第1章
**********Stand-By
「よう、Risa」
作戦行動開始地点にチームがたどり着くとM134を携えたRisarisaが立っていた。
「遅いわ。道草してたわね」
「渋滞がひどくてね」
いづいの軽口には反応せず、Risarisaが話し始める。
「敵の斥候らしいのはいないわ。もっともこの距離で私たちが展開したのは察知されてる可能性が高いから、戦力をまとめて迎え撃つつもりね。」
「乗り遅れた割には早かったな」
「彼氏に送ってもらったのよ」
Risaが軽口で返す。
「OK。とりあえずいくぞ、リグ、ジョー、ロンズ、ハマーン前へ。天才、ハマ、SPAWN、後方を。」
いづいが指で合図をするとリグ、ロンズ中将、ハマーン、JOKAR199がそれぞれ距離をとって前方を歩き始める。
後方を馬鹿と呼べる天才とhamakamera、SPAWNがそれぞれ散らばって歩き始める。
RisarisaはひょいとM134 を抱えると歩き始めた。
いづいはRisaと並んでゆっくりと歩を進める。
「相変わらず場違いな服装だな」
いづいがRisaに声をかける。
Risaは白のシャツにタイトスカートとスーツという出で立ちで、大きくはだけた胸元にはバタフライのタトゥが見え隠れする。
年でいえば30前後、戦場にあって、小奇麗にしている彼女は集団の中でやや奇異な印象を受けた。
「あら、センスの無い軍服が嫌いなだけよ。私はこれで十分戦えるし、服装で戦争するわけじゃないもの」
「好きにしなよ」
しばらく歩いて岩場を抜けると急に視界が開け、目指すべき攻撃目標が見下ろす形で視認できる崖にたどり着いた。
よく見ると四方の岩場に人の気配がしている。
「敵か?」
SPAWNがつぶやきながら、Kriegを構える。
「いや友軍だな。撃つなよ。」
いづいが手で制する。
岩影からこちらを見た人影がさっと手を上げる。それをスコープ越しに確認したSPAWNは銃の構えをといた。
「どうだ?」
いづいがメンバーに問いかける。
「まったく敵の姿が無いな」
「ああ。拠点にこもって迎え撃つということだろうな」
「ということは援軍の要請はすでに出ている可能性が高いな」
「間違いないだろう」
「早めにケリをつけないと厄介ね。展開している戦力だけでは押し切られてしまうわ」
「OK。俺とリグ、ロンズ、Risaが敵をあぶりだして、天才とハマーンで出入り口を押える。ジョー、ハマ、橋上から殲滅を。コミュータのレンジを極小に絞れ、傍受されては元も子もない。SPAWNは二人のサポートを頼む」
(まずはお手並み拝見、か。必要且つ強力なスキル、確認させてもらうぞ)
SPAWNは2人のやや後方を小走りに崖を降りていく。
”砦”は小さめのビルに囲まれていて東側には南北に橋が架かっている。北側は大きめのビルに隣接しているがコンテナがその間にある。
西側にはこれもビルに囲まれた一角に裏口のようなドアが見える。
(コンテナの置き方が意図的だな。)
橋の袂を走りながらSPAWNは構造物の位置関係を確認する。
(橋からの攻撃は容易に想像できる。肝心の出入り口は、コンテナの陰を利用して防御することに過度な期待をしているようだな、がら空きだ)
シャッターは半分ほど開いているが中の様子がわかるほどではない。
橋の横を走っていたジョーがいつの間にかシャッターの近くに迫っていた。
(なるほど、JOKAR199、ジョーは死角を使うのがうまいな。)
「北側は2階構造になってるようだ、敵は2階回廊にも10名ほど。」
ハマがこちらをチラッと見る。
指で下に下りる、と合図をすると橋の下にすっと消えていった。
あいたシャッタのスキマから敵の足元を狙撃、動きを封じるつもりのようだ。
3人以外のメンバはやや離れた位置に陣取っている。
天才はジョーの後方にあるコンテナの影からよじ登り屋根の端にたどり着いている。
「思ったとおりだ。屋根に出入り口らしきものがある。通風孔かもしれんが念のため、俺がおさえる」
”砦”の壁は一見するとトタンで覆われており脆弱な印象を受けるが、単なる倉庫ではない、拠点としての防御能力は窺い知れない。
SPAWNはすばやくマガジンを通常弾から貫通弾に差し替える。
「行くぞ!」
コミュータを通じていづいから号令が発せられる。
「ダダダダダダダダッ!!!!」
乾いた発射音が四方に響く。
同時にハマが壁伝いにシャッタ前に走りこみあっという間に中へと消えていった。
「パスパスパスッ!!!」
ジョーがそのハマの援護に回るようにシャッタ横から飛び出すと同時に手榴弾を投入する。
堰を切ったように友軍がシャッタに殺到する。
が、殺到した友軍のうち半分程度はばたばたと入り口付近で倒れていく。
(2階の人員展開を変えたか)
間髪をいれず屋根を走っていた天才が通風孔に消える。
手榴弾を投げつけると同時に、屋内に向けて銃撃を加える。
「ダダダッダダダダッダダダ!!!」
通風孔に潜んでいたテロリスト、手榴弾を構えていたテロリストがもんどりうって倒れる。
確認するまもなく、天才は跳躍して通風孔から抜け出し、シャッタ側に走り出す。
友軍がその後の攻撃を受け持つように手榴弾、銃撃を雨のように降り注ぐ。
”砦”からはテロリストと思われるものたちの怒号と銃声が響き渡る。
いづいとハマーン、ロンズ、リグはそれぞれが壁と裏口に銃弾を浴びせる。
裏口からはパニックに陥ったテロリストの何人かが大声で叫びながら出てくるが友軍と
ロンズ、リグ、ハマーンの銃弾につぎつぎと倒れていく。
貫通弾のいくつかが貫通するのが見える。
テロリストも砦内から反撃をしているようだが、混乱した集団は統率が取れているわけでもなく
攻撃側であるいづいたちと友軍にたいしたダメージを与えることができないでいた。
「どうやら防御壁は急ごしらえのようだ!すきがある!貫通弾で援護する!」
いづいの声がコミュータから響く。
Risaは暫く壁を見つめていたがやがてゆっくりと歩き出すと
壁のところに立ち止まる。
(M134で壁を破るつもりか?それほどの威力は無いぞ フロイライン・・・。)
SPAWNが見つめる先でRisaが引き金を引く。
シリンダが回り始め、高速回転となる。
「バババババババババ!!!!」
轟音とともに無数の弾丸が壁に打ち込まれる。
Risaはある範囲を移動しながら壁に撃ちこみ続ける。
SPAWNはジョーとハマの援護の為にやや前方に移動し
壁に向かってKriegを打ち込む
「ダンッ!」
(ちがうか)
「ダンッ!」
「バスッ!!」
(よし!)
壁を貫通した弾丸は内部のいずれかに着弾したはずだ。
(シャッタ周りにはテロリストが伏せて狙っている可能性がある。これで援護ができるはずだ)
20分ほどするとジョー、ハマがシャッタから表に抜け出してくる。
肩口、足の軍服は被弾したか、かすめたかでひどく破れている。
「OK。大方制圧できた!」
SPAWNのところに戻った二人は遠めで見るより明らかに負傷の程度がひどい。が
二人には意に介した様子が無い。
「大丈夫か?」
「ああ、思ったよりも被弾したが、ほとんどがかすった程度さ。」
「突っ込むのは無謀な気がするがね」
「最初の壁抜きで中でパニックが起きてな。意外とすんなり中に転がり込めた。ジョーが援護してるから思い切って飛び込むだけだ」
ハマが饒舌に話す。
「爺さんの援護も効いてた。シャッタ横に潜んでた敵はそれで倒されるか引くかしたから、まとめて倒すことができた」
「失礼だな、爺さんは無いだろ」
「ああ、悪い。悪気は無いんだ。呼びやすいほうがコミュニケーションもとりやすい、だろ?」
ジョーが破れた軍服を引き裂いてぱっくりと裂けた腕に包帯を巻きながらしゃべる。
「もっとも、裏口あたりからその奥の部分にいたテロリストはRisaがあらかた倒したから、実際きつかったのは突入だけだがね」
「Risaは壁にM134をひたすらうっていたように見えたが・・・」
(あの攻撃で効果があるとは思えぬがな)
SPAWNには闇雲に撃っているように見え、正直意図がつかみかねた攻撃だった。
「いや彼女は勘が鋭いのさ。敵の気配がするところに撃ち込んでる。そして彼女に魅入られたものは死から逃れられない」
「彼女はああ見えて歴戦のつわものさ。通り名くらいは聞いたことがあるだろう。」
(通り名がつくほどの女性の兵士?)
SPAWNは何人かの通り名がついたテロリストや軍人を思い浮かべる。ただ通り名はそれ自体が性別を特定するほどの情報を含んでいないケースがある。
男が女性を連想させる通り名を付けられていることもある。またその逆もあるのだが、多くの場合は性別が特定されていることはまれでましてやその人物を見られるのは大抵の場合、味方に限られる。
有名な通り名を持つものが戦場にあった場合、敵はその存在は把握できても人物を見るまでには至らない。
なぜなら大半の敵は殲滅され、それらの情報は残らず通り名だけが風聞としてつたわるのが戦場の常だからだ。
「死神の花嫁、それが彼女の通り名さ。」
その名を聞いた瞬間、SPAWNには遠い昔のある記憶がフラッシュバックのように蘇った。
Stand-By 完
The pastに続く