外からウィンドウ越しに彼女が座ることを確認した。
そして30分後、ショートサイズのカップを持ったハナが彼女の隣に座った。
「△△大学の有希さんですよね?」
「私はOGなんですけど、よくサークルに顔を出していて、学祭とかも行くんですよ」
「ミスコンみましたよ。おめでとうございます。前回は、すごい盛り上がりましたよね。」
「あれ以降、有希さんのブログとかも楽しみに見ています。もう一躍有名人ですよね!」
「こんなところで、お会いできるなんて光栄です。」
間を与えずにハナは話し続けた。
彼女は終始、顔を横に振りながら遠慮気味にお礼を言った。
「あっ、私はいま三商不動産(仮)でアドバイザーしています山西加奈子と申します。」
といって唯一の名刺を彼女に渡した。
「ホントは不動産販売の営業採用なんですけど、事情がありまして」と付け加えた。
「先ほどまでお客さんを賃貸マンションの見学に案内してて、今は休憩中です(笑)」
つられて有希も笑う。
そして次の会話から、ハナは試みる。
もう少し信頼させるべきではあったが、時間的に余裕がなかったためだ。
「そういえば、有希さん家を探されているとブログでかかれていましたよね?」
「ええ、そうなんですよ。でもまだ全然探せていないです。」
「ぜひよければ、弊社までお越しくださいよ。場所分かりますか?」
「3月までなら私もいますので、ぜひ手伝いせていただきます(笑)」
「すみませんね、宣伝してしまって。」
「ちょうど一軒なんですけど、今持ち合わせの資料があります。」
そういって、ハナはクリアファイルから一枚の1DK間取りを有希の前に差し出した。
有無を言わさず、ハナはペンを取り出し説明をはじめる。
「こちら、有希さんみたいな有名人にはぴったりですよ。」
「外観は今どきのデザイナーズマンションでいて、セキュリティ面が充実しています。特に・・・」
一通り、自分の借りているマンションの良さを有希に伝えた。これには自信があった。
「ちょうど今、そこのマンションを案内した帰りなのですが、よろしかったらご覧になります?」
「今日案内した2人のお客さんも気に入ったみたいで、入居するか悩まれているんですよ。」
「どうしても賃貸をお安くすることはできないのですが、有希さんがもし気に入られましたら、
私の力で5日間はキープできるかと思います。」
「その代わり、ブログで宣伝してください(笑)」
時折、二人に笑顔がこぼれた。
軽はずみのトークから、意外にも有希の方から、
「ぜひ見てみたいですね。」
と言葉がこぼれた。
判断を迷わせないため、ハナはすぐに席を立ち、カップを片付けた。
マフラーをまとい、二人は店を出て、ハナの家に向かった。