頭の中がまだ真っ白な状態だ。
時刻は午後の二時を回った所。
俺は未だに学生寮のエントランスにある長椅子に腰掛けていた。
行かないと火野川達を心配させるかもしれない。
でも、さすがに行ける気分じゃなかった。
「ちょっとアンタ、こんな時間まで何してんだい?」
と、顔を下に向ける俺に誰かが声をかけてきた。
顔を上げるとそこには寮官である井上明子さんの姿があった。
杖を着きながら俺の顔をじっと見つめている。
「今から行っても何の意味も無いだろうに」
「いや……十一時からずっとここに居たんですけど。その、どうしても行く気になれなくて……」
視線を外らして俺はそう言った。
「そうかい、まぁ無理して行く事無いさね。アンタが受けたショックはアタシらが受けたショックよりも大きいだろうからね」
すると明子さんは俺に弁当箱を差し出してきた。
「アンタ、今日の朝何も食べて無いんだろ? 無理して食わなくてもいいけど、何か一口でも胃袋に入れときな」
明子さんはそう言いながら弁当箱の蓋を開ける。
そこには一口で食べられる程度の大きさのお結びが四つ程入っていた。
「アタシは塩より醤油の方が好みでねぇ。醤油の味付けになってるが、そこは我慢しとくれ」
「はぁ……、俺もどちらかと言えば醤油派ですけど」
俺は弁当箱に入っているお結びを指て掴むと、口に放り投げる。
口の中に海苔と醤油の味が広がる。
食欲はあまりないが、これなら何とか食べられそうだった。
「どうだい、これならいけるかい?」
「えぇ、これなら何とか」
と、そんな時だった。
学生寮の正面玄関の扉が静かに開く。
学院生が何人か帰って来たようだった。
/続く