鑑賞歴50年オトコの「落語のすゝめ」

鑑賞歴50年オトコの「落語のすゝめ」

1956年に落語に出逢い、鑑賞歴50余年。聴けばきくほど奥深く、雑学豊かに、ネタ広がる。落語とともに歩んだ人生を振り返ると共に、子や孫達、若い世代、そして落語初心者と仰る方々に是非とも落語の魅力を伝えたいと願っている。


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いつも拙ブログをご愛顧下さりありがとうございます。

これまで書き溜めていた150余演目をご紹介し、次なる御紹介演目を執筆中でございます。
 
しばしの休載をお許し下さい。
またお目にかかれる日まで。
 
rakugogakushi 拝
 
 
 

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今頃は近畿、東海、関東辺りの桜が見ごろであろうか。「昨日(きのう)、上野へ花見に行って来たよ」「そうかい、どうだった?」「ものすごい人出だったよ」「で、花は?」「花? さあ、どうだったかな?」とならないように今年も顔を見せた桜花をしっかりと観て上げたい。

シーズンに当り、古典落語の代表作の一つで、貧乏長屋の大家(おおや)店子(たなこ)の連帯感をテーマにした「長屋の花見(上方では「貧乏花見」)」という滑稽噺を聴いてみよう。

 

大家(おおや)さんが長屋の連中全員を招集する。「大家さん、全員揃いましたが何事です?店賃(たなちん)の催促ならもうちょっと待って下さい」「いやいや、そうじゃあないよ」「そうでしょう。まだ催促されるほど溜めていませんから」「おいおい、雨露をしのぐ店賃だ、しっかりと納めておくれ。ところで、うちの長屋が“戸なし長屋”と言われているようだが?」「その通りで。戸は全部焚きつけにしてしまいました」「そんなことをして泥棒にでも入られたらどうする」「こんな貧乏長屋に泥棒なんか入りませんよ、出ることはあっても」「おいおい、よせよ」

 「いや、実は今日は皆を花見に招待しようと思って呼んだのだ。私の方で酒と蒲鉾、卵焼きを用意しているから一つ景気よく繰り出そうじゃあないか。と言っても蒲鉾は本物ではなく大根だがね」「じゃあ大家さん、ひょっとすると卵焼きは沢庵?」「当った!」「こんなことは当らない方がいい。じゃあ酒は?」「お茶だ」「香々で茶を飲むんですね?」「贅沢を言いなさんな。それから月番さん、そこに立て掛けている()せん(・・)を持って行っておくれ」「大家さん、あれは(むしろ)じゃあありませんか?」「そうだよ、“筵毛せん”だ。無いよりむしろいいだろう」。月番の二人が料理を入れた桶を天秤棒で担いで「さあ、出掛けましょう、親戚は皆さん揃いましたか?」「弔いじゃあないよ」。

 

一行は向島へ着く。「大家さん、毛せんは土手の上へ敷きましょう。貰いが多いから」「乞食をするんじゃあないよ。土手下へお敷き」。飲み食いが始まるが店子連中は積極的ではないので大家が勧める。「源さん、蒲鉾をお上がり」「歯が悪いんで…、そうですか、それでは一つ、尻尾じゃない方を。良い蒲鉾ですね、本場の練馬産ですか?」「熊さん、灘の生一本だ、一杯おやり」「いただきます。おっとっと、少なめに」「美味いかい?」「へえ、結構な渋口で。灘ですか?私ゃ静岡か宇治かと思いました。大家さん、近々、長屋に良いことがありますよ」「どうしてだい?」「酒柱が立っています」

「八っあん、通行人が吃驚するような景気のいい話をしておくれ」「分かりました。源ちゃん、このところ久しく千円札で鼻をかまないね」「おいおい、もっともらしい事を言いな!月番、酔いなさい」「ではお先に酔います。ういーッ、酔っ払いました、やい!大家!」「酒癖が悪いね。もう醒めな」「はい、醒めました。この酒なら自由自在です」。一人が唄い出し、一人は「長屋中 歯を食いしばる 花見かな」と即興の俳句を詠む。

「おいおい、病人が出たよ。大丈夫かい?」「へえ、遅れて来たので駆け付け三杯やったら悪酔いしまして」「どんな気分だい?」「へえ、この前井戸へ落ちた時のような気分で」

 

上記は東京落語の筋書きで、上方では「貧乏花見」という演目で演じられており、筋書きが少し異なっている。

 

長屋の連中だけで花見に行こうということになる。酒や料理を誂える金はないから各自の家にあるお茶と食い物を持寄る。少しでも格好のいい服装にしようと新聞紙で上衣を作ったり裸に墨で洋服を書いたりして女房・子供も連れて出掛ける。お茶と料理で飲み食いを演じるが欲求不満に陥った二人が、豪勢に花見の宴を張っている旦那衆の前へ押し掛けて馴合いの喧嘩を始める。吃驚した旦那衆が逃げ出した隙に御馳走を奪う。

 

 という悪質なストーリーとなっている。「貧乏花見」は笑福亭一門のお家芸とされており、他の一門は高座に掛けるのを遠慮しているそうである。

 

落語に出てくる花見の名所は、東京では向島、上野、飛鳥山、上方では桜の宮となっている。

 

(上野恩賜公園・東京 2007年)

 

(毛馬桜の宮公園・大阪 2005年)

 

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ちょうど桜の咲く今頃であろう、一組の夫婦が誕生する「崇徳院(すとくいん)」というお目出度い滑稽噺を味わってみよう。

 

 ある大家(たいけ)の若旦那が「高津の宮(こうづのみや)」の茶店(写真)で出逢ったお嬢さんに一目惚れする。誰にも胸の内を打ち明けられず、相手が何処の誰やらも分からず、若旦那は明日をも知れぬ恋患いの床に就く。

 

 

出入り職人の熊さんが主人の命を受けてそのお嬢さんを探すことになる。唯一の手掛かりは、別れ際にお嬢さんが半紙に書いて若旦那に手渡した「瀬をはやみ 岩にせかるる滝川の」という百人一首にある崇徳院の歌の上の句である。“今は止む無くお別れをしますが、後には一緒になりたい”という恋心を伝えたのであろう。

 
 

熊さんは人が集まる風呂屋や床屋を訪れては「瀬をはやみ…」と詠って更なる手掛かりを求めるが見つからない。一方のお嬢さんも恋患いに罹り、出入りの棟梁がやはり「瀬をはやみ…」を手掛かりに若旦那を探していた。

 

探し始めて5日目、疲れきった熊さんと棟梁が床屋でバッタリ顔を合わせ、「瀬をはやみ」をキーワードにしてお互いが探し求めている相手であることを確認しあう。

 大喜びした二人、「うちへ来い」「いや、先にうちへ来い」と取っ組み合いを始め、鏡を割ってしまう。文句を言う床屋に熊さんは言う。「親方、心配は要りません。割れても末に買わんとぞ思う」。

 

この噺は演り手の多い演題の一つであるが、上方では三代目笑福亭仁鶴二代目桂枝雀、東京では三代目桂三木助の高座が面白い。   

 

また、上記のあらすじは上方版に拠ったが、東京版では一目惚れする場所が上野・清水観音堂(写真)となっており、「瀬をはやみ…」と書いた短冊が桜の枝から舞い落ちてきたという設定になっている。場所に違和感はないが、短冊の件はなんとも不自然で上方版の方が勝っていると思う。

 

(清水観音堂・東京 2007年)

 

(大阪城公園・大阪 2007年)

 

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殿様は魚を食べる時、一箸しか入れないのが作法とされていた。ある日、出された鯛に殿様が一箸入れた後、「代りを持て」と側用人の三太夫に命じる。生憎とその日は代りを用意していなかったので三太夫は庭の築山を指差して、「殿、見事な桜でございます」と言う。殿が桜に見とれている間に三太夫は鯛をくるっとひっくり返して「代りにございます」と急場を凌ぐ。殿はまた一箸入れ、「変わらぬ味じゃのう。代りを持て」と命じる。三太夫が狼狽していると、殿様が言った。「もう一度桜を見ようか?」と。

 

 小咄に毛の生えたような「桜鯛(さくらだい)」という噺で、三代目三遊亭金馬などは「目黒のさんま」のマクラに使っているが、一席の噺という扱いを受けているようである。世間知らずの代名詞となっている殿様にも例外はいたものである。この噺には、あの大名人、六代目三遊亭円生の最後の高座となったという逸話が残されているようだ。ある結婚式場での自分の後援会の発足の席で演じ、舞台を終えた後静かに息を引き取ったそうである。

 

(鶴山公園・岡山 2003年)

 

(美観地区・岡山 2003年)

 

(下津井港・岡山 2006年)

 

(奈良氷室神社・奈良 2013年)

 

(奈良公園・奈良 2009年)

 

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老中・酒井雅楽頭(うたのかみ)の次男坊、角太郎は父親と考え方が合わず、大塚の下屋敷に遠ざけられ、吉兵衛夫婦の世話の下で暮らしている。世情に通じた豪胆な青年であるが、わずか50石取りの貧乏武士に甘んじている。することもないので毎日、両国広小路などの繁華街をうろついている。吉兵衛がこれを諌め、「将来のために少しはご勉強を」と意見する。

 

そんなある日、勉強で肩を凝らした角太郎が、通りを流している按摩を呼び入れ、肩を揉ませた。按摩は錦木という名前で、療治は上手いし話し上手でもあった。寄席で聴いてきたと言う小咄で笑わせながら肩を揉んだ。角太郎は大いに気に入り、贔屓とした。

親近感が増すと共に二人の話はざっくばらんなものとなり、お互いの身分についての話に及んだ。角太郎は「拙者は家臣の身であり、乱世にでもならない限り出世はまったく考えられない」と言う。錦木は「盲人には座頭、匂当、検校(けんきょう)という身分制度があって金で買えるものですが、検校になるには千両も必要で、憧れてはいるが到底無理です。ただ、骨相学の先生は『お前は検校に出世する骨組みをしている』と診断してくれているんですがね。それに、お揉みしていて感じたのですが角太郎さまの骨組みも私によく似ているんで、出世するはずなんですがね。学問は当たらないもんなんですかね?」と言う。「では、私が大名になったらお前を検校にしてやろう」と角太郎は深い考えもなく約束した。

 

錦木は風邪をこじらせて床に就き、生死の境を彷徨ったが、長屋の連中の親身な看病もあって1カ月後に全快した。看病してくれた一人が、「雅楽頭さまが隠居され、ご長男は病身のため角太郎さまが後を継がれて大名になられたよ」と言う。錦木は雅楽頭の邸へ飛んで行った。角太郎が移り住んでおり、吉兵衛は三百石のご意見番に取り立てられていた。吉兵衛の取次で二人は再会をした。「ご出世のお祝いに参りました」と錦木、「待っていたぞ、錦木。そちの予言は当たったのお。約束通り、お前を検校にしてやるぞ」と角太郎は千両を下げ渡した。考えてみれば、二人の出世の原因は小咄即ち落語にありました。皆さん、落語は人生に有用なものですよ。

 

角太郎が馬を買ったと錦木に紹介した。「三味線栗毛と名付けた」「ちと、優雅に過ぎませんか?」「余、雅楽(うた歌)が乗るから三味線だ。馬には駒という呼び方もある。乗らぬ時は引かせる(弾かせる)と言うし、止める時はドウ(胴)と申すではないか。まったく無関係なものではない」「成程、で、もし、ご家来が乗りましたら?」「罰(ばち撥)が当たる」

 

「三味線栗毛(しゃみせんくりげ)」という講談ネタを落語化したものである。橘家円喬(1865-1912)が十八番としたそうであるから、主に明治時代に高座に掛けられた噺のようである。上記の筋書きは五代目古今亭志ん生に依った。

 

(京都植物園・京都 2010年)

 

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