第1章
**********Team
SPAWNが部屋を出ると目の前には小柄な東洋人がたっていた。
「タナカ!」
タナカと呼ばれた東洋人はお辞儀をすると人懐こそうな笑顔を浮かべながらSPAWNに近寄る。
「お久しぶりです。SPAWN。またご一緒できてうれしいです。」
「アシスタントというのは君か?」
「ええ。でも今回はチームのアシスタントでもあります。」
「そうか、そうか」
SPAWNは握手をしながら左手でタナカの肩をポンポンとたたいた。
「なつかしいな」
「ええ。お部屋はもう見ましたか?」
「いや。案内してくれ」
(まさかタナカに会えるとは。それにしても周到だな・・・)
先頭を歩く田中の背中を見つめながらSPAWNは考えていた。
タナカに案内されながら壁や廊下を見回していたSPAWNは違和感を覚えた。
(軍の設備ではないのか?。既存の設備の流用なのか?。)
扉を開けたタナカのあとに続いてSPAWNはその扉を見て確信した。
(扉が厚く重たい・・・。間違いない、軍の設備ではないな)
階段を下りるとドアの並んだやや広めの空間に着いた。
「こちらです」
ベットとシャワールームの付いた部屋だ。タナカは奥に進むとあれこれと設備の説明を始めた。
「タナカ」
その説明をさえぎるようにSPAWNが声をかけた。
「ここはどういった素性の設備だ?。ドアも軍の設備とは思えないほど厚い。それにこの部屋も軍が設営する設備とは違う。」
タナカは少し困ったような表情を浮かべたが意を決したようにドアを閉めるとベットに腰掛けた。
「察しがいいですね。確かにここは軍の設備ではないです」
「ここは核研究施設なんです」
「核!?。ウラルは核保有国ではないぞ。」
「ええ。対外的には。でも研究は進めていたのです。」
タナカは堰を切ったようにしゃべり始める。
「レアメタルの開発が進むよりも前の話です。国家予算の10%がその予算に割り当てられて研究が行われていました。民生用と軍用です。そして今回、戦争状態になったこの国で重要防衛拠点の1つがここなのです。」
(なるほど、核開発の研究施設であればドアは防護壁の役割も果たさねばならない。それであの厚さと重さが必要ということか。ここは派兵と防衛をかねているのか)
「この戦争でエラヌス財務相と陸軍大将マイバッハはここの奪還も目指しているということか」
「ええ。エラヌス財務相は当然、この施設の存在と役割は知っています。そしてこの施設を手に入れれば一気に形勢が自分たちに有利になることも・・・。」
「テロリストの拠点をつぶす作戦は、ここに近づけないため、か」
「そういうことです。今はエラヌス財務相と陸軍大将マイバッハの軍には航空兵力がありませんから、地上戦で撃退すれば」当座の危機は回避できるのです」
SPAWNは手に汗をかく感覚を覚えた。
(ウラルは結局のところ新たな戦争に巻き込まれたのではなく、火種を消せずにいたということか。しかも核研究をしていたということは、それが民生用であってもいずれ、兵器転用が考えられる。クーデター以降、ここが残っていたということはいずれこれで中東の覇権を握るつもりかも知れんな)
「タナカ」
SPAWNはタナカに声をかけた。
「ありがとう。これからのサポートを頼む。それとさっきの話は聞かなかったことにする」
タナカはやや気持ちが晴れたような顔をしてSPAWNを見つめる。
「ありがとうございます。では。」
タナカが出て行った後、SPAWNは机の上にあった軍服に着替えながら考えた。
(マイバッハはそう遅くない時期にここを攻めるだろう、施設の特性から考えて破壊が目的ではなく奪還となるはずだ。そう考えるとここにあつめられたさっきの面子、チームが特殊部隊を名乗ったのも理解できる。
政府は非公式施設であるここに正規軍は投入できない。だからこそ傭兵やら退役軍人、志願兵で構成したチームを複数用意したわけか・・・。)
この戦いは一筋縄ではいかない、そうSPAWNは感じていた。
軍服には階級章が添えられていた。
「中佐か。」
現役のときと同じ階級だが、ここでは必要ないかもしれない。SPAWNは階級章はつけずにデスクの引き出しにいれた。
インタホンが不意に起動した。
「SPAWN、兵装を確認しますので」
タナカの声だ。
「わかった。いまいく」
部屋を出るとタナカについて違うフロアに歩いていく。先ほどの話があったせいか、お互いにしゃべるのを遠慮している空気が流れていた。
「どうぞ」
タナカがドアを開けるとそこは兵器庫だった。
集合まであまり時間が無い、SPAWNは棚に並んだ銃火器類をチラッと見るとタナカに声をかけた。
「タナカ、Krieg550と貫通弾3Set、それにメンテナンスキット、あるか」
「ハイ。」
タナカはなれた足取りで棚の中に消えていく。暫くしてSPAWNがいった装備が目の前におかれた。
「最新とまでは行きませんが新式の兵装もありますが、いいんですか?」
「新式の銃は俺には向いてないようなんだ。こいつは反動さえ手なづければ最高に扱いやすい」
(攻撃目標が倉庫、とはいえ砦としての機能を持つのであれば、壁にもそれなりの手当てがしてあるはずだ。通常弾では内部に入り込まないと制圧できない。犠牲を少なく、戦果を挙げるにはこの選択がBESTだ。)
そう思いながらSPAWNが兵装をバッグに詰めているとチームのメンバーがばらばらと兵器庫に入ってきた。
「タナカ、SVDと貫通弾」
いづいがタナカにオーダしながらSPAWNの隣の机にどかっとこしかけた。
「どうだ?」
SPAWNは小物をバッグに詰めながらチラッといづいをみた。
「なにがだ?」
「行けるか、と聞いている」
「当たり前だ。そのために準備をしている」
「期待してるぞ」
そういっていづいはSPAWNの右腕をぽんとたたいた。
その瞬間、「ん?」というような顔をして、SPAWNの顔をみた。
「どうした?」
「なにが?」
「腕だ、プレートでもはめているのか?」
「ああ」
隠すようなことでもあるまい、そうSPAWNは考えた。隠したところでいずれはばれる、ま、ばれてどうといったものでもないのだが・・・。
軍服の袖をぐっと上げるとSPAWNのひじから手首までを黒光りした金属で覆われていた。
その様子を見て他のメンバーもSPAWNといづいを取り囲むようにして覗き込んでいる。
「チタン合金製の義手だ」
SPAWNが説明すると皆が一様に驚きの声を上げた。
「おいおい、大丈夫か?爺さんで義手、なんてお荷物になりかねない!」
ロンズが声を上げる。
「心配するな。ほぼ人間の腕と同じ機能を持っている、反応速度も同等だ」
SPAWNがまくった袖を直しながら言う。
「足を引っ張られるのだけは勘弁してほしいものだな」
ロンズはなおも食い下がる。
「サポートも必要ない。俺は俺の役割を果たす、それだけだ」
いづいがロンズを制しながらメンバーを見渡して話す。
「俺たちは今日からチームだ。互いを尊重しろ。そうでなければ必ず全滅する!」
居並ぶメンバーはその一言ですっと解散した。
(ほう、統率力はあるのだな)
いづいはメンバーの兵装が整ったのを見るとタナカに指示を出した。
「タナカ! デッキを開放しろ!」
「ハイ!」
タナカがスイッチを押すと兵器庫の奥の壁が左右に開き、1時間前にヘリが降り立ったデッキが現れた。
「いくぞ!」
整備兵に敬礼しながらチヌークに乗り込む。
SPAWNは一番最後に乗り込み、一番の奥に陣取った。
この戦いは、どこか胡散臭いものがある、ただしそれが何なのか、つかむためには生き残らねばならない。
「随分とタフな戦いになりそうだ・・・。」
チヌークはやや浮上するとそのまま水平に移動し、浮上するために出力を上げた。
「そういえばRisarisaが兵装準備の時にいなかったな」
SPAWNがぼんやりとそんなことを考えてふと丸窓から下を見ると、Risarisaが走り出てこちらを見上げて手足をばたばたさせている。
「乗り遅れたのか・・・・」
ヘリは急速に高度を上げ、リンケージポイントを目指して渓谷を縫うように泳ぎだした。
Team 完
Stand-Byに続く