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それは遡ること1ヶ月前、二人が食事したというブログの内容であった。
ツーショット写真と彩られた料理の説明が、二人の視点で綴られている。
そのとき私は違和感を感じた。
その違和感とは、有希の洋服がその日の見たものと違っていたことであった。


学内のときとブログの中の洋服が違っていても、それすら気付く人は少ないであろう。
気付かれたところで、着替えたと言えばそれまでであろう。
確かに学内の洋服のほうが地味であったことは間違いない。
しかし私には、この記事は何かを隠すために、わざと現実とは異なる日で設定しているのではないかと疑った。


そして2週間前にも同じことがあった。
ちひろのブログに「明日は有希と表参道で食事にいくよ!」という一言があった。
次の日、有希の素性を注意深く観察した。
夕方まで授業を受けていた彼女は、いつものカフェで読書した後に自宅へ直帰していた。
一方でその日のブログには、ちひろと食事したことがリアルに綴られている。
ようするに、ちひろが有希に「この食事の記事は何日アップして」と頼みこんだのだろう。
理由を探ることはできるが、ちひろの素性に興味はなかった。
この浅はかな考えは、男女問題ってことが予想がつく。
そして、私も浅はかな考えで決行日を決めた。
ブログ上、ちひろと有希が食事をする日に復讐を行うことを。


そして昨日、ちひろのブログに「明日は久しぶりに有希と食事に行くんだ。楽しみ!」
という記事を見つけ、すぐさま私はハナに電話をした。


緊張を押し殺し、私は扉を開けた。
身動き取れない体とは思えない柔軟さで、視線を私に向ける。
「殺したりしないから。そんな攻撃的な目で見ないで。」
かつては憧れの気持ちで見ていた人との初会話であり、
動揺を隠しきれず、つい本心が口から出てしまった。


察しられることを恐れ、私はすぐさま有希のカバンを探り、携帯電話を取り出した。。
悶え暴れる動きに疲れた有希は、ひっそりと私の行動を覗いている。
今思うと、このとき有希は別のシナリオを考えていたのだと思う。


私には確かめなければならないことがあった。
受信メールの一覧から「ちひろ」という女性の文字を探した。
そして、千紘という文字を発見し、中身を確認した。
「ビンゴ」心の中で、そう呟いた。
そして、念のため千紘宛の送信メールを読み、私の考えが正しいことを確信した。


この千紘という名の女性は、別大学のミスコンで優勝者であり、有希とは同士である。
きっかけは分からないが、二人の交流は互いのブログでも綴られている。
各々のファンを共有するような心理作戦ともみれるし、二人が揃うことでより一層、
一般学生とは別格であることを示している気もする。


話は変わるが、ハナに決行日を告げたのは前日であった。
ハナに理由を言うつもりはなかったが、「理由を述べよ」と返された。
いや、そう返されるのを期待していたのかもしれない。
彼女はいつも疑い深いから。

私は「ちひろ」という新たな登場人物について、ハナに詳しく説明した。
そして、「優秀な相棒ね。じゃー明日はよろしく」とハナは満足げに電話を切った。


ハナは続けた。
「元彼って言っても1年半前に1ヶ月程度しか付き合わなかったわ。」
「今彼は、留学中なの。よっぽどこの家が気に入っているらしくて、賃貸はこのままみたい」
「もしかしたら、金持ちなのかね。」


ハナの言葉は、途中からどこか不確かに聞こえた。
「今での連絡をとっているの?」
恋愛話で出てきそうな会話であったが、男女問題の話に興味はなかった。

ハナはニヤリと笑い、「No.」と答えた。
その答えに、私もニヤリと微笑んだ。


「つまりハナは、元彼が留学中という噂を聞きつけ、そして、当時作った合鍵で忍び込みに成功した。
「もし計画が失敗しても、1ヶ月しか交際していないハナの元へ結びつかない。」
「ってことは、女に困らないほどモテる彼氏への復讐ってこと?」
ハナへ質問した直後には、大抵はこんな理由だろうと思い、すでに安堵していた。


「70点かな。あと交際って言葉も古い。」
部屋窓に向かいながら、ハナは言った。

「復讐という気持ちがあることは正解。でも、もう実行したけどね。」
「格安引越しを調べてたらさー、すっごいリーズナブルなのがあって・・・」
ハナは急に女子大生っぽい口調になった。


要するに、夜逃げもOKのような引越し屋に依頼し、彼の部屋にある荷物を地方のトランクルームへ預けたということ。

捨てようと思ったが、刑事事件になっても困るので、ばれても悪ふざけということで、トランクルームへ預けているらしい。
もちろんトランクルーム代を支払っているのはハナである。
そのお金ももったいないから、元彼が家具を買いなおすころを見計らって、再度荷物を届けるのだと。


「事件は複雑に絡み合ったほうが面白く、そして難解にさせるのよ。」
ハナが軽く言った一言が、頭から離れなかった。