中東は古来、石油という過去の遺物が金を産み、多くの国は富み、そして世界の中での発言力を増してきた。
ただし、その金は常に強き者の傍にあり、その強き者が道を誤れば争いを産み、多くの悲しみとともにまた次の金を産むと言う連鎖をなしている。
中東の小国レンツはその「道を誤った強き者」のために軍事国家となり、周囲の国との領土争いにもう200年近く明け暮れていた。
その間、国家は強き者の血筋を連綿と受け継ぎながら、徐々に独裁色を強め、現在の元首は、5代目、そして国王の肩書きを得て国民を巨大な富の分配と外敵への強烈な打撃による支持とで支配していた。
そして国王を支える仕組みとして国王直属特殊部隊「蜻蛉」があった。
部隊を統べるのは「堕天使」VALENTI、そして副官に「雷帝」SPAWN、ほかレンツ10万の軍人からそれぞれ特殊技能を持った精鋭20名で構成された、近隣諸国にとってはまさに「恐怖」の対象といえる存在だった。
「下知があった。ウラルが肩入れする反政府組織拠点の壊滅だ」
VALENTIが居並ぶ隊員に命令を伝える。
王宮の一角にある詰所は平屋建てとはいえ天井は3階建て相当の位置にあり調度品も国王が与えるという形で高級なものが使われており、常に装備は新式、軍服の襟に蜻蛉のマークが入った特別なものを誂られていた。
「やつらの拠点はベルトガの西100km、拠点の勢力は100名程度だがバックアップにウラル国軍が入った模様、現在ベルトガの東20kmに一個中隊が進軍中、以上」
伝達が終わると隊員は整然と部屋を出、各自の出撃準備に取り掛かった。
部屋を出て行く隊員達の背中を見ながらSPAWNがVALENTIのところに歩み寄る。
「反政府の拠点なぞ叩いたところで何になるのかね」
VALENTIがため息混じりに頬杖をつく。
「王の命とあっては容易には逆らえますまい」
SPAWNがその様子を見ながら諭すように答える。
「蜻蛉」設立当時はその設立理由も行動も崇高なる理念の下、第三者が見ても「正義」があった。
しかし、為政者たる王がその使い方を誤り始めて以降、隊長となったVALENTIにはどうしても「正義」を見出すことができなくなりつつあった。
「しかし、反政府勢力といっても大半は自国民だ。真の為政者は主義主張の異なる者でも受け入れるだけの度量がほしいものだ」
「今回はウラルが後ろ盾に入っています。やつらはこれを足がかりに侵攻を考えている可能性があります。この芽を摘むのも我らの役割かと考えます。」
VALENTIは多少の軽蔑を含んだ笑みを浮かべる。
「お前は忠実だな。」
「私はあなたの命に忠実であることが王への忠誠につながると考えています」
「酒も水に変わるような真面目さは買うがもう少し自分の感性を信じたほうがいいぞ」
そういうとVALENTIは兵装に着替え始めた。
それをみてSPAWNは黙って敬礼をして部屋を出た。
「隊長の言われることも十分理解はできるが、我々軍人は上官の命令は絶対。」
SPAWNは自室で先のやり取りを反芻しながら兵装を整える。
白のフェイスマスクを装着し、薄型ゴーグルを身に着ける頃には先ほどの反芻と葛藤は心の中から消え、任務の情報を反芻しながら部屋を出て行った。
部隊専用の錬兵場の脇に隊員が整列している。
皆白のフェイスマスクにゴーグルといった出で立ちだ。
戦場にあって目立つ色は基本的には好まれない。
ただし、蜻蛉は戦場でその存在を誇示させるためにも目立つ色を敢えて急所である顔の装具として用いている。
隊員はVALENTIの号令のもと、ガゼルに次々と乗り込む。
ガゼルはやがてホバリングから急上昇し、一路戦地へと飛び立った。
「SPAWN」
ぼんやりと外を眺めていたSPAWNに隊員の一人が声をかけた。
「又聞きだから確度は低いんだが・・・・」
「なんだ」
「反政府組織の戦力には子供もいると聞いた」
「で?」
「子供がいるようであればちょっと考え物だな、とな」
隊員は「俺には撃てない」というような困ったそぶりを見せながら答える。
SPAWNが射るような目でその隊員をにらみ返す
「お前はその子供に撃たれて死んでも文句はないというのか」
「いやそういうわけじゃないが」
「だったら口を慎め」
そう言われて隊員は乗り出した身を席に戻し、考え込むように眼を閉じた。
(うちの規律も随分と緩んだものだ・・・・)
SPAWNはやや苛立ちを覚えながら周りを見渡す。
(隊長からしてあのような考えではな。)
SPAWNの視線の先には地図を見ながら行動計画線図を書き込むVALENTIの姿があった。
(俺の国家への忠誠心は隊長あってこそ、だ。それをあのような物言いでは)
SPAWNは入隊当初のことを思い返した。
SPAWNが蜻蛉への入隊という名誉を手にしたとき、すでにVALENTIは副官としてその存在を軍はおろか国の内外に知られていた。
VALENTIがそれだけの注目を集め、堕天使と言う通り名をつけられてるのにはわけがあった。
彼は「元王族」なのだ。
正確には「王族」からある理由で放逐され、その後数年経ってふらりと戻ってきて軍に入り、頭角を現して蜻蛉に入ったという経歴だった。
彼が率いた中隊はレンツが構える戦線の中でも特に激戦といわれた地域に投入されており、その都度戦果を挙げていた。
風説では軍に入った彼をよく思わない王族の一部が軍に手を回し、激戦地にのみ投入されていたとの話もあったほどだ。
戦場での彼の中隊はすこぶる統率され、敵中突破や突撃戦等では敵軍がその存在を知った時にはすでに半数近くを倒しているという、隠密陽動作戦などを得意としていた。
入隊当日、隊長訓示を受けながらSPAWNは副官であるVALENTIを注視していた。
訓示が終わり、解散となったとき、VALENTIは新規入隊の隊員一人一人と握手をしながら何か一言二言声をかけていた。
SPAWNが彼と握手をした際、彼はこういったのだ。
「死ぬなよ」
そのときからSPAWNは彼のシンパとなり、彼が隊長となった今では副官として彼を支えているのだ。
そして彼が変わりつつあるのを目の当たりにしてきたのだ。
「じいさん、これで全員か?」
リグがSPAWNに話しかける。
「ああ、俺が殿(しんがり)だったからな。後は死体だけだ」
SPAWNが通ってきたであろうルート沿いをリグとハマさんが手をかざして眺める。
「敵の追撃はなし、か。」
副官であるいづいが一時撤退を決めて移動を始めた際、ウラルの光の拠点からは猛烈な斉射が掛けられ
ていた。
味方の撤退を最後方で援護していたSPAWNらはその斉射をかいくぐるように味方の兵を呼び集め、撤退を
急いだ。
「もう少しだ、がんばれ!」
味方の中には負傷したものも少なからずおり、中には命にかかわるような重傷者もいた。
そういったものを置いていこうとする友軍を叱咤しながら何とか最終防衛線まで撤退すると
衛生兵らがその重傷者も含めてトリアージをしながら治療を始める。
「なるべく多くのものを助けてくれ」
天才がそれらの衛生兵に声をかけるが、衛生兵は引きつった表情で
「最大限努力します!」
そういうばかりで状況が一層深刻であることをうかがわせた。
「ひどいわね・・・・」
Risaは走り回る衛生兵を心配そうに見やりながらため息をつく。
「なんなの、敵の攻撃がまったく予見できなかったわ」
ハマーンが答える。
「以前情報見ただろう、WHだと思う。」
「あれは相当に厄介だぞ。」
ロンズが銃の手入れをしながら答える。
「俺達が装備している銃では対抗できない可能性が高い。増援はどうなった」
ハマーンが近くの通信兵を呼び止める。
「1時間後に50名、装備も補充されるようです」
(装備補充といってもな)
SPAWNはメンバーのやり取りを見ながら考え込む。
(斉射の止んだタイミング、これが気になるな・・・・、妙にそろっていた・・・・)
いづいは副官として状況把握と次の作戦に考えをめぐらせていた。
現状の戦力はどう多く見積もっても30名程度、増援を加えても初回の攻撃人員には届かない。
戦術の建て直しが必要なのは明らかだったが、正直なところ敵の兵器の素性がわからないこととその威
力を推し量ることができず手詰まりの状態だった。
SPAWNがいづいの元に歩み寄る。
「どうした、浮かない顔をして」
「ああ、増援をベースにもう一回アタックしたいんだがわからない事だらけでな、正直考えがまとまらない」
「そうか・・・・」
SPAWNは思いついたように話し始める。
「攻撃を受けて引く際にな、ある距離からぴたっと斉射が止んだんだ。」
さらにSPAWNは続ける。
「それに味方の死傷者を見ると一撃で倒されたものが少ない。皆散弾を浴びたような状態だ」
いづいはこれらの情報を頭の中で反芻する。
(距離と被弾状況・・・・・)
「見えている範囲は限定される、使い手の錬度が低い、ということか」
「仮定だが・・・・」
「なら追加の装備が役に立つ。増援は予定外だがな・・・」
そういうといづいはにやりと笑った。
「初手は譲ったが弐の手では目に物見せてくれるわ・・・・」
と、いづいたちの潜む山場の岩陰に突如チヌークが現れた。
「来たか」
いづいがホバリングをするチヌークに目をやると、増援の兵士がわらわらとロープを使って降下するのが見えた。
ついでコンテナが降下されるとチヌークは機体を振りながら帰投動作に入り、あっという間に地平線に消えていった。
「おそくなった」
降下した兵士の一人がいづいに握手を求める。
兵士他のメンバーに比べると随分と小柄で口元をバンダナのような布で巻いて隠している。
そのため表情はうかがい知れないものの、その目は握手をしている際も周囲をくまなく監視するように
絶えず冷たく突き刺すように動いていた
メンバーは兵士がただの増援ではないことを瞬時に見抜いたものの、どういう立場のものなのかは推し
量りかねて訝しげにその様子を注視していた。
(だれだ、ありゃ。単なる増援じゃないな)
ハマーン、ハマさん、天才、Risa、リグ、ロンズ、ジョー、いずれも見覚えがない兵士といづいとのや
り取りを見つめる
「待ちかねたぞ。」
そういうといづいはメンバーが陣取る木陰にその兵士を伴っていく。
「紹介する、あんせるだ」
紹介された男はぐるりとメンバーを見渡すと若干驚きの表情をうかべる。
「聞いていた通り、各国の精鋭ぞろいだな・・・・。」
「おや、雷帝まで・・・・・」
(雷帝?・・・・・・)
聞きなれない通り名に皆が困惑しているとあんせるは指を指す。
その先にはSPAWNが座っていた。
「おい、じいさん、雷帝ってのはあんたの通り名なのか?」
ジョーが問いかける。
「随分昔の通り名だ。知ってるやつがいるとはな、そちらのほうが驚きだ」
SPAWNは特に表情を変えることなく答える。
「レンツ特殊部隊で名を馳せた英雄、その雷撃で敵は一掃され、後には何も残らないとまで言われた男
・・・・単なる退役軍人じゃなかったのね・・・・」
Risaが補足するようにつぶやく。
「退役したはずのあんたがいることも驚きだがな」
あんせるはにやりと笑う。
「思い出した!!」
ハマーンが飛び上がらんばかりの大きな声を上げる。
「白い死神・・・・あんたかよ」
その通り名を聞いた途端皆の顔色が変わる。
「まぁそういわれていることもあるがね」
「急遽呼び寄せた、我がチームはこれで完全に陣容がそろった」
いづいがメンバーを見渡す。
「超精密狙撃と突撃チームそれに撹乱、この陣容でこの戦争を終結させるのが俺達の任務だ・・・」
「さぁ、作戦会議だ!」
いづいが檄を飛ばすとメンバーはいづいの周りに車座になり、いよいよ反撃のための作戦会議が始まった。
あんせるも違和感なくその車座に混じる。
(・・・・これからだぞ、ウラルの光)
第4章 Strikebackに続く
リグがSPAWNに話しかける。
「ああ、俺が殿(しんがり)だったからな。後は死体だけだ」
SPAWNが通ってきたであろうルート沿いをリグとハマさんが手をかざして眺める。
「敵の追撃はなし、か。」
副官であるいづいが一時撤退を決めて移動を始めた際、ウラルの光の拠点からは猛烈な斉射が掛けられ
ていた。
味方の撤退を最後方で援護していたSPAWNらはその斉射をかいくぐるように味方の兵を呼び集め、撤退を
急いだ。
「もう少しだ、がんばれ!」
味方の中には負傷したものも少なからずおり、中には命にかかわるような重傷者もいた。
そういったものを置いていこうとする友軍を叱咤しながら何とか最終防衛線まで撤退すると
衛生兵らがその重傷者も含めてトリアージをしながら治療を始める。
「なるべく多くのものを助けてくれ」
天才がそれらの衛生兵に声をかけるが、衛生兵は引きつった表情で
「最大限努力します!」
そういうばかりで状況が一層深刻であることをうかがわせた。
「ひどいわね・・・・」
Risaは走り回る衛生兵を心配そうに見やりながらため息をつく。
「なんなの、敵の攻撃がまったく予見できなかったわ」
ハマーンが答える。
「以前情報見ただろう、WHだと思う。」
「あれは相当に厄介だぞ。」
ロンズが銃の手入れをしながら答える。
「俺達が装備している銃では対抗できない可能性が高い。増援はどうなった」
ハマーンが近くの通信兵を呼び止める。
「1時間後に50名、装備も補充されるようです」
(装備補充といってもな)
SPAWNはメンバーのやり取りを見ながら考え込む。
(斉射の止んだタイミング、これが気になるな・・・・、妙にそろっていた・・・・)
いづいは副官として状況把握と次の作戦に考えをめぐらせていた。
現状の戦力はどう多く見積もっても30名程度、増援を加えても初回の攻撃人員には届かない。
戦術の建て直しが必要なのは明らかだったが、正直なところ敵の兵器の素性がわからないこととその威
力を推し量ることができず手詰まりの状態だった。
SPAWNがいづいの元に歩み寄る。
「どうした、浮かない顔をして」
「ああ、増援をベースにもう一回アタックしたいんだがわからない事だらけでな、正直考えがまとまらない」
「そうか・・・・」
SPAWNは思いついたように話し始める。
「攻撃を受けて引く際にな、ある距離からぴたっと斉射が止んだんだ。」
さらにSPAWNは続ける。
「それに味方の死傷者を見ると一撃で倒されたものが少ない。皆散弾を浴びたような状態だ」
いづいはこれらの情報を頭の中で反芻する。
(距離と被弾状況・・・・・)
「見えている範囲は限定される、使い手の錬度が低い、ということか」
「仮定だが・・・・」
「なら追加の装備が役に立つ。増援は予定外だがな・・・」
そういうといづいはにやりと笑った。
「初手は譲ったが弐の手では目に物見せてくれるわ・・・・」
と、いづいたちの潜む山場の岩陰に突如チヌークが現れた。
「来たか」
いづいがホバリングをするチヌークに目をやると、増援の兵士がわらわらとロープを使って降下するのが見えた。
ついでコンテナが降下されるとチヌークは機体を振りながら帰投動作に入り、あっという間に地平線に消えていった。
「おそくなった」
降下した兵士の一人がいづいに握手を求める。
兵士他のメンバーに比べると随分と小柄で口元をバンダナのような布で巻いて隠している。
そのため表情はうかがい知れないものの、その目は握手をしている際も周囲をくまなく監視するように
絶えず冷たく突き刺すように動いていた
メンバーは兵士がただの増援ではないことを瞬時に見抜いたものの、どういう立場のものなのかは推し
量りかねて訝しげにその様子を注視していた。
(だれだ、ありゃ。単なる増援じゃないな)
ハマーン、ハマさん、天才、Risa、リグ、ロンズ、ジョー、いずれも見覚えがない兵士といづいとのや
り取りを見つめる
「待ちかねたぞ。」
そういうといづいはメンバーが陣取る木陰にその兵士を伴っていく。
「紹介する、あんせるだ」
紹介された男はぐるりとメンバーを見渡すと若干驚きの表情をうかべる。
「聞いていた通り、各国の精鋭ぞろいだな・・・・。」
「おや、雷帝まで・・・・・」
(雷帝?・・・・・・)
聞きなれない通り名に皆が困惑しているとあんせるは指を指す。
その先にはSPAWNが座っていた。
「おい、じいさん、雷帝ってのはあんたの通り名なのか?」
ジョーが問いかける。
「随分昔の通り名だ。知ってるやつがいるとはな、そちらのほうが驚きだ」
SPAWNは特に表情を変えることなく答える。
「レンツ特殊部隊で名を馳せた英雄、その雷撃で敵は一掃され、後には何も残らないとまで言われた男
・・・・単なる退役軍人じゃなかったのね・・・・」
Risaが補足するようにつぶやく。
「退役したはずのあんたがいることも驚きだがな」
あんせるはにやりと笑う。
「思い出した!!」
ハマーンが飛び上がらんばかりの大きな声を上げる。
「白い死神・・・・あんたかよ」
その通り名を聞いた途端皆の顔色が変わる。
「まぁそういわれていることもあるがね」
「急遽呼び寄せた、我がチームはこれで完全に陣容がそろった」
いづいがメンバーを見渡す。
「超精密狙撃と突撃チームそれに撹乱、この陣容でこの戦争を終結させるのが俺達の任務だ・・・」
「さぁ、作戦会議だ!」
いづいが檄を飛ばすとメンバーはいづいの周りに車座になり、いよいよ反撃のための作戦会議が始まった。
あんせるも違和感なくその車座に混じる。
(・・・・これからだぞ、ウラルの光)
第4章 Strikebackに続く
第3章 Revenge
アサルト選抜チームを中心に編成された100名のチームは「ウラルの光」攻撃拠点に攻撃を仕掛けていた。
工場地帯の中央に巧妙にカモフラージュされた拠点で後方は断崖絶壁となっており、攻めるに難しく守
るに容易い拠点のようではあったが、チームは押し気味に作戦を進めていた。
-----------------------------------------
「いよいよ敵の拠点を獲りに行く」
そうガヤルドはいづいに告げた。
「今回の作戦は君のチームを中心に編成した・・・。いわば必奪の構えだ。」
(いつになく持ち上げるな・・・・)
いづいは饒舌に作戦を披瀝するガヤルドの様子を観察していた。
「そして、今回の作戦の指揮はこの方だ・・・・。」
ガヤルドが紹介すると円卓の中央に座っていた青白い顔の将校が立ち上がる。
「スワブ中佐だ。今回の作戦の指揮をとる。よろしく頼む」
同席していたSPAWNがいづいに耳打ちする。
「実戦経験がなさそうだな・・・・。そのわりに中佐とはな」
いづいは改めてスワブに眼をやる。
円卓に座る面々がいずれも筋骨たくましく、浅黒く日焼けしているのに対して軍人とは思えないほどひ
弱な印象を受ける。
(確かに・・・・。SPAWNのいうとおりだな)
「では作戦開始は1時間後、各チーム準備を!」
メンバーが席を立ち部屋を出るのに逆らうようにいづいはガヤルドの元に歩を進める。
ガヤルドは資料をアタッシュケースに入れて、立ち去ろうとしている。
「おい」
「なんだ?」
「あの指揮官の素性は? 戦歴は?」
矢継ぎ早に質問をするいづいをガヤルドは訝しげに見上げる。
「・・・・それを聞いてどうする?」
「30人からのチームを預かる大将だ。それなりの人間でなければ統率は出来ぬ」
ガヤルドは一旦は上げた腰を再度椅子に下ろした。
「彼はさる軍閥の子息だ。国防大学を主席でこの春卒業して今回の作戦が初陣、だ」
「経験がないに等しいものを指揮官にして今回の作戦が成り立つと本気で想っているのか?」
いづいがやや語気を強めて問いかける。
「貴様の国の事情はよく知らんが、少なくともウラルでは珍しいことではない。」
さらにガヤルドは続ける。
「先の大戦で多くの優秀、勇猛果敢なウラル軍人が死んだ。加えて国連決議に基づいてわが国は国防予
算を10%まで落とされて、兵力の維持すら危うい状況で10年を過ごした。その間、ウラルの軍事面のパ
トロンとなったのは軍閥だ。かれらの申し出を断ることは出来ない!。」
「悔しいが我々はやつらに飼われてこの10年! 耐え忍んできたのだ! 貴様ごとき外来にこの屈辱が
理解できるか!」
ガヤルドは珍しく感情をあらわにして机をどんどんと叩きながら喚く。
「・・・・・すまない。気が高ぶったようだ・・・」
漸く平静を取り戻したガヤルドはいつもの冷めた視線をいづいに向ける。
「スワブ中佐を司令官とし、貴様を副官とする。これで文句あるまい」
「わかった」
いづいはそういうと部屋を後にした。
部屋の外ではSPAWNが待っていた。
「珍しく感情をあらわにしていたな」
SPAWNと並んでチームのミーティングルームに歩いていく最中、いづいがSPAWNに尋ねる。
「どう想う、この作戦」
「内容的に難易度は低い。多少指揮官が心許無くても失敗のリスクは少ないだろう。ただ・・・」
「ただ・・?」
「仮の話だが、戦況が思う様にならずに、気負いすぎて撤退のタイミングをはずすことにならなきゃい
いが、と考えている」
「そうなれば殴ってでも撤退するさ。俺は副官だからな」
いづいはそういってにやりと笑う。
「ま、万が一、だがな」
そういうとSPAWNは一人ハンガーへと消えていった。
-----------------------------------------------
「選抜! さらに前方へ!」
スワブが命令を下す。
いづいはコミュータとハンドサインでメンバーの配置を指示する。
メンバーは攻撃拠点の車両出入り口のような通路を取り囲むように配置をかえる。
「援護の弾幕を張りつつ、突撃要員3名を基点に内部侵入、一気にけりをつけるぞ」
いづいがまさに合図を仕掛けた瞬間、選抜メンバーの周囲を固めていた友軍がばたばたと倒れ始めた。
「なっ?!」
いづいは攻撃目標の周囲を確認する。
「敵が出てきたわけじゃなさそうだが!」
それでも確実に周囲の友軍は銃弾に倒れていく。
(どういうことだ? 敵の姿は見えないが、こちらは撃たれている)
「ウォールハックだ!」
ハマーンがコミュータで叫ぶ。
「下がれ!」
いづいが反射的に命令を下す
(敵には俺らの動きが見えている!。この状況では一旦後方に引くほうがいい)
いづいが後退しながらスワブの元にたどり着く間も周りの友軍はつぎつぎと倒れていく。
「中佐!」
いづいが声をかけるとスワブは防護壁の後ろに回りこんでへたり込んでいた。
(やはり実戦経験がないとこの状況はしんどいか・・・)
「中佐、敵は新型の装備を持ってる! こちらには対抗手段が今のところない、一旦引いて建て直しを
具申する!」
「・・・・撤退は出来ない・・・・ガヤルドは簡単な作戦といったのだ、ここで引けば私の戦績に傷が
つく・・・・」
スワブは震える声を絞り出すようして答える。
「このままじゃ、全滅だ。引くのも作戦のうちだ!逃げるわけじゃない!」
「私は国防大学を主席で卒業したんだぞ、其の私が!」
スワブは「逃げる」の言葉に過敏に反応して立ち上がり、顔を赤らめて激昂する。
「貴様のような傭兵とは違って私はこの国を引っ張るべきエリー・・・・」
そういった瞬間スワブの顔は右半分を残して鮮血をぶちまけながらまるでスイカの様に破裂した。
顔を失った華奢な体は、よろよろとふらついてぱたりと倒れた。
「・・・馬鹿が! この状況で我を忘れるなんて・・・」
いづいはスワブのコミュータを拾い上げると部隊に告げた。
「副官いづいだ。スワブ中佐殿は名誉の戦死をされた。以後の指揮権は俺に移った。」
一呼吸おくといづいはさらに続ける。
「各チームは攻撃を中止し、逐次防衛線まで撤退。体勢を立て直す。選抜、撤退サポート頼む」
いづいはスワブの階級章と帽子を拾い上げると近くの兵士を呼び止めた。
「わるいがこの大将も一緒に引き上げてくれ」
まるで潮が引くように味方の軍勢は取り囲んでいた拠点から徐々に後退し始める。
「厄介なものが出てきたな」
いづいは階級章をしげしげと眺める。
「軍人でなければだめだったのか? 国の建て直しは軍だけの仕事ではないだろうに・・・」
Revenge 完
第3章 The last one piece に続く
アサルト選抜チームを中心に編成された100名のチームは「ウラルの光」攻撃拠点に攻撃を仕掛けていた。
工場地帯の中央に巧妙にカモフラージュされた拠点で後方は断崖絶壁となっており、攻めるに難しく守
るに容易い拠点のようではあったが、チームは押し気味に作戦を進めていた。
-----------------------------------------
「いよいよ敵の拠点を獲りに行く」
そうガヤルドはいづいに告げた。
「今回の作戦は君のチームを中心に編成した・・・。いわば必奪の構えだ。」
(いつになく持ち上げるな・・・・)
いづいは饒舌に作戦を披瀝するガヤルドの様子を観察していた。
「そして、今回の作戦の指揮はこの方だ・・・・。」
ガヤルドが紹介すると円卓の中央に座っていた青白い顔の将校が立ち上がる。
「スワブ中佐だ。今回の作戦の指揮をとる。よろしく頼む」
同席していたSPAWNがいづいに耳打ちする。
「実戦経験がなさそうだな・・・・。そのわりに中佐とはな」
いづいは改めてスワブに眼をやる。
円卓に座る面々がいずれも筋骨たくましく、浅黒く日焼けしているのに対して軍人とは思えないほどひ
弱な印象を受ける。
(確かに・・・・。SPAWNのいうとおりだな)
「では作戦開始は1時間後、各チーム準備を!」
メンバーが席を立ち部屋を出るのに逆らうようにいづいはガヤルドの元に歩を進める。
ガヤルドは資料をアタッシュケースに入れて、立ち去ろうとしている。
「おい」
「なんだ?」
「あの指揮官の素性は? 戦歴は?」
矢継ぎ早に質問をするいづいをガヤルドは訝しげに見上げる。
「・・・・それを聞いてどうする?」
「30人からのチームを預かる大将だ。それなりの人間でなければ統率は出来ぬ」
ガヤルドは一旦は上げた腰を再度椅子に下ろした。
「彼はさる軍閥の子息だ。国防大学を主席でこの春卒業して今回の作戦が初陣、だ」
「経験がないに等しいものを指揮官にして今回の作戦が成り立つと本気で想っているのか?」
いづいがやや語気を強めて問いかける。
「貴様の国の事情はよく知らんが、少なくともウラルでは珍しいことではない。」
さらにガヤルドは続ける。
「先の大戦で多くの優秀、勇猛果敢なウラル軍人が死んだ。加えて国連決議に基づいてわが国は国防予
算を10%まで落とされて、兵力の維持すら危うい状況で10年を過ごした。その間、ウラルの軍事面のパ
トロンとなったのは軍閥だ。かれらの申し出を断ることは出来ない!。」
「悔しいが我々はやつらに飼われてこの10年! 耐え忍んできたのだ! 貴様ごとき外来にこの屈辱が
理解できるか!」
ガヤルドは珍しく感情をあらわにして机をどんどんと叩きながら喚く。
「・・・・・すまない。気が高ぶったようだ・・・」
漸く平静を取り戻したガヤルドはいつもの冷めた視線をいづいに向ける。
「スワブ中佐を司令官とし、貴様を副官とする。これで文句あるまい」
「わかった」
いづいはそういうと部屋を後にした。
部屋の外ではSPAWNが待っていた。
「珍しく感情をあらわにしていたな」
SPAWNと並んでチームのミーティングルームに歩いていく最中、いづいがSPAWNに尋ねる。
「どう想う、この作戦」
「内容的に難易度は低い。多少指揮官が心許無くても失敗のリスクは少ないだろう。ただ・・・」
「ただ・・?」
「仮の話だが、戦況が思う様にならずに、気負いすぎて撤退のタイミングをはずすことにならなきゃい
いが、と考えている」
「そうなれば殴ってでも撤退するさ。俺は副官だからな」
いづいはそういってにやりと笑う。
「ま、万が一、だがな」
そういうとSPAWNは一人ハンガーへと消えていった。
-----------------------------------------------
「選抜! さらに前方へ!」
スワブが命令を下す。
いづいはコミュータとハンドサインでメンバーの配置を指示する。
メンバーは攻撃拠点の車両出入り口のような通路を取り囲むように配置をかえる。
「援護の弾幕を張りつつ、突撃要員3名を基点に内部侵入、一気にけりをつけるぞ」
いづいがまさに合図を仕掛けた瞬間、選抜メンバーの周囲を固めていた友軍がばたばたと倒れ始めた。
「なっ?!」
いづいは攻撃目標の周囲を確認する。
「敵が出てきたわけじゃなさそうだが!」
それでも確実に周囲の友軍は銃弾に倒れていく。
(どういうことだ? 敵の姿は見えないが、こちらは撃たれている)
「ウォールハックだ!」
ハマーンがコミュータで叫ぶ。
「下がれ!」
いづいが反射的に命令を下す
(敵には俺らの動きが見えている!。この状況では一旦後方に引くほうがいい)
いづいが後退しながらスワブの元にたどり着く間も周りの友軍はつぎつぎと倒れていく。
「中佐!」
いづいが声をかけるとスワブは防護壁の後ろに回りこんでへたり込んでいた。
(やはり実戦経験がないとこの状況はしんどいか・・・)
「中佐、敵は新型の装備を持ってる! こちらには対抗手段が今のところない、一旦引いて建て直しを
具申する!」
「・・・・撤退は出来ない・・・・ガヤルドは簡単な作戦といったのだ、ここで引けば私の戦績に傷が
つく・・・・」
スワブは震える声を絞り出すようして答える。
「このままじゃ、全滅だ。引くのも作戦のうちだ!逃げるわけじゃない!」
「私は国防大学を主席で卒業したんだぞ、其の私が!」
スワブは「逃げる」の言葉に過敏に反応して立ち上がり、顔を赤らめて激昂する。
「貴様のような傭兵とは違って私はこの国を引っ張るべきエリー・・・・」
そういった瞬間スワブの顔は右半分を残して鮮血をぶちまけながらまるでスイカの様に破裂した。
顔を失った華奢な体は、よろよろとふらついてぱたりと倒れた。
「・・・馬鹿が! この状況で我を忘れるなんて・・・」
いづいはスワブのコミュータを拾い上げると部隊に告げた。
「副官いづいだ。スワブ中佐殿は名誉の戦死をされた。以後の指揮権は俺に移った。」
一呼吸おくといづいはさらに続ける。
「各チームは攻撃を中止し、逐次防衛線まで撤退。体勢を立て直す。選抜、撤退サポート頼む」
いづいはスワブの階級章と帽子を拾い上げると近くの兵士を呼び止めた。
「わるいがこの大将も一緒に引き上げてくれ」
まるで潮が引くように味方の軍勢は取り囲んでいた拠点から徐々に後退し始める。
「厄介なものが出てきたな」
いづいは階級章をしげしげと眺める。
「軍人でなければだめだったのか? 国の建て直しは軍だけの仕事ではないだろうに・・・」
Revenge 完
第3章 The last one piece に続く