魔王のお見合い! 第二十九話『教師!』
「お見合いしたいなあ・・・」
「もう。それ、何回言えば気が済むの?」
「結婚できるまで。」
「・・・」(埒があかないわ・・・)
学校でのミクの様子を知りたい、ということでクララは魔王に呼ばれた。
が、本当はお見合いの手伝いをしてほしいだけだろう。
「・・・わかったわ。手伝って上げる。」
「え?本当に!?」(言ってみるものだなあ。)
魔王の顔が急に輝きはじめた。
「え、ええ。」(このテンションの上がり方は気持ち悪いな・・・)
「それで相手は・・・」
「連れてきてあげるわ。もちろん仲人もわたしが務める。ヤン君、いないしね。」
ヤンはヒメコと旅行に出かけていた。
「あ、ありがとう・・・!」
「え、ええ。兄さんには早く結婚してもらいたいから。」
「ようし!頑張るぞ!あ、ミクには気をつけるんだぞ。」
「ミクさんか・・・」
クララは学校でのミクの様子が思い浮かんだ。
「どうした?」
「ううん、何でもない。」(ミクさんには悪いけど・・・)(やっぱり兄さんの好きにさせてあげたい。)
・・・二日後。
「兄さん、連れてきたわ!」
今回は魔王が自ら扉を開けに行った。
「どうぞどうぞ!」
クララが連れてきたのは、10代には見えないが、まだ若い女性だった。
背が高く、スタイルの良い美人だ。
「兄さん。わたしの担任の先生よ。」
「はじめまして、魔王さん。紬 夕[つむぎ ゆう]です。」
「あ、はじめまして!エル=M=デビルです。」(た、担任・・・)(・・・いいかも。)
魔王のお見合い! 第二十八話『クララとミク!』
「それでは編入生を紹介します!」
担任の女性教師が、元気よく声を上げた。
『お茶の湯大学附属高校』に編入生が入るのは、10年ぶりらしい。
クラスの皆は、新たな仲間に胸をときめかせ、歓迎の用意をしていた。
しかし、クララだけは憂鬱だった。
すでに魔王から、その編入生がミクであることを聞いていたからだ。
「ミクさん、入ってきてえ。」
クララは、扉を”お上品”に開けて入ってきたミクから、信じられないことに奥ゆかしさを感じた。
「皆さん、はじめまして。ミク=ブ・・・じゃなかった。山田ミクです。」
クララは、”山田”というのはヤンが付けた名字で、なるべく目立たないようなものを選んでのことである、というのも魔王から聞いていた。
そのあと、ミクの自己紹介やミクに対する質問の時間が10分ほどあったが、ミクは決して”ボロ”を出さなかった。
「ええと、席は・・・クララさんの横がちょうど空いてるわね。」
ミクがクララの横に座って、嬉しそうに耳打ちした。
「これからよろしくね。」
「う、うん。」(これから大変そうだ・・・)
クララは複雑な心境で返事をした。
「それでは、朝のホームルームは終わります。一時間目は体育よ。」
・・・
周りが着替え始める中、クララはミクをじっと見つめていた。
「・・・どうしたの、クララさん?」
「ミクさん・・・本気出しちゃ駄目よ。」
クララはミクの正体が皆に気付かれるのを恐れていたのだ。
「わかってるわよ。アタシはここで”おしとやか”になるんだから。」
言う通り、ミクは”ほどほどの力”で授業を受けた。
体育に限らず、他の授業でも目立つことはしなかった。
「ほら、これで信用できるでしょう?」
帰りのホームルームが終わると、ミクがクララに話しかけてきた。
「え、ええ。」(信じていいのかしら?)
「ねえ。・・・今日のアタシ・・・どうだった?」
「どうって・・・普通だったわ。」
「頑張ったもの・・・アタシ。」
ミクは遠くを見つめて話していた。
魔王府のある方角だった。
「ミクさん・・・」
ミクがはっと気付いたかのように、クララの方へ顔を戻す。
「さ、また明日ね、クララさん!」
「あ、うん。さようなら!」
ミクが急いで教室を出て行った。
部活の見学をするらしい。
「難しいな・・・いろいろ。」
教室で一人だけになったクララが呟いた。
魔王のお見合い! 第二十七話『炎魔の過去・後編!』
「先代魔王・・・が?」
「はい。」
ヴォルグとヒメコが魔王に目を向けると、魔王も目を閉じてうなずいていた。
「先代は、能力の高い炎魔の台頭を恐れていました。
そのため、炎魔を一掃しようと考えていたのです。
そして・・・先代の狙い通り、同胞を殺された炎魔は武装蜂起。
先代は炎魔を滅ぼす”きっかけ”を手に入れました。」
「では、貴様の祖父は・・・」
「はい、処刑などしていません。
おそらくは・・・炎魔を分裂させようとする、政府が流した噂でしょう。」
「先程、貴様の父も殺されたと言ったが・・・武闘派でもないのに、なぜ・・・?」
「クリムゾン家は、とにかく滅ぼす気だったのでしょう。
ブレインを失った集団ほど崩しやすいものはありませんからね。」
「・・・」
「実は私も・・・炎魔側で参戦しました。」
「え?」
ヴォルグとヒメコは目を丸くした。
「何も知らずに・・・ただがむしゃらに戦い、重傷を負いました。
そして・・・瀕死の私を助けてくれたのが、当時の王子・・・つまり現在の魔王様だったのです。
敵である私を、なんのためらいもなく・・・」
ヤンの目に涙がうっすらと浮かんだ。
「・・・それが二人の出会いというわけね。」
にわかには信じがたい話だが、ヒメコは何とか納得した。
「私も父のやり方に疑問を持っていてな・・・。戦場に赴いて、少しでも多くの命を救おうとしていた。」
「魔王様は、先代に気付かれないように私をかくまってくれました。
やがて先代が戦死して魔王様が即位すると、私を大臣として重用してくれたのです。
・・・ヴォルグさん、これが”真実”です。信じてもらえますか?」
「ふん。魔王の前で嘘をつくこともないだろう。・・・信じてやる。」
ヴォルグの口調は穏やかになっていた。
「なぜ・・・」
ヒメコがヴォルグに問いかけた。
「なぜ・・・放火なんてしたの?」
「”魔が差した”んだろうな・・・。深い理由はない。
ただ、力を誇示したかったのかもしれない・・・。炎魔の・・・」
「・・・」(ヴォルグさん・・・)
・・・三日後ー。
「ヴォルグは魔界の裁判所で裁かれることになったよ。」
「そうですか・・・。」
「仲間が犯罪を犯すのは・・・辛いな。」
「はい・・・」
”仲間”というのが”魔族そのもの”を指すのか、”炎魔”を指すのか、ヤンには分からなかった。
ただ、辛いのは確かだった。
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「はい。」
ヴォルグとヒメコが魔王に目を向けると、魔王も目を閉じてうなずいていた。
「先代は、能力の高い炎魔の台頭を恐れていました。
そのため、炎魔を一掃しようと考えていたのです。
そして・・・先代の狙い通り、同胞を殺された炎魔は武装蜂起。
先代は炎魔を滅ぼす”きっかけ”を手に入れました。」
「では、貴様の祖父は・・・」
「はい、処刑などしていません。
おそらくは・・・炎魔を分裂させようとする、政府が流した噂でしょう。」
「先程、貴様の父も殺されたと言ったが・・・武闘派でもないのに、なぜ・・・?」
「クリムゾン家は、とにかく滅ぼす気だったのでしょう。
ブレインを失った集団ほど崩しやすいものはありませんからね。」
「・・・」
「実は私も・・・炎魔側で参戦しました。」
「え?」
ヴォルグとヒメコは目を丸くした。
「何も知らずに・・・ただがむしゃらに戦い、重傷を負いました。
そして・・・瀕死の私を助けてくれたのが、当時の王子・・・つまり現在の魔王様だったのです。
敵である私を、なんのためらいもなく・・・」
ヤンの目に涙がうっすらと浮かんだ。
「・・・それが二人の出会いというわけね。」
にわかには信じがたい話だが、ヒメコは何とか納得した。
「私も父のやり方に疑問を持っていてな・・・。戦場に赴いて、少しでも多くの命を救おうとしていた。」
「魔王様は、先代に気付かれないように私をかくまってくれました。
やがて先代が戦死して魔王様が即位すると、私を大臣として重用してくれたのです。
・・・ヴォルグさん、これが”真実”です。信じてもらえますか?」
「ふん。魔王の前で嘘をつくこともないだろう。・・・信じてやる。」
ヴォルグの口調は穏やかになっていた。
「なぜ・・・」
ヒメコがヴォルグに問いかけた。
「なぜ・・・放火なんてしたの?」
「”魔が差した”んだろうな・・・。深い理由はない。
ただ、力を誇示したかったのかもしれない・・・。炎魔の・・・」
「・・・」(ヴォルグさん・・・)
・・・三日後ー。
「ヴォルグは魔界の裁判所で裁かれることになったよ。」
「そうですか・・・。」
「仲間が犯罪を犯すのは・・・辛いな。」
「はい・・・」
”仲間”というのが”魔族そのもの”を指すのか、”炎魔”を指すのか、ヤンには分からなかった。
ただ、辛いのは確かだった。
魔王のお見合い! 第二十六話『炎魔の過去・前編!』
「私たち炎魔は、代々魔王様に仕えてきました。
しかし、魔界統一戦争のとき、内部分裂が起きます。
魔王様に仕え続けるか、または ー 逆らって炎魔による独立政権を築くか。
永きに渡る戦争の中、二つの派閥の溝は深くなっていきます。
ただ、頭首のクリムゾン家は中立の立場を取り、現状維持に努めていました。」
「そんなことは知っている!」
「続きを聞いて下さい。
・・・私の祖父が頭首のとき、均衡が崩れます。
祖父が・・・穏健派の何人かを処刑し、独立政権を建てたのです。」
「それも知っている!何度も言わせるな。」
「処刑された者の中に・・・あなたの父、ジェド=ヴォルケノもいましたね。」
「・・・!何故父の名を・・・!」
「これでも頭首の跡取りでしたから・・・。炎魔のことで知らないことはありません。」
ヴォルグはヤンが自分を捕まえたときのことを思い出した。
ヤンは、ヴォルグが炎魔であることにすぐ気がついていたのだ。
先程ヤンを笑った己が情けなかった。
「私の父は、祖父に抗議をしました。が、結局殺されてしまいます。」
「・・・」
「すぐに魔王軍との戦争が始まりました。
もちろん、勝てるはずもありません。炎魔は滅亡します。」
「・・・それが”真実”か?そのくらい、俺でも知っている。」
「今まで話したのは一般に語られている歴史です。”真実”とは異なるのです。」
「は・・・?」
「あなたの父や、私の父を殺したのは祖父ではありません。先代魔王です。」
「なっ・・・!」
「先代が・・・”危険分子”として炎魔の武闘派を処刑したのです。」
魔王のお見合い! 第二十五話『クリムゾン!』
「なるほど。その放火魔が、この男という訳か・・・」
「はい。警察で処理できる問題ではないので・・・」
魔族の問題は、魔族が解決しなくてはー。
そう考えたヤンはヒメコと一緒に、取り押さえた男を魔王のもと -魔王室- に連れてきた。
「俺をどうするつもりだ。」
放火魔が威勢よく声を上げた。
虚勢にも見えた。
「まあ待て。まずはお前の名前を聞こうではないか、炎魔よ。」
「ふん・・・。ヴォルグだ。ヴォルグ=ヴォルカノ。」
「ヤン、知っているか?」
「・・・。いえ・・・」
ヤンが静かに首を横に振った。
「ははっ」
そのヤンの様子を見て、ヴォルグが笑い出した。
「そりゃあ、知らないだろうよ。俺は炎魔の中でも、かなり下の方の身分だったからな。ヤン様ほどのお方になると、そんな下賎な奴らに興味もないだろう!」
「・・・どういうこと、ヤン君?」
それまで黙っていたヒメコが割って入った。
「ヤンは・・・炎を司る魔族・炎魔の頭首である、クリムゾン家の者だ。そして今言った通り、このヴォルグという男も炎魔・・・ということだ。」
魔王が代わりに答えた。
”クリムゾン家”と聞いて、ヴォルグの目の色が変わった。
「そうだ・・・貴様らクリムゾン家のせいで俺ら炎魔は・・・!」
「ヴォルグ・・・さん。」
ヤンは申し訳なさそうに立ち尽くしていた。
「ヤン・・・。真実を話したらどうだ?炎魔の真実を・・・」
「魔王様・・・。わかりました。ヴォルグさん、そしてヒメコさんもよく聞いて下さい。これから語るのは・・・すべて真実です。」
少しシリアスになってきましたが、どうしても書きたい話なのでご了承を。