私と一瞬も視線を合わせようとしない。
昨日の件で嫌われたのだろうか。
それならそれで私は良い。
実際、コイツは私にとっては何故か厄介に思える存在だから。
このまま離れてくれればどれだけ楽になれるだろう。
そんな事を思っている時に――。
「ごめん……」
そんな言葉をボソッと護は私に言った。
ごめん? ごめんって何が。
初めて会った時の事を言っているのだろうか。
でもそれは昼を奢ると言う事で許してやったつもりなのだが。
「何の事だ、ごめんって」
睨みつけながら護にそう問い詰める。
すると護は私に初めて視線を合わせてきた。
でもその表情は、昨日初めて会った時の笑顔ではなく、悲しくて辛そうな表情だった。
正直意外だった、こんな奴でもこう言う顔が出来るんだなと。
「弟の事……知らなくて、なのに俺は……どこに居るんだとか、そんな事聞いたりして」
護は涙を堪えているのか、両目を閉じる。
そして両手の拳を力強く握り締めた。
よく見れば体が震えているのが分かる。
「辛い事、思い出させたよな……本当にゴメンッ……」
震えた声で、コイツは私に謝ってきた。
私は呆然と護を見つめる。
こんな奴でも、泣くんだと思った。
「別に気にしてないよ」
謝る護に私はそう答える。
すると護は再び顔を下に向けた。
そしてしばらく会話が無くなる。
あるのは外で走る車の音、食堂で食器を洗っている音だけだった。
ここに居ても仕方ない、そう思って腰をあげようとした時だった。
「変わったんだ……」
低く暗い声で護が口を開いた。
〝変わった〟その意味は何となく私には理解出来た。
「当たり前だと思っていた日常……それが変わった、か」
私のその言葉に護は顔をコチラに向ける。
どうやら図星だったようだ。
/続く
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