子供たちを連れて歯医者へ。

ちょっと遅れてしまい、慌てて駆け込みました。


アメリカの歯医者さんは予約時間に遅れたら容赦なくキャンセルされ、キャンセル料も請求されます。



女性の歯医者さんに、

「では、お子さんたちを預かります。

お母さんは待合室でお待ちください。」




「え…。いや、うちの第1子はジッと待てないので、私が付き添います。」




「…もう5歳でしょ?

大丈夫よ。」




「いや、うちの5歳児は大丈夫ではないと思うので…。」




「私たちはプロフェッショナルよ。

私に任せて。」




「…わかりました。」



不安になりながら、待合室で座らずに待っていると、



「座りなさい!」


歯医者さんが第1子に怒鳴っていました。


私が甘やかしていると思われるかもしれませんが、私は第1子がジッとできなくて、他人に怒鳴られるのを見ると、

第1子を見て、心が痛くなるんです。


うまく言えませんが、第1子は悪いことをしているつもりは一切ないんです。


ただジッとできないんです。


母親以外の他人に叱られることももちろん必要なのかもしれませんが、

他人は第1子がワガママやふざけていると、誤解して叱りがちです。


誤解をされて、怒鳴られる第1子を見ると…。


やっぱり不憫で、それなら誤解して怒鳴られる機会を回避したいんです。



「すみません、やっぱり私が隣にいます。」




何とか子供3人分の歯科クリーニングと、フッ素を塗ってもらいました。



私はヘトヘトになりながら…


ふと気づくと、


あの野郎夫は

どこにいった


気づいたら夫がいませんでした。


一気に

脱落感


歯医者さんから診療明細の説明やら、

子供たちの歯の状態を褒められるも、

全く頭に入らず…。



子供たちを連れて、

歯医者の外の駐車場へ。



え!?


…車がないポーン


ふと、見渡すと…


大通りを挟んだ遠くに…


薬局の看板


ああ、

疲れた…




夫に電話するも、むなしく鳴り続ける呼び出し音…


怒り、悲しみ、落胆、失望、

そして絶望…



この繰り返し。


私は子供たちの手を繋いだまま…


大通りぞいの歩道にしゃがみ込みました。




通りすがりの1台のミニバンが

私に軽くクラクションを鳴らしてきました。


しかし私は反応できませんでした。





何とかなるかもしれないと願ったこの1ヶ月は、

まったく無意味だった。


市販薬依存性を、

米軍に黙認され、

夫は免罪符を得たかのように、

また咳止めを乱用するのか…



この1ヶ月の疲れも押し寄せてきました。


夫が軍警察に連行され、

私が火事を起こし、


児童相談所と保育園に助けられましたが、


異国のアメリカで、幼児3人とのシングルマザー状態。


そういえばこの一ヶ月、「パパはどこ?」と聞かなかった子供たち。


第2子は一度、「パパ〜」と泣きましたが…。



あの人がいないのが、

平気でなかった私。


いなくても、

平気だった子供たち。


これはむしろ逆だったのか…?


どっちなのか、

もうわかりません。


私は大通りで立てなくなり、

しゃがみ込みました。


体の気力が一気に抜けたのです。


しかし手だけは…

力強く3人の手を握っていました。


特に第1子の手を離すと、

大通りで大変危険なので…


気力はないまま、

必死で子供たちの手を握りました。



すると…

1人の白人女性が私に近づいてきました。




…お隣さんのマリンダさんでした。

いつも親切にしてくれ、以前は仲が良かったお隣さんでした。



マリンダさんは困惑したような笑顔で、

「さっき運転していたら、歩道でしゃがみこむあなたたちを見かけたから…。

クラクションを鳴らしたけど、あなたは気づかなくて…。」


マリンダさんは車を止めて、わざわざ歩いて戻ってきてくれたのです。


「凜…、ここにしゃがみこむと目立つわ…。

女性と子供たちだけ、悪い車に誘拐されたら大変よ。

とにかく私の車に乗って。」



マリンダさんは、何故私がしゃがみこんでいたのか、車はどうしたのか、聞かないでくれました。


そしてマリンダさんの車の中で…私は、

今まで専門家にしかしてこなかったこの話をしました。


「実は…夫が市販薬を乱用しているんです…。」




「えっ!?市販薬って!?」




「マリンダ、あなたに謝りたいことがあります。

7月、私たちの夫婦喧嘩で、あなたの次女ちゃんを驚かせてしまった…。

そのことをずっとあなたに謝りたかった。


でもこの事情をあなたに説明できず、

嘘もつきたくなく、


あなたに今までずっと謝らなかった…。

ごめんなさい。

そしてあなたの次女ちゃんにも、嫌な役をやらせてしまい、本当に申し訳ないことをした。」




「そ、そんなこと気にしなくていいのよ…。

それよりも、あなたがそんな大変な状況だって知らなかった…。」




「もしかしたら、もう全部がダメかもしれない…。」




「ああ、神様…。」