尊敬する先輩が容疑者となった事からその嫌疑を晴らすため、刑事の兄がいる袴田柚乃は、部室で文字通り生活しているという学校随一の天才、裏染天馬に相談するのだが…。
〈裏染天馬〉シリーズ1作目。著者のデビュー作で第22回鮎川哲也賞受賞作。
舞台が高校で、探偵役である裏染天馬は、学校にも家族にも内緒で部室で寝泊まりしているアニメオタク。
真相を解明したら払うという柚乃による報奨金も、生活費に充てるためと言いつつ実際はアニメグッズ購入に使うつもりだという駄目人間な設定や軽快な語り口もあって、ライトな感覚のミステリー小説で読みやすかったです。
しかし、体育館で起きた密室殺人事件という謎が描かれる中、読者への挑戦状まであって、本格ミステリーファンとしての魅力もたっぷり。
ちなみに自分は、傘やDVDに関して覚えた違和感についてはある程度合っていたけど、密室の謎については天馬による推理の披露まで、アレのこともすっかり忘れており、まったく気づきませんでした(笑)。
この辺り、本格ものを読み慣れている人は分かるものなんでしょうか。
さて、殺人犯その人に関しては、それっぽい人がやはりそうだったのかって感じでしたが、その上で真実として描かれるやり取り。
これってもしかして探偵と宿敵の構図としてこの先も描かれていくものなのでしょうか。
天才で変人な天馬の推理もまた見てみたいですし、二作目以降も読んで確かめたくなりました。
なお、天馬が口にするアニメネタについては殆ど分かりませんでした(汗)。
マーク・ウォルバーグ主演のAmazonオリジナル配信映画『プレイ・ダーティー』を観ました。
強盗団のリーダーであるパーカーは競馬場の売り上げを強奪するも、裏切り者によって仲間が殺され金も奪われてしまう。
パーカーは、裏切り者のゼンを探し出して金を奪い返そうとするが、新たな強奪計画をゼンと共に行う事に…。
といったストーリー。
あれ?パーカーってもしかしてと思ったら、そう、リチャード・スタークの〈悪党パーカー〉シリーズがこの映画の原作でした。
という訳で強盗としては天才的で冷酷非情な男パーカーが主人公。
とはいえ、本作はリチャード・スタークの別名義、ドナルド・E・ウェストレイクによるコメディ的要素がふんだんに取り入れられているので、両方のいいところどりのような作品になっています。
非情だけど仲間思いでもあるパーカー。
演じるマーク・ウォルバーグ、思ったよりいい感じです。
アクションもたっぷりあって、笑える要素もそこかしこに。
この笑える要素というのは、パーカーが集めたクセの強い仲間たちのおかげで、このクセが強くて時に間抜けな様子を見せる辺りはウェストレイク名義の〈ドートマンダー〉シリーズみたい(スタンという名前の仲間も!)
更に〈ドートマンダー〉シリーズを思い出させるような大胆なトリックなども、見応えあります。
もうちょっとコンパクトにおさめてくれた方がいいような気がしますが、気軽に見れるクライム・アクション映画でしたし、人気が出ればシリーズ化されそうでも。
ついでに原作シリーズの方も復刊しないかなぁ。
















父殺しの罪で15年間の服役から故郷の島の帰ってきたイズレルは、漂流しているクルーズ船の中で何者かに殺された7人の遺体を発見する。
イズレルの元に、父の兄である保安課補のスターリングとメイン州警察の警部補サラザールが訪れてくると、叔父からは憎しみと共に容疑者として見られていることに気づくのだが…。
本書は、父殺しの罪で15年間の服役の後、故郷の島に帰ってきたイズレルが主人公。
イズレルの前に現れたメイン州警察のサラザール警部補とはどうやら何かしら関係があり、漂流していた船についても知っている事があると仄めかされることで、イズレルがどんな秘密を抱えているのか想像しながら、序盤はゆっくりと進みます。
そしてそのイズレルと共に物語を牽引するのは、暴力を振るう父親に怯える12歳の少年ライマン。
ある日、隠れ家としている空き家で怪我をしている女性を発見すると、父親の目を盗んで彼女を助けようとします。
父殺しに関する事実も判明すると、イズレルに対する読者の目も変わってくると共に、イズレルが迎える新たな危機をなんとしても無事に乗り越えて欲しいと願うようになります。
とはいえ、サラザール警部補から明かされた、ある事実にはイズレルでなくとも愕然としますし、それを受けてのイズレルの行動は「それって絶対に悪手じゃない?!」とヒヤヒヤとさせられました。
一方でライマンの純真な姿は単純に助けたくなりますし、どうか幸せな未来が待っていますようにと祈らずにはいられないものが。
イズレルは再び囚人となることを恐れ、ライマンは父の暴力と孤独を恐れつつも、それぞれが目の前の問題に必死になる中、二人はおぞましい真実と向き合うことに。
そうして、それぞれ真実と向き合った二人ですが、生き延びようとするイズレル、逆に絶望を覚えるライマンと、どこか対照的なものも感じました。
それゆえにイズレルの決断、そしてイズレルが海を感じる場面は胸にジワリとくるものが。
そしてそのイズレルの決断からのライマンが海の上を跳ぶ姿というのはとても鮮やかで、海面のキラキラした反射と共に彼の跳ぶ情景が浮かんでくると共に、未来に希望を抱かせてくれるものがありました。


























