Beyond Despair -52ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「おう、会長さん」

スタスタ歩く私に誰かが声をかけてきた。

立ち止まり、声のした方へと顔を向ける。

ツンツンした金髪の男子生徒。

ブレザーの前ボタンは護同様だらしなく開けている。

極道(ごくどう)龍二(りゅうじ)、学院で有名な不良生徒である。

前は学科コースだったが、今は総合コースに席を置いている。

「何だ何だ? 今日もド真面目に生徒会関係ですかぁ~?」

フラフラと荒い口調で私に近づいてくる龍二。

「昨日あんな事があったってのに、アンタは全然顔色が変わらねーんだなオイ?」

「そう言うアンタも全然変わってないでしょ、龍二」

この男は何かと私に絡んでくる。

少し前、この男がカツアゲをしていたのを止めた辺りからだ。

よっぽどその事がお気に召さなかったのか。

「おうよ、俺は世界がどうなろーが変わらねーのよッ!」

親指を自分に立てながらニヤリと笑う不良男子生徒。

「つかよ、護の奴はどこだよ? 昨日の事めっちゃ詳しく聞きてーのによ」

「護は部屋よ、でも今はそっとしておきなさい」

私がそう言うと、さっきまでバカみたいに元気だった龍二の顔色が変わる。

心配そうな顔で六階の方へと顔を向けた。

龍二と護は悪友関係、他の男子生徒とはあまり絡まない龍二は護には気を許しているのだ。

だからだろうか、護の部屋の辺りを寂しそうな視線で見つめている。

「んだよアイツ、辛いならダチのオレに吐いちまえばいいのによ」

チッ、と舌打ちをしながら愚痴る龍二。

コイツはコイツなりに護を心配しているのだろうか。

「誰にも言いたくなんてないんでしょう。良い? 無理に聞こうとかしないでよ」

「わーってるよ、んな事アンタに言われなくてもよ」

龍二は私を睨みつけながらそう言った。

本当にこの男は言葉遣いが荒いと思う。

本人曰く、これがオレ流の現代語らしいが。

「分かってれば良いのよ。それじゃ私は行くから、アンタも遅れないようにね」

「何言ってんだよオイ? この極道龍二様が学院に行くとでも思ってんのかァ?」

「それはアンタの勝手だけど、出席日数が足りなくて留年になっても知らないからね」

不良、と言うだけあって龍二はあまり学院には姿を見せない。

普段は第一エリアにある娯楽施設などで遊んでいるとか。

去年はそのせいで、出席日数が足りなくなり留年しかけたくらいだ。

「まだ高2は始まったばっかだろうがッ! 今から日数でビビってどーすんだよ」

「良いわよもう、お好きにどうぞ極道さん……

言うだけ無駄だって事は分かってたけど。

私はため息をつきながら学生寮を後にした。



/続く



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「マモッチ、もう学院に来ないって事はないよね?」

助けを求めるような視線を私とエレナに坂口は向ける。

私はなんとも答える事は出来なかった。

私達はまだいい、直接アヴェンジャーに遭遇した訳じゃないから。

でも、アイツは偶然にもアヴェンジャーと遭遇してしまった。

私達と比べれば、ショックは大きいのは当たり前の事だろう。

きっと、別の世界に来た感覚なんじゃないかな。

元気にバカみたいな事をやっていた護の姿が浮かぶ。

生徒会に許可なく二次元同盟部を結成したり。

ゲーム屋で棚に並べられた多くのソフトを見つめていたり。

そんなアイツを毎日見られると思ってたのに。

「なんなのよ……」

顔を下に向けながら私は低い声でそう呟いた。

拳を力一杯握りしめる。

アイツが静かだと、この寮もこんなにも静かになるのだろうか。

「あの……愛花さんはそろそろ行かないと……」

ふと、エレナの声で我に帰る。

何でアイツが元気がないからと言って、こんなにもイライラしてしまうのだろう。

私はため息を付きながら腕時計に視線を向ける。

時刻は午前七時半、ここから歩きで学院までは三十分かかる。

ホームルームまでは時間はあるが、生徒会の関係で私は八時には学院に着いていないといけないのだ。

「うん、ありがとうエレナ」

私は椅子の横に置いてある鞄を取り、脇に挟む。

「じゃ私は先に行くからね。遅れないように」

出来るだけ笑顔でエレナと坂口にそう言うと、私はおぼんを掴みカウンターへと向かう。

おぼんを食堂のおばちゃんに預けると、そのまま食堂を出た。

エントランスには学院に行く前に友達とお喋りをしている生徒が数人。

でもお喋りの内容も昨日のアヴェンジャーの件ばかりだった。



/続く



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「あれヒノッチ、マモッチは?」

呆然と座っている私に坂口が声をかけてきた。

「あぁ、さっきまでは居たんだけどね。部屋に戻ってっちゃったわよ」

「そうか~、元気づけようと思ったのですが」

頭をかきながら坂口は私の前の席に腰を降ろす。

相変わらず坂口は自賛の朝食。

今日はハムサンドだ。

「やっぱり元気なかった?」

「口では大丈夫って言ってるけどね。でもやっぱりショックが大きいのかな」

そうか~、と坂口は残念そうに呟いた。

いつもはうるさいくらい元気な護。

そんな奴が急にああなると私達の調子も狂ってしまう。

「おはようございます、愛花さん」

と、背中の方から耳慣れた声。

顔を向けるとそこにはエレナが立っていた。

「あぁ、おはようエレナ」

「坂口さんも、おはようです」

「おは~エレッチ~」

挨拶を終えるとエレナは私に向き直る。

その表情はどこか暗い感じだった。

「あの……護さん、今日は遅れて行くって……」

「うん、知ってるわよ」

私の返事にそうですか、と小さく呟くエレナ。

坂口もだけど、やっぱり彼女も護を心配しているのだ。

エレナは私の隣に腰を降ろす。

「護さん、来るでしょうか……」

不安そうな声でエレナはそう言った。

その言葉に坂口も寂しげな表情を浮かべる。

「さぁね、来ないなら来ないで良いんじゃないの? 今は無理に連れ出したって仕方ないしね」

紙コップに入った水を飲みながら私はそう言った。



/続く



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