Beyond Despair -38ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「ど、どうした火野川?」

何も言わず、黙って俺を見つめている火野川に俺はそう問いかけた。

「護、ライトが騎士団に利用されてるって何の話?」

真剣な表情で火野川は俺にそう聞いてきた。

でもコイツはライトがあの男と主従関係って事は知らない。

俺は火野川から視線を逸らす。

あんな事を言うにも、火野川達が居ない所で言うべきだったと今更後悔してしまう。

「もしかして、エリック大佐の事?」

「――え」

火野川の言葉につい反射的に答えてしまう。

エリック、その名前には聞き覚えがあった。

日本、魔術騎士団支部の現大佐。

「エリック・エルフォード大佐。ライトと初めて話した時に聞いたの、雇われてるって」

そう言えば、この中で一番最初にライトと話したのは火野川だったな。

「そっか、お前も知ってたんだな」

「大佐に雇われてるって事まではね。でも、何でライトが大佐と主従関係になったのかとかは知らないの。アヴェンジャー関係の事ってだけで……」

そうだろうな、初対面の相手に自分の目的なんて教える奴にも思えない。

「あ、でもアヴェンジャーについてなら聞かれたかな……」

「どんな感じで聞かれたんだ?」

「どんな感じって……あの化け物について何か知らないかって聞かれただけだけど。でも私、アヴェンジャーの事なんて全然知らないし、二年前にアメリカのメンフィス州に現れたって事しか知らないって答えたわよ」

でもきっと、彼女にも火野川のこの返事は予想していた物だった筈だ。

アヴェンジャーに関する情報は俺達一般人には一切公開されていない。

何でも軍事機密だとか。

騎士団は情報を餌に、ライトと言う最強の武器を手に入れた訳だ。

「って、その事が何か関係あるの?」

「あぁ、エリックって奴はな、アヴェンジャーに関する情報を餌にライトと契約したんだよ。アイツは口から手が出る程にあの化け物達の情報を欲してるからな……」

「何でアヴェンジャーの情報が欲しいの? 手に入れたって別に――」

「アイツの弟は……二年前、アヴェンジャーに喰われたんだよ」

俺がそう言った瞬間、世界の時間が一瞬止まった感じがした。



/続く



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俺自身、何で彼女の手を掴んだのか分からない。

関わらないって、言ったくせに。

「どうしてだよ……」

「はぁ?」

「どうしてあんな男の言いなりになってんだよッ!」

自分の今している事が矛盾しているってのも分かっている。

それでも俺は……。

「利用されてるって事ぐらい、お前だって分かってんだろ。奴らの、騎士団の良い手駒にされてるって事ぐらい分かってんだろッ! あの化け物の情報が欲しいからって、あんな人の心を利用すてるような奴らの言いなりになってて良いのかよッ!?」

ライトの両肩を掴み、俺は彼女を睨み付ける。

その事に驚いたのか、ライトは不安そうな顔になった。

「ち、ちょっと護ッ!」

ライトに詰め寄る俺を火野川は心配そうな顔で見つめる。

でも俺はライトを離さなかった。

彼女を掴む指にさらに力を入れる。

そしてグイっと彼女の身体を引き寄せた。

掴む手からライトが身体を震わせているのが分かる。

昨日の、あの公園で化け物を殺し終えた後の様に。

と、その時だった。

ライトが掴む俺の両腕を両手でガチっと掴んできた。

「……お前に何が分かる」

小さな声で、低い声で、震えた声でライトはそう呟く。

そして掴む俺の手を凄い勢いで引き離した。

「お前みたいに、幸せしか知らない奴に何が分かるってんだ」

蒼い目で、俺を睨みつける。

その目からは凄まじい殺意も感じられる。

「利用されてたって良い。それでも私は、あの化け物共を全員残らずぶっ殺さなきゃいけないんだよッ!! それが、あの子の為に出来る、唯一の償いだからッ!」

ライトの声に周りの視線が集まる。

その事に気づいたのかアイネスが強引にライトの腕を引いて改札口へ向かっていく。

ライトはアイネスに逆らう事は無かったが、俺に顔を向けたまま、睨みつけたまま改札から街へと出ていった。

拳を握りしめる。

歯を噛み締め、改札を睨みつけた。

彼女の姿はもう見えなかった。

「護?」

改札を見つめる俺を火野川は心配そうな顔でのぞき込んできた。

「あ、あぁ悪い。俺の為に皆ここに連れて来てくれたのに」

何度目になるのか、そんな言葉を口にする。

でも火野川はうんんと顔を左右に振る。

そして俺の目の前まで来ると、俺の目を真っ直ぐに見つめてきた。



/続く



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第三エリア、通称「ナイトタウン」。

大きなドームにエリア全体が囲まれた、変わった街。

このエリアには太陽の光が差し込む事は無い。

言ってしまえば、ずっと夜って事になる。

何でこんなエリアを作ったのかはわからんが。

「ふ~、やっと到着ね」

列車から降り、両手を伸ばしながら火野川はそう言った。

「わぁ~、相変わらず綺麗な街ですね~」

ぴょんと跳ねる様にエレナは列車からホームに降りる。

龍二は頭を抱えながらフラフラと列車から降りてきた。

「畜生、あの赤毛女……今度会ったらただじゃおかねーぞッ!」

殴り飛ばされた事を根にもってるのか、龍二からそんな愚痴が聞こえる。

まぁ、半分自合意得な気もするが。

と、龍二を殴った張本人もアイネスと一緒に騎士団専用車両から降りてきた。

ホームには木製のベンチ、そして優しい灯りを輝かせる街灯。

改札の先には綺麗な街並みが広がっているのが分かる。

「さてと~、それじゃ行こっか、ライト」

アイネスはライトに腕組みをする。

しかしライトはそんなアイネスを投げ飛ばした。

ドスンと音を立てながらアイネスは地面に大の字に倒れる。

「うぅ~、ライトに投げられるのは……嫌いじゃないよ~」

「Mかよ……救いようねーな、おい……」

ニヤニヤ笑うアイネスを見つめながら俺はそう呟いた。

「アイネ、遊んでないでさっさと行くぞ」

倒れるアイネを呆れた顔で見つめながらライトは改札口へと向かって行く。

「そっか、じゃあねライト」

改札口へと向かうライトに火野川はそう言った。

するとニョキっとアイネスは立ち上がると、ルンルンな足取りでライトについて行く。

そうだ、あの二人は任務でここに来んだ。

あの男の命令で、ここに来んだ。

そう思った瞬間、俺は無意識に改札へと向かうライトの手を掴んでいた。

ライトは立ち止まると、俺へと顔を向ける。

「……何か用か」

初めて会った時と同じ、鋭い目付きで睨まれる。

そんな俺をアイネスも疑問そうな視線で見つめていた。



/続く



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