ではこれでは賄えません。一定の条件を置いて試算すると、北九州市で140億円、福岡市で127億円足らないという事でした。なので、足らざる部分は地方交付税で手当てするという制度が組まれています。
 
 この地方交付税移譲について、私は何度か国会で質問しました。その結果、たしかに100%移譲してもらえることになりました(本当は教員の年齢構成、システム変更費用、退職金等色々な事情はありますが、基本的には100%地方交付税で面倒を見てもらえるという事でOKです。)。
 
 しかし、これは標準的な需要に対応するものであって、例えば独自の教員加配分等には対応していないような気がしたので、余り(留保財源)が出る形で移譲してくれないかと何度か国会質疑で話しましたが、これは撥ねられてしまいました。理由としては「厳格に標準的な需要のみで教員配置をやっている政令指定都市には渡し過ぎになってしまう。」という事でした。分からないわけではないですが、ちょっと残念です。
 
 で、ここで「良かった、良かった」と思っていたら、最後に重い物が残っていました。「地域手当」です。実は我が北九州市はこれで苦しんでいます。地域手当についても、各政令指定都市で適用される分はきちんと移譲されてきます。北九州市ですと3%です。しかし、これまで適用されてきた福岡県の地域手当は4.25%でした。この1.25%(4.25-3)の地域手当分は北九州市にはやってこない事が明らかになりました。聞く所では4-5億円に相当するそうです。
 
 実は県よりも地域手当が低い政令指定都市は、全国的に見て北九州市と堺市だけです。例えば、神奈川県ですと、横浜市、川崎市が16%、相模原市が12%で、神奈川県が11.5%です。お隣の福岡市も県よりは地域手当が高いです。なので、極めて限られた自治体のみの事情なので、そこまで大きなムーブメントを作る事が難しい問題でした。東京で誰と話しても、関心を持ってもらえませんでした。そもそも、政令指定都市固有の話は、関心を持つ議員の数が限られる上に、政令指定都市選出議員と話してもよく知らない方が多かったです(私が質問した時の総務大臣政務官は政令指定都市選出でしたが、同政務官ですら何の関心も持っていませんでした。)。
 
 となると、地方分権を進めた結果として、論理的には、小中学校の先生の地域手当が(地域手当の差分だけ)増える政令指定都市が大多数である一方で、減ってしまう政令指定都市が2つ(北九州市と堺市)という事になります。
 
 各自治体ともかなり苦労しておられまして、堺市は(大阪府の地域手当より低い)地域手当を適用しつつ、教員の本給を少し上げたそうです。逆に横浜市などは、当初、「地域手当は神奈川県並みで据え置けないか(16-11.5で4.5%分の節約)」と当初考えたそうです。結果、地域手当は横浜市の他の公務員と同様の水準に上げつつ、本給を下げたと聞いています。
 
 我が北九州市は地域手当は下がるのですが、その分、経過措置を講じたり、扶養手当増額、休暇の取得等の条件改善等を講じながら、最大限の努力をして、全体としての福利厚生を維持すべき努力をしたと伺っています。地域手当だけで議論するべきでなく、全体と見た判断が必要なのだという事は後日、よく学びました。
 
 ただ、この地方分権を進めたら、地域手当が増える自治体、地域手当が減る自治体が出るという事実を見て、地方分権というのはなかなか難しい、とつくづく感じました。実務に降りていけばいくほど、地方自治は人の顔が見えてきて難しいと、東京で跋扈するチープな地方分権礼賛論との差を見て取りました。
 
 なお、最後に余談を一つ。この移譲に関し、私が国会質疑をした中で判明した事がありました。これまで福岡県に配分されていた教員枠を、県の判断で北九州市相当分から32名、福岡市相当分から47名召し上げて、それを他地域に加配していたことが明らかになりました。これまではすべて県が一括で差配していたので、県の教育政策の中で特定の地域に加配する事が悪いとは全く思いません。むしろ、良い事だと思います。ただ、政令市側に何の説明もなく、これまでそういう事をやっていた点については不信感の原因になります。とても違和感を持ちました。
 
 技術的な内容で、かつ地元色の強い内容ですが、地方分権の本質的な部分をえぐる内容だと思います。本件をしつこく追った政令指定都市選出議員は私だけです。今後もこういうテーマはしっかり探して取り上げていきたいところです。
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【要約】

・ 牛肉の特別セーフガードが発動された。これは法律で決まっている事。

・ ただ、今の制度には若干の違和感あり。

・ いずれにせよ、アメリカの苦情に対しては「TPPに入っていたらこんな事にはならなかった。」と言い続けることが必要。

 

【本文】

 久しぶりに冷凍牛肉の特別セーフガードが発動されました。

 

 これは何かと言うと、前年度4半期に比べて輸入量が17%以上増えたら、自動的に牛肉の関税が38.5%から50%に上がるというものです。ウルグアイ・ラウンド交渉の際、牛肉の自由化を迫られ、日本は国際的に約束している関税率は50%なのですが、自主的な措置として38.5%まで下げるとしたものです。しかも、国内産業への影響の有無は発動要件ではありません。アカデミックな視点からは、国際的に約束する関税率を38.5%にしたわけではないというところが大きいのですが、そこはあまり触れません。

 

 そして、今年の4-6月の冷凍牛肉の輸入量が昨年同時期に比して17%以上増えたので、自動的に関税が11.5(50-38.5)%だけ上がります。勿論、国内におけるアメリカ産輸入牛肉の価格アップになります。オーストラリア産については、日豪EPAで別途の取り決めをしているので、そもそも輸入量の算定からも、セーフガードの対象からも外れています。EPAが成立していない米国、NZ、カナダの牛肉は対象になります。

 

 何故、そんな事になったのかというと、主として2点あります。豪州の旱魃で豪州産牛肉の品薄感・割高感が出た事、中国が米国産牛肉の輸入再開を決めたため、品薄感が出る前に在庫を積み上げかったという事があります。よく業者さん達がやるのが、「輸入を増やす時はセーフガード発動ギリギリの所で輸入を止めて、次の四半期に回す。」という事なのですが、そんな考慮すら吹き飛ばすくらい上記の事情が重く圧し掛かったのだと思います。

 

 過去にこの牛肉特別セーフガードが発動されたのは2003年。この時はBSEで輸入量が下がっていた所からの回復期で輸入量が増加したためでした。発動した時の輸入量は、BSE発生前の輸入量より少なかったのに発動されてしまった事から、この時は相当にアメリカから苦情を言ってきました。個人的には、そういう特殊事情を全く考慮せず、2003年や今回のように国内産業に影響が無い可能性が高いにもかかわらず、国内消費者に高い牛肉を提供する事になる制度ってどうなのかなと思います。

 

 上記で述べましたが、オーストラリアとの間ではEPAの中で別途のセーフガードの取り決めがあります。これは説明し始めると複雑なので止めておきますが、独自のルールを定めています。今、豪州産牛肉は着実に関税率が下がっていっており、最終的には冷蔵は23.5%(発効から15年後)、冷凍は19.5%(発効から18年後)まで下がる事になっています。そして、独自の発動基準を超えたら38.5%まで戻す事になっています(50%ではない。)。しかも、この発動基準はどんどん量が増加していく事になっているので、将来関税は下がっていくけど、セーフガードは発動しにくくなるという仕組みです。

 

 実はTPPでも似たような仕組みを導入する事になっていたのです。TPPでは、①最終的(発効から16年後)に9%まで下げる、②発動水準は増えていく(日豪と同じ仕組み)、③発動後の関税率も下がっていく(日豪にはない仕組み。発効から16年後ではセーフガードを発動しても関税率は9%→18%にしかならず、更に将来的な廃止も視野。)という事になっています。勿論、WTO協定で決めた牛肉セーフガードとは完全に切り分けられます(が牛肉輸入相手国のほぼすべてがTPP加盟国なので、TPPがアメリカを入れて発効すると、事実上今のWTO牛肉セーフガードの仕組みはTPPに取って代わられます。)。

 

 この件については、麻生大臣の言っている事が正しいです。「そんなに文句があるならTPPに入れば良かったじゃないか。」という事です。実際、TPPが発効していたと仮定するなら、今回の牛肉セーフガードは発動されなかったはずです。

 

 私は、日本政府はこのポジションを絶対に崩すべきではないと思っています。「おたくがそんなに牛肉で豪州との競争関係を気にするのなら、TPPを発効させてイコール・フッティングでやればいい。」と言い続ける胆力を持つのはとても大変です。米国は二国間協議で相当に「TPPと別枠で国内制度を変えろ。」と圧力を掛けてくるはずです。ここは新任の斎藤農相に期待したいと思います。

 

 以前も書きましたが、TPPが発効しなければアメリカの牛肉農家はジリジリし始めます。しかも、牛肉農家が多いのは、トランプ大統領が勝った州ばかりです。早晩、牛肉を巡ってアメリカとの軋轢が出来るのは想像出来たことです(セーフガード絡みだとは思いませんでしたが。)。

 

 本件は「筋を通す」べきポイントです。どうも発動基準の見直し、例えば四半期毎の算定ではなくもっと長期(半年等)での算定、を考えている節があります。現在の制度の発動状況を見ると、それくらいなら仕方ないかなという気もしないわけではないですが、こういうのは蟻の一穴です。一度譲歩するとズルズル行きかねませんので、戦略を立てながらきちんとした対応をしてほしいと願います。

 

 外務省時代の経験から折角こういう事に詳しいのに、畜産が強い地域選出でないのはちょっぴり残念です(笑)。

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 若干、旧聞に属しますが、先週の10日に質疑に立っています。NHK中継やその後の各TV番組でも取り上げられたので、ご存知の方も多いでしょう。全部を紹介する事は出来ませんので、ハイライトとなった部分だけをピックアップしてみたいと思います。お題は「獣医師学部新設をめぐる特区認定」です。

 

 まず、私は前川前文部科学事務次官に殆ど質問していません。「折角呼んだのに何だ!」とお叱りがあるかもしれませんが、準備をしていると「何聞けばいいんだろ?」という点に突き当たりました。大半の事は既に同前事務次官がメディアを通じて表明しているので、あとはその確認になります。であれば、特区認定に関する部分にフォーカスした方が良かろうと判断しました。

 

● 何故、突如、安倍総理は獣医師学部の全国展開への表明をしたのか。その裏付けは。

 「広域的に獣医師養成学部が存在しない地域において、一校に限り」といった趣旨の下で認められたはずのものが、何故、突如全国展開という事になったのかという疑問は拭えません。なので、どういうデータに基づいてそういう判断になったのかを山本担当相に聞きました。

 

【質疑抜粋】

○緒方委員 安倍総理大臣は、地域に関係なく二校でも三校でも、意欲のあるところにはどんどん獣医学部の新設を認めていくという発言をしておられます。ということは、二校、三校できたとしても、特に問題ないと。現在の獣医学部、全国の獣医学部の体制等を考えたときに、それが問題ないという判断がどこかにあるはずであります。しかも、その二校目、三校目も石破四条件にしっかりと沿ったものであるということはどこかで答弁があったと思いますが、そうすると、二校、三校つくっても大丈夫なぐらい、新しい分野、ライフサイエンスとか創薬分野とか、そういう新しい需要があるということをどこかで認定しているはずであります。その具体的なデータは何ですか、大臣。


○山本(幸)国務大臣 二校目、三校目という場合は、やるとすれば国家戦略特区でやるということになります。その場合に、四条件というのは当然ありまして、そこをクリアしなきゃいけないということはあるわけであります。
その場合、まさに新たな需要があるかということが一番重要になるわけでありますが、それは先端ライフサイエンス分野、あるいは創薬とかなんですね。あるいは、人獣共通感染症に対して対応ができるか。そういう分野の需要ということになります。これはもうはっきりあるということであります。ただ、では、何人要るかということについては、これは誰もはっきりと言えません。
その際に、一つ言えることは、現在の十六の大学で、定員は九百三十です。ところが、実際は千二百ぐらいとっているんですね。つまり、定員超過をしているわけであります。ところが、文科省は最近の方針で、定員超過はなるべくしないようにしろということで、これを削ろうとしているわけであります。そういうことを考えれば、それだけでも二百以上は足りないという数字が出てくるわけであります。
そういうことも考えますと、一校目、そして二校目ということは当然あり得るという計算は成り立ち得るというふうに思います。

 

● 今回、特区で新設を認めるに際して、閣議決定した「石破四条件」は満たされたのか。

 今回の特区については、いわゆる「石破四条件」というものが閣議決定されています。それが満たされた上で本件を進めているのか、というポイントがとても重要です。本件の「肝」と言っていいと思います。メディアによって、本件を重点的に取り上げてくれるところもあれば、単に「答弁が長い」という視点からのみ取り上げてくれたところもありますが、内容的には最も重要な部分だと思います。

 

 山本大臣が長々と答弁したのは、準備されたものをすべて読んだからです。という事は、これが内閣府の精一杯の答弁だという事です。読んでいただければお分かりいただけますが「穴」だらけです。

 

【質疑要約・抜粋(①~④については理解促進のため便宜的に付したもの)】

○緒方委員 全国展開する前の、一校に限り認めるというときに、石破四条件というものがありました。これは「日本再興戦略」改訂二〇一五というもので、「獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討」ということで、一つ目が、現在の提案主体による既存獣医師養成でない構想が具体化し、二つ目が、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき具体的な需要が明らかになり、かつ、三番目、既存の大学・学部で対応困難な場合には、そして四つ目が、近年の獣医師需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行うということであります。
この石破条件は現時点において満たされているというふうに思いますか、大臣。

 

○山本(幸)国務大臣 当然、そういうふうに思っているから、十一月九日の制度改正で獣医学部新設を認めるということにしたわけであります。(略)

閣議決定している特区の基本方針は、規制を所管する省庁が改革困難と判断した場合には、規制を所管する省庁がその正当な理由の説明を適正に行うことを求めております。その説明がなされない場合は、提案に基づく規制改革を進めていくべきと考えております。
この基本的考え方を今回に当てはめれば、獣医学部新設に関する五十年以上の規制改革事項について、文科、農水両省から明確な規制の根拠は示されなかったところであります。そのため、「日本再興戦略」改訂二〇一五で、まずは検討すべき事項として四項目を示し、平成二十七年度内と期限を切ったものでありますが、関係省庁である文科省が四項目に反すると立証していない以上、それだけで四項目との関係を含め問題ないと考えております。(略)
そこで、四項目について具体的に検討してきたものは次のとおりであります。

① 既存の獣医師養成でない構想の具体化等の点については、昨年の十月下旬の段階で、今治市や京都府からの提案書に、獣医師が対応すべき新たな分野や新たなニーズが明記されるなど、既存の獣医師養成大学とは異なる、獣医師が新たに対応すべき分野に重点を置いた教育内容が示され、また、さらに検討を加えることにより、こうした構想がより一層具体化していくものと見込まれると判断をいたしました。

② ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになっているといった点については、今治市の提案書、京都府等の提案書は、濃淡の差はあるものの、ともに先端ライフサイエンスや地域の水際対策の強化といった分野に獣医師が新たに対応すべき需要があると説明しております。
このように、獣医師の職域が多様化する一方で、獣医師の新たな供給は毎年、一定であることから、新たな分野における獣医師の養成需要はあると考えられております。

もとより、需要を定量的に把握することは困難であるが、製薬会社等の会社に勤務する医師の数や会社に就職する新卒者の数がこの十年間で約五、六割増加していることは、新たな需要が具体的に発生していることをうかがわせる一つの材料ではないかと判断いたしました。

③ 既存の大学、学部では困難との点については、既存の大学、学部でも水際対策や新薬開発など新たな人材養成ニーズに一定程度対応することは可能であるが、他方、新たなニーズに特化して、重点的に人材養成するには、カリキュラムの抜本的な見直しや専任教員の大幅な入れかえが必要になりますが、これを既存の組織で行うには限界があると判断いたしました。
また、入学定員を減らすことには、施設設備をつくり直す膨大な投資も必要となり、現実味がないとの声もあります。

④ 近年の獣医師の需要の動向も考慮との点については、農林水産大臣が繰り返し御発言されているとおり、産業動物獣医師の確保には困難な地域が現実にある、こうした需要動向を考慮し、広域的に獣医学部がなく、必要性の高い地域に限って、獣医学部の新設を認めることにより、獣医師会等の慎重な議論に応えるものと私が判断いたしました。

また、供給面においても、現在進められている定員厳格化が本格化すれば、獣医師の不足、これだけ現在確保が困難となっている地域や職種の問題がさらに悪化する懸念もあります。

なお、不足が見られる地域の獣医師を養成することは、獣医学部を認める直接の目的ではありませんが、水際対策を行う獣医師の養成を拡大することにより、結果として、隣接地域である産業動物獣医師の不足問題の緩和につながるとの農林水産大臣の御意見があったところであります。

 

● 「具体的需要」とは何か。

 時間も無かったので、「石破四条件」の中の「具体的な構想」、「具体的な需要」について少し具体的に聞いています。結構、驚きの答弁が返ってきています。

 

○緒方委員 (略)どれだけの具体的な需要があるのか、そして、前の、「現在の提案主体による既存獣医師養成でない構想が具体化し、」というのは何が具体化しているのか、わからないですね。
農林水産省の参画は得られなかったというのは、先ほど前川前事務次官からもあったとおりであります。そして、ワーキンググループでも、去年の九月十六日に行われたワーキンググループでも、当時の座長が、「獣医師が新たに必要な分野における研究者の需要を計測すべきだと思います。」という話をしております。
こういったデータに基づいて、その後の、十一月のいろいろな意思決定がなされていったのかというと、私はそうではないと思います。石破四条件は満たされていないんじゃないですか。
九月十六日以降、議論を平場で行ったことはほとんどないと思います。そして、このワーキンググループで、研究者の需要を計測すべきだというその座長の思いはかなえられていないと思います。
なぜ、その需要が明らかでないにもかかわらず、強引に押し切っているんですか、大臣。


○山本(幸)国務大臣 そのワーキンググループの議論の中で、具体的な、新しいところの数がどうだということを文科省の方から言われて、それに対して民間議員から、それは挙証責任の転換だ、もしそういうことを言うなら、文科省においてきちっとそのことを示すべきだというように反論されています。
つまり、需給の、その量とか数についてはっきり示すことなんて無理です。(発言する者あり)

四条件のどこに数とか量とか書いていますか。書いていませんよ。(緒方委員「具体的な需要と書いてあるじゃないですか」と呼ぶ)具体的な需要という、数とか量とかありませんよ。そういう需要という傾向が、定性的な傾向があれば十分だというように思います。

それについて、これを幾らだというような説明については、もしそれをやるとすれば、需給について、本当の需要曲線、供給曲線を文科省は書けなきゃだめですよ。書けますか。書けませんよ。それは、結局、市場メカニズムで決まっていくしかないんです。

したがって、ただし、そこに需要があるかどうかという定性的な傾向、これは、今おっしゃったように、既存の獣医師養成でない構想については、創薬などのライフサイエンス分野の研究者や公務員獣医師を養成する新しい獣医学教育拠点を目指すということが、今治からも京都からも、その中に入っているわけであります。しかも、創薬プロセスで、基礎研究から人を対象とした臨床研究の間の研究で、獣医学の治験、実験動物を用いた臨床研究などを重視する動きに対応した教育研究を推進するということが言われているわけであります。

また、国際獣疫事務局が提案する家畜の越境感染症のゾーニング対策における四国の学術支援拠点として地域の迅速な危機管理対応を支援するといった点で新たなニーズに応えるものである。

このことから、既存の獣医師養成でない構想を具体化していると言えるというふうに考えております。

 

 結局、全国展開の根拠となるデータは特に無いのです。一校に限る際の石破四条件にしても、「文部科学省への責任転換」と「強引なこじつけ」ばかりです。よくリサーチをしているわけではなく、思い込みと決め付けが極めて多い事も特徴です。最後の「具体的に検証できない『具体的な需要』」に至っては論外です。また、挙証責任については、前川前次官が言っていたように「内閣府と文部科学省がどっちが勝った、といった話ではない。国民に対する挙証責任がどうなのかが問われている。」という事だと私も思います。そこが果たされているとはとても思えない答弁でした。

 

 本当はこの後に続く質疑があったのですが、時間が限られていたのでここで終わりました。準備した質問の3割くらいしかこなせませんでした(いつもそうですが)。これらの答弁を踏まえて、来週の予算委集中審議で更に議論が深められる事でしょう。

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 今年の通常国会で2回、アメリカによる鉄鋼アンチダンピングを取り上げました。私自身、父が新日鐵八幡製鐵所で勤務し、高校卒業まで製鐵所の社宅で育ちました。父の職場は「分析」でして、生産の最前線ではありませんでしたが、私の奥深い所に鉄鋼に対する強い思いがあります。これは自分自身のライフワークとして常に高い関心を持ち続けております。

 

 外務委員会での質疑は、新日鐵住金八幡製鐵所の主力製品である電磁鋼板に対するアンチダンピングを取り上げております(映像はココ)。鉄鋼新聞にも取り上げていただきました(記事はココ)。地元で色々な方から御好評でした。特に電磁鋼板のOBの皆様に質疑をご紹介した際は、プロの視点から非常に専門的なご指摘を頂くとともに「もっとやれ。色々教えてやるから。」と叱咤激励を頂きました。熱い思いをお持ちの諸先輩方に恐縮してしまいました。

 

 そんな中、このような記事がありました。私が指摘した通りです。今後、アメリカが主に使ってくるツールは「スーパー301条」と「アンチダンピング」なのです。これは通商問題を少しでも齧った事がある人ならすぐに分かる事です。トランプ政権はアンチダンピングを多用してくる事でしょう。まだ、国政のレベルではあまり注目されておりませんが、しっかりと注目していきます。

 

 アンチダンピングについて説明をすると、これは廉価販売に市場の攪乱を防止するためのツールです。したがって、「自由貿易」というよりは「公正貿易」を追及するためのものです。ただ、すぐに保護主義的ツールに転化してしまうものなので、WTO協定の中でルール決めをしています。

 

 ただ、WTO・AD協定はその解釈等に争いのある部分もあり、日本は幾度となくアメリカとの間で、WTO紛争解決手続きによる法廷闘争を行っています。結構、日本の経済産業省・外務省は頑張っておりまして、アメリカに勝訴しているケースはかなりあります。これまで戦ってきたものの中で「これはヒドい」と思うのは、損害の認定に際しての「ゼロイング」と言われるものです。これは何かと言うと、色々な鉄鋼の輸入の中で損害の出ている部分だけをカウントして、損害の出ていない部分(マイナスの損害部分)はカウントしないというアメリカの制度です。これだと調査が始まると必ず損害が認定されてしまい、アンチダンピング課税が行われてしまいます。これは日本はよく戦っていると思います。

 

 その他にも制度の本義としては「サンセット条項」というものがありまして、WTO・AD協定ではアンチダンピング課税については「5年。ただし、正当な理由がある時は延長可。」という事になっています。しかし、アメリカは全然止める気配もなく、もう40年近いものもあり、完全にアメリカの鉄鋼産業の既得権益化しています。また、技術的に細かい話をすれば、「同種の産品(何と何を比較して廉価販売と言っているのか)」とか、「ファクツ・アヴェイラブル(どのデータに基づいて調査するのか)」といった話もありまして、非常に細かい法律的議論があります。

 

 ただ、アメリカではこのアンチダンピングについては米国国内法で定められているので、通商代表部は議会から非常に厳しく言われておりガチガチのポジションです。よく米国との交渉をすると「いや、Congressとの関係があって。」と議会をエクスキューズに使います。都合が悪くなると「Congress」の言葉を使ってきます。我々、日本の国会もそれに負けてはならないと思っています。どんどん我々側からも行政に対して、このアンチダンピングについては「ダメなものはダメだ。」と言い続けていく必要があります。

 

 さて、このアンチダンピング、実は最近はアジア諸国の多用が目立ちます。中国の過剰生産問題+投げ売りもあり、東南アジアやインド等の各国ともアンチダンピング課税をよく使います。現在、日本企業にとっては(輸出がそれ程多くない)アメリカよりも、アジア諸国によるアンチダンピング課税の方が深刻な問題となりつつあります。これは日本企業にとって実に奇妙な結果となっており、「輸出先でシェアが増えるとアンチダンピング課税をすぐに打たれるので、シェアが増え始めると輸出量を調整する。」という実態があると聞いています。ここまで来ると「公正貿易」ですらなく、完全に「管理貿易」の世界になってきています。

 

 現在は個々のケースに対応するしかないのですが、本来であればWTO・AD協定の改正が筋です。というのも、こういうルールものはマルチの交渉でやらないと意味が無いのです。例えば、アメリカが日本に対するアンチダンピング課税についてのみ制度を変える事は無理なのです。だから、世界全体でルールを改正する動きにしか乗れないはずなのです。今、二国間の自由貿易が百花繚乱ですが、実はそれでは対応出来ない事があるのです。こういうAD協定のようなルールであったり、農業の補助金削減のような話であったり、これらは何処まで行っても二国間やTPPのような協定ではやれない(やろうと思わない)のです。

 

 冒頭引用した外務委員会での質疑で、ちょっと外務省は腰が引け気味でした。トランプ大統領との関係を忖度して、今はあまり強いポジションを出しにくいのでしょう。だからこそ、国会側から厳しく本件は指摘していきたいと思います。日本の交渉官に「うちのDiet(国会)がうるさくて。」と言わせるためにも。

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 何となく盛り上がっているようで、あまり盛り上がっていない日EU経済連携協定ですが、先日党内で聞き取りをしました。その中で幾つか気になっている事を質疑しました。

 

 その中でも、大きいだろうなと思うのは「英国の扱い」です。今回の交渉では英国を含む形で交渉を行っているとの事でした。しかし、いずれBREXITでEUから離れていくわけですから、どういう結論であろうとも少なくとも現在の関税同盟からは外れます。となると、そもそも現在EUの単一権限で交渉している範疇から外れます。

 

 なので、日EU経済連携交渉が纏まったとしても、英国が抜けた段階で再交渉が必要となります。特に農林水産品で関税割当を設定しているものについては、英国分については関税割当の枠を小さくする事になるでしょう(でなければ、英国分について過剰な割当枠を提供している事になりますので。)。国会承認との関係でも、日EU経済連携協定、(数年後に)再交渉分と2回掛かって来る事が現時点で既に確実なものとなっています。始めから再交渉が確実な協定というのも若干奇妙な感じはします。

 

 それ以外にもEUにおける金融機関のシングル・パスポートの扱いがどうなるのか、という事も気になります。これは、EUに加盟するいずれかの国で免許を取得した金融機関は、他のEU加盟国においても金融商品の販売や支店設立などの業務が認められる制度でして、日本の金融機関は英国を入り口としてEUに入っていっているケースが多いので、ここがおかしくなると日本には影響大です。ここは日英間でも議論しているそうです。

 

 その他、「和牛」、「日本茶」、「日本酒」といった地理的表示、商標、名称を保護する事は出来ないのかなという思いがあります。日本の仕組みではこれらの名称は保護されていません。例えば、現在国内法では「球磨焼酎」、「八女茶」といったものを地理的表示として保護していますが、多分、そういう名称を保護してもEU市場ではあまり意味がないと思うのです。むしろ、「Japanese Shotchu」、「Japanese Green Tea」という事で変なものが出回らないようにすれば、少なくとも当面はそれで十分のはずです。

 

 「和牛」についてはかなり一般名称化しており、世界に日本産でない「wagyu」が既に相当に広まっていますので(例:Australian Wagyu)、今更地理的表示で保護する事は難しいようです(カマンベールという名称をフランスで保護しようとしたら既に一般名詞化しているのでカマンベールは保護されないというのと同じだと思います。)。ただ、「スコッチ・ウィスキー」が地理的表示で保護されているのであれば、日本茶、日本酒くらいは何とかならないかなという話です。

 

 現在の交渉でEUからはかなり大量の地理的表示を保護しろ、と言ってきているはずです。特にフランス、イタリアあたりはうるさいです。逆に先日、デンマーク政府関係者と話したら、あまり思いがありませんでした(逆に豚肉には強い思いがありました。)。いずれにせよ、この件では向こう側の取り分が大きいのですから、我が方も少しくらい無理を言って良いのではないかと思います。

 

 あと、日本はEUとの交渉開始時点で「前払い(down-payment)」をしています(公正性を期すため、これは民主党政権時にやった事を明記しておきます。)。主なものとして、①先進安全自動車技術指針の見直し、②情報を一元的に英語で提供する政府調達の運用改善、③建築用木材の基準強度に関し欧州規格との同等性、④医療機器の品質管理基準を国際基準に整合させる、といった話です。交渉入りの条件として、日本はこれらを約束しています。

 

 最近、日EUのEPA交渉について色々な人と話した際、この「前払い」の話をしたのですが、与野党含め、誰も本件を覚えていないようで一様に驚いていました(笑)。TPPの時は「前払い不可」でかなり盛り上がったのにな、といつもその格差に驚きます。交渉入り前にこの譲歩をしたことは、当然、交渉結果全体のバランスの中で勘案されなくてはなりません。そこは役所側に釘を刺しておきました。

 

 TPPが大変な交渉であるのと同じくらい、EUとの交渉も大変です。それにも関わらず、国内の関心が格段に違う事にとても違和感があります。国会で鋭意議論していきたいと思います。

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 憲法改正の議論の中で、「加憲」という考え方が提示されています。この考え方、気持ちは分かるのですが、少し注意する必要があります。恐らく多くの方が考えるものとは幾分か違います。

 

 まず、何を加えるのか、という事から考える必要があります。3パターンあると思います。

 

① 今の憲法の解釈の中で認められているものを加える。

② 今の憲法の解釈の中で禁じられているものを加える。

③ 今の憲法で(禁じられても、認められてもおらず)全く想定されていない事態について加える。

 

 憲法改正の対象になりそうな事項において、①である事がかなりあります。ここはとても注意が必要です。

 

 現在の憲法でも認められているものを加えるとする場合にどうなるかと言えば、以下の2パターンが考えられます。

 

Ⅰ.それらの新規の規定については「現行憲法で実は認められていなかった。」と解釈し直して、加憲部分で新規の権利義務関係を作る。

Ⅱ.加憲部分では新規の権利義務関係は生じず、単に「念のため」に確認するためだけ。

 

 論理的にこの2つしか無いはずです。つまり、解釈改憲を伴うか、単なる「念のため」にしかならないか、のどちらかです。

 

 何故、そういう事になるかと言えば、現行憲法の歩みがあるからです。現行憲法の中で色々な解釈を駆使してやってきた事から我々は完全に自由になり切れない部分があるため、加憲では上記のような結論しか導けないのです。

 

 では、②及び③についてはどうでしょうか。こちらは純粋な意味での「加憲」に近いです。しかし、例えば「緊急事態条項」について考えてみましょう。やはり、特定の事態において個人の人権等に穴を空けるわけですから、既存の憲法体系に解釈の変更を迫る部分があるように思います。そもそも論として、加憲をした結果、現行の憲法体系の権利義務関係に全く影響を与えないようなケースは殆ど無いと思います。

 

 加憲に留まらず新たな憲法を自由に書いていくのであれば、その自由度はかなり高いです。しかし、加憲という考え方を前面に押し出そうとする時には上記のような事情が生じます。加憲を前面に出して憲法改正をしたら、付随的に既存の憲法体系の解釈改憲がくっ付いてきたというのはあまり筋が良くありません。逆に(特に①のケースにおいて)単に「念のため」であれば、その意義はとても減殺します。多くのエネルギーを割く程の価値があるのかも疑問です。

 

 なので、憲法改正に際して、無理をして加憲アプローチに乗らない方がいいと思うのです。加憲論者の真摯な気持ちは分からなくはありませんが、こういう結論が導かれるアプローチを強く出し過ぎると憲法改正の議論が混線しかねません。やるなら真正面から「(個々の権利義務関係を修正する)憲法改正」をやると言うのが正攻法です。

 

 なお、言っておきますが、私は(9条を含め)憲法改正論者です。

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 昨今、政治関係で「個人メモ」という言葉が氾濫しています。例えば、SBS米の調整金調査で農水省が各業者さんから聞き取った情報はすべて「個人メモ」というかたちで整理されました。また、現在の加計学園関係でどんどん出てくる文書は、その大半が「個人メモ」と説明されています。

 

 この「個人メモ」という言葉は何を意味しているかと言うと、「行政文書でない」という事を含意しています。私自身、この2年、衆議院内閣委筆頭理事をやっているので、内閣府が所管する公文書のあり方について常に強い意識を持ってきました。その立場から言うと、ちょっと問題じゃないかなと思っておりまして、この行政文書についてひも解いてみたいと思います。

 

 まず、公文書とは何かというと、公文書管理法においては、行政文書、法人文書、特別歴史公文書等を指します。この内、法人文書というのは独立行政法人等の文書、特別歴史公文書等というのは国立公文書館等に移管されたものです。そして、普通にお役所の文書といわれるものが行政文書です。

 

 では、行政文書とはどういうものを指すのかというと、公文書管理法に以下のような規定があります。

 

【公文書管理法第2条4(かっこ部分を省略)】

4  この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。(以下略)

 

 これは以下のように3つのパーツに分かれています。

 

① 行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書

② 当該行政機関の職員が組織的に用いる文書

③ 当該行政機関が保有している文書

 

 この要件に当てはまらないものを「個人メモ」と言っています。とすると、加計学園関係でよく出てきて、文部科学省が「個人メモ」と説明している「萩生田官房副長官ご発言概要」については、これのどれかに当てはまらないはずです。

 

 では、どれに当てはまらないのでしょうか。まず、①は職務上作成した事は確実でしょう。③についても、共有フォルダに入っていたわけですから文部科学省が保有している文書であることも間違いないでしょう。では、②でしょうか。「萩生田官房副長官ご発言概要」文書は省内メールで10名程度の方に共有されていたそうです。それがどうして「組織的に用いていない」と言えるのでしょうか。この「組織」の考え方は「2名以上」とされています。ちょっと無理があると思います。

 

 更に言うと、この「個人メモ」と切り捨てるやり方はとても危険なのです。それは、その文書を作成した特定の人物にすべての責任を押し付ける行為だからです。「行政機関たるうちの役所の文書でない」という事ですから、その文書の中身について役所として一切の責任を負わない事になります。では、その責任は誰かというとすべて作成者です。このケースで言うと課長補佐級職員でしょう。しかも、それが上司の大臣、副大臣、局長辺りから「間違っている」と言われてしまうと、つまりは「おまえは間違った事を勝手に書いた無能な職員だ。」と言い切っている事とほぼ同義です。

 

 「個人メモ」と切り離そうとする行為は、その行政機関内の「和」を著しく乱します。行政機関の上層部のメンツを守ろうとするがあまり、立場の弱い一職員に責任を押し付ける行為となっています。それは社会通念上は「卑怯な行為」と捉えられるべき事ではないでしょうか。そう思っている文部科学省員がいるからこそ、現時点においても、文部科学省内から政権の意向に対峙する勢いが止まないのです。そこをよく政権幹部は理解すべきだと思います。

 

 普通に聞いてみると、あまり意識しない「個人メモ」という言葉の裏に潜んでいる「責任を弱い立場の職員に押し付けようとする卑怯な目論見」は看過してはならないと思います。

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