私は苦笑いしながらアイネの右頬を人差し指で突っついた。
「いつまでも凹んでるなよ、レズ女」
「レ、レズ女じゃないってばぁ~!」
私の言葉に頬を膨らませながらアイネは唸る。
レズ女と呼ばれる事は一年前から嫌がっていたけどな。
こうでもしないとコイツのテンションが元に戻らないと思ったからだ。
「人が凹んでいる事を良いことに~」
プイっと顔を私から背ける。
クスっと私は小さく笑うと、コートのポケットから携帯を取り出した。
「あれ、携帯なんて出してどうしたの?」
「どうしたも何も、今回の依頼は少々無理があるだろ。監視カメラさえ仕掛けてあれば少しは楽だってのに、今どき街に監視カメラ付けてないなんて事あるのか?」
ブツブツと愚痴りながら携帯の電話帳を探す。
因みに、私の携帯に登録されているのはエリックだけだ。
しかし、一体どうしたら電話帳が開けるのか分からない。
「携帯って……面倒な道具だな」
私は携帯なんて持っていなかった。
エリックに渡されたこれが私のファースト携帯だ。
その為、全然扱いに慣れていない。
アイネに視線を向けたがすぐに携帯の画面に視線を戻す。
コイツも私同様、携帯なんて物は持っていない。
誰かどこかに扱いが分かる奴は居ないだろうか。
そんな事を考えながら携帯の画面を直視しながら歩いていると――。
「どわっ!?」
「な―― !」
物凄い勢いで誰かが私にぶつかってきたのだ。
その衝撃で私はアイネごと地面に倒れ込む。
そしてその数秒後――。
「わ、ち、ちょっ!」
誰かの声が聞こえたその瞬間、私の身体の上に衝突してきた〝誰か〟が倒れ込んできた。
私はとっさに目を閉じて衝撃に備える。
が、幸い痛みは全然感じなかった。
〝誰か〟が直前で踏ん張って勢いを和らげたのだろうか。
私はそっと目を開ける。
そこには――。
「え――」
駅で私に喧嘩を売ってきた、ツンツン頭の男の顔が目の前にあった。
/続く