Beyond Despair -53ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

そして、その考えが砕けた瞬間。

また昨日の公園での映像が脳内に走る。

――あの、化け物達の姿。

――化け物を殺す、赤い色の復讐者。

俺は頭を左右に振り、再生されそうな記録映像を振り洗う。

思い出したくない。

もう二度と、あんな所見たくない。

「護?」

「あ……え?」

「どうしたの? 顔色悪いけど、やっぱり――」

「だ、大丈夫だ。気にすんなよ、アハハハ……」

苦笑いしながら何とか笑い声を上げる。

そんな俺を火野川は心配そうな顔で見つめていた。

俺は席から立ち上がりおぼんを持ち上げる。

「悪い火野川、俺今日は遅れて行くな」

「え、遅れてって?」

「遅れて行くだけだ、ちゃんと行くから心配すんなよ」

俺は火野川にそう言うとカウンターへおぼんを返しに向かう。

そしてそのままエンタランスへと移動した。

エレベーターに乗り込み、自身の部屋に向かう。

本当は学校に行くって気分じゃないんだけどな。

そんな事を思っている間にも、エレベーターは六階に到着。

扉が開き、廊下に出ようとした時だった。

「あれ、護さん?」

開いた瞬間、目の前には見慣れた女子生徒の姿。

黒髪ショートカット、右手には学生鞄を持っている。

「どうしたんですか? 忘れ物ですか?」

「あぁ、ちょっとな……」

エレナの横を通り過ぎ、自身の部屋に向かう。

その途中、602号室に再び顔を向ける。

青いランプが点いていて中に人が居る事を表している。

「あの、護さん」

と、背中の方からエレナの声が聞こえる。

俺は顔を後ろに視線を送る。

「どうした」

「その、一緒に学院まで行きませんか?」

「悪い、俺今日は遅れて行くからさ」

俺はそう答えると、自分の部屋に逃げるように入った。



/続く



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俺は歯を食いしばりながら食堂へと入る。

カウンターに向かい、飲み物だけをおぼんに乗せる。

「あら神崎君、飲み物だけで良いの?」

「えぇ……、調子悪くて」

心配そうに食堂のおばちゃんは俺の顔をのぞき込んだ。

俺は避けるようにカウンターを後にする。

席に座り、食事をしている生徒が俺の事をジロジロ見つめてくる。

座りたいけど、これじゃ座った瞬間に質問攻めにあうだろう。

どこか空いている席はないかと辺りを見回す。

すると俺に向けて手を振っている女子生徒の姿があった。

黒髪の肩まで伸ばしたロングヘアーの女子生徒、火野川だった。

火野川は声を出さずに、ただ俺に向けて手を振っている。

俺は周りの視線を無視しながら火野川の座る席へと向かった。

おぼんを置いて、静かに火野川の前に腰を降ろす。

俺が腰を降ろすと、火野川も腰を降ろし食事を再開する。

相変わらず火野川の食事は昨日と変わりない定食だった。

でも変わらないのはそれだけで、火野川の表情はどこか暗い感じがした。

いつもなら会話のある火野川との食事。

こんな沈黙が続いているのは初めてだった。

火野川は眉一つ動かさずひたすら朝食を黙々と食べている。

俺はおぼんの上にある牛乳を一気に飲み干した。

辺りを見回すも、やはり多くの生徒が俺を見つめている。

正直、ここに居たくなかった。

俺は席から立ち上がろうとした、その時だった。

「昨日は……大変だったね」

火野川が顔を下に向けたまま低い声で話しかけてきたのだ。

どこか暗い声音は今までの彼女らしくない。

俺は席に座り直し、火野川に顔を向ける。

「あぁ、まあな」

俺がそう答えると火野川は俺に顔を向けてくる。

「あのさ、その……もう大丈夫、なの?」

俺の顔を覗き込みながら火野川はそう言った。

大丈夫、な訳がなかった。

白状すれば、今でも頭の中が真っ白だ。

何か別の事を考えようとしても、すぐにその考えが砕けてしまう



/続く



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目覚ましの甲高い音で目を覚ます。

布団から顔を出し、目覚ましを止める。

正直、学校に行く気分じゃない。

昨日の今日で学校とか、学院も何を考えているのか。

俺は頭に手を当てたままフラフラと起き上がる。

「……」

締め切られたカーテンを開ける。

外の風景は今までと何だ変わりの無い物だ。

逆にそれが怖い。

あの化け物がまた現れると思うだけでも怖い。

そして何より……。

アイツらの前だと殺人鬼と化すライトの事も怖い。

拳を力強く握りしめる。

もし昨日の事が全部俺の妄想、夢だったらどれだけ楽に思えるだろう。

変わらない風景、でも俺にはどこか別の世界の風景に見えるようになっていた。

俺は制服に着替えると、そのまま部屋を出る。

廊下を通り、エレベーターへ向かう途中、一室の部屋に顔を向けた。

隣の部屋、602号室。

結局昨日は声をかける事は出来なかった。

あの後俺達は騎士団の車に乗せられ、この学院寮まで送ってもらったのだ。

その間、ライトとの会話は一切無かった。

ライトはただ呆然と車の窓から外の風景を見つめていた。

エレベーターに乗り込み、一階に向かう。

エレベーターは微かに揺れながら下へと降りていく。

そして一階に到着すると、エレベーターのドアが開いた。

その瞬間、エントランスに溜まっている何人かの生徒が俺をジロジロと見つめてくる。

昨日の一件で、俺もライトも注目の的になってしまったのだ。

俺は何の反応もせずに、そのまま食堂に向かう。

「ねぇ、神崎君昨日アヴェンジャーに遭遇したんだって?」

「そうなんだってね~、災難だったね?」

「だから元気無いのかな? いつもは元気一杯なのに」

「たまには良いんじゃないの~? つかいつもうるさいしさ」

食堂に行く間、そんなヒソヒソ話が聞こえた。



/続く




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