Beyond Despair -37ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「弟を殺したアヴェンジャーに復讐、か……」

ナイトタウン、第一ブロックにある喫茶店で俺は火野川にライトの事を話した。

彼女が何故あの男に従っているのかも、全て。

「で、護はそんな彼女の心を利用して良いように使ってる騎士団が許せないと」

俺は無言のまま頷く。

「でも、利用されてても構わないって言う彼女の考えは、人間としては正しい考えじゃないの?」

「人間として、正しい考え?」

「そう、護だって家族が誰かに殺されたら、殺した奴に復讐したいと思うんじゃない? でも自分一人の力ではきっと殺した相手を見つける事は出来ない。なら、便利な手駒にされても確実に良い情報を提供してくれる機関、組織に入るのと思う。私もきっと、そうすると思うから……」

ガラス張りの窓の外を見つめる火野川の顔は、どこか儚げな感じがした。

「だからってッ!」

「きっと、その事に関しては私達他人がとやかく言う資格は無いと思う。これはライトの問題だから、ライト本人じゃないと、きっと分からないわよ」

そんな事は分かってる。

俺はライトじゃない、彼女が一体どう言うふうに考えているかなんて分からない。

でも――。

―― 昨日、あの公園で……。

―― 殺人鬼の様にアヴェンジャーを殺していた彼女からは……。

「護? どうかしたの」

「いや、なんでもない。話、聞いてくれてありがとな、少し楽になった気がする」

「楽になったって、他人の過去の話をして楽になる奴も珍しいわね」

苦笑いしながら火野川はそう言った。

と、その時、カウンターで注文を終えたエレナ達が帰ってきた。

「いやぁ~、今日は護さんを元気づけようって事でパフェを頼んじゃいましたッ!」

相変わらずのスマイル顔でエレナは椅子に腰掛ける。

その後に続いて坂口、龍二も腰掛けた。

「ちゃんと人数分頼んできましたから~」

「とか言って、護を元気づけようってのは建前で、本当は自分が食べたかったんじゃないの?」

火野川の言葉にエレナはビクッと身体を震わせる。

表情はスマイルのまま、顔中汗がダラダラになっていた。



/続く



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震えた小さなライトの呟きにアイネは掛ける言葉を失う。

ライトは拳を力強く握り締め、身を震わせる。

「強がってるだの、説教するだの……!」

ライトは歯をギリっと鳴らす。

ナイトタウンの駅での、ある少年との言い争い。

彼の言葉はライトの心に深く突き刺さっていた。

今まで誰にも言われた事の無い彼の言葉。

何故かライトにとって、彼は厄介に思える存在だった。

でも、あの言い争いでライトはハッキリと理解したのだ。

神崎護と言う少年は、彼女の決意を揺るがす存在であると。

一見はどこにでも居る普通の男子高校生。

なのに彼の言葉はどれもライトの心に深く響きわたる。

それが何故なのかは分からない。

「何であんな奴の言葉でいちいち動揺しなきゃならないんだッ!」

ガツッ! とライトは足踏みをする。

その音で周りの通行人が一斉にライトの方へと視線を向けた。

一斉にコチラを見る通行人をライトは鋭い目付きで睨み返す。

すると通行人はライトからすぐに視線を逸らした。

「ち、ちょっとライト?」

その声にライトはハッと我に帰る。

さっきから声を掛けていたアイネはやっとライトが反応した事にホッと息を吐いた。

「もぉ~心配したよ~。話しかけても全部スルーするし、触っても全然反応しないし」

「あぁ、すまない……」

ライトは軽く謝ると顔を下に向ける。

アイネはそんなライトの肩を軽くポンと叩いた。

「ホラホラ、早く行こ? 任務任務~」

アイネは明るい声でそう言いながらライトを抜いて先に進む。

本当は何故身体を震わせていたのか、何を呟いていたのかを聞きたかったが、アイネは何も聞かずに先に進んだ。

今は、そうした方が良い気がしたからだ



/続く



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ナイトタウンの街をイライラしながら歩く全身赤の少女。

そんな彼女を心配そうな表情で見つめる金髪の少女。

「……ライト~?」

アイネの声かけにライトは何の反応もしない。

ただ黙って、それでもイライラしながらただ道を歩く。

周りの通り過ぎる住人もライトの事をジロジロと見つめている。

中にはライトに道を譲る者も居た。

(ライト、さっきから私の事ずっとシカトしてる。もしかして強引に駅から連れ出した事、怒ってるのかな~)

ショボンとアイネは肩を落とす。

しかしあの時はああする他選択肢は無かったのだ。

もしあのままでいたら、今頃駅員の質問攻めにあっていた所だろう。

と、顔を下に向けながら歩いていると――。

ドン、と誰かにぶつかってしまった。

「ご、ごめんなさいッ!」

反射的にアイネスは謝罪の声を上げる。

しかし、ぶつかったのは見ず知らずの他人では無かった。

「あれ、ライト?」

さっきまでドンドン先を歩いていたライトが急に立ち止まったのだ。

アイネスはどこかホッとするとライトの背中を軽く叩く。

「どうしたの~? 急に立ち止まって」

明るい声でアイネはライトにそう言った。

しかしライトの返事は無い。

何も喋らず、道に立ち尽くす。

今度は軽くライトの身体をさすった。

それでも何の反応も無い事に、アイネは少し不安になる。

クイクイと今度はコートの裾を引っ張る。

すると、微かにライトの身体が震えているのが分かった。

何かに怯える小さな子供の様に。

アメリカ軍で任務と何度か共にしてきたアイネでも、こんなライトを見たのは初めての事だった。

「ラ、ライト? どうか――」

「何なんだ、アイツは……」

どうかしたの? と声を掛ける前にライトが口を開けた。



/続く



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