Beyond Despair -47ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

『この電話番号は、現在使われておりません。この電話番号は――』

ピッと携帯のボタンを押し、窓の外を眺める一人の少女。

肩までさらりと伸ばした金紗の髪を外から入る風でなびかせる。

椅子から腰をお越し、一枚の写真に視線を送る。

そこには少女と、少女の大切な友達が写っていた。

「まだ……見つかってないんだ。ごめんね」

少女は写真を見つめながら誰かにそう謝った。

いや、恐らくは〝大切な友達〟に対しての謝りの言葉なのか。

写真を机の上に置くと、少女は壁に立て掛けられている一刀の日本刀を手につかんだ。

鍔の無いその日本刀を鞘から静かに引き抜く。

外から漏れる太陽の光が刀の鋭い刃を輝かせた。

「絶対に……約束は守るから。絶対に、アナタの死を無駄にはしないから」

半分だけ鞘から引き抜く少女の目の前に、黒い人影が姿を表す。

「いいねぇ、いいねぇ、やる気充分って感じじゃねーか」

ゲラゲラ笑うその影に向けて、少女が刀を完全に鞘から引き抜いた。

尖端部分を影の首元に突きつける。

「ヒューっ! 怖い怖い」

両手を上げながら影は少女に笑いながらそう言った。

少女は目の前の影、否、悪魔を睨みつけながら鞘に刀をしまい込んだ。

「それで〝あの子〟は見つかったのかしら、黒刀(こくとう)

「あぁ、アンタがずっと探し求めている〝あの子〟ね。そいつらしい奴ならさっき見かけたぜ? 駅の方に向かってたと思うけどな」

ニヤニヤと見た情報を悪魔は少女に教える。

そう、と少女は小さく呟く。



/続く




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「随時夜、つまりは常に暗い影が有る、と言う事だ」

なるほど、その言葉でアイネがこの依頼の同行者である理由が分かった。

「影有る所にアイネ有りってね!」

エッヘンと胸を張りながらアイネはドヤ顔をしている。

「彼女は影を司る魔術師と聞いている。私は直接見た事は無いが、その異名が本当なら今回の依頼に彼女は相応しいと思ってね」

確かにアイネは影の魔術師の異名を持っている。

しかし、問題なのは――。

「アイネ、お前……ちゃんと力を制御出来るのか?」

私の言葉にアイネはビクッと体を震わせる。

そう、アイネは自身の魔術を制御出来ないと言う欠点を持っている。

何度か私も力が暴走したアイネに酷い目にあった事もある。

「お前の魔術は他の魔術と毛色が違う。確かに極めれば便利な魔術だ、けど完璧にマスターしていないんじゃアメリカに居たときみたいになるぞ」

「ほぉ、では彼女はまだ魔術師としては半人前、と言うことかな?」

「あぁ、下手したらコイツのせいで一般人に負傷者が出るかもしれないぞ?」

ふむ、とエリックはため息をつく。

アイネが魔術をしっかり使えれば問題はない、むしろ向かうところ敵なし状態だ。

でもコイツはまだ力を制御しきれない。

しかも随時暗い夜の街だ。暴走したらシャレにならない。

「酷いよライトッ! そんなふうに言わなくたってッ!」

アイネは涙をドバーっと流しながら机をバンバン叩く。

「てかお前、居ると迷惑だから日本に送られて来たんじゃないのか?」

「そ、そんな訳――」

「なるほど、だからやけにアメリカ軍司令官は嬉しそうだった訳か。司令官殿と話によると、君はずっと我々が使って良い、との事だったが」

その言葉にアイネはカチン、と凍りつくように固まってしまった。

まぁ、何人か仲間の兵隊を負傷させた事もあるしな。

「……それって、もう帰ってくんな、って事ですか……?」

途切れ途切れな言葉でエリックにアイネは話しかける。

「そう言う事になるのではないか?」

ガーンっと、アイネはその場にヘタレ込んだ。

床にアイネの涙がボトボト垂れ落ちる。

「ヒック、ヒック……故郷に帰れないなんてぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」

泣き叫ぶ声が司令室に響きわたる。

目から大量の涙。

よっぽどショックだったらしい。

「しかし参ったな、これでは同行させる訳には――」

「いやぁぁぁぁだあぁぁぁぁッ!」

エリックにアイネは叫びながら飛びかかる。

「絶対にライトと行くんだからぁぁぁぁぁぁッ!」

その衝撃でエリックは椅子から転げ落ちた。

「くっ、やめたたまえッ!」

「せっかく会えたんだから絶対行くんだからぁぁぁぁッ!」



/続く



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「やめろッ! くっ、離せこのレズ女ッ!」

「あぁ~その嫌がり方も可愛いよぉ~、ムニムニ~」

今度は人差し指で頬を突っついてくる。

私はこの状況を楽しんで見ているエリックを睨みつけた。

「そんなに睨むな。君だって知人との方が何かと楽ではないのか?」

「楽だと? ふざけるなッ! コイツと居たら楽どころか苦労するんだよッ!」

「そう言うな、彼女はわざわざアメリカからコチラに来んだぞ? 君に会いたい一心でな」

その言葉に背筋がゾゾッとしてしまう。

「ふ~ライトから元気注入してもらったし、そろそろ本題に入りますかッ!」

金髪の女は私からゆっくりと離れると、目の前の長ソファーに腰を降ろす。

「ライト、紹介しよう。彼女は今回の任務の同行者、アイネス・ヴァルハーケンだ」

「……知ってる」

私はアイネを睨みつける。

「ていうか、何でコイツが同行者なんだ? そもそもお前いつ日本に来た」

「えーっとね、今日来たばっかり」

「はぁ?」

「いや、私も急に大佐さんからご指名されたから驚いたんだけどさ。でも、話を聞く限りライトが日本に居るって事が分かったから良かったんだけど~」

ギロりとエリックに鋭い視線を送る。

私とアイネはアメリカの軍で一緒に過ごしていた。

アメリカは今では経済的にも崩壊状態、アヴェンジャー達の数も数え切れない。

大統領は自国の消滅を防ぐ為にアメリカ軍にアヴェンジャー達を迎撃作戦を決行。

その作戦に私も参加していた。

この時だ、私とアイネが出会ったのは。

初めは口数の少ない奴で、アヴェンジャーを前にすると腰が抜けてしまう様な奴だった。

よくこんな奴が軍に志願したと思った程だが。

「でもライト! いくらなんでも酷いよッ! 私に何にも言わずに行っちゃうなんて」

「何でお前に言う必要がある……。お前は私の保護者か?」

「ライトの保護者か~、それも良いな~」

ニヤニヤ笑いながら私を見つめるアイネ。

どうしてか、コイツは私によく絡んでくる。

初めて会った時は弱々しい奴だったのに、いつしかこんな奴になってしまった。

「んで、何でコイツが同行者なんだよ大佐殿」

「君たちが行く第三エリアは別名、ナイトタウンと呼ばれていてね」

「ナイトタウン?」

「そうだ、第三エリア全体が巨大ドームで覆われていてね。唯一太陽の光が入らない街とも言われている。簡単に言うと、その第三エリアは随時夜、と言う訳だ」

朝が訪れない街、という事か。

住んでる住民は全員吸血鬼か何かなのか。



/続く



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