護はしばらく私の顔を見つめていると、すぐに顔を下に向ける。
〝当たり前だと思っていた日常が変わった〟
コイツ、いや、ここの生徒にとってはその日常は昨日で一気に変わったんだろう。
けれど、私は違う。
「私の日常は15歳の時に変わっている」
「え――」
そう、私の〝当たり前だと思っていた日常〟は、二年前にとっくに変わっているんだ。
あの日はいつもと変わらない冬の朝。
十二月二十四日のクリスマスの公園で、あの化け物に出会ってしまってからだ。
「あの子が目の前で喰われた時、私の日常は壊れたんだ。でも、考えてみればお前達には〝当たり前の日常〟なんて無いだろ? 世界が今どう言う状況なのか、お前たちにも分かっていたはずだ」
護を睨みつけながら私はそう言った。
「いつ壊れても、変わってもおかしくない生活の中で、お前達は生きてきた。昨日あの時まで何事も無く、楽しく生活していたのは奇跡に近いんだ」
でも、奇跡は長続きしないんだ。
〝世界〟はそう言うふうに出来ているから。
「いい加減、お前達も現実を見るべきだ。私から言わせれば、お前達……いや」
私は立ち上がり護に体を向ける。
「お前は〝逃避〟していただけなんだ」
私の言葉に護は体を震わせた。
一瞬、あの時の自分と護の姿が重なる。
その瞬間、一気に悲しみがこみ上げてきた。
「お前に言わせればそうなのかもしれない……。でも……」
護は口ごもる。
彼にとってはあまりにも急な展開だったから、まだ頭が整理出来ていないのだろう。
あの時の私もそうだった。
「今は、迷わずに前を見ろ」
「前って……?」
「それは知らない、私はお前じゃないから。でも、きっと何かが分かる。自分のやるべき事が」
私はそう言いながらエントランスの出口に向かう。
/続く