Beyond Despair -18ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

間違いない、あの形の奴は初めてだが、あの黒い蛇はアヴェンジャーだ。

「ちょっ、あれなんぞッ!?」

背中の方から動揺する坂口の声が聞こえてくる。

そうだった、神崎護を除いてここにいる奴らはアヴェンジャーを直接見るのは初めてなんだ。

「うぅ……、や、めて……」

ふと、そんな声が後ろから聞こえてきた。

振り向くとそこには苦しそうに頭を抱えているエレナの姿。

身体をまた震わせながら、何かブツブツと呟いている。

「私に、押し付けないで……、そんな感情、押し付けないでッ!!」

甲高い悲鳴を上げながらエレナはその場に倒れ込む。

「エレナ! どうしたのエレナッ!!」

そんなエレナの身体を抱き上げながら愛花は必死にエレナの名前を呼ぶ。

しかしエレナには愛花の声は耳に届いていないようだった。

すると、前の方からヌチャヌチャと汚らしい音を鳴らしながら近づいてくる化け物共。

私は屍を操るアヴェンジャー達に顔を向ける。

何だって今ここで現れるんだ、タイミングが良すぎる気がする。

それとも誘拐犯が戻ってきたってのか?

けど今はそんな事はどうでも良い、今やるべき事はどうやってコイツらを生かすかだ。

昨日みたいに一人だけじゃない、今回は最悪な事に五人もの一般人がいるのだ。

そうなると私の取るべき行動は一つだった。

「お前らは先に行け」

悪魔との契約の証である刻印が刻まれた右腕を前方に伸ばす。

「先にって、ライトはどうする気なの?」

「私はコイツらを殺す。その為にもお前らは邪魔なんだよ」

心配する愛花に私は突き放すようにそう言った。

黒い渦が私の右腕全体を被う。

そして右水平に薙ぎ払うと、その瞬間、私に右手には黒い日本刀が作り出されていた。

私は日本刀の尖端を目の前の化け物に突きつける。

「悪く思うなよ、アンタの身体を傷つけるつもりはなかったけどさ」

アヴェンジャーが絡みつき、自らの身体としている屍に対して謝罪する。

そして後ろの五人に顔を向けた。

愛花や坂口、極道の三人は何か幻想を見たかのような表情で呆然と私を見つめている。



/続く



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「おい、ライト?」

と、気がついたら目の前に護の姿があった。

「な、なんだ……」

「いやさ、火野川から今聞いたんだ。お前がエレナをここまで抱えて来てくれたんだってな」

すると彼は私の前に座り込み――。

「ありがとな、ライト」

そう、優しく微笑みながら、私にとっては意味の無いお礼を口にした。

そう言えば、同い年の奴にありがとうなんて言われたのは、アイネを除くと始めただった。

私は護のお礼の言葉に、何故か何も言い返す事が出来なかった。

なだ呆然と目の前の少年を見つめる。

―― そう、嫌いだったんだ。友達なんて面倒な存在は。

―― けど、コイツらを見ていると……。

―― そんなに友達って言うのも、悪くない物なんじゃないかって、思えてしまう。

そんな事を心の中で思っていた、その時だった。

ドクン、と心臓の鼓動がハッキリと聞こえてくる。

何だ、この、感じは……。

胸が、苦しい……。

〝来たぞ、来たぞ、来たぞライトッ!!!〟

私に憑いている悪魔がそうゲラゲラと笑い始める。

私は舌打ちをしながら立ち上がる。

「ん? どうしたライト」

護のその言葉を無視して私は706号室へと視線を向ける。

〝ヒヒヒ、来たぜライトッ! 今日は何匹喰えるんだぁ!?〟

「黙れッ!」

私の怒鳴り声に和かに会話をしていた愛花達が顔を向けてくる。

彼女達にとって、私が誰に向かって怒鳴ったかなんて分からないだろう。

けど、それでも今の悪魔の言葉は癇に障った。

〝なんだよぉ、今になって普通に生きようって思ったのか?〟

「どう言う意味だ、それはッ!」

そんな私の声をかき消すかの様な鳴き声が706号室から聞こえてきた。

そしてヌチャヌチャと汚い音をならしながらその鳴き声の主は私達の前に姿を表した。

部屋に転がっていた三十人の女の死体に黒い蛇の様な物が巻きついている。




/続く



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「黒髪の姉さん? その人知り合い?」

坂口の言葉に疑問を抱いたのか、愛花は極道に顔を向ける。

すると極道は全くの赤の他人だ、と答えた。

「でもその人、何でアンタ達がエレナ探してるって知ってたのかな」

さぁ、と坂口と極道が同時にそう答える。

しかし、愛花の言う通りだ。

何でその黒髪の女はコイツらがスマイル女を探している事を知っていたんだ。

そしてどうして、その場所を明確に教える事が出来たんだ。 

「まぁ、考えてても仕方ないか。そんで、護はこの二人が目に入ったからそっちに行ったと?」

「あぁ、五階の廊下を何かがウロウロしてる様に見えたからな」

ニコリと、笑いながら護は言った。

なるほど、だからコイツの足音が聞こえなくなった訳か。

少しでも心配した自分が馬鹿らしく思える。

と言うか、もしこの二人じゃなくアヴェンジャーだったらどうするつもりだったんだろうか。

「けどまぁ、エレナは無事みたいで良かったな」

護はそう言いながら震えるエレナへと歩み寄ると、愛花と同じ様に彼女の頭を優しく撫でた。

「今は何も言わなくて良いから、落ち着けな?」

「……はい」

と、今まで暗い表情だったエレナが少しだけ笑みを浮かべた。

「うんうん、一先ず安心って感じですかね」

「ったく、心配かけさせんなっつーのッ!」

坂口と極道もエレナに近づきそう彼女に声をかけた。

そんな中、何故か私は一人虚しい孤独感を味わっていた。

コイツら五人は互いにニコニコと笑っているのに、私一人だけ笑えない。

いや、きっと私はコイツらを友達と思っていないからなんだろう。

だからスマイル女が無事であっても、良かったとかって安心出来ないのだ。

私は五人から顔を背ける。

「何を考えてるんだ、私は……」

友達なんて、私には今まで出来たことなんて一度も無い。

いや、表上でならそう振舞ってくれる奴も何人かは居た。

けど、そのどれもが最後になって私を裏切って行ったんだ。

中学二年の辺りだったかな、そう言う事があったのは。

だから私は友達とか友情とか、そう言うのは大嫌いなんだ。

そう、嫌いなんだ、嫌いだったんだ。



/続く



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