『低開発の記憶(メモリアス)』修復フィルム、カンヌで上映 | MARYSOL のキューバ映画修行

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【キューバ映画】というジグソーパズルを完成させるための1ピースになれれば…そんな思いで綴ります。
★「アキラの恋人」上映希望の方、メッセージください。

遅ればせながら、今年の5月20日「カンヌ・クラシック」で、キューバ映画の最高傑作『低開発の記憶 メモリアス』(1968年)が、修復されたフィルムで上映されたことを報告します。


こちらのサイト によると、「カンヌクラシック」では毎年20本前後の修復作品を上映しているそうで、今年はキューバを含めこれまで未選出だった8カ国が招待されたとのこと。


『低開発の記憶』の場合は、キューバ映画芸術産業庁(ICAIC)とフィルム・ドゥ・カメリアの提携のもと、チネテカ・ボローニャの映画修復研究所 L’Immagine Ritrovata で修復作業が行われた。
資金を提供したのは、ジョージ・ルーカス・ファミリー・ファウンデーションとフィルム・ファンデーションのワールド・シネマ・プロジェクト。


以下は、このサイト を参考に自己流に翻訳・紹介します。


『低開発の記憶 (メモリアス)』 トマス・グティエレス・アレア監督(1968年・キューバ)


変革期のさなかのキューバを多角的に捉えたドキュドラマ(コラージュ)


     メモリアス

シノプシス

主人公セルヒオはプチブルのインテリ。米国に移住する妻や両親と別れキューバに留まり、国有化された不動産の家賃収入で暮らしている。過去にも未来にも懐疑的な彼は、急激に変化する社会と人々を冷徹に観察し綴っていくが―



この映画は、体制への非難-それも極めて正当な-を問題化することなく、己の信念に忠実であり得た芸術家のまがいなき成熟度を示す作品である。
La película es la obra de la madureza absoluta de un artista que supo permanecer fiel a sus convicciones sin polemizar sobre lo que reprochaba, con toda la razón, al sistema.


革命とそれを見つめる主人公―トマス・グティエレス=アレア監督の分身のような―の眼差しを通して、アレアは変化のさなかにある島国キューバの肖像画を描く。
経済、社会、人間的視点を交えて構成された、その画面には、ラジカルで新しい真実を前にしたときの人間の条件と社会状況がふんだんに盛り込まれている。
『低開発の記憶 メモリアス』は、革命後に米国で上映された初めてのキューバ映画だった(1973年)。

今、キューバは、米国との関係正常化に伴い、新たな変化の局面を迎えつつある。
この状況において、『低開発の記憶(メモリアス)』は、改めて意味に溢れている。


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ミルタ・イバラ(故トマス・グティエレス=アレア夫人)の感謝の言葉   2016年5月20日カンヌ


この度のご招待に対し、カンヌ映画祭およびカンヌクラシックの皆様に心から感謝いたします。
そしてチネテカ・ボローニャとその修復チームの方々に心からお礼申し上げます。おかげさまで極上のコンディションでこの素晴らしい映画を鑑賞し続けることが可能になりました。


映画が製作されて48年が経ちましたが、本作は今も観客と批評家を深く感動させ続けています。
1973年にニューヨークで上映されたときには、米国の映画評論家に大きな衝撃を与えました。


アーサー・クーパーはニューズウィーク誌にこう書きました。「『メモリアス』は間違いなく傑作だ。複雑で皮肉で極めて知的である」。
「ニューヨーク・タイムズ」の批評家、ヴィンセント・キャンディは、その年の映画ベストテンに本作を加えました。
そして映画批評協会は、監督のトマス・グティエレス=アレアにプレートと2千ドルを授与しました。


また、批評家やシネマテークの投票によるアンケートで、イベロアメリカ映画のべストワンに選ばれました。
映画批評家のジュリアン・バートンは、本作を「“政治的”映画で、歴史的状況と個人の意識との弁証法的関係を提示しようとしている。すなわち、ブルジョア知識人の役割である」と言っています。


キューバの映画監督、フェルナンド・ペレスは、『メモリアス』はアンガ―ジュマン(現実問題へのコミット)に関する映画であり、映画がコミットしていることが最大のメリットであると評しています。


最後に改めて、ラテンアメリカおよび世界の映画の中で道標となった本作の修復版を皆様と共に鑑賞させていただけることに感謝申しあげます。
修復された『メモリアス』を見られること、栄誉あるカンヌ映画祭での上映を機に新たな歩みが始まることは素晴らしいことです。どうぞ映画を楽しんでください。ありがとうございました。


Marysolより一言
かつてハバナ映画祭でミルタ・イバラさんと会ったとき、アレア作品の保存のことをとても心配していたことが忘れられません。とりあえず1本でも修復されて良かった!
http://ameblo.jp/rincon-del-cine-cubano/entry-10262590326.html