誕生
歳が明けて昭和28年7月、行方不明の色男を想って母は地元、川崎二子新地へ戻りオレを産んだ‥二千ナンボの小さい赤ん坊だったらしい‥散々ケツを叩いて泣かせたギリギリの命だったと。オレは今だにケツを叩かれると元気出ちゃうのが頷ける‥ピンチとチャンスに滅法強いのだ。さて、ミヨは金がない‥母親が食えなけりゃ赤ん坊だって食えないと再び向島の叔母の店へオレを背負い働きに行く。‥なによりも色男に会える確率の一番高い土地だから。だが事はうまく運ばない、ヤケになった母の若さ(24才)は自然と享楽に走り始め、酒、博打、オトコ‥時にオレを背負っては不自由な事もありオレは親切な下町住人の世話になりっぱなしで‥そうこうして文句も出始める。ところが2才のオレはこの花街の環境と大勢の他人の愛に触れて思わぬ進化をしてしまうのだった。小唄、三味線、歌謡曲、花札、習字、店の金庫番から~果ては料亭の下足番まで‥粋な大人達はこの時既に3才のオレに金を払って「癒し芸」を楽しんでくれていた。‥やがて母親の姿は
消え、叔母はオレを二子新地の祖母の家に連れ帰る。‥母はケツを割った色男を捜す旅に出たと叔母は祖母に言っていたが‥情報は錯綜していた。なんでも色男はヘタをうって組に追われる身になった‥もしかしたら母は一緒に逃亡してるのでは?‥「馬鹿だねぇ‥ツマンナイ‥情けないヨ‥こんなに可愛い子を置いてェ‥」祖母の言葉に頷きながらオレは思った「‥アノウ、バアチャン‥カアチャンワァ‥ジキニカエルデショ‥ダッテ‥ェ‥イナクナルマエノヒニ‥オバチャンノオジチャント‥イタヨ‥」今オレの紅葉のような両手にはオバチャンのオジチャンに買って貰った青い大きな「ブリキのブーブー」がガッチリと抱えられているではないか!「‥ダレニモ‥イッチャ‥イケナインダ‥」男の約束は守るモンだ。トンビが鷹を産んでたお粗末を誰一人気付かずにいる寒い寒いクリスマスイヴ前夜の事でした‥。
消え、叔母はオレを二子新地の祖母の家に連れ帰る。‥母はケツを割った色男を捜す旅に出たと叔母は祖母に言っていたが‥情報は錯綜していた。なんでも色男はヘタをうって組に追われる身になった‥もしかしたら母は一緒に逃亡してるのでは?‥「馬鹿だねぇ‥ツマンナイ‥情けないヨ‥こんなに可愛い子を置いてェ‥」祖母の言葉に頷きながらオレは思った「‥アノウ、バアチャン‥カアチャンワァ‥ジキニカエルデショ‥ダッテ‥ェ‥イナクナルマエノヒニ‥オバチャンノオジチャント‥イタヨ‥」今オレの紅葉のような両手にはオバチャンのオジチャンに買って貰った青い大きな「ブリキのブーブー」がガッチリと抱えられているではないか!「‥ダレニモ‥イッチャ‥イケナインダ‥」男の約束は守るモンだ。トンビが鷹を産んでたお粗末を誰一人気付かずにいる寒い寒いクリスマスイヴ前夜の事でした‥。
