Beyond Despair -49ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

その時――。

「お前の……やるべき事ってのは?」

護の言葉に足を止める。

「〝私はアイツらを皆殺しにすれば良い〟これが私のやるべき事なんだ」

「だから、やるべき事だからあんなふうに殺したのか……」

「どう殺そうが私の勝手だ……。でも――」

私は護の方へ顔を向ける。

「お前みたいな馬鹿に、あんな所は見せなくても良かったな。その事に関しては悪かったと思ってる」

私はそう言うと、再びエントランスへと歩き出す。

「あんな所見たくなければ、もう私には関わるな。そうすれば、お前の日常に大きな変化はないから……」

何故か、その言葉を言うのは悲しく思えた。

でも、きっとアイツには私の居る世界は耐えられないから……。



/続く



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護はしばらく私の顔を見つめていると、すぐに顔を下に向ける。

〝当たり前だと思っていた日常が変わった〟

コイツ、いや、ここの生徒にとってはその日常は昨日で一気に変わったんだろう。

けれど、私は違う。

「私の日常は15歳の時に変わっている」

「え――」

そう、私の〝当たり前だと思っていた日常〟は、二年前にとっくに変わっているんだ。

あの日はいつもと変わらない冬の朝。

十二月二十四日のクリスマスの公園で、あの化け物に出会ってしまってからだ。
「あの子が目の前で喰われた時、私の日常は壊れたんだ。でも、考えてみればお前達には〝当たり前の日常〟なんて無いだろ? 世界が今どう言う状況なのか、お前たちにも分かっていたはずだ」
護を睨みつけながら私はそう言った。

「いつ壊れても、変わってもおかしくない生活の中で、お前達は生きてきた。昨日あの時まで何事も無く、楽しく生活していたのは奇跡に近いんだ」

でも、奇跡は長続きしないんだ。

〝世界〟はそう言うふうに出来ているから。

「いい加減、お前達も現実を見るべきだ。私から言わせれば、お前達……いや」

私は立ち上がり護に体を向ける。

「お前は〝逃避〟していただけなんだ」

私の言葉に護は体を震わせた。

一瞬、あの時の自分と護の姿が重なる。

その瞬間、一気に悲しみがこみ上げてきた。

「お前に言わせればそうなのかもしれない……。でも……」

護は口ごもる。

彼にとってはあまりにも急な展開だったから、まだ頭が整理出来ていないのだろう。

あの時の私もそうだった。
「今は、迷わずに前を見ろ」

「前って……?」

「それは知らない、私はお前じゃないから。でも、きっと何かが分かる。自分のやるべき事が」
私はそう言いながらエントランスの出口に向かう。



/続く


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私と一瞬も視線を合わせようとしない。

昨日の件で嫌われたのだろうか。

それならそれで私は良い。

実際、コイツは私にとっては何故か厄介に思える存在だから。

このまま離れてくれればどれだけ楽になれるだろう。

そんな事を思っている時に――。

「ごめん……」

そんな言葉をボソッと護は私に言った。

ごめん? ごめんって何が。

初めて会った時の事を言っているのだろうか。

でもそれは昼を奢ると言う事で許してやったつもりなのだが。

「何の事だ、ごめんって」

睨みつけながら護にそう問い詰める。

すると護は私に初めて視線を合わせてきた。

でもその表情は、昨日初めて会った時の笑顔ではなく、悲しくて辛そうな表情だった。

正直意外だった、こんな奴でもこう言う顔が出来るんだなと。

「弟の事……知らなくて、なのに俺は……どこに居るんだとか、そんな事聞いたりして」

護は涙を堪えているのか、両目を閉じる。

そして両手の拳を力強く握り締めた。

よく見れば体が震えているのが分かる。

「辛い事、思い出させたよな……本当にゴメンッ……」

震えた声で、コイツは私に謝ってきた。

私は呆然と護を見つめる。

こんな奴でも、泣くんだと思った。

「別に気にしてないよ」

謝る護に私はそう答える。

すると護は再び顔を下に向けた。

そしてしばらく会話が無くなる。

あるのは外で走る車の音、食堂で食器を洗っている音だけだった。

ここに居ても仕方ない、そう思って腰をあげようとした時だった。

「変わったんだ……」

低く暗い声で護が口を開いた。

〝変わった〟その意味は何となく私には理解出来た。

「当たり前だと思っていた日常……それが変わった、か」

私のその言葉に護は顔をコチラに向ける。

どうやら図星だったようだ。



/続く



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