Mr.REDMOON 後藤惠一郎オフィシャルブログ K-GOTO'S EYE Powered by Ameba -2891ページ目

哀しい園児

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叔母と和解した母は向島へ行きだし、たまにオレを連れ出しては叔母と三人で浅草雷門、仲見世、花やしき‥時には国際劇場で映画と歌謡ショー‥東映の時代劇と美空ひばりはオレの心を捕えて終生離さないでいた‥。前出のトウチャンとは?の答えは実に簡単で‥「そのうちアンタにも作って上げるから‥待ってなよ、お利口にしてればね(笑)」‥て、‥作るものらしい‥。むしろ「お利口」にしてなくちゃいけないのは母のほうだろうが、オレは納得した。向島の毎日は楽しかった‥相変わらずあちこちに預けられたが隣に越してきた若いヤクザと情婦のカップルは最高だった!昼間は美人の芸者と銭湯へ‥夜はバイクに乗って兄ちゃんと上野へ‥飯食ってからスマートボール、射的‥。散々可愛がってもらったがある日突然いなくなる‥そんな事が日常の長屋だった。季節は流れ新緑の春、オレは幼稚園の入園式をめでたくむかえる事となる。祖母の家から子供の足で15分、付き添いは母である。坊主が園長の定番仏教系〇松幼稚園‥一年保育の松組であった。優しい女先生との挨拶
がわりの合唱はムスンデヒライテ‥歌謡曲がメインのオレには全く覚えのない「誰でも知ってる子供歌」が‥唄えない‥、母を見ると大笑い!‥オマケに口パクでごまかして必死のオレに近付いてきて‥「知らないくせに(笑)口パクパクで可愛いよッ(笑)」、周りの父兄に「歌謡曲なら上手いんだワ(笑)教えてないのにねぇ(笑)」って大声で言いふらす始末‥肝心なムスンデヒライテを何故!ドーシテ!教えてクンナカッタのかなぁ〓この親わァ〓。‥オレはこの歌が今だにうまく唄えない‥。母のせいで有り得ないトラウマがまた一つ増えたのだった。‥

タオラー

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レッドムーンがまだレッドムーンデザインアンドカンパニーという名称だった頃‥手ぬぐいやタオルの職人巻きが流行り始めた‥。今だってよく見掛ける「ガテン系の粋」である。原点に返る!‥にあたりオレの仕事する際のトレードマークとしたい!ついてはオリジナルタオルをNo.1マークに竜を絡めて製作する!‥白地に黒プリントでシンプルに。竜と1は縁起の最高によい象徴だから気分も最高!‥ついでに「金運」だって良くなる呪いもシールしてさ(笑)頭に巻かないのなら東の方角に飾って「良運」を待つ事にしてくれ!!

BATTLE

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自由奔走、身勝手で我が儘‥、しかし明るく社交的で泣虫で優しい笑顔の母がオレは大好きだ!叔母や祖母とは次元違いに愛していた。だがなんだ!どうしたッ??!クレイジーミヨに変身した刹那にオレの右手の人差し指を摘むとこともあろうに鏡台にあった剃刀でその指先をカァ~ット!‥‥!‥‥!!!「わ、わッウァ~~〓チィ、チィ、血ぃ~ッ」ロバおばさんは驚いて化け猫みたいに跳ね回り親戚はオレの爪だけでぶら下がっている人差し指をくっつけて抱き抱える!‥!不思議な事にオレに痛みはなく、ただならぬ騒ぎにビックリ泣きしてるだけだった。‥今だにこの時の傷痕は消える事なく指先に遺るがオレの財産である。いざとなったら「火を放ち、騒ぎに乗じて逃げる」‥身をもって教え込まれた兵法だ。それにしても限度があるだろうよ、カアチャン!姿を消したその日の事、叔母は宣言した。「この子はあたしが養子にして将来は医者にする、幸い頭良さそうだし!‥」。冗談じゃない犬や猫じゃあるまいしィ、それに熱をだすと必ずケツに注射針を突き立てる非情な奴なん
て大嫌いだァ~!‥オレはこの時から大の医者嫌いを自認している、完全なトラウマだ。さてオレは祖母に育てられる事で養子を免れる結果になったが叔母が養育費を出して医師にされるらしい計画は遂行との結論、先ずは幼稚園から始めるとの話しで‥入園は来年からと決まった矢先‥帰ってきたのだ‥母親が‥フーテンのミヨがニコニコ顔でご帰還したのだ。叔母は向島、仏のヨネとご近所で呼ばれてる祖母を母は完全にナメていた‥っていうより「愛嬌一本釣り!」ミヨの兵器の一つで威力は「キレる」「泣き」に次いで三番目の強さを誇るもの!‥当然祖母に勝ち目はなく、入園式はアタシが出るからね!っと言ってオレを抱きしめた‥「もうどこにも行かないからね、母さんはこっちで働くんだ!」‥オレは嬉しかった。この人の為に医者だろうが弁護士だろうが絶対に成ってヤル!トコロデ‥トウチャンってェ〓何!?聞いた事ある呼び名だけどォ‥なんだい?‥?‥世の中の何者ですかァ???‥ミヨの答えが凄かった!‥続く。

変身

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さらに歳が明け昭和32年正月頃‥案の定母は実家に戻って来た。だいたいの想定の範囲を意識してしこたま酒を浴びていた‥。待ち伏せるのはだいたいの察しをつけた鬼の形相の叔母と四度見たって「仏の顔」の祖母、そして母の兄弟達四人とツイデのオレである。この時クレイジーミヨに変身半ばの母はいきなりオレを抱き上げて猛ダッシュ!「死んでヤル~」と駅にひた走るが途中急カーブして知り合いのA宅へ逃げこんだ。この家のおばさんは近所のの実力者でバリバリの某新興宗教信者、言わば母の馴染みの駆け込み寺だ。オレは歩けない頃から遊びに来てるが母はいつもいつも最初の5分は「ワンワン泣き」でまくし立てる‥パターンがしっかり出来てるようだった。おばさんは「角をとったサイ」みたいな顔をしてるが、笑うと「カバ」になるので面白い!オマケに得意の芸を披露すると感心して「カバからロバ」になるので大好きだった。追っ手が玄関で騒ぎだした頃泣きやんだ母はここでとんでもない行動に出る!なんと標的はロバになったおばさんが褒美にくれた「栗まん
」をパクついているイタイケなこのオレであった‥戦う母と子!初戦はここが舞台‥オレは本能でピンときて逃げ出していた‥。

誕生

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歳が明けて昭和28年7月、行方不明の色男を想って母は地元、川崎二子新地へ戻りオレを産んだ‥二千ナンボの小さい赤ん坊だったらしい‥散々ケツを叩いて泣かせたギリギリの命だったと。オレは今だにケツを叩かれると元気出ちゃうのが頷ける‥ピンチとチャンスに滅法強いのだ。さて、ミヨは金がない‥母親が食えなけりゃ赤ん坊だって食えないと再び向島の叔母の店へオレを背負い働きに行く。‥なによりも色男に会える確率の一番高い土地だから。だが事はうまく運ばない、ヤケになった母の若さ(24才)は自然と享楽に走り始め、酒、博打、オトコ‥時にオレを背負っては不自由な事もありオレは親切な下町住人の世話になりっぱなしで‥そうこうして文句も出始める。ところが2才のオレはこの花街の環境と大勢の他人の愛に触れて思わぬ進化をしてしまうのだった。小唄、三味線、歌謡曲、花札、習字、店の金庫番から~果ては料亭の下足番まで‥粋な大人達はこの時既に3才のオレに金を払って「癒し芸」を楽しんでくれていた。‥やがて母親の姿は
消え、叔母はオレを二子新地の祖母の家に連れ帰る。‥母はケツを割った色男を捜す旅に出たと叔母は祖母に言っていたが‥情報は錯綜していた。なんでも色男はヘタをうって組に追われる身になった‥もしかしたら母は一緒に逃亡してるのでは?‥「馬鹿だねぇ‥ツマンナイ‥情けないヨ‥こんなに可愛い子を置いてェ‥」祖母の言葉に頷きながらオレは思った「‥アノウ、バアチャン‥カアチャンワァ‥ジキニカエルデショ‥ダッテ‥ェ‥イナクナルマエノヒニ‥オバチャンノオジチャント‥イタヨ‥」今オレの紅葉のような両手にはオバチャンのオジチャンに買って貰った青い大きな「ブリキのブーブー」がガッチリと抱えられているではないか!「‥ダレニモ‥イッチャ‥イケナインダ‥」男の約束は守るモンだ。トンビが鷹を産んでたお粗末を誰一人気付かずにいる寒い寒いクリスマスイヴ前夜の事でした‥。