白夜行の真相・・・謎についての検証考察 ネタバレです | [ridiaの書評]こんな本を読んだ。[読書感想文]

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タイトルにもありますが、がっつりネタバレしてるので白夜行
を読んでない方はお気をつけください。




人物ごとに謎ときしていきたいと思います。


もちろんこれはわたしなりの解釈なので、正解とは程遠いかもしれません。






1、桐原洋介にまつわる謎


誰が殺したのか?動機は?計画的犯行か?


殺したのは息子の桐原亮司。凶器は愛用の鋏。


動機は(友人・恋人の)雪穂を父が性的虐待したため。またその現場を目撃したため。


笹垣刑事は偶発的事件だったと述懐しているが、計画的だったと思う。ダクト遊びするのに鋏を携帯しているのは不自然だし、性行為をアパートではなく廃ビルでするのも不自然。(母文代が公園で時間を潰していたのはアパートを空けるため。いつも廃ビルを利用していたなら文代はアパートを空ける必要はなかった)


計画したのは雪穂で亮司はそれにのせられただけという可能性もある。




2、寺崎忠夫にまつわる謎


事故だったのか?他殺なら誰が殺したのか?その動機は?ライターは誰のものか?


事故にしてはタイミングがよすぎるので他殺。


殺したのは雪穂か亮司か両方。


動機は雪穂を性的虐待したため。洋介殺しの容疑者・犯人に偽装するため。


ライターは洋介のもの。




3、西本文代にまつわる謎


事故死か自殺か他殺か?


どれもあり得るが、雪穂が見殺しにしたのは確実。味噌汁のふきこぼれは雪穂の偽装。鈴のついた鍵をもっていたのに不動産屋に解錠を頼んだのはアリバイ作りのためだと考えられる。


動機は貧しさからの脱出。売春強要への恨み。下賤な母への侮蔑。


おそらく文代は自殺だったと思う。洋介の死は金のために娘を売っていた自分の責任(犯人は娘の雪穂)だと気付いていたはず。




4、篠塚美佳にまつわる謎


誰の犯行か?なぜ未遂ではなかったのか?


亮司ではない誰か別の雪穂の言いなりになる男の犯行。亮司は唐沢礼子を殺害したあと典子に「何もかも終わった」と言っている。このことで19年前から続く白夜行は亮司の中では始末がついたのだと思う。


雪穂の「今のあなたは、あのときのあたし」という言葉から美佳に過去の自分を投影させているのがうかがえる。もちろん第一には魂を奪う行為によって美佳を掌握する手段としての強姦だが、カッコウ運送のカッコウに隠喩されているように雪穂の過去を美佳に托卵するために既遂である必要があった。




5、桐原亮司にまつわる謎


事故死か自殺か?


自殺。あそこまで追い詰められたら逃げられないので死んだ。ずっと前から覚悟していたと思う。


「性」の謎。AB型精液は?


女性の身体の中には出したことがない。出せない。これは少年期のトラウマと思われる。


父は小児性愛者(しかも相手は雪穂)、母は日常的に一つ屋根の下で従業員の松浦勇と性行為にふけっている。この異常な環境が正常な性行為ができなくなった原因だろう。


しかし手と口でなら経験があるというような記述、雪穂は高宮誠との性行為において手と口は使わないという記述から、雪穂の手と口によって亮司は射精することができ、AB型精液を採取できたと暗示している。


「手が小さいんだな」というつぶやきは、亮司の性幻想に「大きな手」があることを示す。小児性愛者である洋介の大人の手はこどもの身体に比していっそう大きく見えたはず。


雪穂を愛していたか?


異性として愛してはいなかったと思う。父洋介が雪穂を破壊したと思っていたので、その贖罪意識と連帯感から献身を尽くしていた。


洋介殺害事件後に廃ビルが風俗ビルに改装したときはじめて「男が女を買う店」の存在を知りそれでも「そんなことを商売にする女がいるとは思えなかった」と言っていることから、雪穂が母親によって売春させられていたことを知らなかった可能性もある。もしかしたら洋介が雪穂を「買う」以前に既に雪穂はバラバラに破壊されていたかもしれない。


白夜を行くこと。どう生きたかったか?


19年前からの因縁から薄闇を生きることを余儀なくされていた。しかし「昼間に歩きたい」と思っていた。必要に迫られれば冷静に他人を裏切り陥れるが、友彦や典子への優しさともとれるような誠実さもまた亮司の持つ一面であり、芯にある善良さを彷彿とさせる。




6、西本雪穂にまつわる謎


なぜ川島利江子を陥れたのか?


高宮誠を獲得するためが第一。篠塚一成との恋愛への嫉妬もあると思う。ただし一成への恋情でも江利子への嫉妬でもなく、一成への嫉妬。思春期からずっと親密な交際をしていた女同士の友情にひびを入れ、江利子を勝手に変身させた一成への意趣返しのように思う。江利子のことは雪穂なりに大事に思っていたからこそ未遂ですませた。(藤村都子は既遂の可能性がある。)


高宮誠との交際と結婚と離婚の考察


交際相手に選んだのは結婚相手として条件が良かったから。堕胎の一件は男性版の「魂を奪うやり方」というのと、少女時代の性的虐待で妊娠機能に問題があった場合或いは妊娠を忌避する気持ちから、のちのち「堕胎したから妊娠できない」という言い訳をつくるため。


結婚生活を継続させる意思はあった。婚約中も甲斐甲斐しく姑に好かれる嫁を演じていたし、夫に嫌な顔をされれば株もすぐやめた(ふりをした)。しかし生きがいとなった仕事までうばわれそうになったとき、継続の意思は折れ性行為でも濡れなくなった。


離婚にさいしては夫有責になるよう(DV・不倫)画策したが、ほとんど高宮誠の自業自得の範囲なので、雪穂にしては手ぬるい。高宮誠には雪穂なりに情があったのかもしれない。


篠塚康晴への気持ちは?


義母唐沢礼子に対するのと同じ、巣を提供してくれる人という感覚。


篠塚一成への気持ちは?


愛情ではないと思う。しいて言えば執着、恋着。油断ならない相手であり気になる人物。


亮司を愛していたか?


愛してはいなかったと思う。信頼していたし大切に思ってはいただろうけど、それは共犯者としての連帯感があってのこと。愛していたなら大阪店オープンに呼ばなかったはず。笹垣刑事の存在も隠していたのは亮司もろとも過去を切り捨てるため。


白夜を行くこと。どう生きたかったか?


「あたしの上には太陽なんかなかった。いつも夜。でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。太陽ほど明るくはないけど、あたしには十分だった。あたしはその光によって、夜を昼と思って生きてくることができたの。あたしには最初から太陽なんてなかった。だから失う恐怖もないの」


「大阪の夜は、本当はこれからが本番なのよね」


「勝負はこれからやで」


今までは太陽に代わって薄闇を照らす亮司がいた。しかしこれからはもういない(死の暗示)、本当の闇、ほんとうの夜をひとりで戦う決意。


彼女は一度も振り返らなかった。





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