Beyond Despair -26ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

神崎護、奴と私の顔の距離はかなり近い。

現に今も互いの鼻が微かに当たっている状態だった。

「わ、悪い……急いでて、前見てなかったってか」

苦笑いしながらそんな言い訳をする護。

でも私は、反論したくても出来なかった。

顔が熱い、感じがする。

心臓もさっきから凄くドキドキしているのが分かる。

「大丈夫か? 顔赤いけど――」

「と、とっとと離れろキモオタッ!!」

私は反射的に護の顔に拳を叩き込んだ。

声を上げながら護は身体ごと吹き飛ぶ。

そして良い音をたてながら地面に激突した。

私は素早く起き上がり、コートに付いたホコリを祓う。

護は倒れたまま唸り声を上げている。

そもそも何でコイツがここに現れるんだ。

私は舌打ちをしながら地面に転がっている携帯を拾う。

「ちょっと護ッ! なにそんな所で伸びてるのよッ!!」

と、護がやってきた方向からそんな事が聞こえた。

長い黒髪の女子生徒、火野川愛花だ。

愛花は倒れている護に近づくと、無理矢理身体を起こさせる。

「早く起きなさいッ!」

意識が朦朧としている護の頬をバシバシ叩きながら愛花は言った。

「叩かなくても起きてるってッ!!」

護はそんな愛花の手を力強く払い除ける。

そしてフラフラと立ち上がり私に顔を向けてきた。

その目は少しムッとした感じ。

殴り飛ばした事を怒っているのか?

「お前が悪いんだからな」

「だからって殴るなよッ! おかげで腫れちまったじゃねーかッ!!」

ビシビシと私を指差しながらそう叫ぶ護。

本当に相手にしてると面倒な奴だ。

ただでさえ誘拐犯の行方が知れずにイライラしていると言うのに。

何度目になるのか分からない舌打ちをしながら私は携帯を覗き込む。

幸いにも落とした衝撃で壊れる、と言うことはなかったようだ。

が、とは言ったものの使い方が分からない事には変わりない。

これじゃエリックに連絡が取れないじゃないか。



/続く



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私は苦笑いしながらアイネの右頬を人差し指で突っついた。

「いつまでも凹んでるなよ、レズ女」

「レ、レズ女じゃないってばぁ~!」

私の言葉に頬を膨らませながらアイネは唸る。

レズ女と呼ばれる事は一年前から嫌がっていたけどな。

こうでもしないとコイツのテンションが元に戻らないと思ったからだ。

「人が凹んでいる事を良いことに~」

プイっと顔を私から背ける。

クスっと私は小さく笑うと、コートのポケットから携帯を取り出した。

「あれ、携帯なんて出してどうしたの?」

「どうしたも何も、今回の依頼は少々無理があるだろ。監視カメラさえ仕掛けてあれば少しは楽だってのに、今どき街に監視カメラ付けてないなんて事あるのか?」

ブツブツと愚痴りながら携帯の電話帳を探す。

因みに、私の携帯に登録されているのはエリックだけだ。

しかし、一体どうしたら電話帳が開けるのか分からない。

「携帯って……面倒な道具だな」

私は携帯なんて持っていなかった。

エリックに渡されたこれが私のファースト携帯だ。

その為、全然扱いに慣れていない。

アイネに視線を向けたがすぐに携帯の画面に視線を戻す。

コイツも私同様、携帯なんて物は持っていない。

誰かどこかに扱いが分かる奴は居ないだろうか。

そんな事を考えながら携帯の画面を直視しながら歩いていると――。

「どわっ!?」

「な―― !」

物凄い勢いで誰かが私にぶつかってきたのだ。

その衝撃で私はアイネごと地面に倒れ込む。

そしてその数秒後――。

「わ、ち、ちょっ!」

誰かの声が聞こえたその瞬間、私の身体の上に衝突してきた〝誰か〟が倒れ込んできた。

私はとっさに目を閉じて衝撃に備える。

が、幸い痛みは全然感じなかった。

〝誰か〟が直前で踏ん張って勢いを和らげたのだろうか。

私はそっと目を開ける。

そこには――。

「え――」

駅で私に喧嘩を売ってきた、ツンツン頭の男の顔が目の前にあった。



/続く



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「しかし誘拐事件の次は猟奇殺人かぁ……、日本も物騒になってきましたね」

「……あれ、人がやったように見えるのか?」

猟奇殺人とかバカな事を口走る警官を睨みつける。

「あれは殺人じゃない、間違いなく化け物の仕業だよ」

「化け物……アヴェンジャーがこのエリアに現れたと言うんですかッ!?」

警官達は互いに顔を見つめ合う。

信じられない、とでも言いたそうな顔つきだ。

こんな事で動揺するなんて、コイツらは無能以外の何者でもない。

いつ現れても不思議じゃない化け物だってのに。

私はイラっとして舌打ちをする。

ベンチから腰を上げ、アイネの手を掴んだ。

「じゃ、後は頼んだぞ? 警官殿」

私の言葉に警官達が困った顔をしている。

けど私はそんな警官達には目もくれずにその場を立ち去る。

あんな奴ら何の頼りにもならないと思ったからだ。

「結局、今の警官なんてもんは飾りと言うことか」

早くエリックが警備を強化してくれないかと、初めて思った。

「ら、ライト……どこ行くの?」

「さぁな……正直、私もおてあげだ」

肩をすくめながらアイネに答える。

アヴェンジャーが今回の連続誘拐事件の犯人と関わりがある事は間違いないだろう。

けど、残念ながら肝心の犯人についての情報がまったく手に入らないのだ。

聞き込みもしたし、男がつけていた女が誘拐された現場にも足は運んだ。

まぁ、そのせいで気色悪い物を見てしまった訳だが。

けど現場には男の死体以外は何も無かった。

犯人の手掛かりになる物さえ、だ。

正直、こんかいのエリックの依頼は達成出来そうにない。

この街は監視カメラすら付いていないとエリックが言っていたしな。

「手掛かりが無いんじゃ、仕方ないね……」

アイネは気まずそうにそう言ってきた。

まだ自分のせいでこうなったと思っているのだろうか。



/続く



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