緊張を押し殺し、私は扉を開けた。
身動き取れない体とは思えない柔軟さで、視線を私に向ける。
「殺したりしないから。そんな攻撃的な目で見ないで。」
かつては憧れの気持ちで見ていた人との初会話であり、
動揺を隠しきれず、つい本心が口から出てしまった。
察しられることを恐れ、私はすぐさま有希のカバンを探り、携帯電話を取り出した。。
悶え暴れる動きに疲れた有希は、ひっそりと私の行動を覗いている。
今思うと、このとき有希は別のシナリオを考えていたのだと思う。
私には確かめなければならないことがあった。
受信メールの一覧から「ちひろ」という女性の文字を探した。
そして、千紘という文字を発見し、中身を確認した。
「ビンゴ」心の中で、そう呟いた。
そして、念のため千紘宛の送信メールを読み、私の考えが正しいことを確信した。
この千紘という名の女性は、別大学のミスコンで優勝者であり、有希とは同士である。
きっかけは分からないが、二人の交流は互いのブログでも綴られている。
各々のファンを共有するような心理作戦ともみれるし、二人が揃うことでより一層、
一般学生とは別格であることを示している気もする。
話は変わるが、ハナに決行日を告げたのは前日であった。
ハナに理由を言うつもりはなかったが、「理由を述べよ」と返された。
いや、そう返されるのを期待していたのかもしれない。
彼女はいつも疑い深いから。
私は「ちひろ」という新たな登場人物について、ハナに詳しく説明した。
そして、「優秀な相棒ね。じゃー明日はよろしく」とハナは満足げに電話を切った。