Beyond Despair -51ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

―― お姉ちゃん?

誰かの、懐かしい声が聞こえる。

―― お姉ちゃんってば

私を……お越しているのだろうか。

―― 起きないの? お姉ちゃん

その声は懐かしくて、とても現実的で……。

―― 早く起きてよ! お姉ちゃん!

私は静かに両目を開けた。

両目を開けると、そこには――。

「らい……あん……?」

私の顔を覗き込むライアンの姿があった。

ライアンはニッコリ笑う。

私は慌てて起き上がる。

「ライアン……何で……」

「おはよう、お姉ちゃん」

ここは私の前の部屋だった。

私は今起きている事が信じられないでいた。

何で私はこの部屋に居るのだろうか。

何でライアンが居るのだろうか。

「あのね、お姉ちゃん」

笑顔のまま、ライアンが話しかけてくる。

「僕ね、お姉ちゃんの事が大好きだよ」

そう言いながらライアンは私に抱きついてきた。

暖かい、懐かしい感触。

私は涙を堪えてライアンの体を優しく抱きしめる。

「私も……大好きだよ……」

ライアンの頭を撫でながら震えた声でそう言った。

でも……。

「ウソだ―」

耳元で、そんな冷たい言葉が聞こえた。

幻聴……じゃない。

「……え?」

ライアンはゆっくりと私から離れる。

笑顔のまま、しかしその笑顔はどこか憎しみが混じっている様に思えた。

「お姉ちゃん、僕の事大好きじゃないでしょ?」

笑顔、なのに……どうしてそんな事を言うんだ……。

「大好きだよ……? 嘘じゃないよ?」

「嘘だよ、じゃーどうして?」

ライアンは立ち上がり、二歩私から下がる。

「どうして、僕はシンジャッタノ?」

「え――」

ライアンがそう言った瞬間、いつのまにか周りが闇に包まれる。

そして、グチュグチュと汚らしい音がライアンの背中の方から聞こえてくる。

いや、音じゃない。

足音……あの化け物の……。

「ホラ、こんなカンジに」

ライアンがニコっと笑った瞬間。

アヴェンジャーがライアンの頭に噛み付いた。

「ライアンッ!」

私は駆け寄ろうとするが、いつの間にか黒い触手の様な物が足に絡み付いていた。

何とか触手を剥がそうとする。

「クソッ! 離せ!」 

私はライアンに顔を向ける。

と、何故だろうか……。

「笑ってる……?」

血を吹き出しながら喰われているのに、ライアンは〝笑っていた〟。

声を出して笑っている訳じゃない。

ただ普通に、私によく見せてくれた笑顔のまま。

「お姉ちゃん……こうやって」

頭に噛み付いているアヴェンジャーを指さしながら笑みを浮かべるライアン。

「僕は食べられたんだよね?」

吐き気がする、目の前に起きている事に対して。

私は激しく頭を左右に振る。

見たくない、もう見たくないッ!

「お姉ちゃん……」

私は体を震わせながらライアンへと顔を向ける。

「僕の事、大好きな癖に……守ってくれなかったんだよね……」

「違う……違う………!」

違う、私はお前の事が大切で……。

だから苦しい生活でも、お前の笑顔が見られればそれで幸せで……。

守りたくて、守ってあげたくて……。


―― お姉ちゃんの――ウソツキ――



/続く



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「あぁ? 何言ってんだアイツ?」

グリードは理解出来ない顔でクロウリーを見つめている。

「クロウリー、これからどうするのだ?」

眼帯をした男が空を見上げるアレイスターにそう言った。

クロウリーはゆっくりと眼帯の男へと顔を向ける。

赤く鋭い目で見つめられ、眼帯の男が少し戸惑った。

そんな男にクロウリーは微笑みかける。

「アヴァリティア、計画に変更はない。だが、今後は数を増やせ……」

「数を増やすだと? お前だろ、五体程度と言ったのは」

アヴァリティアと言う男はクロウリーを睨みつける。

「私は見えた、彼女なら……私と似ている彼女なら……女神を殺せるとな」

「……彼女?」

クロウリーの言葉にアヴァリティアは疑問そうな顔をした。

クロウリーは空に翳していた自身の右手を胸元に当てる。

両目を閉じ、何か安心するかのような表情を浮かべた。

「あぁ……良い名前だ、そう……赤い髪に赤い服……全身が血の色の彼女なら……


両目を開けると、クロウリーはグリードへと視線を向けた。

「グリード、〝女神の耳〟は見つかったか?」

「探してはいるがよ、あの一日中夜の街にゃーいねーんじゃねーか?」

「今まで通り続けろ、グリード」

クロウリーの言葉にグリードはあいよ、と答える。

そしてそのまま暗闇へと消えて行った。

クロウリーは黒い王座に腰を降ろす。

そして再び両目を閉じた。

「もうすぐだ……もうすぐお前の声が聞けるよ、アリサ……」



/続く



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ここは黒く、憎しみに満ちた世界。

地獄、あるいは異界。

そんな暗闇の世界に数人の人影があった。

一人は白くとんがった髪型の男。

一人は茶色いツインテールの女。

一人は右目に眼帯をした男。

一人は黒く肩まで伸ばしたロングヘアーの女。

そして彼らの近くには、不気味に蠢く多くの〝復讐者〟。

「オイオイ、召喚から数分で全滅ってなんだよ?」

白くとんがった髪型の男がゲラゲラ笑いながら三人に語りかける。

「今までは三十や四十……召喚する毎に人類減らせてたのによぉ? 今回はなんだ? 一匹も喰らえてねーじゃねーか」

「予想外の事が起きた、と言わざるおえないだろ。グリードに言っても仕方がないかもしれんがな」

グリードと言う男に眼帯をした男が不気味に笑いながらそう言った。

「予想外だぁ? んだよそれ、人類がコイツらを潰せる兵器でも作ったってのか?」

「それは不可能だな。魔術ではこの化け物達を退ける事しかできん」

「なら何だってんだよ」

舌打ちをしながらグリードは周りを蠢く化け物達へ視線を向ける。

「さあな、だから予想外なんだ」

眼帯の男はため息をつきながらそう呟く。

「でも、クロウリーは嬉しそうだよ?」

ロングヘアーの女がニヤリと笑いながら自信達より少し高い位置にいる男に視線を向ける。

黒いロングヘアー、右寄りな白銀の髪、目の色は血を連想させる赤色。

男は口元を先程から歪ませていた。

何か、喜ばしい事でもあったかのように。

黒く、赤い空を見上げる男。

右手を空に翳し、何かを掴むかのように拳を握る。

「あぁ……似ている……私と……」

優しく微笑みながらクロウリーと言う男は呟いた。



/続く



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