Beyond Despair -27ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

泣きじゃくりながら自分を罵倒するアイネを思わず抱き寄せる。

優しく、それでも力強く抱きしめた。

「……死んで良いなんて事、絶対にない」

胸の中で身体を震わせながら泣くアイネに優しくそう言葉を掛ける。

「お前は……殺させない。私が守ってやるから……だから、そんな事言うな」

私のその言葉に、アイネは今まで異常に涙を流す。

ホッとしての涙なのか、それとも自身が無力すぎると思っての涙なのか。

けど、私はどちらでも構わなかった。

コイツは戦ってくれなくても良いって、いつも心のどこかで思っていたからだ。

ただ、私の友達で居てくれれば、それで良いって。

アメリカ軍に居た時、私は孤独だった。

駒の様に何ども任務に駆り出される毎日を、たった一人で過ごしていた。

そんなある日、アイネが一人で居る私に声をかけてきたのだ。

初めは鬱陶しくて正直嫌だと思っていた。

けど、毎日共に過ごす事で、いつしか私はコイツを無意識に初めて出来た友達と思うようになった。

それはアイネも同じだったようだけど。

「ごめんね……私、弱いよね……」

「良いんだ、お前はそれで。さっきはすまなかった、私の勝手な行動がお前を傷つけた」

アイネの頭を優しく撫でる。

涙で私のコートはクシャクシャに濡れていた。

「ごめん……汚しちゃって」

「謝りすぎだ、バカ」

軽くデコピンを食らわせてやる。

アイネは少し落ち着いたのか、少し笑みを浮かべた。

それでもまだ微かに身体は震えている。

私はコートを羽織り、アイネの手を握り締めた。

暖かい温もりを感じる。

アイネには私の温もりはどう感じて居るのだろうか。

と、そんな事を思っている間に先程の警官が戻ってきた。

「確認しました、もうほとんど骨状態ですが……」

さすがの警官もゾッとしているらしい。

中にま顔が真っ青な奴も居るほどだ。



/続く



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私も似たような物だが、アイネに比べたらまだ軽いのかもしれない。

だから私は、そうなってしまったアイネに稀だがこんな甘い口調で接してやった事もあった。

そして今回が二度目、だ。

何でそんなにも心が弱いのに、軍人なんかになったのか。

「お待たせして、申し訳ありません」

後ろの方からそんな声が聞こえた。

振り返ると、そこにはナイトタウンの警官が五人。

「貴方が連絡をくださった、ライト・クライスさんですか?」

「あぁ、そうだ」

「遅れてしまい、申し訳ありません。で、現場は?」

私は嫌々路地裏の方へと指さした。

すると警官五人は互いに視線を交わし、路地裏へと走って行く。

私はため息をしながらアイネの隣に腰を下ろした。

アイネはさっきから一言も喋らず、私の貸したコートをぎゅっと握り締めている。

いつもは鬱陶しい程にうるさい奴なのに。

こんなにも無口になると正直、心寂しさを感じてしまう。

「ごめんね……ライト……」

と、黙り込んでいたアイネが口を開けた。

「私……軍人なのに……ダメだよね。死体見ただけで、こんなに……壊れちゃう」

アイネは自分の両手を見つめる。

まだ、震えている自分の手を。

「……ライトの役に立ちたいって思って、魔術身に付けたのに……結局は肝心な時は使えないしさ……。そのせいでライトにも迷惑かけてるしさ……、アメリカの軍に居た時も周りから馬鹿にされるし、だから私……ここに送られたんでしょ?」

泣きながら、訴えるようにアイネは言葉を続ける。

「私ってさ……なんのために、居るのかな? やっぱり、あの時……母さん達と死んでた方が良かったのかな……」

私はもう、我慢の限界だった。

泣きじゃくりながら自分を罵倒するアイネを思わず抱き寄せる。

優しく、それでも力強く抱きしめた。

「……死んで良いなんて事、絶対にない」

胸の中で身体を震わせながら泣くアイネに優しくそう言葉を掛ける。



/続く



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身体を震わせながらベンチに座り込んでいるアイネを私は見つめる。

どうやらかなりショックだったらしい。

正直、私でも吐き気がしたほどだ。

死体は見慣れているし、酷い状態の物なんて腐るほど見てきた。

アメリカ軍の任務で無意味と言っても良いアヴェンジャー迎撃作戦。

多くの仲間の兵士が奴らに食われていくのもイヤと言うほど見せつけられた。

けど今回のは少しゾッとする。

猫と言う、日常的に人間と接している生き物だからこなのだろうか。

まぁ、猫は自分の子供を食べるなんて言うしな。

結局あの後、私達は表通りに出てナイトタウン警察署に連絡を入れた。

アヴェンジャー絡み、とまだ断言出来ないが、人が死んだのは確かだから。

アイネは両肩を摩りながら恐怖に身を震わせている。

一年前、アイネとは何度か任務で同行した事はあった。

しかし彼女は死体を見ただけで悲鳴を上げ、その場にしゃがみこんでしまうのだ。

すっかり、忘れてた……。

アイネがそう言う奴だって覚えておけば、あの時アイネだけ表通りに戻したのに。

私は自分の軽率な行動にイラっときて壁に拳を叩きつけた。

正直、あの時私はアイネの事なんて全然考えていなかった。

もしかしたらアヴェンジャーは誰かに従っている存在なんじゃないか。

そう思った瞬間に頭に血が登っていた。

怒り、殺意、復讐心。

そんな事だからコイツの事も気にかけてやれなかった。

言ってしまえば、自己中心的な行動だったと思う。

私はベンチに座るアイネの頭を優しく撫でる。

「……ごめんね、アイネ」

つい、〝以前の私〟の言葉を使ってしまう。

こんな甘い口調でアイネに接したのは二度目でもある。

アメリカ軍でのアヴェンジャー迎撃作戦の時。

街には多くの人間の死体が転がっていた。

普通の死体もあれば、胴体が引きちぎられた死体。

首だけが転がっている、なんて事もあった。

そんな世界を目にしたアイネは泣き崩れた。

コイツは〝死体〟を見てしまうと我を忘れたかのように泣き叫ぶ。

以前の上官の話では、コイツは目の前で両親をアヴェンジャーに殺されたんだとか。

しかも醜く、残酷に身体中をかき回すかのように。


/続く

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