Beyond Despair -48ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「実は一ヶ月前から第三エリアで若い女性ばかり狙った誘拐事件が多発していてね。これまで誘拐された被害者数は合計で三十人に登る」

誘拐事件、こんな世の中でもそんな事件は起こるものなんだな。

「それで、私に犯人を見つけ出せ、って話か」

「あぁ、それとは別に頼みたい事もある。昨日のアヴェンジャー出現に伴い、我々魔術騎士団は今まで以上に新都市全エリアの警戒を強化する事になった。そこで、君にはこの第三エリアを誘拐犯を探しながら見回ってもらいたいんだ」

「見回りは騎士団員に任せれば良いだろ」

「団員の人数を増加させるには少し時間がかかる。今回だけだよ」

エリックはそう言いながら机の引き出しから一枚の紙を取り出す。

そして私の目の前にパラっと投げ飛ばしてきた。

「それで、だ。君が先程から気にしている客についてだが――

エリックが言葉を言い終える時、司令室のドアの向こうから凄まじい足音が聞こえる。

ドスドスと言う足音はだんだん大きくなっていく。

どうやらコチラに向かって来ているようだ。

「お、おい……」

私はゆっくりエリックに顔を向ける。

「ははは、どうやらお出ましのようだな」

お出まし……何が。

あんな物凄い足音出す人間ってどんな奴なんだ。

と、その時、司令室のドアが凄い勢いで開いた。

開いたドアの先に居たのは――

「げ……」

露出度の高い服を来た金髪の女がそこに居た。

「イッエェェェイッ! ライトォォォォ~久しぶり~」

叫びながら女は私にタックルするように抱き着いてきた。

「はぁ~、会いたかったよ? 私が居なくても元気にしてた? アァ~ン、このヒヨコみたいな髪型、もうライト可愛い~~」

ムニムニと私に頬擦りしてくる女。

なんだってコイツ何だ……。



/続く



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そんな時だった。

司令室のドアがコンコンと音を立てる。

そしてガチャリとドアが開いた。

銀のトレイを持った騎士団員。

「失礼します、コーヒーをお持ちしました」

「あぁ、すまないな。そこに置いてくれ」

ハッ、と締まった返事をすると騎士団員は私の前にある長机にコーヒーカップを二つ置いた。

「他にご要件は?」

「ない、下がって良いぞ」

頭を下げると、騎士団員の男は司令室のドアへと向かう。

「待て、そこの軍人」

私の呼び止めに騎士団員は呆然と顔を向ける。

私に呼び止められる事が予想外だったのだろうか。

「は、はい、なんでしょうか?」

「ミルクと砂糖……」

私がそう言うとエリックは深いため息をつく。

「君は、その歳でミルクと砂糖を入れないと飲めないのかね?」

「良いだろそんなのッ! 私の勝手だッ!」

吠える様に言うとエリックは両耳を抑える。

「まったくよく吠える……」

「あ、あの……大佐」

「あぁ、悪いが持って来てくれるか」

エリックの言葉に騎士団員の男は再び頭を下げると司令室から出ていった。

私は無言のまま目の前に置かれたコーヒーカップを睨みつける。

大人はよくこんな不味い物を飲める、と今でも思う。

「コーヒーと睨めっことは変わった遊び方だな」

顔を向けず、視線だけエリックに向ける。

「それで、どうして二つなんだ」

「それは決まっているだろ、君以外にも客が来るからだよ」

「その客、依頼と何か関係あるのか?」

あぁ、とエリックは言いながらコーヒーを口に運ぶ。



/続く



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「それで、依頼って」

司令室に入るなり私は椅子に腰を掛けるエリックにそう言った。

エリックはガラス張りの窓の外の風景を眺めている。

「何だね、ノックもしないあげくに〝おはよう〟の一言も無しか?」

コーヒーカップを口に運びながらエリックは私に笑い混じりにそう言った。

私は無言のままエリックの机の前に置かれている長ソファーに腰を掛ける。

するとエリックもコーヒーカップを机に置くと、自身の椅子に腰を降ろした。

相変わらず口元をニヤかせながら、私の事をじっと見つめている。

「何だ、早く仕事の内容を教えろ」

「そんなに急ぐな、まだ〝彼女〟が来ていないのでな」

彼女?

依頼主か何かだろうか。

「なに、仕事の話は一先ず今は置いておこう。ところで――」

「昨日の事なら私が悪かった。お前の指示無しに動いたからな、反省してます」

両手を上げてエリックに軽く謝罪する。

するとエリックはアハハ、と声を上げて笑った。

「いやいや、昨日の事は我々にも予想外の事だった。君のあの行動が無ければ、住民の一人や二人は死んでいただろう。アヴェンジャーが出現したのに死者ゼロ人、と言うのは世界的にも異例の出来事だ。君には感謝しているよ」

笑顔で私にそう言うと、エリックは机に設置されているボタンを押した。

「すまないが、客人にコーヒーを持って来てくれ。あぁ、二つで構わん」

外部通信器なのだろうか。

「今君の分の飲み物も来る。少し待っていてくれ」

ボタンから指を離すエリックを私はじっと見つめる。

「ん? どうかしたか」

「何で二つも頼むんだ、あとコーヒーは嫌いだ」

「まったく駄々を捏ねる歳では無いだろ、〝赤毛犬〟」

「ほざけ、〝エロ大将〟」

互いにビリビリと視線がぶつかる。



/続く



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