「じいさん、これで全員か?」
リグがSPAWNに話しかける。
「ああ、俺が殿(しんがり)だったからな。後は死体だけだ」
SPAWNが通ってきたであろうルート沿いをリグとハマさんが手をかざして眺める。
「敵の追撃はなし、か。」
副官であるいづいが一時撤退を決めて移動を始めた際、ウラルの光の拠点からは猛烈な斉射が掛けられ
ていた。
味方の撤退を最後方で援護していたSPAWNらはその斉射をかいくぐるように味方の兵を呼び集め、撤退を
急いだ。
「もう少しだ、がんばれ!」
味方の中には負傷したものも少なからずおり、中には命にかかわるような重傷者もいた。
そういったものを置いていこうとする友軍を叱咤しながら何とか最終防衛線まで撤退すると
衛生兵らがその重傷者も含めてトリアージをしながら治療を始める。
「なるべく多くのものを助けてくれ」
天才がそれらの衛生兵に声をかけるが、衛生兵は引きつった表情で
「最大限努力します!」
そういうばかりで状況が一層深刻であることをうかがわせた。
「ひどいわね・・・・」
Risaは走り回る衛生兵を心配そうに見やりながらため息をつく。
「なんなの、敵の攻撃がまったく予見できなかったわ」
ハマーンが答える。
「以前情報見ただろう、WHだと思う。」
「あれは相当に厄介だぞ。」
ロンズが銃の手入れをしながら答える。
「俺達が装備している銃では対抗できない可能性が高い。増援はどうなった」
ハマーンが近くの通信兵を呼び止める。
「1時間後に50名、装備も補充されるようです」
(装備補充といってもな)
SPAWNはメンバーのやり取りを見ながら考え込む。
(斉射の止んだタイミング、これが気になるな・・・・、妙にそろっていた・・・・)
いづいは副官として状況把握と次の作戦に考えをめぐらせていた。
現状の戦力はどう多く見積もっても30名程度、増援を加えても初回の攻撃人員には届かない。
戦術の建て直しが必要なのは明らかだったが、正直なところ敵の兵器の素性がわからないこととその威
力を推し量ることができず手詰まりの状態だった。
SPAWNがいづいの元に歩み寄る。
「どうした、浮かない顔をして」
「ああ、増援をベースにもう一回アタックしたいんだがわからない事だらけでな、正直考えがまとまらない」
「そうか・・・・」
SPAWNは思いついたように話し始める。
「攻撃を受けて引く際にな、ある距離からぴたっと斉射が止んだんだ。」
さらにSPAWNは続ける。
「それに味方の死傷者を見ると一撃で倒されたものが少ない。皆散弾を浴びたような状態だ」
いづいはこれらの情報を頭の中で反芻する。
(距離と被弾状況・・・・・)
「見えている範囲は限定される、使い手の錬度が低い、ということか」
「仮定だが・・・・」
「なら追加の装備が役に立つ。増援は予定外だがな・・・」
そういうといづいはにやりと笑った。
「初手は譲ったが弐の手では目に物見せてくれるわ・・・・」
と、いづいたちの潜む山場の岩陰に突如チヌークが現れた。
「来たか」
いづいがホバリングをするチヌークに目をやると、増援の兵士がわらわらとロープを使って降下するのが見えた。
ついでコンテナが降下されるとチヌークは機体を振りながら帰投動作に入り、あっという間に地平線に消えていった。
「おそくなった」
降下した兵士の一人がいづいに握手を求める。
兵士他のメンバーに比べると随分と小柄で口元をバンダナのような布で巻いて隠している。
そのため表情はうかがい知れないものの、その目は握手をしている際も周囲をくまなく監視するように
絶えず冷たく突き刺すように動いていた
メンバーは兵士がただの増援ではないことを瞬時に見抜いたものの、どういう立場のものなのかは推し
量りかねて訝しげにその様子を注視していた。
(だれだ、ありゃ。単なる増援じゃないな)
ハマーン、ハマさん、天才、Risa、リグ、ロンズ、ジョー、いずれも見覚えがない兵士といづいとのや
り取りを見つめる
「待ちかねたぞ。」
そういうといづいはメンバーが陣取る木陰にその兵士を伴っていく。
「紹介する、あんせるだ」
紹介された男はぐるりとメンバーを見渡すと若干驚きの表情をうかべる。
「聞いていた通り、各国の精鋭ぞろいだな・・・・。」
「おや、雷帝まで・・・・・」
(雷帝?・・・・・・)
聞きなれない通り名に皆が困惑しているとあんせるは指を指す。
その先にはSPAWNが座っていた。
「おい、じいさん、雷帝ってのはあんたの通り名なのか?」
ジョーが問いかける。
「随分昔の通り名だ。知ってるやつがいるとはな、そちらのほうが驚きだ」
SPAWNは特に表情を変えることなく答える。
「レンツ特殊部隊で名を馳せた英雄、その雷撃で敵は一掃され、後には何も残らないとまで言われた男
・・・・単なる退役軍人じゃなかったのね・・・・」
Risaが補足するようにつぶやく。
「退役したはずのあんたがいることも驚きだがな」
あんせるはにやりと笑う。
「思い出した!!」
ハマーンが飛び上がらんばかりの大きな声を上げる。
「白い死神・・・・あんたかよ」
その通り名を聞いた途端皆の顔色が変わる。
「まぁそういわれていることもあるがね」
「急遽呼び寄せた、我がチームはこれで完全に陣容がそろった」
いづいがメンバーを見渡す。
「超精密狙撃と突撃チームそれに撹乱、この陣容でこの戦争を終結させるのが俺達の任務だ・・・」
「さぁ、作戦会議だ!」
いづいが檄を飛ばすとメンバーはいづいの周りに車座になり、いよいよ反撃のための作戦会議が始まった。
あんせるも違和感なくその車座に混じる。
(・・・・これからだぞ、ウラルの光)
第4章 Strikebackに続く