幻夜の感想と考察がっつりネタバレ | [ridiaの書評]こんな本を読んだ。[読書感想文]

[ridiaの書評]こんな本を読んだ。[読書感想文]

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幻夜  の感想と考察。
がっつりネタバレ。
推測が間違っているかもしれないのでご注意。



記事の後半には白夜行  の結末に関わることも書いているので、白夜行 幻夜  両作読了後がオススメ。

定食屋おかだのユウコ
健やかな女の子。
雅也とお似合いで、使い古された言葉ながら、もっと早く出会っていたら……と思わずにはいられない。
あの事件がなければおかだの近所に引っ越してくることもなかったから、出会えるはずもないのだけれど。
ああ、おかだみたいな定食屋が近所にあったらなあ。


美しさの追求
新海美冬は美を奉じている。
宝石店、美容室、エステ、アパレル、整形。
自らも美に近づこうと努力するし、他者も美しくさせようとする。
人間も金銭も利用する道具にすぎない。
誰も何も信じられない彼女にとって確かなことは、その目で見ることが出来る美しさ、美しいということ、それしかないのかもしれない。


職人・技術者と呼ばれる人間について
水原雅也の職人としての技倆や誇りが窺える場面にシビれた。
指の感触だけでミクロン単位の繊細な仕事をする。雅也は有能な技術者であり職人である。
そんな彼が転落してしまうことのやり切れなさを感じた。
日本の工業は雅也のような名もなき職人に支えられているのに、小さな町工場によって支えられているのに、彼らの立つ足場の脆さといったら!
お人好しで愚かな父、どうにもならない経済情勢、タイミングの悪さ、天災、美冬との出会い。
そうした諸々が彼の立つ地面を崩していき、とうとう転落してしまった。
けれど、はじめからその足場はぐずぐずに脆かった。
町工場はどこも綱渡りの操業で、設備も技術もあるフクタ工業ですらまったく余裕がない。
熟練工でもその技倆にふさわしい評価がされない。
これは小説だけれど、時代は1995年から2000年のはなしだけれど、今だって変わらない現実。
彼らのような人たちがもっと丁重に扱われる世の中だったなら、と思う。


新海美冬の来歴
家具屋に就職。
ブティック「ホワイトナイト」に転職。
新海美冬は風と共に去りぬ のスカーレットオハラのような「ホワイトナイト」女性経営者に憧れる。
その女性経営者の家に居候。
その女性経営者とともに外国に行く。
帰国後、女性経営者とともに里帰り。翌日、阪神淡路震災に遭う。
(ここまで本物)

地震を好機として、女性経営者は本物の新海美冬を殺害。入れ替わりを企む。
本物の新海美冬は身元不明遺体として処理される。

入れ替わった偽の新海美冬は、震災のその日、叔父を殺害する水原雅也を目撃。
弱味があり、強姦から助けてくれたり弱者に優しい雅也に利用価値を感じ、手駒にする。



曽我の失踪と死
曽我が殺害された理由は、新海美冬の顔も女性経営者の顔も両方知っていたから。
曽我には何の落ち度も無かった。
雅也は殺害や解体に協力させられたが、その理由(曽我は脅迫者だから排除しなければならない)は嘘だった。


美冬は美冬ではなかったし、雅也を愛してもいなかったし、最初からずっと嘘をついていた。



白夜行との繋がり
美冬が整形を繰り返した雪穂らしいのは、セリフ、ミルクティーが好きなこと、行動パターン(無関係のような男と協力して犯罪を犯す)などによってわかる。

しかし作品としては全く別物という印象をうける。
白夜行がノワール文学だとしたら、幻夜はピカレスク小説だ。

雪穂と美冬、どちらも周囲の人間を騙し利用し上昇しようとする美しくも恐ろしい女。

しかし、雪穂には哀しみがあった。情があった。それは桐島亮司との絆だったろうと思う。それが物語の底に静謐な痛みのように流れていた。

が、幻夜の美冬に枷となるものは何も感じない。冷酷な決意。水原雅也は雪穂に対する亮司のような立場だったが、そこにあったのは絆ではなく嘘だけ。太陽もなく、ほんとうの夜もない。


 

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水原雅也の思い
なぜ裏切った。なぜ俺の魂を殺した。自分たちには昼なんかないとおまえはいった。いつだって夜だといった。夜を生きていこうといった。
それでもよかった。本物の夜ならばよかった。だけどおまえはそれすら与えてくれなかった。俺に与えられたのは、すべて幻だった。
「俺と彼女だけの世界に入ってくるな」




新海美冬語録
「甘いことをいうてたら、生きてかれへんよ」
 
「射精できるとなったら、それがセックスの目的になる。雅也は快感を求めることを優先する。それでは凡人と一緒や。あたしらはそれではあかん。セックスするかぎりは、相手を支配するつもりでないとあかん。自分の快感は二の次三の次や。そうするためには射精を目的にしないこと。それしかない」
「自分の利益にならんセックスになんか何の意味もない」

「ええ年して、結婚に理想を求めてどうするの。結婚はね、人生を変える手段なんよ。世の中で苦労してる女を見てみ。みんな旦那選びをしくじってる。真面目第一とか、子供好きとか、そんな寝ぼけたようなことを結婚の条件にしてるからや」
「女が女の武器を使って何が悪いの?男かて、それは百も承知やろ」

「ねえ、昼間の道を歩こうと思たらあかんよ」
「あたしらは夜の道を行くしかない。たとえ周りは昼のように明るくても、それは偽りの昼。そのことはもう諦めるしかない」

「トラウマ?」
「何かっていうとその言葉を持ち出してくる人が多いわね。幼い時に何か傷つくことがあって、それが私を操っているというわけ?そんな安っぽいストーリーは勘弁してちょうだい」 

 「こんなに素晴らしい夜は初めて。幻みたい」



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知らなかった…と思ったらWOWOWだって。そりゃ知らんわ。
 

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名作と名高いドラマ版。
堀北真希と山田孝之が出演。でも観てない。

 

 

コメントで教えていただきました。

(2017/10/16)

 

ドラマが綾瀬はるかと山田孝之出演。

映画が堀北真希とか高良健吾出演。

 

陳謝して訂正させていただきます。