(2013.02.17写真差し替えました)
先日初代ズミクロン50mmF2とズミタール50mmF2の写りの違いに衝撃を受けて以来この2本のレンズの違いが気になっていました。色々調べてみたものの明確な違いがわかるサイトがなく諦めかけていたところ、あるブログで吉田正太郎さんの『カメラマンのための写真レンズの科学』という本が紹介されているのを見ました。気になったので早速アマゾンで注文して読んだところ、ものすごく明確に違いが書いてありました。この本自体もものすごくわかりやすくレンズと各収差、硝材、光学設計のことが書かれていて感動しました。
話をズミクロンとズミタールに戻します。吉田正太郎さんの本によるとこの2本にはいくつかの決定的な違いが存在します。
左がズミタール、右がズミクロンです。
左がズミクロン、右がズミタール。並んでみると随分かたちが違います。
レンズ構成図です。
まず1つめがよく言われている『空気レンズ』。正確にいうと1枚目のレンズが張り合わせてあるかどうかです。レンズコーティングが発達してなかった戦前ではレンズ枚数を少なく設計するのがセオリーでした。光は屈折率の違う物質を通過する度に反射によって光を失います。レンズの張り合わせ(貼合)は通過する面数を減らす為に有効な方法です。たとえば反射率が5%だとしてレンズが2枚ある場合貼合しないと光が通過する面は4面で損失は20%になります。貼合した場合3面で済むので損失は15%になります。そんなこんなでズミタールの時代は貼合してあった1枚目のレンズをズミクロンでは貼合せずに離して配置しました。なぜこのような配置にしたのかというと、レンズの面数を増やし屈折が1回多くなることを利用して各収差の補正をしたということだそうです。これがいわゆる『空気レンズ』と呼ばれる所以のようです。理論上では面数が増えるほど収差の補正ができる量が増えるそうです。『空気レンズ』という言葉には空気をレンズとして使った的なニュアンスがあるのですが、このレンズ以前のレンズ設計者ももちろん空気のことも熟知した上で設計をしていたので、空気をレンズにしたというよりレンズ面数を増やしたという表現の方が正しいようです。そしてもう一つはコーティングの技術革新により反射による光の損失を抑えることができるようになった。このことにより面数の束縛から逃れることができるようになった点が2本のレンズで大きく違う点です。そして最後に硝材の違いです。ズミタールも7枚のレンズそれぞれが異なる硝材を使った凝った作りですが、ズミクロンは1枚目3枚目6枚目7枚目に新種ガラスのLaKN9(ランタンクラウン)を使っています。このガラスは1939年以降に発明された新種のガラスでズミタールが設計された1936年にはまだ実用化されてなかったはずです。2枚目に使われているには重フリントSF17。4枚目は特軽フリントLLF1。
5枚目はチタニウムフリントTiF4。2枚目と4枚目以外はすべて新種ガラスで構成されているというなんとも贅沢なレンズです。その当時としては球面収差や非点収差、コマ収差等を良好に補正していたズミタールの構成を引き継ぎ、コーティング技術や新種ガラスなど当時の技術と素材の粋を集めて作られたのがズミクロンというレンズなのです。そう考えると前回の撮り比べでのヌケの圧倒的違いが納得できます。そしてその違いを明瞭に解説している『カメラマンのためのレンズの科学』という本は本当に素晴らしい本だと思います。


































































