Beyond Despair -50ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「お説教かもな?」

悪魔は意地悪げに笑う。

「とっとと戻れ、この変態悪魔が」

「はいはい、でも喘ぎ声は良かったぜ?」

くだらない言葉を残すと、悪魔は私の右腕へと溶けるように戻って行った。

私は右腕の袖をまくり上げる。

右腕には不気味な紋章が描かれている。

これが私と悪魔の契約の証だ。

二年前、ライアンが死んだ直後に私はコイツと契約した。

その時からだ、この紋章が右腕に宿ったのは。

袖を戻し、私は携帯のメールボックスを開く。

〝仕事の依頼だ、至急司令部まで来るように〟

メールにはそう書かれていた。

昨日の今日で仕事の依頼とは、人使いが荒い奴だと思う。

私は長い髪を青いゴムで結ぶと、そのまま部屋を出る。

時刻は午後一時ジャスト。

昨日の疲れか、また昼まで眠ってしまったらしい。

私はエレベーターに乗り込み、エントランスに降りた。

エントランスには生徒の姿は無い。

昨日あんな事があったのに学校があるってどう言う事なんだろうか。

と、いや、一人居た。

エントランスに置いてある木製の長椅子に座り込んでいる男子生徒。

鞄を横に置いている所を見ると、今から登校するのだろうか。

ツンツンの髪型のその男子生徒は顔を下に向けている。

その髪型には覚えがあった。

私は男子生徒の座る長椅子へと近づいて行く。

初めて会った時のムカムカ感は今は無かった。

「何してるんだ、お前」

顔を下に向けている男子生徒に話しかける。

男子生徒は顔をコチラに向けるとすぐに目を私から逸らした。

「体調が悪いんだよ……」

拗ねているような口調で神崎護はそう言った。

「そうか、それは大変だな」

私はそう答えると護の隣に腰を降ろす。

護は居心地の悪そうな顔をしていた。



/続く



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私は悪魔から目を逸らす。

「まさかとは思うけど、怖がってんのか? アイツらの事」

冷たい声で悪魔は私にそう聞いてきた。

「怖がってなんて……ない……」

「ならどうしてあの時震えてた? どうして涙を流した」

その言葉に、私はどう反論して良いか分からなかった。

ただ黙って、悪魔から視線を逸らす。

すると悪魔は私の両胸を両手で力強く掴んできた。

「あぁッ!」

痛みで声が出てしまう。

それでも悪魔は容赦なく私の胸を掴む手に力を入れていく。

「ハァ、んぅ、あぁッ! やめ、ろ……」

いつのまにか目には涙が溜まっていた。

それに気づいたのか悪魔は胸から手を離す。

そして私の頭を優しく撫でてきた。

「過去に囚われたまま戦うから悪夢なんて見るんだぜ? もうそんなの見たくなかったら、切り替えるこった」

コイツはたまにこんな事を言ってくる時がある。

体を舐めたり触ったりしてきたのは今回が初めてだけど。

「出来ることなら、オレはアンタを……」

何故か、悪魔は私を寂しげな目で見つめてきた。

それから鼻で軽く笑うと私の体から離れ、立ち上がる。

私は体をお越して両頬と首についたヨダレを拭き取った。

 そして悪魔に殺意混じりの視線を向ける。

「ヒュー、怖いねその顔。初めて会った時はそんな顔なんて持ってなかっただろうに。オレ的にはあん時のアンタが好みなんだけどね」

私は何も答えず、ただ目の前の悪魔を睨み続ける。

「あー悪かったって! 別に興奮してやった訳じゃねーんだぜ? ただ少しご褒美が欲しかったっつーか何つーか」

苦笑いしながら言い訳をする悪魔。

私はナイフを作り出して悪魔に投げ付けた。

ナイフは悪魔の首をギリギリ外れて壁に突き刺さる。

「今度こんな事したら……ただじゃおかない」

私はベッドから出ると、床に置いている赤いコートを羽織る。

そしてテーブルの上に置かれた携帯を手に取った。

携帯の画面にはメール受信のメッセージが表示されている。

差出人はエリックと書かれていた。



/続く



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「違うッ!」

叫びながら私は目を開けた。

ここは……学生寮の部屋。

「ハァ……ハァ……夢……?」

息を整えながら体を起こす。

体は汗でびっしょりと濡れていた。

頭を左手で抑える。

頭痛がする……。

「何だってあんな夢……」

ふと、部屋の中に何かの気配を感じた。

辺りを見回すと、締め切られたカーテンを背に寄りかかる一つの黒い影。

人型のその影は起きた私に顔を向ける。

「よう、起きたか? 随分と魘されてたな」

笑い混じりに言いながら影は私に近づいて来る。

「にしても何だよその汗は? 犯されてる夢でも見たのか?」

ベッドの側まで来るとその場に影は座り込んだ。

「まぁ、アンタはスタイルも良い、顔だってそこらの女には負けないだろう。男にとってはアンタの体は最高の女性器だろうな、ククク……」

「私に許可なく実体化する事は許さない、そう言ったはずだぞ」

影を、いや目の前の悪魔を睨みつけながら私はそう言った。

悪魔はやれやれと肩をすくめる。

「お堅いこと言うなよ、たまには良いじゃねーか」

悪魔はフラフラと立ち上がると、私の体をベッドに押し倒してきた。

「お前ッ! 何を……!」

そんな私の言葉を無視して悪魔は私の上に馬乗りしてくる。

そして黒い顔を私の顔へと近づけてきた。

「アンタの力はオレが貸してやってるって事、忘れてねーよな?」

不気味に笑いながら悪魔は私の左頬をペロリと舐めてきた。

「……くっ」

汚いヨダレが左頬にドロリとつく感触。

「このくらいのご褒美くれても良いんじゃねーの? 哀れで、最弱で無力なライトさん」

顔を背けようとする私の顎を掴んで無理やり向き合わされる。

私はただ目の前の悪魔を睨みつける。

すると今度は右頬を汚い舌で舐められた。

「や、め……」

体が震える。

「昨日の戦いだけで悪夢を見ちまうのかよ、情けねーなアンタ」

悪魔は甘やかすような声で言いながら私の首元に舌を伸ばす。

ナメクジが這うような感じに声を上げそうになる。

「……ん、くっ……」

必死に声を上げないように耐えていると、悪魔を私の首から舌を離した。

そして再び私の顔に黒い顔を近づけてくる。

「ハァ……ハァ……んぅ……ハァ……」

上がる息を整えるも、悪魔を睨む気力は残っていなかった。



/続く



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