Beyond Despair -36ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「ほら、貸しなさいよ」

小動物の様にカードを切るエレナから火野川はタロットカードを貰う。

そしてカードを切り始めた。

エレナと比べ、火野川は手馴れているらしい。

切るスピードもかなり早い。

「ほぉ~、愛花さんって器用ですね~」

「そうでもないけどね、ほい出来た」

火野川は切り終えたタロットカードをテーブルの中心に置く。

「それで? 誰から占うの」

「誰からにしますか?」

エレナの即答に火野川が顔をテーブルに叩きつける。

「決めてあるんじゃないの……?」

「イヤイヤ、こういうのは皆で話し合って決めた方が良いと思いまして」

「なるほどね、一応アンタにも考えがった訳か」

「その通りッ! で、誰を先に占うかはですね~、うんしょっと」

エレナはブツブツ何かを言いながら再びポケットの中をほじくる。

そして中から取り出したのは――。

「何、その棒……?」

「あれ、愛花さん知りませんか? 最近人気急上昇中のアザラシのキャラクター、ゴマ太郎の関連商品ですッ!」

ゴマ太郎、そうバーチャル世界のアイドルであるアスナちゃんに引けを取らないキャラクター。

その対象は園児から高校生とかなり広い。

二次元萌でなおかつオタク達の対象キャラのアスナちゃんより、下手すれば人気なんじゃないか?

「因みに棒ではありません。まだ削っていないので分からないかもしれませんが、これは鉛筆なんですよぉ? ほらほら、クルクル回すとゴマ太郎が気持ちよさそうに泳ぐんですよ~」

クルクルゴマ太郎の鉛筆を回すエレナを俺達はため息をしながら見つめる。

「そんで? その鉛筆がどうかしたのか」

「よくぞ聞いてくれました護さん。この鉛筆で占い相手を決めたいと思います!」

「鉛筆でどーやって決めるんだ? まさか鉛筆を倒した方に居た人を占いとか言わないよな?」

「え、そうですけど?」

先程の火野川のように今度は俺が顔をテーブルに叩きつける。

エレナは本当に簡単な奴だと思う。



/続く



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「パフェ、溶けちゃいますよ?」

「え、あ、あぁ、やべぇッ!」

既にパフェは綺麗な形ではなくなっていた。

ドロンとカップにクリームが溜まっている感じ。

「パフェは綺麗な形の時に食べた方が美味しいのに~」

エレナは残念そうにドロリと形を崩した俺のパフェを見つめる。

正直、俺はあまり甘い物は好きではない。

どちらかと言えば、塩っぱい物の方が好みだ。

「何なら食うか? 俺そこまでパフェ好きじゃなーし……」

「良いんですかッ!?」

確認の言葉を発した次の瞬間、俺の目の前からパフェが無くなっていた。

カップはあり、パフェその物が一瞬で消えたのだ。

俺はゆっくりとエレナに顔を向ける。

頬をぷっくりと膨らませながらもぐもぐしている所を見るなり、彼女の口の中にパフェは消えて行ったのだろう。

「エレナ、アンタ手品師か何か……」

エレナの刹那の早食いに火野川はそう言った。

坂口と龍二も目を点にしながらエレナを見つめている。

けれど、そんな俺達はお構いなしにエレナはもぐもぐとパフェを食べている。

「ごくん、いや~美味しかったです。さて、では盛り上がってきた所でッ!」

「アンタが勝手に盛り上がってるだけでしょうッ!」

「いにゃ~、パフェ食べると私って酔う体質らしくて~」

『どんな体質だッ!』

今度は俺達四人同時にエレナにツッコミを入れる。

しかしそんな俺達のツッコミをスルーしてエレナはポケットから何かを取り出した。

そしてポンとテーブルの中心に何かカードの様な束を置く。

「……何これ」

「あれ、知りませんか? タロットカードですよ」

「タロットカードって、アンタ占い好きだったっけ?」

「好きって言うか、興味があったんですよ。大丈夫です、ちゃんとやり方もバッチリ把握してますから」

エレナはそう言いながら中心に置かれたタロットカードの束を手に取る。

そして、慣れない手つきで切り始めた。

その度に何枚かカードがエレナの手元からパラパラと落ちる。

「うぅ~、カード切るのって難しいですねぇ~」

苦笑いしながらエレナは落ちたカードを拾う。

そして再び切り始めるも、またカードが何枚かテーブルの上に落ちた。

それでもエレナはめげずに落ちたカードを拾う。

そして一生懸命にカードを切る。

勿論、慣れていないからまた何枚かテーブルに落ちているのだが。



/続く



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「図星なのね、まったくコイツは……」

「そ、そんな事無いですよッ!?」

まぁ、半分は本当なんだろうけどな。

「でもエレっち、初めて来た店のわりにはよくメニューの事詳しく知ってたね」

「自前にネットで検索してたぜコイツ。列車の中でなぁオイ?」

坂口と龍二がジロリとエレナを見つめる。

エレナの顔中の汗が更に加速して流れ落ちるのが分かる。

「な、なはははッ! 早くパフェ来ませんかねぇ~!?」

「無理矢理話を終わらせたわね、アンタ……」

火野川の言葉と同時に、店員がトレイにパフェを五個乗せてコチラに近づいてきた。

「お待たせしました~」

そしてそれぞれの前にパフェを並べていく。

「ご注文は以上でお揃いでしょうか?」

「はい、ありがとうございました~」

エレナがそう言うと、店員は丁寧に頭を下げカウンターへと戻って行った。

「さて、でわいただきましょうッ!!」

パチンを両手をエレナは会わせる。

そして大声で「いっただっきま~すッ!」と叫ぶ様に言うと、綺麗に作られたパフェに齧り付いた。

そんなエレナを火野川も坂口も龍二も笑いながら見つめていた。

けど、俺は作り笑いしか出来なかった。

それはアイツの一言が頭に残っているからだ。

〝お前みたいに、幸せしか知らない奴に何が分かるってんだ〟

パフェを口に運んではいるものの、味が全然感じなかった。

火野川がさっき言っていた事を思い出す。

〝彼女の考えは、人間として正しい考え〟

それはそうだ、復讐心を抱く事は誰にだってある事だ。

仮に火野川の言っている通りなら俺だって別にライトが何をしようが構わない。

だけど、昨日の公園での彼女からは……。

常人が抱く復讐とはどこか違う感じがした。

まるで、目的が達成出来るのなら……。

自分は死んでも、構わない。

身体を震わせながら泣いていた彼女からは、そんな事すら感じられた。

「護さん?」

エレナの声かけに俺はハッと顔を上げる。



/続く



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