第1章
**********Suspicion
チームが戦場を離れて2時間ほどたった。
レンツとウラルの国境近くにある反政府組織”ウラルの光”の
前線司令部にもその結果がもたらされた。
「司令、入電です。」
そういって情報将校が男にメモを渡す。
男は年配だが大柄で色黒、口ひげをたくわえた、いかにも軍人という感じの男だ。
彼の名はマイバッハ。
元ウラル国軍陸軍大将、クーデターの首謀者の一人であり
現在はその組織を”ウラルの光”と名づけ、ウラルに対して再度戦いを挑んでいた。
メモを読んだマイバッハはメモに火をつけて灰皿に放り込んだ。
ゆっくりとした動作で目を閉じてタバコに火をつける。
大きく吸い込んだ後、ゆっくりと吐き出す。
「・・・補給拠点ですら、これほどの攻撃を加えるのか・・・。」
(補給拠点とはいえ、100名近い兵力を配備していた・・・。それをたった20名ほどで殲滅、か。補給拠点の情報は厳重に管理されている。どうやって探知したのだ・・・・)
情報将校は指示を待つようにやや離れた位置に控えていた。
「敵についてもう少し詳細な情報はあるか?」
情報将校は直立不動のまま、答える。
「はっ!攻撃は20名ほどの歩兵部隊、デスバレーから投入されたものと思われます。!」
情報将校はさらに続ける
「主力はアサルト選抜チームと名乗る集団で、殲滅はそのものたちによるもの、とのことです!」
「周辺の警戒は?捕縛されたものは」
「2日前から本部の要請で警戒要員を減員しておりましたので、当時の警戒レベルはレベル1、捕虜は確認できておりません!」
マイバッハはさらに続ける。
「敵はその後どうしている、他の拠点に向かったか」
「デスバレー方面にチヌークが飛び去っており、その後周辺拠点から視認の報告はありません!」
「わかった。周囲の拠点に増派、各200だ。」
「はっ!」
情報将校は敬礼をすると踵を返し、部屋を出て行った。
(内通者の存在は否定できんな。)
マイバッハは身支度を整えながら、なおも考える。
(エラヌスが連れてきた傭兵集団も考えてみれば怪しい。しかしわしについてきた兵もこの戦いで随分と減ってしまった。大義のためには外部の助けを要らぬ、とはいえぬ状況ではあるのだが)
マイバッハは身支度を整えると部屋の外に出て車両倉庫に向かう。
「出かける。」
そうマイバッハが声をかけると車両倉庫に数名の兵士が走りこみ、やがてハマーをマイバッハの前に停めた。
乗り込みながらドライバーに声をかける。
「エラヌスのところへ」
「了解です」
ゆっくりと走り出すハマーの後部座席でマイバッハはより深くシートに体を沈めた。
-----------------
いづいはなおもガヤルドに食ってかかろうとしたがそれを天才が止める。
「はなせ!」
「もういいだろう。死んでしまったものはいきかえらない」
いづいは無理やりに怒りをその内に押しとどめる。
「わかった。行こう」
チームは無言のまま、フロアに戻り、各部屋に帰っていった。
チームには出撃後の休養時間として8時間が与えられた。
「さて」
SPAWNはシャワールームで汗を流す。
(・・・ふぅ。)
流れ落ちるシャワーの中でSPAWNは暫く瞑目していた。
(手足の震えが止まらない・・・。久しぶりの実戦で高揚している、というところか)
現役の頃には感じなかったことだった。
「感覚は鈍っていなくても体はそう簡単ではないか」
思わず口に出してその後SPAWNは苦笑する。
短めにシャワーを切り上げるとSPAWNはバンケットに向かった。
バンケットはとても地下にある施設とは思えないほどの広さと天井の高さを持っていた。
辺りを見回すと、それぞれ異なる軍服を着たものが、いくつか集団となって食事をしていた。
(マスターが言っていたように他にもいくつかのチームがあるのだな。
それにしても研究所の設備というのは贅沢だな)
SPAWNは適当に食事を取り、最後にビールをトレーに乗せた。
バンケットの奥のほうには人も少なく、SPAWNはその中でも特に人気の無いエリアで席に着いた。
「相席いいか」
SPAWNが視線を上げるとそこにはガヤルドが立っていた。
「かまわんよ」
特に意に介する風でもなくSPAWNはそういうと食事を続ける。
「マスターが来たらもめることになると思うがな」
「資料を読んだが、元レンツの軍人だそうだな」
ガヤルドはSPAWNの嫌味には耳を貸す風でもなく問いかける。
「そうだ」
「先の大戦でウラルを攻めたレンツの元軍人が今度はウラルで何をしようとしている」
(やはりその話題か)
SPAWNは内心、相席なぞ許すのではなかった、と後悔した。
「俺はウラル政府からの招聘に答えた、それだけだ」
「ふん、戦場の緊張感に痺れた軍人は数多い。
貴様もその麻薬が恋しくなったということか。
そして今度は傭兵か」
SPAWNは食事の手を止めるとガヤルドを見据える。
「俺はともかく、チームのメンバーは各国のエース級が集まっている。正式な手続きを踏んで派兵されている彼らは傭兵ではない!」
そういうとSPAWNは席を立ち、その場を離れた。
が、立ち止まるとガヤルドのほうに振り向いた。
「今回の作戦、攻撃拠点ではないところに俺たちを投入したのは誰の差し金だ。
どうやらウラルも一枚岩ではないようだな」
そういうとSPAWNはまた歩き始めた。
(ふん、老いぼれの癖に嗅覚は衰えていないということか。)
ガヤルドは残りのサラダをビールで流し込み、席を立った。
(大義のためには策謀も不可欠、そういうことは兵隊にはわかるまい・・・。)
Suspicion 完
Easy Actionに続く
第1章
**********The Past
「死神の花嫁」その名を聞いたのは随分昔のことだ。
(俺が少尉だった頃か・・・)
その頃、ウラルの隣国、軍事政権国家レンツの反政府活動家にその通り名を
持ったものがいる。
そうSPAWNは記憶していた。無論、SPAWN自身がその通り名を持つものを見たことは無かった。
(随分昔のことだ、あの娘が通り名を受け継いでいるのか? それとも偶然昔の通り名が使われたか)
Risaを見つめるSPAWN。
「よし、手当てはあらかた済んだようだな」
いづいが橋上に他のメンバーとともに現れた。
「戦果確認をする。警戒は怠るなよ。けが人は後方についてくれ」
「OK」
「ジョー、随分やられたわね、ハマも。」
「ああ」
「SPAWN、援護できてたの?」
Risaが射るような目でSPAWNを睨む。
(ちぃ、女性ににらまれるのは性に合わんな)
SPAWNはわざと視線をはずす。
ハマが、SPAWNの肩をぽんと叩きながら言う。
「きっちり援護してたぜ。加入してすぐだ、こんなもんだろ。俺らの連携だってほめられたもんじゃない。もっと密に連携できればリスクは減るはずだ」
「ならいいけど。」
Risaは射るような目で再度SPAWNを睨む
(やれやれ、理由はわからんがお気に召さないらしいな)
メンバーはそれぞれ武器を構えなおし、シャッター側から”砦”の中に入る。
いづいたちが中に入ってすぐの空間は"砦”というにはあまりに貧弱だった。
コンテナが数個あるだけで、敵の侵入に備えるべき装備らしきものはないに等しかった。
敵の死体と友軍の死体がごろごろと至る所に転がっていた。
硝煙と埃で靄がかかったようになっているが、血のにおいがあたりに漂い、地獄という例えが
相応しい場所になっている。
「ほう」
思わずSPAWNが声を上げる。Risaが銃弾を打ち込んでいた先には何人もの敵の死体が折り重なっていた。
(勘とやら、は信じないほうだが・・・・。ここまでやるとなると第6感とやらを信じねばなるまい・・・。)
シャッタ裏には2名の敵の死体が転がっている。
それを確認したSPAWNにジョーとハマが親指を立てる。
「すげーな、じーさん!脳天一撃かよ!」
1階のフロアの中央でいづいが辺りを見回してメンバーに問いかける。
「おかしいと思わないか?」
「ああ、とても拠点とは思えないな」
ハマーンが死体のいくつかをひっくり返しながらいう。
「どれも防弾装備をしてない。」
「とにかく2階も見てみよう。リグ、ロンズ!」
二人が1階のキャットウォークを上がり、2階の回廊を先に進む。
回廊の奥に扉を発見するとリグが1階のメンバーに向かって
「扉らしきものがある」
とゼスチャーで知らせる。それを見たメンバーはつぎつぎに2階に上がる。
リグとロンズは扉の両脇で銃を構えている。
いづいが扉の前に立つとその扉はスーッと左右に開いた。
同時にリグ、ロンズがそれぞれ前方に転がり込み、即座に銃を構えて警戒する。
「誰もいないな」
扉の奥は動力の制御盤らしきものが並んでいる。
いくつかの計器には数字が表示されている。
「ここは拠点ではなさそうだ。連絡手段も無いのにこいつらはなぜここにいる・・・。」
「もう一度下で通信機器をもってる者がいないか探すぞ。生存者でもいれば願ったりだが・・・。」
メンバーはそれぞれ1階のフロアに散在する死体をごろごろとひっくり返して回る。
「なさそうだな」
Risaが死体の脇を歩きながら
「そうね」
と同意しようとした瞬間、Risaの足首を不意に何者かがつかんだ。
「きゃあ!」
その声に反応し、近くにいたハマーンと天才がその方向に銃口を向ける。
「まって!」
Risaは瞬時に平静を取り戻し、手で二人の次の動作を制する。
「いきてるわ・・・・。」
腕と肩、わき腹に銃弾を受けた敵の兵士がRisaの足首をつかんだまま何かをしゃべっている。
「・・・何をしゃべってるのかわからないわね」
そういいながらRisaは足首の手を解き、周りにあった銃をやや遠くに放り投げる。
ついでその息をしている兵士の体のあちこちをまさぐりはじめた。
「手榴弾の類は無いわ。どうするマスター?」
「止血をしてやれ。捕虜として戻って通訳に任せよう。情報が取れるといいが・・・。」
いづいはそういいながらコミュータに向かって話しかける。
「アサルト選抜だ。捕虜がいる。こちらにこれるか?」
暫くの沈黙の後、いづいがメンバーに告げる。
「10分で迎えが来る。帰るぞ!。そいつも連れて行く。」
(初戦はスキルの確認ができたことが収穫か)
そう考えながらSPAWNは胸ポケットに手を伸ばし、タバコに火をつける。
「俺も」
そういうとハマーンがSPAWNのそばでタバコに火をつける。
「うまいな。一仕事後のこれは!」
うまそうに燻らせる。
タバコの煙がゆっくりと弧を描きながら上昇し、そして消えてゆく。
(死体に囲まれてもタバコが吸えるってのは感覚が軍人のまま、ということか)
ぼんやりとその煙の行方を見つめながらSPAWNは考えていた。
10分後、捕虜とチームを乗せたチヌークが”砦”を後にする。
いづいは眼下で硝煙にくすむ”砦”を見下ろしながら考え事をしていた。
(あれは砦とは言いがたい。しかしチームへのオーダには攻撃拠点とまで書かれていた。
どういうことだ?。あれでは俺たちのしたことは虐殺に近い・・・・。)
チヌークがデッキにたどり着くと、整備兵が走りよってくる。
いづいは真っ先に降りると整備兵に話しかけ、整備兵の一人はうなづくと奥に走りこんだ。
やがて医療班がチヌークに走りよってくる。
「腕と肩、わき腹に被弾、止血は応急的にしたけど・・・。頼むわね!」
Risaが医療班に状況を伝える。
捕虜となった男はいづいを見ながらまた何語かで訴えかけるようにしゃべっている。
「大丈夫だ、お前は医療班で治療を受けられる。お前はジュネーブ条約によって保護されるんだ、心配するな!」
いづいはそう男に告げたが男はまだ何か話そうとしている。
男とのやり取りの最中、作戦司令部の部屋から男が一人出てきてチヌークに近づいた。
「ご苦労」
敬礼をしてチームを迎えたが、その敬礼はどこかぎこちない。
「ウラル国、国防省筆頭文官のガヤルドだ」
長身の男はそう自己紹介をした。それを見ていづいも敬礼で返す。
ガヤルドは敬礼をとくとストレッチャーに乗せられる男を見ながらいづいにたずねる。
「あれは・・・・なんだね。」
「今回の作戦の捕虜だ。」
ガヤルドはいづいのほうに振り返ってさらに質問を続ける。
(なんていやな目をしてやがる・・・)
いづいは振り返ったガヤルドの目を見て思った。
捕虜を見る目はまるで人間ではないようなものを見る目、そしていづいに向けられた視線は
蔑みを含んだものだった。
「なぜつれてきたのかね・・・・。」
「我々に展開された情報と異なる点がある。敵側の情報を聞きだして整合をとるためだ。」
「ほう・・・。」
「捕虜が何かしゃべっているが俺たちには理解できない、通訳を・・・おい!」
いづいがしゃべっている間にガヤルドはそのストレッチャーに向かって歩き出していた。
ガヤルドがストレッチャーに近づくと捕虜の男は取り乱したように声を上げた。
ストレッチャーから落ちんばかりに手足をばたつかせる。
(まずい!)
その様子を見ていたSPAWNはいやな予感がしてそのストレッチャーに向かって走り始めた。
「パンッ!」
すばやく銃を貫いたガヤルドは男の眉間に向かって発砲した。
乾いた銃声がデッキに響く。
ストレッチャーの上にいた男は大きく伸び上がって地面に倒れ伏す。
「何をする!!!」
いづいが走りよってガヤルドの胸倉をつかむ。
「離し給え・・・。君らは立場がわかっていない様だな・・・」
いづいの剣幕にも動じないでガヤルドは見下ろすようにしていづいを睨み返す。
「捕虜は条約によって保護されるはずだ!。なぜ撃った!」
「貴様ら傭兵はあくまでも正規軍の補填・・・・。我々の判断に逆らうのは契約違反ではないのかね・・・。」
「クッ!!」
いづいは睨み返したまま動かない。
ガヤルドは冷徹な視線をいづい、そしてチームに向けるとニタリと笑って続ける。
「せいぜい稼ぎたまえ。そのために来たのだろう。余計なことに首を突っ込むと稼ぎを失うことになるぞ・・・・・。」
The Past 完
Suspicionに続く
**********The Past
「死神の花嫁」その名を聞いたのは随分昔のことだ。
(俺が少尉だった頃か・・・)
その頃、ウラルの隣国、軍事政権国家レンツの反政府活動家にその通り名を
持ったものがいる。
そうSPAWNは記憶していた。無論、SPAWN自身がその通り名を持つものを見たことは無かった。
(随分昔のことだ、あの娘が通り名を受け継いでいるのか? それとも偶然昔の通り名が使われたか)
Risaを見つめるSPAWN。
「よし、手当てはあらかた済んだようだな」
いづいが橋上に他のメンバーとともに現れた。
「戦果確認をする。警戒は怠るなよ。けが人は後方についてくれ」
「OK」
「ジョー、随分やられたわね、ハマも。」
「ああ」
「SPAWN、援護できてたの?」
Risaが射るような目でSPAWNを睨む。
(ちぃ、女性ににらまれるのは性に合わんな)
SPAWNはわざと視線をはずす。
ハマが、SPAWNの肩をぽんと叩きながら言う。
「きっちり援護してたぜ。加入してすぐだ、こんなもんだろ。俺らの連携だってほめられたもんじゃない。もっと密に連携できればリスクは減るはずだ」
「ならいいけど。」
Risaは射るような目で再度SPAWNを睨む
(やれやれ、理由はわからんがお気に召さないらしいな)
メンバーはそれぞれ武器を構えなおし、シャッター側から”砦”の中に入る。
いづいたちが中に入ってすぐの空間は"砦”というにはあまりに貧弱だった。
コンテナが数個あるだけで、敵の侵入に備えるべき装備らしきものはないに等しかった。
敵の死体と友軍の死体がごろごろと至る所に転がっていた。
硝煙と埃で靄がかかったようになっているが、血のにおいがあたりに漂い、地獄という例えが
相応しい場所になっている。
「ほう」
思わずSPAWNが声を上げる。Risaが銃弾を打ち込んでいた先には何人もの敵の死体が折り重なっていた。
(勘とやら、は信じないほうだが・・・・。ここまでやるとなると第6感とやらを信じねばなるまい・・・。)
シャッタ裏には2名の敵の死体が転がっている。
それを確認したSPAWNにジョーとハマが親指を立てる。
「すげーな、じーさん!脳天一撃かよ!」
1階のフロアの中央でいづいが辺りを見回してメンバーに問いかける。
「おかしいと思わないか?」
「ああ、とても拠点とは思えないな」
ハマーンが死体のいくつかをひっくり返しながらいう。
「どれも防弾装備をしてない。」
「とにかく2階も見てみよう。リグ、ロンズ!」
二人が1階のキャットウォークを上がり、2階の回廊を先に進む。
回廊の奥に扉を発見するとリグが1階のメンバーに向かって
「扉らしきものがある」
とゼスチャーで知らせる。それを見たメンバーはつぎつぎに2階に上がる。
リグとロンズは扉の両脇で銃を構えている。
いづいが扉の前に立つとその扉はスーッと左右に開いた。
同時にリグ、ロンズがそれぞれ前方に転がり込み、即座に銃を構えて警戒する。
「誰もいないな」
扉の奥は動力の制御盤らしきものが並んでいる。
いくつかの計器には数字が表示されている。
「ここは拠点ではなさそうだ。連絡手段も無いのにこいつらはなぜここにいる・・・。」
「もう一度下で通信機器をもってる者がいないか探すぞ。生存者でもいれば願ったりだが・・・。」
メンバーはそれぞれ1階のフロアに散在する死体をごろごろとひっくり返して回る。
「なさそうだな」
Risaが死体の脇を歩きながら
「そうね」
と同意しようとした瞬間、Risaの足首を不意に何者かがつかんだ。
「きゃあ!」
その声に反応し、近くにいたハマーンと天才がその方向に銃口を向ける。
「まって!」
Risaは瞬時に平静を取り戻し、手で二人の次の動作を制する。
「いきてるわ・・・・。」
腕と肩、わき腹に銃弾を受けた敵の兵士がRisaの足首をつかんだまま何かをしゃべっている。
「・・・何をしゃべってるのかわからないわね」
そういいながらRisaは足首の手を解き、周りにあった銃をやや遠くに放り投げる。
ついでその息をしている兵士の体のあちこちをまさぐりはじめた。
「手榴弾の類は無いわ。どうするマスター?」
「止血をしてやれ。捕虜として戻って通訳に任せよう。情報が取れるといいが・・・。」
いづいはそういいながらコミュータに向かって話しかける。
「アサルト選抜だ。捕虜がいる。こちらにこれるか?」
暫くの沈黙の後、いづいがメンバーに告げる。
「10分で迎えが来る。帰るぞ!。そいつも連れて行く。」
(初戦はスキルの確認ができたことが収穫か)
そう考えながらSPAWNは胸ポケットに手を伸ばし、タバコに火をつける。
「俺も」
そういうとハマーンがSPAWNのそばでタバコに火をつける。
「うまいな。一仕事後のこれは!」
うまそうに燻らせる。
タバコの煙がゆっくりと弧を描きながら上昇し、そして消えてゆく。
(死体に囲まれてもタバコが吸えるってのは感覚が軍人のまま、ということか)
ぼんやりとその煙の行方を見つめながらSPAWNは考えていた。
10分後、捕虜とチームを乗せたチヌークが”砦”を後にする。
いづいは眼下で硝煙にくすむ”砦”を見下ろしながら考え事をしていた。
(あれは砦とは言いがたい。しかしチームへのオーダには攻撃拠点とまで書かれていた。
どういうことだ?。あれでは俺たちのしたことは虐殺に近い・・・・。)
チヌークがデッキにたどり着くと、整備兵が走りよってくる。
いづいは真っ先に降りると整備兵に話しかけ、整備兵の一人はうなづくと奥に走りこんだ。
やがて医療班がチヌークに走りよってくる。
「腕と肩、わき腹に被弾、止血は応急的にしたけど・・・。頼むわね!」
Risaが医療班に状況を伝える。
捕虜となった男はいづいを見ながらまた何語かで訴えかけるようにしゃべっている。
「大丈夫だ、お前は医療班で治療を受けられる。お前はジュネーブ条約によって保護されるんだ、心配するな!」
いづいはそう男に告げたが男はまだ何か話そうとしている。
男とのやり取りの最中、作戦司令部の部屋から男が一人出てきてチヌークに近づいた。
「ご苦労」
敬礼をしてチームを迎えたが、その敬礼はどこかぎこちない。
「ウラル国、国防省筆頭文官のガヤルドだ」
長身の男はそう自己紹介をした。それを見ていづいも敬礼で返す。
ガヤルドは敬礼をとくとストレッチャーに乗せられる男を見ながらいづいにたずねる。
「あれは・・・・なんだね。」
「今回の作戦の捕虜だ。」
ガヤルドはいづいのほうに振り返ってさらに質問を続ける。
(なんていやな目をしてやがる・・・)
いづいは振り返ったガヤルドの目を見て思った。
捕虜を見る目はまるで人間ではないようなものを見る目、そしていづいに向けられた視線は
蔑みを含んだものだった。
「なぜつれてきたのかね・・・・。」
「我々に展開された情報と異なる点がある。敵側の情報を聞きだして整合をとるためだ。」
「ほう・・・。」
「捕虜が何かしゃべっているが俺たちには理解できない、通訳を・・・おい!」
いづいがしゃべっている間にガヤルドはそのストレッチャーに向かって歩き出していた。
ガヤルドがストレッチャーに近づくと捕虜の男は取り乱したように声を上げた。
ストレッチャーから落ちんばかりに手足をばたつかせる。
(まずい!)
その様子を見ていたSPAWNはいやな予感がしてそのストレッチャーに向かって走り始めた。
「パンッ!」
すばやく銃を貫いたガヤルドは男の眉間に向かって発砲した。
乾いた銃声がデッキに響く。
ストレッチャーの上にいた男は大きく伸び上がって地面に倒れ伏す。
「何をする!!!」
いづいが走りよってガヤルドの胸倉をつかむ。
「離し給え・・・。君らは立場がわかっていない様だな・・・」
いづいの剣幕にも動じないでガヤルドは見下ろすようにしていづいを睨み返す。
「捕虜は条約によって保護されるはずだ!。なぜ撃った!」
「貴様ら傭兵はあくまでも正規軍の補填・・・・。我々の判断に逆らうのは契約違反ではないのかね・・・。」
「クッ!!」
いづいは睨み返したまま動かない。
ガヤルドは冷徹な視線をいづい、そしてチームに向けるとニタリと笑って続ける。
「せいぜい稼ぎたまえ。そのために来たのだろう。余計なことに首を突っ込むと稼ぎを失うことになるぞ・・・・・。」
The Past 完
Suspicionに続く
第1章
**********Stand-By
「よう、Risa」
作戦行動開始地点にチームがたどり着くとM134を携えたRisarisaが立っていた。
「遅いわ。道草してたわね」
「渋滞がひどくてね」
いづいの軽口には反応せず、Risarisaが話し始める。
「敵の斥候らしいのはいないわ。もっともこの距離で私たちが展開したのは察知されてる可能性が高いから、戦力をまとめて迎え撃つつもりね。」
「乗り遅れた割には早かったな」
「彼氏に送ってもらったのよ」
Risaが軽口で返す。
「OK。とりあえずいくぞ、リグ、ジョー、ロンズ、ハマーン前へ。天才、ハマ、SPAWN、後方を。」
いづいが指で合図をするとリグ、ロンズ中将、ハマーン、JOKAR199がそれぞれ距離をとって前方を歩き始める。
後方を馬鹿と呼べる天才とhamakamera、SPAWNがそれぞれ散らばって歩き始める。
RisarisaはひょいとM134 を抱えると歩き始めた。
いづいはRisaと並んでゆっくりと歩を進める。
「相変わらず場違いな服装だな」
いづいがRisaに声をかける。
Risaは白のシャツにタイトスカートとスーツという出で立ちで、大きくはだけた胸元にはバタフライのタトゥが見え隠れする。
年でいえば30前後、戦場にあって、小奇麗にしている彼女は集団の中でやや奇異な印象を受けた。
「あら、センスの無い軍服が嫌いなだけよ。私はこれで十分戦えるし、服装で戦争するわけじゃないもの」
「好きにしなよ」
しばらく歩いて岩場を抜けると急に視界が開け、目指すべき攻撃目標が見下ろす形で視認できる崖にたどり着いた。
よく見ると四方の岩場に人の気配がしている。
「敵か?」
SPAWNがつぶやきながら、Kriegを構える。
「いや友軍だな。撃つなよ。」
いづいが手で制する。
岩影からこちらを見た人影がさっと手を上げる。それをスコープ越しに確認したSPAWNは銃の構えをといた。
「どうだ?」
いづいがメンバーに問いかける。
「まったく敵の姿が無いな」
「ああ。拠点にこもって迎え撃つということだろうな」
「ということは援軍の要請はすでに出ている可能性が高いな」
「間違いないだろう」
「早めにケリをつけないと厄介ね。展開している戦力だけでは押し切られてしまうわ」
「OK。俺とリグ、ロンズ、Risaが敵をあぶりだして、天才とハマーンで出入り口を押える。ジョー、ハマ、橋上から殲滅を。コミュータのレンジを極小に絞れ、傍受されては元も子もない。SPAWNは二人のサポートを頼む」
(まずはお手並み拝見、か。必要且つ強力なスキル、確認させてもらうぞ)
SPAWNは2人のやや後方を小走りに崖を降りていく。
”砦”は小さめのビルに囲まれていて東側には南北に橋が架かっている。北側は大きめのビルに隣接しているがコンテナがその間にある。
西側にはこれもビルに囲まれた一角に裏口のようなドアが見える。
(コンテナの置き方が意図的だな。)
橋の袂を走りながらSPAWNは構造物の位置関係を確認する。
(橋からの攻撃は容易に想像できる。肝心の出入り口は、コンテナの陰を利用して防御することに過度な期待をしているようだな、がら空きだ)
シャッターは半分ほど開いているが中の様子がわかるほどではない。
橋の横を走っていたジョーがいつの間にかシャッターの近くに迫っていた。
(なるほど、JOKAR199、ジョーは死角を使うのがうまいな。)
「北側は2階構造になってるようだ、敵は2階回廊にも10名ほど。」
ハマがこちらをチラッと見る。
指で下に下りる、と合図をすると橋の下にすっと消えていった。
あいたシャッタのスキマから敵の足元を狙撃、動きを封じるつもりのようだ。
3人以外のメンバはやや離れた位置に陣取っている。
天才はジョーの後方にあるコンテナの影からよじ登り屋根の端にたどり着いている。
「思ったとおりだ。屋根に出入り口らしきものがある。通風孔かもしれんが念のため、俺がおさえる」
”砦”の壁は一見するとトタンで覆われており脆弱な印象を受けるが、単なる倉庫ではない、拠点としての防御能力は窺い知れない。
SPAWNはすばやくマガジンを通常弾から貫通弾に差し替える。
「行くぞ!」
コミュータを通じていづいから号令が発せられる。
「ダダダダダダダダッ!!!!」
乾いた発射音が四方に響く。
同時にハマが壁伝いにシャッタ前に走りこみあっという間に中へと消えていった。
「パスパスパスッ!!!」
ジョーがそのハマの援護に回るようにシャッタ横から飛び出すと同時に手榴弾を投入する。
堰を切ったように友軍がシャッタに殺到する。
が、殺到した友軍のうち半分程度はばたばたと入り口付近で倒れていく。
(2階の人員展開を変えたか)
間髪をいれず屋根を走っていた天才が通風孔に消える。
手榴弾を投げつけると同時に、屋内に向けて銃撃を加える。
「ダダダッダダダダッダダダ!!!」
通風孔に潜んでいたテロリスト、手榴弾を構えていたテロリストがもんどりうって倒れる。
確認するまもなく、天才は跳躍して通風孔から抜け出し、シャッタ側に走り出す。
友軍がその後の攻撃を受け持つように手榴弾、銃撃を雨のように降り注ぐ。
”砦”からはテロリストと思われるものたちの怒号と銃声が響き渡る。
いづいとハマーン、ロンズ、リグはそれぞれが壁と裏口に銃弾を浴びせる。
裏口からはパニックに陥ったテロリストの何人かが大声で叫びながら出てくるが友軍と
ロンズ、リグ、ハマーンの銃弾につぎつぎと倒れていく。
貫通弾のいくつかが貫通するのが見える。
テロリストも砦内から反撃をしているようだが、混乱した集団は統率が取れているわけでもなく
攻撃側であるいづいたちと友軍にたいしたダメージを与えることができないでいた。
「どうやら防御壁は急ごしらえのようだ!すきがある!貫通弾で援護する!」
いづいの声がコミュータから響く。
Risaは暫く壁を見つめていたがやがてゆっくりと歩き出すと
壁のところに立ち止まる。
(M134で壁を破るつもりか?それほどの威力は無いぞ フロイライン・・・。)
SPAWNが見つめる先でRisaが引き金を引く。
シリンダが回り始め、高速回転となる。
「バババババババババ!!!!」
轟音とともに無数の弾丸が壁に打ち込まれる。
Risaはある範囲を移動しながら壁に撃ちこみ続ける。
SPAWNはジョーとハマの援護の為にやや前方に移動し
壁に向かってKriegを打ち込む
「ダンッ!」
(ちがうか)
「ダンッ!」
「バスッ!!」
(よし!)
壁を貫通した弾丸は内部のいずれかに着弾したはずだ。
(シャッタ周りにはテロリストが伏せて狙っている可能性がある。これで援護ができるはずだ)
20分ほどするとジョー、ハマがシャッタから表に抜け出してくる。
肩口、足の軍服は被弾したか、かすめたかでひどく破れている。
「OK。大方制圧できた!」
SPAWNのところに戻った二人は遠めで見るより明らかに負傷の程度がひどい。が
二人には意に介した様子が無い。
「大丈夫か?」
「ああ、思ったよりも被弾したが、ほとんどがかすった程度さ。」
「突っ込むのは無謀な気がするがね」
「最初の壁抜きで中でパニックが起きてな。意外とすんなり中に転がり込めた。ジョーが援護してるから思い切って飛び込むだけだ」
ハマが饒舌に話す。
「爺さんの援護も効いてた。シャッタ横に潜んでた敵はそれで倒されるか引くかしたから、まとめて倒すことができた」
「失礼だな、爺さんは無いだろ」
「ああ、悪い。悪気は無いんだ。呼びやすいほうがコミュニケーションもとりやすい、だろ?」
ジョーが破れた軍服を引き裂いてぱっくりと裂けた腕に包帯を巻きながらしゃべる。
「もっとも、裏口あたりからその奥の部分にいたテロリストはRisaがあらかた倒したから、実際きつかったのは突入だけだがね」
「Risaは壁にM134をひたすらうっていたように見えたが・・・」
(あの攻撃で効果があるとは思えぬがな)
SPAWNには闇雲に撃っているように見え、正直意図がつかみかねた攻撃だった。
「いや彼女は勘が鋭いのさ。敵の気配がするところに撃ち込んでる。そして彼女に魅入られたものは死から逃れられない」
「彼女はああ見えて歴戦のつわものさ。通り名くらいは聞いたことがあるだろう。」
(通り名がつくほどの女性の兵士?)
SPAWNは何人かの通り名がついたテロリストや軍人を思い浮かべる。ただ通り名はそれ自体が性別を特定するほどの情報を含んでいないケースがある。
男が女性を連想させる通り名を付けられていることもある。またその逆もあるのだが、多くの場合は性別が特定されていることはまれでましてやその人物を見られるのは大抵の場合、味方に限られる。
有名な通り名を持つものが戦場にあった場合、敵はその存在は把握できても人物を見るまでには至らない。
なぜなら大半の敵は殲滅され、それらの情報は残らず通り名だけが風聞としてつたわるのが戦場の常だからだ。
「死神の花嫁、それが彼女の通り名さ。」
その名を聞いた瞬間、SPAWNには遠い昔のある記憶がフラッシュバックのように蘇った。
Stand-By 完
The pastに続く
**********Stand-By
「よう、Risa」
作戦行動開始地点にチームがたどり着くとM134を携えたRisarisaが立っていた。
「遅いわ。道草してたわね」
「渋滞がひどくてね」
いづいの軽口には反応せず、Risarisaが話し始める。
「敵の斥候らしいのはいないわ。もっともこの距離で私たちが展開したのは察知されてる可能性が高いから、戦力をまとめて迎え撃つつもりね。」
「乗り遅れた割には早かったな」
「彼氏に送ってもらったのよ」
Risaが軽口で返す。
「OK。とりあえずいくぞ、リグ、ジョー、ロンズ、ハマーン前へ。天才、ハマ、SPAWN、後方を。」
いづいが指で合図をするとリグ、ロンズ中将、ハマーン、JOKAR199がそれぞれ距離をとって前方を歩き始める。
後方を馬鹿と呼べる天才とhamakamera、SPAWNがそれぞれ散らばって歩き始める。
RisarisaはひょいとM134 を抱えると歩き始めた。
いづいはRisaと並んでゆっくりと歩を進める。
「相変わらず場違いな服装だな」
いづいがRisaに声をかける。
Risaは白のシャツにタイトスカートとスーツという出で立ちで、大きくはだけた胸元にはバタフライのタトゥが見え隠れする。
年でいえば30前後、戦場にあって、小奇麗にしている彼女は集団の中でやや奇異な印象を受けた。
「あら、センスの無い軍服が嫌いなだけよ。私はこれで十分戦えるし、服装で戦争するわけじゃないもの」
「好きにしなよ」
しばらく歩いて岩場を抜けると急に視界が開け、目指すべき攻撃目標が見下ろす形で視認できる崖にたどり着いた。
よく見ると四方の岩場に人の気配がしている。
「敵か?」
SPAWNがつぶやきながら、Kriegを構える。
「いや友軍だな。撃つなよ。」
いづいが手で制する。
岩影からこちらを見た人影がさっと手を上げる。それをスコープ越しに確認したSPAWNは銃の構えをといた。
「どうだ?」
いづいがメンバーに問いかける。
「まったく敵の姿が無いな」
「ああ。拠点にこもって迎え撃つということだろうな」
「ということは援軍の要請はすでに出ている可能性が高いな」
「間違いないだろう」
「早めにケリをつけないと厄介ね。展開している戦力だけでは押し切られてしまうわ」
「OK。俺とリグ、ロンズ、Risaが敵をあぶりだして、天才とハマーンで出入り口を押える。ジョー、ハマ、橋上から殲滅を。コミュータのレンジを極小に絞れ、傍受されては元も子もない。SPAWNは二人のサポートを頼む」
(まずはお手並み拝見、か。必要且つ強力なスキル、確認させてもらうぞ)
SPAWNは2人のやや後方を小走りに崖を降りていく。
”砦”は小さめのビルに囲まれていて東側には南北に橋が架かっている。北側は大きめのビルに隣接しているがコンテナがその間にある。
西側にはこれもビルに囲まれた一角に裏口のようなドアが見える。
(コンテナの置き方が意図的だな。)
橋の袂を走りながらSPAWNは構造物の位置関係を確認する。
(橋からの攻撃は容易に想像できる。肝心の出入り口は、コンテナの陰を利用して防御することに過度な期待をしているようだな、がら空きだ)
シャッターは半分ほど開いているが中の様子がわかるほどではない。
橋の横を走っていたジョーがいつの間にかシャッターの近くに迫っていた。
(なるほど、JOKAR199、ジョーは死角を使うのがうまいな。)
「北側は2階構造になってるようだ、敵は2階回廊にも10名ほど。」
ハマがこちらをチラッと見る。
指で下に下りる、と合図をすると橋の下にすっと消えていった。
あいたシャッタのスキマから敵の足元を狙撃、動きを封じるつもりのようだ。
3人以外のメンバはやや離れた位置に陣取っている。
天才はジョーの後方にあるコンテナの影からよじ登り屋根の端にたどり着いている。
「思ったとおりだ。屋根に出入り口らしきものがある。通風孔かもしれんが念のため、俺がおさえる」
”砦”の壁は一見するとトタンで覆われており脆弱な印象を受けるが、単なる倉庫ではない、拠点としての防御能力は窺い知れない。
SPAWNはすばやくマガジンを通常弾から貫通弾に差し替える。
「行くぞ!」
コミュータを通じていづいから号令が発せられる。
「ダダダダダダダダッ!!!!」
乾いた発射音が四方に響く。
同時にハマが壁伝いにシャッタ前に走りこみあっという間に中へと消えていった。
「パスパスパスッ!!!」
ジョーがそのハマの援護に回るようにシャッタ横から飛び出すと同時に手榴弾を投入する。
堰を切ったように友軍がシャッタに殺到する。
が、殺到した友軍のうち半分程度はばたばたと入り口付近で倒れていく。
(2階の人員展開を変えたか)
間髪をいれず屋根を走っていた天才が通風孔に消える。
手榴弾を投げつけると同時に、屋内に向けて銃撃を加える。
「ダダダッダダダダッダダダ!!!」
通風孔に潜んでいたテロリスト、手榴弾を構えていたテロリストがもんどりうって倒れる。
確認するまもなく、天才は跳躍して通風孔から抜け出し、シャッタ側に走り出す。
友軍がその後の攻撃を受け持つように手榴弾、銃撃を雨のように降り注ぐ。
”砦”からはテロリストと思われるものたちの怒号と銃声が響き渡る。
いづいとハマーン、ロンズ、リグはそれぞれが壁と裏口に銃弾を浴びせる。
裏口からはパニックに陥ったテロリストの何人かが大声で叫びながら出てくるが友軍と
ロンズ、リグ、ハマーンの銃弾につぎつぎと倒れていく。
貫通弾のいくつかが貫通するのが見える。
テロリストも砦内から反撃をしているようだが、混乱した集団は統率が取れているわけでもなく
攻撃側であるいづいたちと友軍にたいしたダメージを与えることができないでいた。
「どうやら防御壁は急ごしらえのようだ!すきがある!貫通弾で援護する!」
いづいの声がコミュータから響く。
Risaは暫く壁を見つめていたがやがてゆっくりと歩き出すと
壁のところに立ち止まる。
(M134で壁を破るつもりか?それほどの威力は無いぞ フロイライン・・・。)
SPAWNが見つめる先でRisaが引き金を引く。
シリンダが回り始め、高速回転となる。
「バババババババババ!!!!」
轟音とともに無数の弾丸が壁に打ち込まれる。
Risaはある範囲を移動しながら壁に撃ちこみ続ける。
SPAWNはジョーとハマの援護の為にやや前方に移動し
壁に向かってKriegを打ち込む
「ダンッ!」
(ちがうか)
「ダンッ!」
「バスッ!!」
(よし!)
壁を貫通した弾丸は内部のいずれかに着弾したはずだ。
(シャッタ周りにはテロリストが伏せて狙っている可能性がある。これで援護ができるはずだ)
20分ほどするとジョー、ハマがシャッタから表に抜け出してくる。
肩口、足の軍服は被弾したか、かすめたかでひどく破れている。
「OK。大方制圧できた!」
SPAWNのところに戻った二人は遠めで見るより明らかに負傷の程度がひどい。が
二人には意に介した様子が無い。
「大丈夫か?」
「ああ、思ったよりも被弾したが、ほとんどがかすった程度さ。」
「突っ込むのは無謀な気がするがね」
「最初の壁抜きで中でパニックが起きてな。意外とすんなり中に転がり込めた。ジョーが援護してるから思い切って飛び込むだけだ」
ハマが饒舌に話す。
「爺さんの援護も効いてた。シャッタ横に潜んでた敵はそれで倒されるか引くかしたから、まとめて倒すことができた」
「失礼だな、爺さんは無いだろ」
「ああ、悪い。悪気は無いんだ。呼びやすいほうがコミュニケーションもとりやすい、だろ?」
ジョーが破れた軍服を引き裂いてぱっくりと裂けた腕に包帯を巻きながらしゃべる。
「もっとも、裏口あたりからその奥の部分にいたテロリストはRisaがあらかた倒したから、実際きつかったのは突入だけだがね」
「Risaは壁にM134をひたすらうっていたように見えたが・・・」
(あの攻撃で効果があるとは思えぬがな)
SPAWNには闇雲に撃っているように見え、正直意図がつかみかねた攻撃だった。
「いや彼女は勘が鋭いのさ。敵の気配がするところに撃ち込んでる。そして彼女に魅入られたものは死から逃れられない」
「彼女はああ見えて歴戦のつわものさ。通り名くらいは聞いたことがあるだろう。」
(通り名がつくほどの女性の兵士?)
SPAWNは何人かの通り名がついたテロリストや軍人を思い浮かべる。ただ通り名はそれ自体が性別を特定するほどの情報を含んでいないケースがある。
男が女性を連想させる通り名を付けられていることもある。またその逆もあるのだが、多くの場合は性別が特定されていることはまれでましてやその人物を見られるのは大抵の場合、味方に限られる。
有名な通り名を持つものが戦場にあった場合、敵はその存在は把握できても人物を見るまでには至らない。
なぜなら大半の敵は殲滅され、それらの情報は残らず通り名だけが風聞としてつたわるのが戦場の常だからだ。
「死神の花嫁、それが彼女の通り名さ。」
その名を聞いた瞬間、SPAWNには遠い昔のある記憶がフラッシュバックのように蘇った。
Stand-By 完
The pastに続く