私は、既にハナの家に着き、呼吸を整えていた。
ハナからの着信で、私の電話が震えた。
「山西ですけれど、お疲れ様です。」
山西と名乗る声色に、一瞬の動揺も見えなかった。
「ただいまから、別のお客さんと先ほどのマンションへ見学に行きます。」
「戻りは一時間後になると思いますので、よろしくお願いいたします。」
「では、あと10分くらいですね。」私は言った。
「はい、そうです。失礼いたします。」
私は、これから起こることを想像して、つい笑みがこぼた。
ハナと有希がマンションの前まで到着した。
一人暮らしとは思えないエントランスのデザインと鍵毎に暗証番号を入力するオートロックに
有希は気に入ったようだ。
ハナとしては、住人に会う前に早く連れて行きたいという気持ちでが優先したであろう。
エレベータに乗り、7Fの玄関前にて、
「こちらになります。まだ内装の清掃が入っていない状態なんですよ。」
「来月にはもっと綺麗になっていますので、ご了承ください。」
ハナはそういって、ドアノブに手をかけた。
「どうぞ入ってください。」
「はい、失礼いたします。」
私は、緊張と興奮で唾を飲み込んだ。
そして間もなくハナから送られる合図に注意を払っていた。
ハナがしゃべりだした瞬間、私はトイレのドアノブに手をかけた。