神崎護、奴と私の顔の距離はかなり近い。
現に今も互いの鼻が微かに当たっている状態だった。
「わ、悪い……急いでて、前見てなかったってか」
苦笑いしながらそんな言い訳をする護。
でも私は、反論したくても出来なかった。
顔が熱い、感じがする。
心臓もさっきから凄くドキドキしているのが分かる。
「大丈夫か? 顔赤いけど――」
「と、とっとと離れろキモオタッ!!」
私は反射的に護の顔に拳を叩き込んだ。
声を上げながら護は身体ごと吹き飛ぶ。
そして良い音をたてながら地面に激突した。
私は素早く起き上がり、コートに付いたホコリを祓う。
護は倒れたまま唸り声を上げている。
そもそも何でコイツがここに現れるんだ。
私は舌打ちをしながら地面に転がっている携帯を拾う。
「ちょっと護ッ! なにそんな所で伸びてるのよッ!!」
と、護がやってきた方向からそんな事が聞こえた。
長い黒髪の女子生徒、火野川愛花だ。
愛花は倒れている護に近づくと、無理矢理身体を起こさせる。
「早く起きなさいッ!」
意識が朦朧としている護の頬をバシバシ叩きながら愛花は言った。
「叩かなくても起きてるってッ!!」
護はそんな愛花の手を力強く払い除ける。
そしてフラフラと立ち上がり私に顔を向けてきた。
その目は少しムッとした感じ。
殴り飛ばした事を怒っているのか?
「お前が悪いんだからな」
「だからって殴るなよッ! おかげで腫れちまったじゃねーかッ!!」
ビシビシと私を指差しながらそう叫ぶ護。
本当に相手にしてると面倒な奴だ。
ただでさえ誘拐犯の行方が知れずにイライラしていると言うのに。
何度目になるのか分からない舌打ちをしながら私は携帯を覗き込む。
幸いにも落とした衝撃で壊れる、と言うことはなかったようだ。
が、とは言ったものの使い方が分からない事には変わりない。
これじゃエリックに連絡が取れないじゃないか。
/続く