―― お姉ちゃん?
誰かの、懐かしい声が聞こえる。
―― お姉ちゃんってば
私を……お越しているのだろうか。
―― 起きないの? お姉ちゃん
その声は懐かしくて、とても現実的で……。
―― 早く起きてよ! お姉ちゃん!
私は静かに両目を開けた。
両目を開けると、そこには――。
「らい……あん……?」
私の顔を覗き込むライアンの姿があった。
ライアンはニッコリ笑う。
私は慌てて起き上がる。
「ライアン……何で……」
「おはよう、お姉ちゃん」
ここは私の前の部屋だった。
私は今起きている事が信じられないでいた。
何で私はこの部屋に居るのだろうか。
何でライアンが居るのだろうか。
「あのね、お姉ちゃん」
笑顔のまま、ライアンが話しかけてくる。
「僕ね、お姉ちゃんの事が大好きだよ」
そう言いながらライアンは私に抱きついてきた。
暖かい、懐かしい感触。
私は涙を堪えてライアンの体を優しく抱きしめる。
「私も……大好きだよ……」
ライアンの頭を撫でながら震えた声でそう言った。
でも……。
「ウソだ―」
耳元で、そんな冷たい言葉が聞こえた。
幻聴……じゃない。
「……え?」
ライアンはゆっくりと私から離れる。
笑顔のまま、しかしその笑顔はどこか憎しみが混じっている様に思えた。
「お姉ちゃん、僕の事大好きじゃないでしょ?」
笑顔、なのに……どうしてそんな事を言うんだ……。
「大好きだよ……? 嘘じゃないよ?」
「嘘だよ、じゃーどうして?」
ライアンは立ち上がり、二歩私から下がる。
「どうして、僕はシンジャッタノ?」
「え――」
ライアンがそう言った瞬間、いつのまにか周りが闇に包まれる。
そして、グチュグチュと汚らしい音がライアンの背中の方から聞こえてくる。
いや、音じゃない。
足音……あの化け物の……。
「ホラ、こんなカンジに」
ライアンがニコっと笑った瞬間。
アヴェンジャーがライアンの頭に噛み付いた。
「ライアンッ!」
私は駆け寄ろうとするが、いつの間にか黒い触手の様な物が足に絡み付いていた。
何とか触手を剥がそうとする。
「クソッ! 離せ!」
私はライアンに顔を向ける。
と、何故だろうか……。
「笑ってる……?」
血を吹き出しながら喰われているのに、ライアンは〝笑っていた〟。
声を出して笑っている訳じゃない。
ただ普通に、私によく見せてくれた笑顔のまま。
「お姉ちゃん……こうやって」
頭に噛み付いているアヴェンジャーを指さしながら笑みを浮かべるライアン。
「僕は食べられたんだよね?」
吐き気がする、目の前に起きている事に対して。
私は激しく頭を左右に振る。
見たくない、もう見たくないッ!
「お姉ちゃん……」
私は体を震わせながらライアンへと顔を向ける。
「僕の事、大好きな癖に……守ってくれなかったんだよね……」
「違う……違う………!」
違う、私はお前の事が大切で……。
だから苦しい生活でも、お前の笑顔が見られればそれで幸せで……。
守りたくて、守ってあげたくて……。
―― お姉ちゃんの――ウソツキ――
/続く