Beyond Despair -25ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

思えば、私とライアンは一番最悪な別れ方をしたんだと、今更ながら後悔してしまう。

―― もっと、話してあげればよかったと。

―― 喧嘩なんてしなければ良かったと。

そんな過去の思い出、取り戻せない記憶を思い出しながら護の姿を呆然と見つめていた。

〝もし、仮にあのスマイル女が死んだとしたら〟

この男はどうするのだろうか。

やはり私と同じく、奴らに復讐を誓うのだろうか。

どうでも良い事だけど、何故か私は聞きたい衝動に駆られてしまう。

そして、無意識の内に――。

「神楽咲エレナが、誘拐犯とやらに殺されたらどうする」

と、心に思っている事をそのまま口に出していた。

護も愛花も私の言っている事が理解出来ないとばかりの顔をしている。

そしてその顔から数秒後、愛花は私の事を殺すかの勢いで睨みつけてきた。

「勝手に殺さないでよッ! だいだい誘拐犯に拐われたって決まった訳でもないのに」

〝仲間が死んだらどうする〟なんて事を言われたら誰でも愛花の様な反応をするだろう。

愛花はそのまま私から顔を背ける。

けど私には彼女の回答などどうでもよかった。

肝心なのは、目の前にいる神崎護の回答だ。

彼は私の問いに今だに答えていな。

もっとも、愛花と同じ反応をするだろうが。

しかし、そんな私の予想は簡単にも打ち砕かれた。

「何言ってんだ、殺される前に助け出すに決まってんだろ」

あまりにも、現実味のなに回答に私はまた呆然と護を見つめる。

そんな台詞を言う事を許されるのは力を持つ者だけだ。

ましてや漫画やアニメかの様な台詞に私は呆れてしまっている。

「それに火野川の言う通りだ、勝手にエレナを殺すな。アイツが死んだ後の事なんて考えたくないしな」

至って護は怒った表情すらせず、私にそう言った。

心のどこかで、私はコイツも私と同じ事を言うと思っていた。

〝殺されたら、俺は絶対そいつを許さない〟

コイツならそんな事を言うだろうと、思っていた。

けど、護も愛花もスマイル女の死後の事なんて想像したくないという反応だ。

きっとこの反応が、正常な人間の反応なんだろう。



/続く



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「……」

けど、所詮は愛花達のネガティブな想像だ。

いくら誘拐犯がこのエリアにいるからってそうそう犯人に出くわすとは思えない。

そう、宝くじのような物だ。

そもそも私はコイツらに構っている暇なんて無い。

第一愛花と一緒にいるこの男にはかなり苛立っている。

本当はすぐにでも殺してやりたいくらいだ。

私は携帯の画面に視線を戻し、電話帳からエリックの番号にプッシュする。

トゥルルルルと言う呼出音が鳴り始める。

しかし、一向に出る気配が無い。

「んだ、あの野郎……」

私は舌打ちをしながら携帯から耳を離す。

何だって今日はこうも上手く物事が進まないのか。

更に苛立ちが募り、ついツンツン頭の男を睨みつけてしまう。

そんな私の視線に気づきもせず、護は愛花同様に周りを見渡している。

「くそ……どこいったんだアイツッ!」

そう文句を言いながら必死にスマイル女を探す。

と、一瞬昔の自分と護の姿が重なって見えた。

今から二年前、迷子になったライアンを必死になって探していた自分と。

あまり喧嘩はしないのだが、その日だけはライアンがわがままを言って聞かないから少し叱りつけたんだっけ。

それで家を飛び出して、どこかへ行ってしまった。

私も初めの数分は放っておこうと思い、何もしなかった。

けど、十分たってもライアンが帰ってくる事がなかった。

私は心配になって、ライアンを探しに外に出た。

確かあの時は冬の十二月二十四日だったと思う。

世間で言うクリスマスの日だ。

外は白い世界に覆われていて、歩くだけで深い足跡が付くほど雪が積もっていた。

そんな道を私は必死になって走っていた。

街中にもあの子の姿はないかと、道行く人たちを目を細めて。

そして、近くの公園のブランコに寂しそうに座り込んでいる小さな男の子を見つけたんだ。

公園にはその子と私以外誰もいない。

私は静かにその子に近づき、目の前にしゃがみこんだ。

その子は私を見るなり、目から大粒の涙を流して抱き着いてきた。

『ごめんなさい、お姉絵ちゃん』

ライアンは泣きながら私にそう言ってきた。

『ううん、良いんだよライアン』

優しく抱きしめながら私はそう答える。

思えば――あれが――ライアンとの――最後の会話だった――。

それから数分後だ、あの化け物が現れたのは――。



/続く



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「護ッ! 痛がってる場合じゃないでしょッ!?」

愛花はさっきからやけに焦っているよいに見える。

普段、と言うかいつもはあんなに落ち着いているのに。

とは言っても私自身、愛花の普段の態度なんて知らない訳だが。

「早くエレナを探さないとッ!!」

「分かってるって、そんな事……!」

護は腫れた頬を撫でながら私に真剣な表情で向き直る。

「ライト、お前エレナ見かけなかったか?」

「エレナ? あのスマイル女の事か?」

「あぁ、見なかったか?」

「いや、見てない。ていうか何だ急に、あのスマイル女がどうかしたのか?」

私がそう問いかけると、護と愛花は顔を曇らせる。

そして深刻そうな表情のまま愛花が口を開けた。

「……いなくなっちゃった、の」

「いなくなった? はぐれただけじゃないのか?」

あのスマイル女は見た目からして落ち着きの無い奴だ。

一人で勝手に先に進んで迷子にでもなっているのだろう。

「はぐれたんだと思うんだけど……携帯に連絡しても出ないのよ」

愛花はポケットから携帯を取り出し画面を覗き込む。

「電源を入れてないのか、電池切れなのか……わからないけど」

「そんなに心配する事か?」

いくらなんでも大げさ過ぎだと思う。

第一あの女だって高校二年生だ。

迷子になった時の対策くらい出来るだろうに。

私はため息をしながら携帯を弄る。

そしてやっとの事で電話帳を呼び出す事が出来た。

「このエリアで事件さえ起きていなければそんなに心配する事でも無いんだけど……」

愛花のその一言に、私は携帯を弄る指を止める。

事件、連続誘拐事件の事を言っているのか。

今のところ誘拐されているのは若い女ばかりだ。

その事件に関連しているかは不明だが、私達に情報をくれた男は殺された。

「でもさっき、近くのコンビニでエレナに似た子を見たって言う店員さんがいたの。だから居るとしたらこの近くの筈なんだけど……」

愛花は必死に辺りを見渡す。

明るい街灯に照らされた道を歩く人々の行列を目を細めて見つめている



/続く



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