Beyond Despair -46ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「オイ、コラ護ッ!」

と、急に龍二が俺の首元をグイっと力強く掴んできた。

「ぐぅ!? 急に何だ龍二ッ!」

「随分元気そうじゃねーかよオイ? 体調不良ってのはパチかコラッ!」

「どこをどう見たらそう見えるんだよッ!?」

相変わらずの龍二の態度に少し俺は安心する。

「アァッ!? 人がせっかく心配してやってたってのによッ!」

舌打ちをして龍二は荒々しく手を離した。

何だかんだでコイツも心配してくれてたのか、少し意外だった。

龍二は腕を組みながら俺に背中を向ける。

そんな龍二の頭に火野川が軽く拳を入れた。

「イデッ! 何すんだクソ会長がァッ!?」

「心配してるんなら荒々しく扱わないッ! 何でアンタっていつもそう言う態度しか出来ないのよッ!?」

そして始まったのが火野川の説教タイム。

「そんなんだから学院の先生方からも毛嫌いされるんでしょ!?」

朝とは変わって、火野川もいつものように戻っていた。

龍二を怒鳴る火野川に坂口が割って入る。

「まあまあ、落ち着こうぜヒノッチ。リュウチャンはそう言った態度が出来ない照れ屋さんなんだから」

「誰が照れ屋だッ!? 勝手な事言ってんじゃねーぞ糞豚がァッ!!」

そんな言い争いを俺はただじっと見つめる。

いつの間にか俺は笑っていた。

何だか暗い気持ちがどっかに吹っ飛んで行く感じがした。

「ふふ、ま・も・る・さん♪」

そんな俺にエレナがニッコリスマイルで話しかけてきた。

「え、何だよ?」

「えへ~、やっと笑いましたね~♪」

「……え」

そう言えば、確かにそうだ。

俺は今日、一回も笑ってない。

いや、無理に笑顔を作る事はしたけど。

今みたいに、心から楽しいと思えて笑ったのは初めてだ。

俺は自分の頬に両手を当てる。

今までは、笑うなんて事は当たり前だったのに。



/続く



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「おや、アンタら今日は六限まであるんじゃないのかい?」

明子さんがダラダラとエレベーターに向かう男子生徒に声を掛ける。

「あぁ、今日は四限まででしたけど?」

「部活とかはどうなってんだい?」

「部活もありません。完全下校ですよ」

そう言い残すと男子生徒はエレベーターに乗り込んだ。

さすがに昨日の今日で学院も六限まで授業、という事はしないらしい。

と言うことはアイツらも――。

「ただいま戻りましたぁ~」

元気な声が寮内に響きわたる。

ルンルンとご機嫌にスキップしながらエレナがエントランスに入って来た。

その後ろには坂口、極道、そして火野川の三人。

「おやエレナ、相変わらず元気良いねアンタ」

「いえいえ、そんな事はぁ~」

するとエレナは俺の方へと顔を向けてくる。

コチラとしては少し気まずい。

行くと言っておきながら行かなかったのだ。

何か言われるのでは、と少しビクビクしてしまう。

が、そんな俺に飛んできた言葉は――。

「護さん、お結び食べられたんですね~」

これだった。

余りにも予想外で俺はしばらくエレナをポカンと見つめてしまう。

「およ、どうかしましたか?」

「あ、いや……てっきり行かなかった事で、何か言われるかと……」

するとエレナはまさかぁ~、と手を左右に振った。

「私達四人、護さんが来るとは思ってませんでしたからッ!」

「え、そうなの?」

またしても予想外の発言だった。

「だってそうじゃないですか? 昨日護さんはオバケに遭遇しちゃった訳ですし。それなのに学校に行ける程、護さんが強い人だとは思いませんし。仮に来としても、私達皆で追い返そうと思ってましたし」

口に人差し指を付けながら一人喋るエレナを再びポカンと見つめる。

「あぁ……そう、ですか。つか、オバケって?」

「アヴェンジャーの事ですよ。でも、オバケの方が呼びやすいじゃないですか。アヴェンジャーって、何か呼びにくいんですよね~」

「あぁ、そうか……」

アヴェンジャーをオバケと呼んでしまえる彼女は少し凄いと思った。

直接見ても言えるなら更に凄いと思う。



/続く



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頭の中がまだ真っ白な状態だ。

時刻は午後の二時を回った所。

俺は未だに学生寮のエントランスにある長椅子に腰掛けていた。

行かないと火野川達を心配させるかもしれない。

でも、さすがに行ける気分じゃなかった。

「ちょっとアンタ、こんな時間まで何してんだい?」

と、顔を下に向ける俺に誰かが声をかけてきた。

顔を上げるとそこには寮官である井上明子さんの姿があった。

杖を着きながら俺の顔をじっと見つめている。

「今から行っても何の意味も無いだろうに」

「いや……十一時からずっとここに居たんですけど。その、どうしても行く気になれなくて……」

視線を外らして俺はそう言った。

「そうかい、まぁ無理して行く事無いさね。アンタが受けたショックはアタシらが受けたショックよりも大きいだろうからね」

すると明子さんは俺に弁当箱を差し出してきた。

「アンタ、今日の朝何も食べて無いんだろ? 無理して食わなくてもいいけど、何か一口でも胃袋に入れときな」

明子さんはそう言いながら弁当箱の蓋を開ける。

そこには一口で食べられる程度の大きさのお結びが四つ程入っていた。

「アタシは塩より醤油の方が好みでねぇ。醤油の味付けになってるが、そこは我慢しとくれ」

「はぁ……、俺もどちらかと言えば醤油派ですけど」

俺は弁当箱に入っているお結びを指て掴むと、口に放り投げる。

口の中に海苔と醤油の味が広がる。

食欲はあまりないが、これなら何とか食べられそうだった。

「どうだい、これならいけるかい?」

「えぇ、これなら何とか」

と、そんな時だった。

学生寮の正面玄関の扉が静かに開く。

学院生が何人か帰って来たようだった。



/続く



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