学生狂(小説・魔王のお見合い!連載中) -19ページ目

魔王のお見合い! 第四十二話『なんだろう、この気持ち!』


「婚約・・・者・・・」
ミクの口からはよく聞く単語だが、まさか夕の口から、このような形でそれが発せられるとは思わなかった。

「ごめんなさい!ごめんなさい!」
夕はひたすら謝るのみであった。

「婚約者がいるあなたが、なぜ魔王様と・・・?」
このままでは埒があかないと察したヤンが尋ねる。

「・・・」
夕は口を開かない。

「夕さん、私も・・・聞きたい。」
魔王が頭を下げた。

「・・・私、彼—―つまり婚約者に、ないがしろにされたんです。彼の仕事が忙しくなるにつれ、一緒にいられる時間が少なくなってきました。彼が仕事人間ということは理解していたつもりです。
でも・・・我慢できませんでした。そんなときに魔王さんが活躍しているのをテレビで見たんです。」

(『看板事件』か・・・)

「この人なら優しくしてくれる・・・。そう思いました。
ちょうど、くららさんが紹介してくれたし・・・。
ようするに、私のエゴなんですね・・・」

言い終わると、夕は泣きはじめた。

(わ、私の方が泣きたいのに!)
(魔王様、泣きたいだろうに・・・)

「・・・わかりました、夕さん。これっきりにしましょう。
・・・もう遅いですし、送ってきますよ。」
魔王がそう言うと、夕が顔を上げた。

「あの、彼が迎えに来てるんで・・・」

「あ、そう・・・」

夕は案外けろっとした表情を見せ、去っていった。

「なんだろう、これ・・・」
「なんでしょうかね・・・」
「兄さん、かわいそう。」

「はああ。」
一同が同時に溜め息をついた。

窓の外では、夕とその婚約者がラブラブっぷりを見せつけてくれていた。





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魔王のお見合い! 第四十一話『夕の真実!』


「先生、そんな・・・」
「ごめんね、騙すつもりじゃなかったの。」
少なくとも夕の謝罪の念に嘘偽りはないように見えた。

「とにかく、兄さんと話をつけないと・・・」
「・・・そうね。」

・・・
「ヤン、クララが夕さんを連れてきてくれるそうだ。」
「本当ですか!よかったですね!」

魔王は腕を組み、首をひねった。
「ううん、電話では深刻そうな口調だったが・・・」

コンコン、と魔王室の扉がノックされた。
ヤンが開きに行った。

「兄さん・・・」
「・・・」
クララと夕が重苦しい空気を纏って部屋に入ってきた。

「ど、どうしたんですか?」
「兄さん、あのね・・・」
「くららさん。私が。」
「先生・・・」

ここで初めて、夕がはっきりと視線を魔王に向けた。

「私、婚約者がいるんです。」

「え?」

「婚約者がいます。」
夕が繰り返す。

「私、とは別に・・・男がいる・・・ということですか?」
魔王にしては理解するのが早かった。
というのも、クララからの電話で、なんとなく嫌な予感がしていたからである。

「はい・・・」




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魔王のお見合い! 用語解説!(魔界第三地区)を更新!


用語解説に、魔界第三地区を掲載しました。

ジルの出身地区。
富裕層の余興として、スポーツが盛んです。

スポーツと言えば、北京オリンピックは盛り上がったなぁ・・・。
『鳥の巣』のデザインも秀逸だったと思います。



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魔王のお見合い! 第四十話『復縁したい!』


「ぐう・・・。どうしたらよいものか。」
「魔王様・・・」
ヤンは魔王を心配していたが、掛ける言葉が見つからない。
ミクが報告に来てからというもの、魔王はずっと頭を抱えたままだ。

しばらくすると、魔王がはっとして重い頭を上げた。
「いや、『唾飛ばし』より重要なことがあった。」
「・・・と言いますと?」
「夕さんに誤解を解いてもらい、関係を修復するのだ。」
「なるほど・・・。しかし、どうやって・・・?」

魔王が再び頭を抱えはじめた。
「そこが問題なのだ・・・。ミクに気付かれてもいけないし・・・。」
「・・・」

・・・
「先生、兄さんを信じて下さい!」
「でも・・・」
お茶の湯大学附属高校では、クララが夕を説得していた。

「私、もう信じられない・・・」
ミクは嘘つきだ、と直接言うのもはばかられた。

「ねえ。お願い、先生。もう一度兄さんと話をしてあげて!」
「・・・」

夕はしばらく考え込んだ。
「わかった。でも私実は・・・」

・・・
「えっ!?」
クララは夕の話を聞いて、思わず声を上げてしまうほど驚いた。




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夕が男、とかではないです。

魔王のお見合い! 第三十九話『ジルの修行!』


「ぺっぺっ!」
ジルは魔界に戻り、一人修行していた。

魔界第三地区スタジアム―。
二日後に決戦が行われる場所を借り切っての修行だ。

「ぐっ・・・。まだまだぁ!」
ジルは独り言が多い。

「頑張ってるじゃない、馬の骨なりに。」
ジルが空を見上げると、ミクが悪魔のような微笑みを浮かべていた。
ちなみに『悪魔のような~』は魔界では褒め言葉になることが多い。

ジルは慌てて口の周りのよだれを拭いた。
「ミクさん・・・。僕は本気です。」
「ふうん。まあ勝負にならないと思うけど。」
「・・・本当にそう思いますか?」
そう言うと、ジルはミクに背を向け、唾飛ばしの体制に入った。

「ぺいっ!」

ジルの唾は美しい曲線を描いて飛んだ。
角度、発射速度。
共に完璧であった。

「いけえええっ!」

ぴちゃ。

「・・・え?この記録・・・!」
ミクが後ずさりした。
自信に満ちた表情が一変し、蛇ににらまれた蛙のようになってしまった。

「101.2メートル。魔王・・・様の魔界記録に並びます。」
「そんなっ・・・!」
「これがヴァレンシュタイン家の血統です。ミクさん、楽しみにしておいて下さい。」

「魔王様に報告しなきゃ!」
ミクが飛び去っていった。

「ふ・・・。ミクさん、パンツ見えてますよ。」
ジルはいろいろと満足したようだった。

・・・
「私の記録と同じだと?」
「ええ。あの馬の骨・・・やるわ。」
「ぐう・・・。ウマノホネシュタインか・・・。」

魔王は悩んだ。
(どうすればいい・・・)(プライドを守るか、わざと負けるか・・・)





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